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第七話 用水路造りと大きくなった子供達

圃場整備をします。突如、成長する子供達。何が起こった?

 苗代を作って、俺が拠点が出来たら作ろうとしていたコシヒカリの種もみを蒔く。

 米は他の穀物に比べて、圧倒的な収穫効率を誇るから最初から考えていた。

 村の近くを流れる小さな川を集めて村の脇を流れる用水路を作る縄張りを行う。

 夏野菜やトウモロコシ、大豆などの苗作りを始める。直接畑に種を蒔くより、圧倒的に育て易い。

 各代表に指示を与え、準備や作業をさせる。俺が居なくても作業を進められるように指導する。


 午前中オークを狩り、午後は村人を指導する。これを1週間繰り返してきた。

 オーク狩りが終わり、いよいよ用水路の工事を開始する。

「この用水路は随分低くないですか?」(村長)

 用水路の工事の代表は村長だ。


「大雨が降った時に村や田畑に被害が出ない様にだ」(ジュンヤ)

「水を汲み上げるのが大変なのでは?」(村長)

「ここに水を引いてあるのは水車を使って水を汲み上げるためだ」(ジュンヤ))

 俺は図面の用水路と並行に走る水路を指差して、水の流れと水車の仕事を説明した。


 水車の水路は用水路より高くしてあるので普段は水が流れない。ここに水を流すには用水路の上流部を堰き止める。すると水位が上がり水車の水路に水が流れ込む。

 まずは3本の小川を集めてここまで持ってくる作業だ。そのためには土地の高さや経路などを測定する必要がある。村長に今日の作業を指示して用水路を離れて村に向かう。


「ハルーッ!」(ジュンヤ)

 俺はハルを呼ぶ。少ししてからハルが駆けてくる。

「はい、何ですか?」(ハル)

 ハルは保育班の手伝いをしながら俺の指示を待っている。

「この水車の図面を工作班に持って行ってくれ。期間は一か月だ」(ジュンヤ)

「分かりました」(ハル)

 ハルは元気に駆けていく。言葉遣いも良くなって来たし、夜、勉強して算数を覚え始めた。読み書きも教えてやろう。


 水車の図面は基本アイさんが作って俺が書き出したものだ。大体の物の設計図はアイさんが作ってくれるから楽だ。

 紙は余裕が無く、結構値が張るので余裕があれば作りたい。

 精霊獣の二人もオークの討伐が終わったので村の周囲を警戒していてくれる。

 タマサブロウが来た。あのオークをさばいてくれた若い男だ。村長の三男で長男がタマの名を世襲していたので、今回次男タマジロウで三男がタマサブロウと名付けられた。

 そう言えばその名前の歌舞伎役者が居たような・・。


「ジュンヤ様、オークを2頭出してください」(タマサブロウ)

「分かったそっちに行って出そう」(ジュンヤ)

「ありがとうございます」(タマサブロウ)

 二人で解体場に向けて歩き出した。

 オークの死体は冷蔵庫代わりに俺の収納の中に入れてあるので必要分、小出ししてやるのだ。


「そう言えば、今日、土魔法が使えたんですよ」(タマサブロウ)

「ほう、それはすごいな。何が使えたんだ」(ジュンヤ)

「ストーンバレットです」(タマサブロウ)

「それじゃコボルトぐらいなら倒せるぞ」(ジュンヤ)

「えへへへ。でも俺だけじゃないんです。皆、土か風の初級魔法を一つ使えるようになったんです」(タマサブロウ)

「なにかあったのかなあ」(ジュンヤ)

「あ、魔石はどうしますか?」(タマサブロウ)

「今までのと一緒に預かっておいてくれ」(ジュンヤ)


 解体場にオークを出してやり、俺は戻ることにした。

 しかし、いきなり魔法が使えるようになるもんだろうか?契約してすぐなら契約が原因だろうけど。

『あんた、ちょっと来て』(ノーラ)

 頭に中で声がする。ノーラだよな。場所はここから500m位離れた村のはずれだ。

 これはアイさんと同じ念話と言う奴か。


 ノーラの居る場所に行くと2m位のピンクの毛を生やした細長い体の尾の短いトカゲの様な動物がいる。

「もしかしてノーラか?」(ジュンヤ)

「えへへへ、分かったあ!?」(ノーラ)

 だってピンクの生き物なんてノーラ以外考えられないし、

「実は僕もなんですよ」(アステル)

 アステルも変わっていた。青い体、大きな翼、長い首、長い尾の3m位の動物だ。

 二人とも地球に似たような動物がいなかったので、例えられないが、言わばドラゴンだろうか?


