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第八十話 勇者の帰還と新しい敵

パティの精霊を分離します。

新たな敵?が現れます。

 ゲイルとの戦いが終わって、精霊の分離を始めたジュンヤ達。

 眷属達が順調に精霊との分離が終わり、パティの分離にかかったが突如パティが苦しみだした。


「グウ、!!ガッアアアアア」(パティ)

 パティはのけぞって胸を両手で押さえる。

「ジュンヤはん!早すぎる!もっと魔力を抑えて」(キュービ)

 ジュンヤは慌ててパティに移す魔力を絞った。

「前の器との拒絶反応が起こったんや。慎重にな」(キュービ)

 パティの顔は平常に戻った。


「よっしゃ。それ位でええやろ。ジュンヤはんまた出てってくれるか」(キュービ)

「はいはい。パティ、頑張れよ」(ジュンヤ)

「はい・・」(パティ)

 汗をかいているパティを置いてジュンヤは部屋から出た。


「古い器は廃棄して・・・拒絶反応はないな。

 良し、次は精霊を分離するで。まずは土精霊や。ノーラはん」(キュービ)

「はい」(ノーラ)

 ノーラがパティのそばに歩み出る。

「土精霊の造った器に静かに魔力を供給してや。これは魔力の質が似とるあんたしか出来んことや」(キュービ)


「よっしゃ!もう分離できるやろ」(キュービ)

 褐色の肌の筋肉質の女性が分離された。

「ありがとう。助かった。私の事はノームと呼んでくれ」


 その後同様に風精霊をアステルが解放した。

 スリムな白い肌の女性が分離された。

「シルフィーと呼んで下さい」


 次はレイコが水精霊を分離した。

 青い髪のこれもスリムな女性だ。

「ウンディーと呼んでくれ」


 最後はボルクが火精霊を分離した。

 赤い髪の肉感的な女性だ。

「サラです。よろしくお願いします」


「パティちゃん、どうや調子は」(キュービ)

「はい、大丈夫です。ありがとうございました」(パティ)

 パティは一人そそくさと部屋の端っこの椅子に座る。

 やはり敵になってしまった後悔が大きいのだろう。

 ジュンヤ達は気にするなと言っているがまだ時間が掛かりそうだ。


「さて、聖獣さん達は、ここにジュンヤはんと残るらはるんやろけど。あんたらどうする気や?」

「私らは眷属と一緒に暮らしたいと思ってるよ」(ダークネス)

 ライトニング、エレクトロン、ゴスペルも同意した。


「私達も良ければここで暮らさせて欲しいです」(サラ)

 ノーム、シルフィー、ウンディーも同意した。


「ここに住むについてはジュンヤはんはOKしとるから心配せんといて。うちは言うとった通りガーランドに帰るつもりや」(キュービ)


「そう言えばお父さんも帰って来いって言ってたわね。弟たちの面倒を見るの?」(エルザ)

「それもあるけどな。うちはヘンリーが見初めた唯一の女やろ。そばに置いときたいんや」(キュービ)

 ガーランド皇帝には第一、第二夫人以外に七人の側室が居る。それぞれが一人か二人の子供を産んでいるので全部で十二人の子供がいる。エルザ、オスカー以外はまだ幼いので子守が必要だ。

「それはそれは、御馳走様」(エルザ)


 ジュンヤが部屋に入って来た。

 実体化した精霊とは初見なのでそれぞれと挨拶をして、この後どうしたいのかを確認した。


「キュービさんちょっと疑問があるんですが、教えて貰えますか?」

「なんや?」(キュービ)

「キュービさんがその体に憑依する時って、前の宿主から分離する必要があるじゃないですか?」(ジュンヤ)

 キュービさんはあーという顔をする。


「それはな、器を共有するかどうかで分離の大変さが変わるんや。

 前の宿主とは器は別々やったさかい、すぐに分離できたし、この体の持ち主はすでに器を失ってたから簡単に融合することが出来た。

 エルザちゃんの時はエルザちゃんに大きな器を作りたいと思て、魔力も少ないのに頑張ったもんで器が共有されてしもたんや。

 焦ったで、出産のときに器をうまく分けられんとな、その後一年位しか実体を維持できんかったんや。

 けどな、精霊魔法を使うには器を共有せんといかんのや」(キュービ)


