第六十七話 南の島と新しい魔法
遅くなってすみません。頑張りますので最後まで読んで下さい。
悪の世界の王が最後の決戦に臨むべく行動を開始しました。
正教会で聖魔力の供給を受けたジュンヤ達だが、南の島では不吉な事件が起こっていた。
暗黒大陸から南の島に向かう船団が居た。
船の一室で話し合う男が二人いた。一人はゲイルと言う名の中年男、もう一人は蝙蝠のような羽を持った魔翅族の老人だ。
「我々の計画も天翔族の知るところになってしまった。まさか暗黒大陸を追い出されるとは・・・」(老人)
「安心しろ。すでにミッテランが拠点を作っている」(ゲイル)
「しかし、ジュンヤと言う男に負け続けている。組織もガーランドで失敗し、アーモデウスを失い、エルフ国・ワ国でも敗れ、ネクロマンサーの組織も失った。エルフ国での戦いを見ていたが魔翅族ではジュンヤには勝てんぞ」(老人)
「アーモデウスの遺産は持っているし、エルフ国・ワ国は引っ掻き回したから奴の懐にもかなり響いているはずだ。戦いって言うのは最後に勝てばいいのだ。神託では拠点に行けばジュンヤを倒す力が手に入るのだ」(ゲイル)
「どんな力なのだ」(老人)
「この戦いは神と神の戦いの代理戦争だ。俺かジュンヤが天下布武の戦いをして、生き残った方がこの天下を得るのだ。つまりジュンヤはもちろん、天翔族やドラゴン族にも勝てる力と言うことになる」(ゲイル)
「我々にはもうあなたに掛けるしか道が無い。お願いしますぞ」(老人)
「任せろ。今度こそジュンヤの息の根を止めてやる」(ゲイル)
老人は暗黒大陸に置いて来た子供と老人を思った。恐らく他の部族か天翔族に殺されるだろう。掟を破って外に出た我一族は許されない。
しかし未曽有の災害で孤立していた部族を救ってくれたゲイルに恩を返さなければならない。
もしかすれば我部族が世界を制する日が来るかもしれないが・・・・。
ジュンヤと言う化け物じみた敵が現れなければ現実味のあった言葉”天下布武”。今となっては神が与える最後の力に縋るしかない。
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クレアンスの正教会を後にしたジュンヤ達は、手に入れた力を確認するため魔人国との国境になっている山脈の中に来ていた。
困ったことが二つあった。
一つは精霊の福音が自己紹介を後回しにしたので拗ねて表に出て来ない事。
もう一つは正教会の勇者パティが自分も修行させろと着いて来たことだ。
まあ、修行や魔法の確認には大きな影響はないので夕方までいろいろ試した。
その日はソルトレイクの俺の家に戻って休憩をすることにした。
夕食を食べ、風呂から上がったタイミングで、執務室に居るジュンヤに天翔族から連絡用の魔道具に連絡が入った。
「ジュンヤ、聞えるか?俺だ。カールだ」(カール)
「ああ、聞えているぞ。何があった」(ジュンヤ)
「お前達を襲った奴らが所属していた魔翅族の部族が消えた。恐らくお前達の方に向かったと思う」(カール)
「どういうことだ?」(ジュンヤ)
カールが残されていた老人や子供から話を聞くと、ゲイルと言う人間の男と船で脱出したと言っていた。
脱出した人数は約六百人になる。
そのゲイルはジュンヤを敵視しているらしい。その訳は解らない。
「そうか分かった。こちらも気を付けるよ。又何かわかったら教えてくれ」(ジュンヤ)
通信を切った。
ジュンヤが考え付いたのはゲイルが悪の世界の王なのかと言うことだがそれも確証がない。
いずれにしてもゲイルは後がない。アーモデウスもネクロマンサーの組織を失っている。
魔翅族六百人と言えど、俺達と連発銃で対処が可能だ。
まだ何かを隠しているのか?
