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第七十六話 決戦前夜とノーラの願い

決戦を前にみんなに御褒美は何が良いか聞きます。

 パティと四大精霊は見つからなかった。ゲイルとの話し合いは彼女らを連れて行く隠れ蓑だったのではないか考えている。

 要はゲイルの作戦に見事に引っ掛かったのである。

 しかしパティと四大精霊を何に使おうというのか?一般兵ならともかく我々の脅威になるとは思えない。


 ソルトレイク 俺の家 五日後 執務室

 ジュンヤとチャールズさんが向かい合って座っていた。

「全く一週間とは微妙な期間を開けてくれましたな」(チャールズ)

 チャールズさんは俺達と行動を共にするため、今夕カゴシマに発つ。


「チャールズさんまで来なくても・・・」(ジュンヤ)

「気にしないでください。私も戦火の中を生き抜いてきた男です。家族を守る為にもお供しますよ」(チャールズ)

「では、タマサブロウ達と一緒にお願いします」(ジュンヤ)


 決戦にはタマサブロウ達ヤマト軍百名が、夜行列車で新兵器を持ってカゴシマに向かう。

「新兵器ですな」(チャールズ)

「使わずに済むと良いのですが」(ジュンヤ)


 パティたちの事は手がかりも無いし、日も無いので諦めている。

 多分ゲイルに利用されてると思うが、解らない。



 夕食後 執務室

 俺と眷属は今日まで魔法金属で作った武器を使いこなす訓練を中心に行ってきた。

 どんな相手が来ても勝てるんじゃないか、それ位のレベルには成ったと思う。

 そしてゲイルとの戦いが終われば平和になるはずだ。

 それを考えるとみんなに褒美をやらないとだめだろうと思った。

 そこで眷属達と個人面談して褒美に何が良いか聞いてみることにした。


 まずはハルだ。

 執務室に入って来た彼女に聞いてみる。

「ゲイルとの戦いが終わったら何か欲しいものはあるかな?」(ジュンヤ)

 先に質問の内容は知らせてあるので、考え込んだりはしない。

「はい、ご主人様の赤ちゃんが欲しいです。戦いが終わったらダークネスを実体化させていただいて、抱いて欲しいです」(ハル)


「一月に結婚するって言ってるだろ。なぜ慌てるんだ」(ジュンヤ)

「幼馴染が三人居るんですが、その子たちが皆妊娠したってドヤって来るんです。負けられないじゃないですか」(ハル)

 結構子供っぽい動機だった。


「まだ十六だろ、そんなに焦らなくても良いんじゃないか?」(ジュンヤ)

「私達の間では十五で結婚、十六で妊娠、十七で出産が常識です。タマサブロウさんも私より一つ上なんですけど、ご主人様がまだ結婚してないからって、相手を待たせてるみたいですよ」(ハル)

 話を聞くと元の世界に比べて、この世界では成長が早いらしい。ジュンヤの常識より三から五年は成長が早いみたいだ。

 後で聞いた話だが商人も貴族も二十歳前後で結婚するそうだ。ハルの村だけの話かな?


「それは知らなかった。解った早急に何とかする」(ジュンヤ)

 タマサブロウも言ってくれれば良いのに、その相手のためにも考えないとな。

 ハルは満足して戻ろうとしたので呼び止めた。


「ダークネスは何かあるかい?」(ジュンヤ)

「あ、ごめんなさい」(ハル)

 一瞬で髪の毛が黒くなる。


「ご主人、実体化したらハルやノーラ達の近くで暮らしたい。良いか?」(ダークネス)

「もちろんだ。場所は検討するよ」(ジュンヤ)

「ありがとう。実体化して人間と一緒に居たいなんて今まで考えられなかったよ」(ダークネス)



 ハルが食堂に戻ってしばらくしてマイアが入って来た。恐らく願いを共有したのだろう。

 マイアは開口一番こう言った。

「私は結婚はしたいけど、赤ちゃんはまだいいかなと思っています」(マイア)


「理由を聞いても良いかな?」(ジュンヤ)

「はい、私はマリーさんほど賢くないし、ハルほど器用でもありません。私が長男を産んでしまうと後でややこしくならないかなと思います」(マイア)


「それは心配しなくていいよ。俺の立場を子供に継がせる気はさらさらないからね。だって考えてごらん、俺の立場は君達やノーラ達が居るから保てるのであって、君達が居ないし、ノーラ達が協力しないかもしれない子供たちが維持できるとは思えない。今からそんな事考えなくて良いよ」(ジュンヤ)


「私は一生そばに置いて欲しいだけです。他に何も要りません」(マイア)

 考えるのが面倒臭くなったな。マイアらしい。


「じゃあ、ライトニング。ライトニングと話すのは初めてか」(ジュンヤ)

 精霊はキュービとダークネスが良くしゃべるからエレクトロンとライトニングは話したことが無い。

 マイアの体が一瞬光る。入れ替わったらしい。


「ボクが実体化したら他の精霊と一緒に居たいかな」(ライトニング)

 おお、ボクッ娘か、珍しいな。

「解った。検討する」(ジュンヤ)


 また光った。どうやら引っ込んだようだ。警戒されてるとは思いたくないが。



 マイアが戻ってマリーが入って来た。

「要望を言う前に質問があります。この戦いが終わったらジュンヤさんはどうするおつもりですか」(マリー)

「言った通り、王になるつもりはない。このまま産業革命を進めて一段落したら、まあ五年位かな、次の仕事を決めるつもりだ」(ジュンヤ)


「それでしたら私はギルドと真っ向勝負が出来る組織を立ち上げたい」(マリー)

「身内と戦うと言うのか」(ジュンヤ)


「そう言うことです。祖父、父、兄達と戦って勝ちたい。これが私の野望です」(マリー)

