第9話 炎龍に彼は歩み寄る
「…倒すしかないのか」
「騒ぎを考えると妥当ではありますが…今後の騒ぎを考えると」
「むむむ…ん?」
「どうしたゼパル」
「マガツは何処いった?」
「は?」
「確かにいませんね~…うん?」
フィフストップの一人、サモス・ナベリウスが消えたマガツを見つけ校庭を指さす。
その指をさされた方向を見た残りの4人。
そこには…。
【グルルル…!!】
「…」
謎に疼くサラマンダーに一歩ずつゆっくりと正面から近づくマガツ。
「マガツゥゥゥゥゥ!!?」
「何やってるんだアイツ!?」
「はぁ…」
あまりにも命知らずな行動に驚くフィフストップ。
「い、如何なさいます会長!」
すぐさまマーリン生徒会長に指示を仰ぐアダムス。
しかし
「…いや行かなくていい」
「か、会長!?」
アダムスにとってマーリン生徒会長の解答は予想の斜め上の回答だった。
「先生方から『全生徒の避難』の誘導の指令だ。私たちはそっちの対応をしなければならない」
「しかし、そんなことをすればマガツが…」
「分かっている。既に先生方には報告済みだ。それにサラマンダー相手に正面から近づく行為自体、命知らずだが…あの魔剣すら構えないのはどうも理解に苦しむ。何をするのかが知りたい」
「会長…」
「私も会長と同意見です。何をするのか、それを見てからでも生徒会への勧誘を続けるのか否かを考えれるかと」
「私もです~」
「俺もだ!」
「お前は戦いを見たいだけだろ…会長がそう言うなら」
「よし、では私たちは生徒たちの避難誘導に当たるぞ。もし不審者及び敵対生物が居たときは『潰せ』。いいな」
「はっ!」
「わかりました」
「あぁ!」
「は~い」
「では、行け!」
そして学園の指示と共にフィフストップは各々で生徒の避難誘導に向かう。
その間、サラマンダーと相対する彼は…。
「ふぅ…!熱いな、やっぱり…流石、サラマンダー」
一歩一歩、確実に近づいている。
変に踏み込めばサラマンダーに焼き殺されると頭の中で何度も何度も復唱しつつ進む。
その中で、何故怒り狂ったのかを考えている。
◇◇◇
(…やっぱり、あの傷か)
頭部に刻まれている抉られた傷を見る。
本当に痛々しい傷だ。見ているだけで寒気がする。
【グルルル…!】
俺に対してずっと警戒心がむき出しってことはその抉られた傷は…『人による影響』が高いか。
軽く聞いた話だが、サラマンダーを崇拝する集落があるって聞いたことがある。
けど崇拝する対象にこんな傷跡を作るのか?と疑問が湧いてくる。
正直、その線は薄いと思う。
そういう伝統とか掟とかあるなら百歩譲ってまだわかるが…そんなのがあったら毎回サラマンダーが暴れるはず。
なら伝統という線も薄い…となれば。
(悪意を持った外部からの人間…かもな)
他の魔物の影響なら俺に対してここまで敵意を向けたりしないとは思う。
バイタルで見ても明らかに俺という個人ではなく、人間そのものに怒っている。
「…」
俺は攻撃はできないが、逆に癒すことはできる。
補助魔法『ヒール(回復)』。対象の傷を治す作用があり、細胞の活性化なども出来る。
俺のヒールなら何とか、あの抉られている傷も完全に治すことは可能だ。
だがあくまで理論上の話、問題は…サラマンダー自体が易々と傷に触れさせてくれそうにない。
【ゴォォォ…!!】
「!」
一歩踏み込んだ瞬間、サラマンダーは口を開き、口の先がパチパチと光り始める。
あれは…ブレスの構えだ!
「バリア!!」
【ゴォォォォォォ!!】
補助魔法『バリア』を唱えた瞬間、サラマンダーの口から火球が放たれる。
「くっ…!?流石…サラマンダーだな!」
バリアで業火を防ぐが、少し勢いに押される。
それに左腕が切り落とされてよかった。暑さを感じないしな!
(どうするか…攻撃はできないし、何とかして治すしかないが…よりにもよって抉られた傷があるのは頭部だ。ブレスとか吐いてくる頭部に近づくなんて自殺行為はできない)
バリアで耐えつつ、何とかして頭に近づく隙を探さないと。
まずは…!