「そう言う事でしたか。じゃあ今回、分離作業を監督したのは?」(ジュンヤ)

「単に精霊が魔力を採り過ぎやん様に見張っとっただけや」(キュービ)

「分かりました。ありがとうございました」(ジュンヤ)


 周りを見回すといない。

「あれ、パティはどうした」(ジュンヤ)

 マイアが部屋の隅を向いた。

「あちらです」(マイア)


 部屋の隅にある椅子に座ったパティは、ジュンヤの視線を受け止められずに下を向く。

「パティ、いい加減忘れろよ」(ジュンヤ)

 彼は自分から彼女に近付いてそう言った。

「済まない。私は勇者失格だ」(パティ)


「勇者って言ったって、魔王が居る訳でもあるまいし、硬く考えるなよ」(ジュンヤ)

「私は人々を守ってこそ存在価値があるのだ」(パティ)

 彼は少し考えてこういった。


「じゃあさ、正教会も弱体化したわけだし、俺の所で魔獣退治をやらないか?」(ジュンヤ)

 彼女は少し顔を上げたがすぐに下がった。

「あなたの眷属が居るじゃないか?」(パティ)

「それだけどさ、俺とハル、マイア、マリーはもうすぐ結婚するだろう。すぐに赤ちゃんが出来ると思うんだよね」(ジュンヤ)


「分かった。協力させてもらう」(パティ)

 彼女は頷いた。まあ、仕事をしていればいずれ元気を取り戻すだろう。

 正教会だが信者が教皇と世界の王との軋轢を知ってしまい、教会に詣でる者が半分以下に減っている。

 アルミアの聖女とセシルの提唱する世界教に信徒が流れ始めている。

 何せ、洗礼(隷属)を受けると魔法が使えるようになるので、聖都の教会には毎日洗礼を求めて列が出来ている。


「話は変わるが教えて欲しいことがある」(パティ)

 彼女は顔を上げた。彼は頷いた。

「ゲイルを倒したのは本当にタマサブロウなのか?」(パティ)

「何だよ、今頃。・・その通りだよ。奴の最後の姿には俺達の魔法は一切効かなかった」(ジュンヤ)

 彼は彼女の隣の椅子に腰かけた。


「なぜだ。タマサブロウにそんな力はないだろう」(パティ)

「ああそうか。タマサブロウは魔法を使ったわけじゃない」(ジュンヤ)

「じゃあ、剣か」(パティ)

「違う、ロケット弾又は、噴進砲、放射砲と呼ばれる兵器だ」(ジュンヤ)


「どんなものなのだ?」(パティ)

「でかいマスケットのような物だ。それを列車に乗せて用意していたんだ」(ジュンヤ)

「なんだ、個人の力ではないのか」(パティ)

 彼女はがっかりしたようだ。

 残念だが今後科学の発達によって、個人の技術で戦うことは少なくなるだろう。


「それを見せてくれないか?」(パティ)

「もう分解したぞ。あんな物平和な時代には要らないからな」(ジュンヤ)

「そうか。残念だな」(パティ)

 彼女の顔が先ほどより少し明るくなったようだ。

 ようやくパティが勇者に戻ったようだ。


 部屋の反対側ではハル、マイア、マリーが頭をくっつけて話し込んでいる。

「ハルは今夜師匠の寝所に忍び込むと言うのか」(マイア)

「ダークネスを分離したから断られることはないと思うの」(ハル)

「ハルが成功したら私も行くわ。マイアも行くでしょ」(マリー)

「わ、私はそのぉ・・恥ずかしいというか・・」(マイア)

「戦いの時は最初に飛び出す癖にこういうことは奥手ねえ」(マリー)

 マイアの顔は真っ赤になっており、何も返せなかった。


「おーい、ソルトレイクに帰るぞ!」(ジュンヤ)