「それで俺はどうする」(ジュンヤ)


「ジュンヤさんにはバックに着いて欲しいんです」(マリー)

「解った。俺も利用できるようにしておいてくれ」(ジュンヤ)

「もちろんです」(マリー)


「ではエレクトロンの要望を聞こう」(ジュンヤ)

「皆と一緒で実体化したら私達の近くで住みたいそうです」(マリー)


「エレクトロンは?」(ジュンヤ)

「言っておいてくれと言われました」(マリー)

「仕方のない奴だな」(ジュンヤ)


 マリーが戻ってエルザが来た。

「私は婚約して欲しいかな。でもあとニ、三年は独身でいたいんです」(エルザ)

 エルザは複雑な顔をしている。

「それは構わないけど、どうしてすぐじゃないのかな」(ジュンヤ)


「ジュンヤさんは好きなんですよ。間違いなく。でもそれが一生を掛けて良いものか良く分からないんです。でも予約は取っておきたいじゃないですか」(エルザ)


「まだ成人もしてないんだし、それで良いんじゃないか。他に良い人が出来たら解約してあげる」(ジュンヤ)

「それって私はどうでも良いって聞こえるんでけど」(エルザ)

「違うよ。君の思いを優先するって事」(ジュンヤ)

 途端にエルザの顔が真っ赤になって喋れなくなった。


「ジュンヤはん、優しいこと言うて、このジゴロはほんまにモオ」(キュービ)

 いきなりキュービが現れた。

「うちは申し訳ないけど、ヘンリーのとこへ帰らして貰いまっさ。戻って来いってうるそうて」(キュービ)

 惚気が始まりそうだ。


「もう、お母さんったらお父さんと仲が良いのは分ったから」(エルザ)

 すかさず、エルザが牽制を入れる。

「アレー、エルザちゃんヤキモチ妬いてはるのお」(キュービ)

「なんでお父さん相手にヤキモチ妬かなくっちゃならないのよ」(エルザ)


 ここらで止めないと延々と一人漫才を聞かなきゃならない。

「はいはい、要望はそれで良いんだね」(ジュンヤ)


「あれ、ここからおもろなるちゅうのに」(キュービ)

「後がつかえているからね」(ジュンヤ)


「もう、お母さんがふざけるから怒られちゃったじゃない」(エルザ)

 エルザがブチブチ言いながら出て行って、セシルが入ってくる。


「私はここへきて初めて自由と言うものを知りました。修道院に居る時は信仰以外の道はありませんでしたから」(セシル)

「そうだな」(ジュンヤ)

 話しやすいように相槌を打つ。


「戦いが終わったら、色々なものを見てみたい。自分がどんな可能性を持ってるのか探してみたい」(セシル)

「それは素晴らしい事だぞ。でも何をするにも勉強が必要だ。協力しよう」(ジュンヤ)

 産業革命が進めばそれこそ数えきれないような職業が発生する。彼女が何を望むか分からないが応援しよう。


「マリーさんの思いを聞いたんですけど、ジュンヤさんと結婚しながら商売の道を探るようなことを言ってました。ですのでやりたいことが見つかって余裕が出来たら結婚してください」(セシル)

「分かった。俺は眷属をを愛している。と言うか俺が受け入れやすい人が眷属になっているようだ」(ジュンヤ)


 眷属はジュンヤの好みと合致した少女ばかりだ。ジュンヤの嗜好が眷属の選択に寄与していると言うことだろう。


 セシルが戻って、ノーラが入って来た。

「私にあんたの精をちょうだい」(ノーラ)

「へっ、どういうこと?」(ジュンヤ)

 とんでもないことを言って来たぞ。


「あんたとの子供を作るからあんたの精がいるの」(ノーラ)

「聖獣と俺の子供が出来るって事?」(ジュンヤ)


「だからそう言ってるじゃない。いい、ドラゴン族は子供が作れるの。だったら私が作れないはずないじゃない」(ノーラ)

「どうするのか聞いていいかな」(ジュンヤ)

 この世界ではすべての人種が混血が可能らしい。六肢族が相手でも子供が作れるらしい。

 精霊種だけが作れないと言うこともないのか?


「まず私の中に私の人格情報マトリクスを入れた種を作るの。それとあんたのマトリクスを会わせることで新しい精霊種がお腹の中に出来るわ。それに少しずつ魔力を与えて育てるの。一回に大きな魔力を与えるとエルザのお母さんみたいに自分が消える危険があるけど。ゆっくりニ、三年かけて育てれば無事出産できるらしいわ」(ノーラ)

「ちなみにどうやって精を受け取るの」(ジュンヤ)

 肝心なことを聞いておかないと。


「そんなもん、セックスすれば良いでしょ。そのための器官も作ったわ」(ノーラ)

「左様ですか・・・」(ジュンヤ)


「どうなの呉れるの?」(ノーラ)

「多分大丈夫じゃないかと思う。でも初めての事だから自信が無い」(ジュンヤ)

「まあ、成功するまでやればいい事じゃないの」(ノーラ)

「分かりました」(ジュンヤ)


「ああ、私がこの世界で一番にあんたに会ったんだから最初にするのよ」(ノーラ)

「はい・・・」(ジュンヤ)

 まさか、精霊種に子供をせがまれるなんて思ってもみなかったよ。


「私が上手くいったら他の子達もお願いね」(ノーラ

「え、でもアステルとボルクは男でしょ」(ジュンヤ)

「馬鹿ねえ、私達に性別なんて無いのよ。最初に貰ったマトリクスがそうだっただけで、いくらでも変えられるわ」(ノーラ)


 後でアステル、レイコ、ボルクにもおねだりされてしまった。

いよいよ次回からゲイルとの決戦です。

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