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第七十話 決戦 ジュンヤの眷属と大怪獣

怪獣との決戦前編です。

 各地に怪獣が出現して暴れ始めた。


 ワ国にボルクとセシル。

 鬼人国にジュンヤとマリー。

 ガーランドはノーラとマイア。

 ギズモニアにはレイコとエルザ。

 獣人国にはアステルとハル。


 ジュンヤの家の食堂で眷属の担当を決めると言った。

「怪獣達はどんな力を持っているか判らない。

 君達なら負けないと思うがくれぐれも無理をするな。

 危なくなったら逃げて良い。

 そして誰一人欠けることなくここに戻ってきて欲しい」(ジュンヤ)

「はい!!」×九人


 ジュンヤ達はソルトレイクを後にして各地に飛んだ。

 一番近いのはノーラとマイアが向かうガーランド、山を越えればすぐだ。


「あれだ!エンフィールドに向かってるぞ」(マイア)

「無節操にでかいわね」(ノーラ)

 山の麓からゆっくりとしたペースで歩く怪獣が居た。

 体長は四十m、四つ足でカバの体にサイの鎧を付けたような灰色の怪獣だ。


「動きが遅いわね。私に任せて」(ノーラ)

 ノーラは怪獣の前に立つとヘビーモスと言う名が浮かんだ。

「こいつ、ヘビーモスって名前らしいわ」(ノーラ)


「ストーンランサー!!」(ノーラ)

 怪獣の腹の下の地面から何十本の石の槍が出現して、垂直に伸びる。数多くの魔獣を葬って来た魔法だ。


 バキッ!バキッと音を立てて石の槍が折れる。

 怪獣の皮膚が硬くて刺さらないのだ。

「そんな?・・・・」(ノーラ)

 ノーラの必殺技は通じなかった。怪獣は何事も無かったように前進する。


「私の番だ。サンダーボルトォ!!」(マイア)

 上空に居たマイアは巨大な雷を怪獣に落とす。

 ゴアアアアアアアア!!

 怪獣は苦しそうな声を上げたが、背中が少し焦げただけだった。

「くそ!なんて防御力だ」(マイア)


 ヘビーモスは口を空けて舌のような物を出す。

「なに?」(ノーラ)

 次の瞬間、舌の先端に丸い穴が開くとそこから黒い弾丸のような物がノーラに向けて発射された。

 ドドド!!という音と共にノーラは土煙に包まれる。

「ノーラ!!」(マイア)


 ******


 その時、ジュンヤとマリーは鬼人国に向けてガーランド上空を飛んでいた。

「ジュンヤさん、聞きたいことがあるのですが」(マリー)

「なんだ」(ジュンヤ)

「私はジュンヤさんがワ国から来たものだと思っていたのですが?」(マリー)

「違うと・・・」(ジュンヤ)

「はい、ワ国に汽車は走っていないし、貨幣経済も浸透していないみたいです」(マリー)


「・・・」ジュンヤは答えない。

「ジュンヤさんの知識は一体どこのものなのでしょう?どこから何の為に来たのですか?」(マリー)

「それについてはこの世界の成り立ちと深い関りがあると思う。俺にもまだ解らないことがあるし、君達に説明するにはまだ早い。恐らくこの戦いが終われば、はっきりしてくると思うから少し待ってくれ」(ジュンヤ)

「分かりました」(マリー)

 マリーはこれ以上聞くべきではないと判断して黙った。


 ******


 獣人国を縦断するように走る黒いオオカミのような怪獣。

 体長は約三十m、黒い長い毛に覆われている。名前はヘンリル。

 アステルが空気の塊を何度もぶつけて、やっと進撃をやめて対峙してきた。

 ハルが魔法の刃を纏わせて何度も斬り付けるが、毛を数本切り取ったに過ぎない。


「精霊魔法ではこいつを傷つけることも出来ませんねえ」(アステル)

「パティを置いてきてよかった」(ハル)

 正教会の勇者パティは怪獣退治について行くと言い張ったが、ジュンヤが無理だと判断して置いて来た。

 精霊並みの強さを獲得したパティだが怪獣が相手では力不足が歴然としている。


 ヘンリルの攻撃は噛み付き、踏みつぶし、体当たりと、今の所飛び道具を使ってないので相手の攻撃を躱すのは容易だ。


 ヘンリルがアステルに向かって突進してきた。アステルが左に避けるとヘンリルは至近距離で反対方向に頭を振る。

「わあ!!」(アステル)

 いきなり目の前にヘンリルの尻尾が現れたのだ。避ける間もなく吹っ飛ばされるアステル。

 ヘンリルは前足を軸に横に回転して、尻尾でアステルを弾き飛ばしたのだ。

 数百m弾き飛ばされて地面に落ちようとしたアステルをハルが救い上げる。


「大丈夫ですか?」(ハル)

「いやあ、びっくりしました。なかなか器用ですね」(アステル)

 アステルにはケガはない様だ。

 ハルはアステルを離し、振り向いた。そこにはヘンリルの巨大な口があった。

 1mはあろうかと言う牙に貫かれるハル。

「ハルさあーん」!!(アステル)


 ******


 レイコとエルザはギズモニアのブロガリアとの国境も近い海で怪獣と戦っていた。

 その怪獣の名はクラーセン、頭の部分が二十m、足が三十m位、タコのような姿で頭に三角帽子のような貝殻状のものを被っている。


 エルザの魔力の刃で傷をつけたがすぐに再生してしまう。今はその攻撃を避けて海中に体を沈めている。

 レイコは聖獣に変身して海に潜る。レイコの水属性の加護は水中では50%の能力向上が見られる。

 レイコの聖獣形態は白く巨大なオットセイのような形状をしている。


 クラ―センは八本の足でレイコを捕えようとするがその速度と運動性が桁違いなため、捕えることが出来ない。


「お母さんどうしよう。海の中じゃあ手助けも出来ないわ」(エルザ)

