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異世界転生したなら冒険したい≪異世界を旅する元勇者≫  作者: マルポ02
序章 転生勇者の追放譚
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勇者の旅の終わり

王都に辿り着いたリーシャ達は城下の惨状に息を飲んだ。


城門を破り侵入した魔物が町民に食らい付き非力な人間達の肉を貪り、空から飛来する鳥獣型の魔物は口から火を吐きながら急降下して逃げ惑う人々を強襲して大きな足でつかみ上げて啄む。


平穏なはずの王都は一変、この世の地獄のような惨状へと変貌する。


王城は仕えている騎士や魔法使いでどうにかなっているのか煙が上がることはなかったが、半面巡回に出ていた兵士でのみ応戦することとなった城下町は苦しい戦闘を強いられていた。


リーシャ達はその状況に城下町防衛に回ることにして、各々散開して魔物の討伐や負傷者の救助にあたった。


リーシャは地上の魔物には剣を振り空の魔物には魔法を投げ撃ち、ひたすら魔物の数を減らすことに躍起になった。


斬る。斬る。撃つ。斬る。撃つ。撃つ。斬る。

斬っても撃ち落としても一向に数を減らす気配のない魔物の群れ。

剣を振るい、魔法を撃ち。やがてそこらじゅう魔物死体が山のように積み重なった頃、背後から声が聞こえた。



「リーシャ!!」



その声に反応して振り向いた時、自分の背後にはリーシャを弟のように接して可愛がってくれた弓術使いの少女がリーシャを庇うよう盾となり、空から襲い掛かって来た魔物の鋭い爪でその華奢な背中を抉られていた。

探知能力に長けた彼女だからこそ気付けて動けたのだ。


リーシャはその魔物を剣で斬り落としすぐさま少女を抱き寄せてその名前を叫ぶ。


少女ら息を乱し大量の血を背中から流し、その傷口を押さえながら少女を助けようと神父の名を呼ぶ。



「ロシウ!ロシウ!リリアナが!リリアナが血を…!」



リーシャは悲痛な声で叫びながら神父を探す。やがて神父がその声を聞き付けてリーシャのもとにやってきた。


胸元を真っ赤に染めた神父が。


リーシャは神父のその姿を見て、思わず震えた。

彼女を助けに来た神父さえも最早瀕死の状態であった。



「リーシャ、彼女の傷を塞ぎます。必ず。

だからどうかそれまで、それまで…」



神父は口から血を垂らしながら神秘からなる回復の祈りを捧げはじめた。

どちらの傷も、リーシャから見ればあまりにも致命的なものに見えた。

しかし神父は祈りながらリーシャに言う。



「私はいつか、神秘の不可能生を証明したい、そう言いましたね……きっと、今がその時なのです」



神父が少女を回復させ、周りに残る魔物を払うリーシャの耳に確かに神父の声が届いた。


程なくしておびただしい程いた魔物達が討伐された。

町の中は人と魔物の死体が散乱し、焼けた家屋は未だ炎に包まれ、生き残った住民達は安堵と嘆きの声を上げ、それを見守る兵士達は疲れたきった体に力を入れて勝利の声を上げる。


生きて声を上げる者。死して転がり黙する物。それらに囲まれながら神父は息絶え、少女の傷は塞がり、リーシャは膝から崩れ落ちた。





一命を取り留めた少女を兵士達に城内の医師に見せるよう任せて、リーシャは城下町を走り回った。

もう一人の仲間の姿が見えず、あちらこちらを探し回った。


やがて焼け落ちた孤児院の屋根柱を支えるように全身を黒焦げにし立ったまま絶命している戦士だった死体を発見した。


黒く染まった体は、辛うじて近くに落ちていた大斧でそれが誰だったか判別出来た。


その死体の前で二人の幼い少女がペタリと座り込んで泣いていた。


少女達は口々に、オジサンが。オジサンが。と泣き叫んだ。


リーシャは少女達2人を抱き寄せ、よかった。よかったんだよ。と2人を抱きしめて少女達と同じ様に涙を流した。


体に罪人の刺青を入れられたその戦士は2人の子供の命を救って息絶えたのだった。







それから数日後。リーシャは王城の謁見の間に、実にに2年ぶりに赴き王に謁見していた。


それは王都の魔物を討伐した功績を称えるためではなく、また、これまでの魔物討伐の褒美を与えるためでもなかった。


王の隣に立つ大臣の表情は険しく、王も皺の多くなった目元の溝ををさらに深くして前にもまして唸っていた。


やがて大臣は後ろ手に組んだまま声を張り上げた。



「此度の魔物の襲撃。これは勇者の武功、その少なさが招いた事態なのは明白である。よって、勇者リーシャの、勇者の称号を取り上げその任を解く事とする。

死罪とするところだが、王都を救援にきたその行いに免じ、任を解くに留めることとする。これは最大限の譲歩、王の慈悲である」



反論するだけの気力が今のリーシャにはなかった。

その言葉をただ受け入れ、勇者の剣も返却した。

そうして勇者リーシャの、その2年の勇者生活が終わりを告げた。




これは仕方のない事なのだ。


そう自分に言い聞かせて、目元を赤く腫らした少年は勇者の剣を王へと返したのだった。


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