ジュンヤは考えを頭から消した。考えても今の情報では結論が出ないからだ。
奴らの船が此方に着くまで一か月は掛かる、慌てなくても良い。
ドタドタと騒がしい音がする。パティだ
彼女は着替えを持ってこなかったのかバスタオルを素っ裸の上に巻いているだけだ。
ジュンヤの目の前に立って大見えを切った。
「決戦には私も連れて行け。勇者としての責務だ」(パティ)
「まず、服を着ろ。目のやり場に困るし、風邪を引くぞ」(ジュンヤ)
ハルが執務室に入ってパティの手を引く。
「パティさん何考えてるんですか。着替えますよ。こちらに来てください」(ハル)
パティはハルに手を引っ張られながらも俺を指差して叫ぶ。
「また来るし、絶対に連れて行けよ!」
両手が離れたバスタオルは重力に負けて落ちた。
「ギャーッ!!」(パティ)
開け放たれたドアからオスカーの目を手で塞ぐシルビィさんの姿が見えた。
ジュンヤは”儲け”と思ったが内緒にしておこう。
ジュンヤが考えるにパティの戦闘スタイルでは魔翅族相手には圧倒的不利になる。接近戦で最大の能力を発揮するパティは空を飛び、離れて熱線攻撃をしてくる相手にどれだけ戦えるのか疑問だ。
今後の訓練で戦えるようになるのか見てからだなと思った。
次の日、また山中で訓練しているとマリーに連絡が入る。
「ミッテランが拠点を築いたあの南の島にソウルイーターが出ました」(マリー)
全員の訓練風景を眺めていたジュンヤに連絡するマリー。
「ソウルイーターって人間の魂を食べるってあれ?」(ジュンヤ)
「そのようです。昨日の朝に二人、今日の朝には二十人以上犠牲者が出たようです。ギルドに救援要請がありました」(マリー)
各地のギルドにはマリーの息のかかった要員が配置されており、何かあった時にはすぐに連絡が来るようになっている。
「俺達が行ってもギルドから文句は出ないよな?」(ジュンヤ)
「はい、それは問題無いです。ギルドでは島に行くまでに一か月以上かかります」(マリー)
ジュンヤ達以外の長距離の移動は陸地は馬、海は風帆船だ。
「良し、皆を集めてくれ」(ジュンヤ)
ジュンヤの周りに眷属と聖獣が集まった。
南の島にソウルイーターが出現して犠牲者が出ていることを連絡した。
「アステル、君が一番早く着ける。先に状況を調べてくれ」(ジュンヤ)
アステルには食事も着替えも必要ないのですぐに飛んだ。地理はアイさんが居るので問題ない。
アステルは超音速飛行が出来るようになり、二時間ぐらいで島に着けるだろう。
「後、交渉にマリー、戦闘があるかも知れないのでマイアが行ってくれ。応援が必要ならすぐに言ってくれ」(ジュンヤ)
「私も行きたい。連れてってくれ」(パティ)
パティが手を上げてピョンピョン跳ねる。
「駄目だ!パティを乗せて行くと時間が掛かる!」
今回は現場まで数千kmを飛んで行かねばならず、少しでも速度を落とさずに行かないと間に合わないかもしれない。
ましてやそれだけ離れていると全員で行くのは本拠地であるここが手薄になるし、他の国で事件が起こった時に対処できない。だから最低限の人数で行かないと駄目だ。
パティは正教会の性格上正教会を離れて仕事をすることが少なく、要人の護衛がほとんどで敵は魔獣や盗賊だ。だからジュンヤの敵のような本当の人類の敵と戦いたい。セシルと同じ感情だ。
まあ今回の敵は魔獣の類だろうとジュンヤは思っていたのでパティを宥めた。
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アステル・マリー・マイアの三人は日のあるうちに南の島のギルドに着いたが、夜中に魂を奪われること、海岸近くに被害が集中していることは分ったが、敵の正体が分からずに夜を待つことになった。
