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2 ロボット製作と隣人の娘

騒動の後、佐藤夫婦は慌ててT郎の元へ謝罪に訪れた。

陥没した庭の修繕について話し合う中で、T郎は自分が巨大ロボットを製作していることを、つい口走ってしまう。


「巨大ロボット…ですか?」


佐藤の夫は目を丸くしたが、妻・茜は特に驚いた様子もなく、「まあ、すごいですね」と微笑んだ。美咲はというと、T郎の突飛な計画に呆れ顔だった。


「そんな非現実的なこと、本気で考えているんですか?」


理屈っぽくまくし立てるT郎に、美咲は容赦なく反論した。機械工学を専攻していたT郎にとって、美咲の科学的知識の欠如は信じられないものだった。


「貴様のような素人に、この壮大な計画が理解できるはずがない!」


「別に理解したくもありませんわ。ただ、騒音だけは勘弁してください」


そんな二人のやり取りを見て、佐藤夫婦は苦笑いするばかりだった。


しかし、奇妙なことに、美咲はその後も時折、T郎の作業場に顔を出すようになった。最初は騒音の抗議だったのだが、次第にT郎が作り上げる奇妙な機械の数々に興味を持ち始めたのだ。「これは何なの?」「どういう仕組みになってんのよ?」と、素朴な質問を繰り返す美咲に、T郎は最初は鬱陶しがっていたものの、根は寂しがり屋だったためか、次第に自分の研究について語るようになっていった。


だが、理屈屋のT郎と、直感的な美咲の思考回路はなかなか噛み合わない。設計図一つとっても、T郎が理論に基づいて説明するのに対し、美咲は「なんとなく、こっちの方が良さそうな気がします」といった、科学的根拠のない意見を平気で言う。


「そんな曖昧な感覚で、機械が作れるわけがないだろう!」


「でも、案外そういうものじゃないんですか? うまくいく時って」


二人の間には、いつもそんな調子の会話が繰り広げられた。ロボット製作は、T郎の緻密な計画とは裏腹に、美咲の気まぐれなアイデアによって、予想外の方向へと進んでいくことが多かった。


そんなある日、佐藤の妻・茜が大きな鍋を抱えてT郎の家を訪れた。


「あの…たくさん作りすぎちゃったので、もしよかったら」


中には、美味しそうなカレーがたっぷりと入っていた。一人暮らしで質素な食事ばかりだったT郎にとって、温かい手料理は何よりも嬉しかった。


「ありがとうございます…」


ぶっきらぼうながらも感謝を伝えるT郎に、佐藤の妻はにっこりと微笑んだ。それ以来、時折、佐藤家からおすそ分けが届くようになった。夕食に誘われることもあり、T郎は戸惑いながらも、温かい家庭の雰囲気に触れるようになっていった。


美咲も、ロボット製作を手伝う傍ら、T郎の身の回りの世話を焼くことがあった。不器用なT郎に代わって工具を整理したり、散らかった作業場を片付けたり。最初は迷惑がっていたT郎も、いつしかそれが当たり前の日常となっていった。

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