「私はストーンドラゴンに自己進化したわ」(ノーラ)

「僕はスカイドラゴンです」(アステル)

「どういうこと?」(ジュンヤ)

「あんたとの絆が強くなって、より大きな魔力が使えるようになったのよ」(ノーラ)

「じゃあ、俺にも変化があるのか?」(ジュンヤ)

「念話が出来るし、中級魔法を使えるわ。金属も使えるようになったはずよ」(ノーラ)

「風魔法は気圧変化と風速が増えます。ー50~100℃くらいの温度変化が使えます」(アステル)

 一度すべての魔法を見直すか。


「村人も魔法を使えるようになったらしい。なぜか解るか?」(ジュンヤ)

「あんたのスペックが上がった影響じゃない?」(ノーラ)

『アイさん、俺のスペックが上がってるの?』(ジュンヤ)

『恐らく全体的に倍くらい、転移して来た時からだと4倍くらいになってますね』(アイ)

 いつの間にかすごく強くなってるよ。そんなに強くなってもやることが無いよ。


「お前達、いつから変わったんだ?」(ジュンヤ)

「今よ、むずむずするから変身したら進化してたの」(ノーラ)

「僕もです」(アステル)

「分かった。村人が驚くから人間に変身してくれ」(ジュンヤ)

 二人して人間に変身する。

「あれ、大きくなった?」(ジュンヤ)

「「アーッ」」

 二人とも相手を指差して開いた口がふさがらない様だ。


 明らかに成長している。今日の朝までは10歳くらいだったのに今は15歳くらいかな、に変化している。

 ノーラが膨らんだ乳房に感動している。

「どう、色っぽい?ねえねえ!?」(ノーラ)

「はいはい色っぽいよ」(ジュンヤ)

「感情がこもってない」(ノーラ)

 そりゃ、君の性格に問題があると思うよ。

 アステルは170cmを軽く超えている。

「見える世界が違いますよ」(アステル)

 二人とも大騒ぎだ。


 村のプレハブまで帰って来た。

『ハル、家まで来てくれ』(ジュンヤ)

 念話が通じそうだったので試してみる。

「どっ、どこに居るんですか?」(ハル)

 かなり焦っているようだ。まあ初めてだから仕方ない。

『これは念話でお前にしか聞こえてない。空いていたらすぐにプレハブに来てくれ。返事はしゃべらずに頭の中で俺に話せ』(ジュンヤ)

『はい、・・行きます』(ハル)

 少し歯切れが悪い。どうかしたのかな。


 ハルがモジモジしながらやって来た。

「どうし・・・ええっ!!」(ジュンヤ)

 ハルも大きくなっていた。着ていた服がパッツンパッツンになって体の線が強調される。

 身長が伸び、胸も控えめながら膨らんだし、くびれが出来て、お尻も丸くなった。

「おまえどうしたの?」(ジュンヤ)

「さっき急に体が大きくなって・・恥ずかしいです」(ハル)


 精霊獣の二人に理由が分からないか聞いてみる。

「恐らくですが我々の成長に引っ張られて、本来の成長を取り戻したのではないかと思います」(アステル)

 アステルが言うには、ハルは俺に名付けられているので他の村人より絆が深い。それで精霊獣の成長に刺激され、魔力で栄養失調で成長できなかった分を成長したのではないかということだ。

 恐らくハルには大人の容姿に願望があったのではないかと考えられた。


 全く魔法とか魔力は訳が分からない。オークを討伐して、一緒に生活して絆が深まり、魔法が成長したのはまだ許せるが進化したり、成長したりするか全く。

 モグラやムササビがドラゴンになって人間になれば15歳くらいまで成長してるわ、10歳くらいにしか見えなかったチビガリ少女が15歳の年相応の少女になるわで俺の頭はパニックである。


