お う ち に か え ろ う ?
――――学校の帰り道―――――
同じ方向へ帰る友達はおらず、人気のない不気味な道を僕はいつも歩いていた。
その道は、夕方なのに夜のような、霧に包まれた化け物でも出そうな道…。
山奥に住んでいる事もあり、この山へ続く不気味な一本道を歩くしかなかった。
しかし、そんな僕にもいつまでたっても慣れないものがある。
川の上の橋を渡ったその先の道路にそれはある。
何の為にあるのかわからない不気味な木造の看板だ。
この看板を誰がどういう意図で建てたのかもわからない。
それはただ立っていて通行人に恐怖を与えた。
ただでさえ人の通らない道でこんな看板を見かけると正直不快感しか感じない…。
いつも見かけている看板だが…この不気味さに慣れる事は無かった…。
(気にしちゃ駄目だ…)
何の変哲もない木造の看板、本来なら何も怖がる事は無い。
だが今日に限ってはそのおぞましさが頂点に達していた。
「あれ…?」
看板に背を向け、随分と看板から通り過ぎてからのこと…
後ろに気配を感じる…
(えっ?ウソでしょ?)
バクバクと大きくなる鼓動の音…
振り返ってはならないと自分の中の何かが自分へ訴えかけている。
(何もいない…振り向く必要は無いんだ…)
震える手足をなんとか押さえ、僕は家の方向へ歩き出した。
なのに…。
「 一 緒 に 帰 ろ う ? 」
突如、女性の高い声が背中の後ろから聞こえて背筋が凍り付いた。
あの看板からは随分と離れた、この道を通る人間も普段から指で数えられる程度しかいない。
という事は、一体誰がこんな悪戯をするのか…?
僕は友達の誰かがこっそりつけて来て悪戯をしたのかと薄い期待を胸に振り返る…
しかし、振り返った僕の目に飛び込んで来たものは…
(え…???)
いや、おかしい…
僕はあの場所から随分と歩いたはずだ…看板は小さくなって無いとおかしい…
そして看板の見た目もいつもと違う事に気付く…
(さっき、こんなデザインだったか…?)
普段の看板は目の黒い部分なんて無かった。
それに2つ目の看板が設置されたなんて話も聞いた事が無い…。
「 一 緒 に 帰 ろ う ? 」
それは口を動かし、明らかに僕のほうを見て言った。
あの看板が僕を見てしゃべっている。
「 帰 ろ う よ お う ち に 」
口を開けたその看板は僕の視界を暗黒に変えた。
ただ、それから先の事は覚えていない。
僕の意識はドロドロに溶けて消え、もうそこから戻る事は無かった。