「そやなあ、時々浮かんでくる頭の貝殻部分を破ることが出来たらええんやけど」(キュービ)

「貝殻の中ってどうなってんの?」(エルザ)

「あのタコの内臓と空気やな」(キュービ)

「なんで空気が入ってるの?」(エルザ)

「あの手の生き物は貝殻の中に空気を入れて、浮力を調節するんや。けど、今やりたいんは内臓の方や」(キュービ)


 その頃レイコは何とか攻撃を加えようと魔法の刃を作って胴体部分を狙って突進するが、足に阻まれて近付けないでいた。

「足の先端を斬ってもすぐに再生しちゃうし、空中に居るエルザちゃんとは連携は取れないし、どうしよう」(レイコ)

 その時、レイコは後ろから来た足に捕えられてしまった。

「キャーッ!!」(レイコ)

 レイコはクラ―センの足の中央にある口に向けて運ばれていく。


 ******


 ボルクとセシルはようやくワ国に着いた。

 ヤマタノミズチはキュウシュウを出てシモノセキに到達していた。

 その胴体は黒い巨大な亀のように甲羅からは四本の足と尻尾、それから細長い八本の蛇の首が甲羅の中から出入りしていた。大きさは胴体部分が三十m、首が各々二十mと言った所か。

 ヤマタノミズチの歩いた後は瘴気で草木は枯れてしまっていた。


「やっぱり火山で待っていてはくれませんでしたね」(セシル)

「うん、これだけ離れるとオイラの属性は関係ない」(ボルク)

 前回のアジダバーガ戦の時は火山の真上で戦ったので、ボルクの火属性の加護は倍くらいの能力向上をもたらした。


「まずは瘴気を消しましょう。ホーリーベル!!」(セシル)

 カーンコーンと言う音は、ヤマタノミズチの周りを覆っていた瘴気を消し去った。

 ホーリベル、本来は悪魔や吸血鬼にダメージを与える魔法だが、瘴気にも効果がある。


『セシル、セイクリッドシャワーじゃ。奴は邪悪の権化、聖水の雨には耐えられんはずじゃ』(ゴスペル)

 セシルに憑依する精霊ゴスペルが進言する。

「分かった。セイクリッドシャワー!!」(セシル)

 セシルが唱えるとヤマタノミズチの上から聖水の雨が降り注ぐ。


 ヤマタノミズチの体から湯気のような物が立ち上るが、ダメージを受けたような感じはない。

「どういうこと?」(セシル)

『大きすぎて効果が薄いみたいじゃ』(ゴスペル)

 その時、首のいくつかがこちらを向いて口を空けて瘴気のブレスを吐いた。

「キャーッ!!ゴスペルの役立たず」(セシル)

 じっと魔法の効果を確認していたセシルは慌てて回避した。


「セシル、油断しすぎだ!ファイアーカノン!!」(ボルク)

 ボルクは火の玉を撃ちながらブレスを回避する。

「ごめんなさあい!」(セシル)

 首の付け根に火の玉は当たるがダメージを与えた様子はない。


 ボルクは熱を凝縮して熱線ビームを撃つ。

 ヤマタノミズチの首を貫通するもすぐに再生される。

『火の鳥を使えばいくつかの首は斬り落とせるだろうが、それで終わりだ。それじゃあ駄目だ』(ボルク)

 ボルクは打開策を考えるがブレスが邪魔をして考えられない。


 セシルはボルクの攻撃があまり効いてないのを見て、直接攻撃を仕掛けることにした。

 薙刀に魔力を纏わせて突っ込んで行く。

「オリャーッ!!!」(セシル)

 首に斬り付けるも鱗で滑って浅くしか斬れない。しかもすぐに再生される。


「セシル!危ない」(ボルク)

 不意に後ろから別の首がブレスを発射、セシルを瘴気が包み込む。

「キャアアーッ」(セシル)


 ******


 ジュンヤとマリーは湖の上を飛んでいた。

「この下、水深四十mに居ます」(マリー)

「うちのメンバーはレイコ以外は水中は苦手だからなあ」(ジュンヤ)


 怪獣の名はレビアタン、沿岸部の村や港を破壊したが、二人が来てからは水中に隠れて出て来ない。

「各々の報告を聞く限り、アジダバーガに比べて大きく強力です。どういう事でしょうか」(マリー)

「そうだな、アジダバーガも復活するのに百数十人の人間を吸収させてるんだよな」(ジュンヤ)

「でも今回の怪獣達が人間を吸収した形跡はありません」(マリー)

「誰かが復活のエネルギーを与えたとしか思えんのだが」(ジュンヤ)

「ゲイルでしょうか?」(マリー)

「あいつにそんな芸当ができるなら、直接攻めてきそうだけどな」(ジュンヤ)


 ジュンヤはこの戦いを仕組んでいるものを感じている。思いつく事は一つしかないが。


「レビアタンが急速に浮上してきます」(マリー)

「いよいよか‥‥」(ジュンヤ)

 ジュンヤは怪獣の名前が元の世界の伝説の怪獣の名前に似てると思っていた。

『レビアタンはリヴァイアサン、クラ―センはクラーケン、ヘンリルはフェンリル、ヘビーモスはベヒモス、ヤマタノミズチはヤマタノオロチ、アジダバーガは知らないな、でもきっとあいつが名付けたに違いない』(ジュンヤ)

次回決戦後編です

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