 新都はまだ整備が終わっておらず、素泊まりならできるが、食事の用意や風呂などまだ用意できていなかった。また、子供達の学校も出来ておらず、数カ月後に大規模に引っ越すことになる。

 今回は広い部屋と秘密を守る必要があり、新都の城を利用したのである。


「うちはこのままガーランドへ行くさかいよろしゅうに」(キュービ)

 キュービはそう言ってガーランドの方へ飛んで行った。

「私達はここに残るよ。ソルトレイクじゃ狭いからね」(ダークネス)


 キュービ達精霊は、眷属に憑依していた時に四大精霊の属性魔法は覚えているので、空も飛べる。

 他の精霊八人は、ソルトレイクのジュンヤの家では子供が増えたこともあり入れないので、このまま新都の城で暮らすことにしたようだ。

 まあ、精霊は食事も睡眠もいらないからまだ生活環境が整っていないこの城でも良いみたいだ。



 ジュンヤ達ががソルトレイクに向け飛んでいる最中にチャールズさんから念話が入る。

『客が来たのですが、我々の知らない大陸からやって来たと言っているのですがどうしましょう?』

『冷やかしではないのですか?』(ジュンヤ)

『はい、話を聞くとどうも本物っぽいですね』(チャールズ)

『目的は何ですか?』(ジュンヤ)

『ホウライ国の使者と名乗っているのですが、ジュンヤさんにしか話せないと言っています』(チャールズ)


 取敢えず危険は無さそうな感じなので迎賓館で待たせるように指示した。

 ジュンヤは今までマッピングした地図では東西二万km未満だったので、地球と同じ大きさなら裏側にまだなんかありそうだなとはかんがえていたが・・・。(地球の円周は赤道上で約四万km)


 ジュンヤはソルトレイクに着くと早速客に会いに行く。

 聖獣達はジュンヤの家に戻したが、眷属は着いて来た。

 世界の王になってから迎賓館には謁見室を増築して、不意の客に対応できるようにした。


 謁見室は奥にひな壇があり、その中央にジュンヤが座って客を見下ろすように作られている。

 ジュンヤの両脇にはマイアとセシルが控え、左側に少し離れてマリーとエルザが立っている。

 そこにハルが客を連れて来た。


 客は侍だった。羽織袴を着て月代さかやきは剃ってないが長い髪はポニーテールの様にまとめられている。今まで腰に差していたであろう二本の刀はハルが抱かえて預かっているようだ。

 客はジュンヤの前5m位で跪いてお辞儀をした。


おもてを上げてください。御口上を」(マリー)

「拙者、サモン=ミヤウチと申します。地球の裏側にあるホウライ国を納めるゴロウザエモン=ヤマモトの使者として参りました」(サモン)

 顔を上げたサモンは三十台半ばくらいか?精悍な顔つきをしている。


「主ゴロウザエモンは西の世界の王であるジュンヤ殿と雌雄を決したいと望んでおります」(サモン)

「どういうことですか?!!」(ジュンヤ)

「主は東の世界の王です」(サモン)

 ジュンヤは呆れた。今の文明ではほぼ関係のない国家だ。


「おことわりですね。地球の裏側の国家を支配しても意味がないでしょう」(ジュンヤ)

「逃げるのですか?」(サモン)

「そりゃあ逃げるでしょう。意味も無く戦うほど俺は暇じゃない」(ジュンヤ)


 サモンは立ち上がってハルの持つ刀を取ろうとした。

「刀を!!」(サモン)

 まあ、すんなり取られるようなハルではない。サッと避けて肩透かしを喰らわす。

 いつの間にかマイアがサモンの腕を極めて捕えている。


「お前達はもう終わっているのだ。主が本気を出せば、お前達のようなガキはすぐに殺される」(サモン)

 サモンは高らかに笑った。

「グッ!!」(サモン)

 サモンはクタっと倒れた。


 セシルが確認するがすでに息を引き取っていた。


「クッソー!!。いい加減静かに暮らさせろよな」(ジュンヤ)

取敢えず、いったん終了です。

要望があれば再開も考えます。

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