マリーが海岸沿いを探索し続けていると午前二時頃強い魔力の反応を感知した。
三人がその場所に急行するが何かが沖の方に逃げていく反応だけがあった。
此方を先に発見して逃げたらしい。
そのうちに反応も見失ってしまった。
「レイコが居れば追い掛けられたのに」(アステル)
「ハルなら相手に気付かれずに接近出来たわね」(マリー)
「居ないものを言っても仕方ない。もう少し見張っていよう」(マイア)
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ジュンヤ達は相変わらずソルトレイクの近くの山中で訓練をしていた。
少し高い所から全体を眺めていたジュンヤの所にエルザがやって来た。
「どうした?」
「お母さんが属性が解ったから報告したいって言ってるんです」(エルザ)
「それで何の属性でしたか?」(ジュンヤ)
「いやーそれがな、なんて言ったらええのか・・・」(キュービ)
いきなり言葉遣いが変わる。エルザからキュービに代わったのだ。
親子だからだろうか?他の精霊と違って同時にエルザとキュービの意識が存在できる。
「説明しにくいんですか?」(ジュンヤ)
「そやなあ、しいてゆうなら魔力の属性かなあ」(キュービ)
「魔力ですか?」(ジュンヤ)
「魔力を流れとしてコントロールするちゅうんかなあ。あんたらも魔力障壁ゆうて魔力で盾なんか作るやろ」(キュービ)
「はい」(ジュンヤ)
「それを大規模に繊細に出来んねん。例えば剣や槍なんかも出来るんや」(キュービ)
キュービが腕を振ると近くにあった一m位の直径の木が五つに分かれて落ちる。その真ん中の部分が貫かれて宙に固定される。
「まあ、こんなもんや。練習したらもっといろいろできると思うわ」(キュービ)
「すごいですね。応用範囲も広そうだ」(ジュンヤ)
「せやろ、ロープにもなるんやで」(キュービ)
キュービの説明をちょっと離れた所で見ている者が居た。セシルである。
セシルの精霊ゴスペルは正教会に居る時に現れたのだが、先に失われた書の解説を司祭から聞いていたので、無視されたと拗ねてその後出て来ないのである。
「ゴスペル、出て来てよ。このままだと最後の戦いに間に合わないよ」(セシル)
『何、最後だと』(ゴスペル)
「ゴスペル出て来てくれたのね。そうなんだよ。次が人間の敵の世界の王と戦う最後の戦いなんだよ」(セシル)
『それはまずい。これでは我が活躍できぬと言うことか?』(ゴスペル)
「そうなるねえ」(セシル)
『よし!我の魔法を教えるぞ。まずはヒールじゃ。これは傷を治すのはもちろん病気・体力疲労や精神疲労を治す効果がある。傷の治療効果はトリートには劣る』(ゴスペル)
『次はターンアンデット、これを唱えるとアンデット系の魔獣を浄化できる』(ゴスペル)
「アンデットってスケルトンにも効くのかしら」(セシル)
『もちろんじゃ』(ゴスペル)
「ワ国に居る時に出てきて欲しかったわ」(セシル)
『我は激しく消耗して居ったから、なかなか顕現できんじゃったのじゃ』(ゴスペル)
『次がホーリーベル、悪魔や吸血鬼をやっつける聖なるベルじゃ』
「悪魔や吸血鬼と会ったことないけど」(セシル)
『これから会うかもしれんじゃろうが』(ゴスペル)
『精霊魔法セイクリッドカーテン、邪悪なものを遮る光の膜じゃ』(ゴスペル)
「普通の人は通れるのね」(セシル)
『そうじゃ』(ゴスペル)
『次も精霊魔法セイクリッドシャワー、邪悪な者の存在を消す光の雨じゃ』(ゴスペル)
「フーン精霊には効きそうもないわね」(セシル)
『うるさい!それで四大精霊にボコボコにされたのじゃ』
次回、最後の戦いの幕が上がる予定です。