「フーズ!」
風の最下位魔法『フーズ』を唱え、サラマンダーの再度放たれた火球を掻き消すと同時に、サラマンダーの周りを駆ける。
前脚、翼、後脚、尻尾…どこもかしこも強靭な鱗と炎が纏われてる。
何処を攻撃しても効果はなさそうだし、何によりも変に刺激する方がヤバい。
元の目的と同様に攻撃はできない…!
「ブースト…バイタル…!」
補助魔法『ブースト』。
一時的に身体能力をあげる。もっと素早く動き、もっとサラマンダーの状態を見ろ。
俺が持つ情報が少なすぎる。もっとコイツの事を知らないといけない。
【グルルル!!】
「っぶねぇ…!」
バイタルでサラマンダーの様子を伺っていると俺の速さに頭部がついてこれなったと判断したサラマンダーの尻尾の薙ぎ払いが地面を滑る。
それを何とかジャンプで回避し、サラマンダーの背に乗ろうとしたが。
(ダメだ…背中にも炎が纏われてるから変に近づけない)
空中で別方向にフーズを放ち、勢いを別方向に逃がす。
『炎龍サラマンダー』という生物は他の並大抵のドラゴンに比べると炎の扱いに長けている。
戦い、狩り、巣作り、求愛行動などの全ての炎を用いる。
まさに『炎から生まれ、炎で朽ちる龍』。その二つ名に恥じぬ強さだ。
――ドッ!!
「クソ…!」
両足で地面に着地し、再度サラマンダーと見つめ合う。
【グルルル…!!】
「その傷を治したいだけなのにな…!」
呼びかけても呟いても、サラマンダーに俺の言葉は届かないし、理解できないだろう。
…一瞬魔剣を握りそうになるが、ダメだ。
コイツは傷つけてはいけない!
【グルルッ!!】
「今度は脚か!」
横にジャンプして避ける。
俺が着地した所に大きく、サラマンダーの脚が重なる。
…潰されたらひとたまりもないな。
【ゴォォォォ!】
「くっ…またブレスか!?」
雄たけびを上げつつ翼を大きく広げるサラマンダー。
またブレスかと思いバリアの準備をするが。
「!!?」
翼で下に振り下げて、風圧を巻き上げると同時に空へと舞いあがる。
何だその行動…!翼の風圧をバリアで防ぎつつ、空へ舞いあがったサラマンダーの様子を伺う。
ブレスでもないし、脚でもないし、尻尾でもない…まさか逃げるのか?と思ったのもつかの間。
【ギャオォォォォンッ!!】
「!!」
空中でサラマンダーの口から炎が外に漏れ始め、その炎はサラマンダーの全身に巡る。
更に全身に巡る炎はより赤く、より紅色に近づいてゆき…その炎、いや焔は全身に纏わりついた。
やがて『龍の形をした焔』となり…俺に向かって一直線に降りてきている。
「マジかよ…!」
あまりにも強大な炎。
マルバス様との戦闘でもここまでの大きな炎は見たことがない。
どうする!?俺の最上位炎魔法で相殺するか!?
いや、アレはダメだ。最悪…殺しかねない。
水、風、氷…ダメだ。案が浮かばない。
どれも…アイツを殺しかけてしまう!
回避も考えたが、俺の後ろにはマルバス様の学園があるし、クラスメイト達がいるんだ。
回避をしてしまえば大惨事につながる。
回避も…できない。
どうする…どうする!
「いや…いい!断捨離だ。攻撃手段をすべて捨てろ、俺に出来ることをやるんだ…!」
攻撃を捨て、回避を捨て、いらない思考回路も捨てる。
「ふぅ…ブースト、パワー、アンチフレイカット!」
出来る限りの補助魔法を唱え、自分自身の身体を出来る限り強化する。
そして、俺は両腕を広げてサラマンダーを正面から迎え撃つ。
「…来いィッ!!」
【ゴォォォォ!!】
俺に超高速で向かってくるサラマンダー。
それを…!
――バァァァンッ!!
「うぉぉぉぉぉ!!」
両手で受け止める!
「くっ!?なんて…パワーだ…!」
出来る限りの補助魔法を唱えたおかげで両足を地面につけてぶっ飛ばずに済んだが…身体はどんどん後ろに押されていく。
それに、熱すぎる!右手が痛い…!
「ぬぐぅぅぅぅ!!」
でも…このおかげでサラマンダーの頭部に触れることが出来た!
隙を見てこのまま傷にヒールをすればいい!
(耐えろ…俺の右腕!)
両足を踏み込み、片腕でサラマンダーの焔に耐えつつサラマンダーの傷に左腕を伸ばす。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
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超絶不定期更新ですがご了承ください…




