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第一章10「放課後ハーレム その4」

 古川ふるかわ明則あきのりは頭を抱えていた……。


 突然、僕の家に泊まるとか言い出した三人は、何度帰るように促しても、そうしてくれる気配は無かった。


「僕の家に泊まるって言われても、こっちは何も用意できてないし、それに、親も心配するだろ?」


 僕がそう言うと、三人は――。


「大丈夫! スーパーでお弁当も買ってあるし、親には友達の家に泊まるって連絡してあるから!」

「私も、お泊まり会だと両親に伝えてあります!」

「もう連絡してある。お母さん、"娘をよろしく"って言ってた」

「いつ連絡したんだよおおお!?」


 いつの間にか、彼女たちは親に連絡していたらしく、どんどん外堀そとぼりが埋められていく……。

 これで、彼女たちにはお泊まり会のアリバイができてしまった。なので、余計に家に返しづらい状況に……。


「し、しかしな……。一人ならまだしも、三人も家に泊めるなんて、こっちは旅館じゃないんだから、寝る場所とか無いぞ?」


 正直、仮に彼女たちを泊めることになったとしても、寝る場所の確保や部屋の割り当ての時点で無理な話になってしまう。

 それに、女の子と一つ屋根の下で過ごすなんて、たった一日だけだったとしても、こちらの理性が……。

 なので、ここはなんとかして、彼女たちに諦めてもらうしかない……。


 しかし、そう思ったところで、松森まつもりさんが――。


「寝る場所、明則の部屋がいい」

「えっ……」


 僕は言葉を失った。


 よりにもよって、一番プライベートな空間で寝たいとか言い出したぞ……。

 自分の部屋で、松森さんみたいな美少女が寝ていたら大事件だろ!? もしかしたら、あーんなことやこーんなことが起こって……"不慮の事故"が起こってしまうかもしれないじゃないか……!

 そもそも泊めるなんて一言も言ってないし、なんとしてでも止めさせなくては……! これは、陰キャ……いや、男の沽券こけんに関わる問題だ……!


「え、えっと……。僕の部屋は、ちょっとやめてくれないか……?」

「明則の部屋、たくさんアニメグッズあって好き。私、ここで寝る!」

「え、ああ、ちょ――」


 松森さんは、僕の言うことなどお構い無しに、部屋のベッドにダイブし、枕に顔をうずめてしまう。

 すると、それを見た秋川あきかわさんと園山そのやまさんが――。


「さ、先を越されちゃった……」

「残念です……」


 なぜか、羨ましそうな目で松森さんを見つめるのだった……。

 そして、松森さんは心地良さそうに目を細めると――。


「明則のベッド、いい匂い……。優しい香り、する」


 そんな大胆なことを躊躇ちゅうちょなく口にするのだった……。


「や、やめてくれえええ!! 恥ずかしくて死んじゃううう!!」


 ぼ、僕は何を見ているんだ……!? 女の子が自分のベッドで寝ているだけなのに、どうしてこんなにも背徳的な気分になってしまうんだ!?

 だらしなく伸ばされた松森さんのハイソックスに包まれた脚……。そして、うつ伏せになったせいで、彼女のボンキュッボンなスタイルの良さが浮き彫りになる……。

 それに、ただでさえ短いスカートがめくれそうになっており、危険なチラリズムを演出しかけている……。

 こ、こんなの、無防備すぎるだろ……!? 僕が陰キャじゃなかったら、今頃、襲われてるぞ……!?

 とりあえず落ち着け……。相手は女の子一人だけ……。そう、一人だけだ……!


 そう思っていると、秋川さんが――。


「あ、あの、明則君……!」

「な、何……!?」


 なぜか彼女は僕のすぐ隣まで来て、すがるように腕をつかんでくる……。


 意識しちゃ駄目だ、意識しちゃ駄目だ……! 女の子に腕を掴まれたくらいで取り乱したら、陰キャ卒業なんて夢のまた夢だぞ!?


 そう自分に言い聞かせて、なんとか理性を保つ。

 すると、秋川さんは――。


「アタシも……。明則君の部屋で寝たい、な……」

「えっ、秋川さんも何を言って……」

「だって……。他の二人に、負けたくないんだもん……」

「ま、負けたくないって……。うわぁ!?」


 彼女の真意をこうとしたら、今度は、反対側から園山さんが腕を掴んでくる。


「あ、明則さん……! わ、わわ、私もここで寝ます……!」

「……っ!?」


 なんということだ……。僕の両腕が二人に占領されてしまった……。

 まさに両手に花、といった状態か……。両腕を二人に掴まれたせいで、身動きが取れなくなってしまう……。


 すると、園山さんは――。


「そ、その……。ふ、二人が悪さをしないために私も寝るんですよ? 決して明則さんの匂いに包まれて寝たい、だなんてよこしまな感情をいだいたわけじゃないですからね……? 本当ですよ……?」

「園山さんも早口で何を言ってるんだよ!?」


 ああ、もう……。色々と駄目だ、これは……。どうしたらいいんだよ……。


 しかも、目の前の惨状に頭を抱える僕に追い討ちをかけるかのように、タイミング良くスマホの通知音が鳴った――。


「えっと、親父か……? ごめん、二人とも悪いけど、スマホ取りたいから離れてくれるか?」


 そう言うと、二人はすごく残念そうにしながら腕を解放してくれた。


「うん、分かったよ……」

「仕方ないですね……」


 二人が離れたところで、改めてスマホを確認する。


 何だか、すごく嫌な予感がする……。


 僕は息をんでから、スマホのメッセージに目を通した。

 すると、案の定――。


『思ったよりも早く仕事終わったから、今すぐ帰るぜ☆』


 ああ、終わった……。


 僕は、死んだ魚の目をしながら、無言のままスマホをポケットに突っ込んだ。

 すると、園山さんが――。


「もしかして、ご両親が帰ってくるんですか?」

「そうだよ……。仕事早く終わったから、もう帰ってくるって……。親父が……」


 僕がそう告げると、なぜか三人は髪の乱れなど身だしなみを整え始める。


「な、何やってるの!?」

「明則君のお父様に、失礼が無いようにしてるの!」

「身だしなみや清潔感は大事です! 第一印象が良くないと、その……。お、オッケーしてもらえませんから!」

「これは私たちにとって大事なこと! 私たちの将来、かかってる!」

「えっ、将来? それにオッケーって……何を言ってるんだ?」


 な、何か変な方向に話が勝手に進んでいってないか……? いや、元々変だったけど……。

 というか、そんな場合じゃない! 早く三人には帰ってもらわないと……!


 もし、こんな場面をあの親父に見られたら――。


「明則ぃー! ただいま帰ったぞーい……って」

「お、親父……!?」


 あ、フラグ回収乙でした……。


 部屋のドアを乱雑に開けた親父は、僕の部屋に広がる三人分の異変に目を白黒させている……。

 時が止まった……。そう感じるような、長い沈黙だった……。

 そして、時は動き出す……。親父の歓声と共に……。


「あ、明則が……。女を連れ込んでるぞおおお!!」

「うわああああ、やめろおおお!!」


 こうして、僕の部屋は更ににぎやかになったのだった……。

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