 いずれにせよ精霊獣の二人は服も体の一部でちゃんと成長しているので良いが、ハルはこのままにしておけない。

 村には余分な服は無いそうなので、取敢えずシーツが余分にあるのでを被せておく。

 俺はアイさんに頼んでシーツに服の型を書き、ブラウス・ベスト・スカート・下着を作らせる。

 裁縫は出来るらしいのでやらせておく。猫人は尻尾があるので面倒臭い。


 昼食時の時間だ。オーク肉の入ったスープが配られる。味付けは塩だけだが、今まではオーク肉も塩も無かった。

 主食は各家庭にある小麦・大豆・トウモロコシなどの穀類だ。うちは米だけどね。

 プレハブの中で初めての服作りと格闘しているハルにもおにぎりとスープをノーラに持って行ってもらう。

 今ハルはあられもない格好をしていると思うから俺は行けない。


 昼から用水路の掘削を考えていたがハタと思い付いた。ハルやノーラと一緒に寝られないぞ。

 成長した二人と寝ると二人の将来に関わる。ノーラはまだしもハルの純潔が疑われる。

 用水路の掘削はノーラとアステルに任せて、俺は急遽、家を作ることにした。


 ストーンウォールで壁と天井を作り、上にプレハブを置けるようにした。

 風呂やトイレ・台所・食堂も作ったぞ。ただ建具も家具もすべて石だ。

 そうだ窓がない。ガラスが作れるか?

 壁の一部を切り取り、ガラスを念じながら作る。最初は不純物が多くて黒っぽかったが徐々に透明になった。

 黒いガラスは寝室や風呂に使おう。

 最後に上に上がる階段を作った。


 夕食の時間が近付いて来たので今日はオークトンカツを作る。

 オーク肉を厚手に切って、叩いて柔らかくする。小麦粉、卵、パン粉を付けて低温でじっくり揚げる。

 卵だが周りの森に鶏に似た鳥が大量に居る。今は餌が確保できないので10羽だが、来年になったら大量に飼育したい。

 コボルトがこちらに来ないのは、この鳥を食ってる可能性が高い。

 キャベツの千切りを添えて出来上がりだ。

 ご飯とトンカツを食卓に並べて、今度は風呂だ。風呂に水を張り、クネクネ曲がった銅パイプを作り、100℃の熱風を送る。根気よくやってるとちょうどよい湯加減だ。


 ノーラとアステルが帰って来たのでノーラにハルを呼びに言って貰う。

 まだブラウスしか出来ていなかったので腰にシーツを巻いている。

 縫製を見るとやや乱れ気味ではあるが実質問題ない。


 食卓は6人掛けだ。

 ハルが食卓の向こう側に回ろうとした時にシーツのスカートを踏んづけてビタンと倒れた。

 その拍子にシーツのスカートが脱げて…。良かったパンツは間に合ったのか。

 顔を真っ赤にしてシーツを巻き直すハル。

 気まずい俺、アステルは平気そうだ。


 食事を始めるとハルは何も無かったように食べることに夢中になる。

 改めて大きくなったハルの顔を見る。可愛くそして健康的に成長したハル。

 なぜだろう、俺はホッとしている。


 食事後ノーラとハルに風呂に入るように言うと、ノーラは服も体の一部なので裸になれないそうだ。

 結局ノーラを風呂に入れるにはドラゴンになるしかないので、今の風呂では狭すぎることが分かった。

 俺はハルが風呂は初めてというので、風呂の入り方を説明して入らせた。

 ハルが風呂に入っている間にプレハブから俺とアステルの布団を一階のベットに移して、プレハブを一旦収納に入れて二階に運んで設置する。

 一階に俺とアステル、二階にノーラとハルが寝るようにした。


 ハルが風呂から上がったようだ。

「気持ち良かったです。ポカポカします」(ハル)

 上気した顔で報告して来た。

 恐らくこの村で最初に風呂に入った人間だ。威張ってやれと言ってやった。


「あのー、ご主人様に可愛がっていただける体になったと思うのでいかがですか」(ハル)

 流石に可愛く成長した君に言われるとドギマギする。

「今のところ君に手を出すつもりはない。約束したように恋愛は自由だ。俺に拘るな」(ジュンヤ)

「私はご主人様のそばに居れれば良いです。できたら可愛がってもらえると嬉しいです」(ハル)

 決心が鈍るじゃないか。しかし俺も取敢えず目標が決まらない事には落ち着くつもりはない。


「ありがとう。でもここで所帯を持つ気はない。子供でも出来たら動けなくなってしまうだろ」(ジュンヤ)

「じゃあ、いつまでも待ってます」(ハル)

 少し、寂しそうに言うハル。しかし俺はこの村程度で落ち着くつもりはない。


 この子が味わってきた苦しみは、日本人からしたらとんでもないことだが、この世界では当たり前のことだ。で、これから少しは良い目を見せてやろうと思う。

 彼女を抱く抱かないはその後の事だ。


水車の製作と初めて大きな町ジニアに行きます。

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