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第六十六話 正教会と福音の精霊

聖魔力の回収に正教会に行きます。

 獣人国の鉄道開通式に出席したジュンヤはマイアの両親に挨拶をしてガーランドに向かった。

 ガーランドでは帝城に一泊して,旅行で護衛に付いていたボルクとレイコと合流して教会に向かった。


 ガーランドの教会では残念ながら一時期聖魔力の蓄積が断絶して、十数年前に復活したので総量が少なく、聖魔力の供給を受けても全員に変化は無かった。


 クレアンスの正教会の教皇には誤解されているので、ジュンヤはどう行くべきか悩んでいた。

 取敢えず正教会の勇者パティとは契約で繋がっているので念話で相談してみる。


『聖書の通り整列して礼拝堂から入ってくれるか。私と仲間で聖魔力を貯めてる聖女の所まで案内するよ』(パティ)

 取敢えずパティに教会の案内を頼んで、聖魔力を貰いに行くことにした。

 エンフィールドからクレアンスの教会まで空を飛んで行く。


 礼拝所の前に降りると駆け寄ってくる少女がいた。パティだ

「よく来たな」(パティ)

「ほぼ一年ぶりか?」(ジュンヤ)

「ああ、相変わらず外出の許可が下りないんだ」(パティ)

「そうか大変だな。じゃあ、早速やるか?」(ジュンヤ)

 聖獣達が変身する。そして聖書に書かれる隊列を組む。


 ジュンヤの前がノーラ、後がアステル、右がレイコ、左がボルク、その後ろに五人の眷属が並ぶ。


 パティが聖書の一節を唱える。

「晴れやかなるかな、晴れやかなるかな、

 前に桃色の獣を従えて、後に青き竜を従えて、

 右に白い水の獣を従えて、左に赤き火の鳥を従えて

 世界の王が降臨す。我らの王が降臨す。

 王は我らを従えて、悪を滅ぼし、魔を滅し、地上に楽土を築くべし」


「おお、間違いなく世界の王だ。よし礼拝堂を通り抜けるぞ」(パティ)

 パティが先導して礼拝堂の通路を通って行く


「世界の王が通るぞ!道を空けろ」(パティ)

 人が居る度にパティが繰り返すので、人々が脇によって跪き、ジュンヤにお祈りする。

 ジュンヤはすごく恥ずかしそうにしているが、背に腹は代えられぬという奴だろう。我慢している。


 教会内の通路を暫く歩くと巨大な影が見えた。ジロンだ。前にジュンヤを襲って来た奴だ。

 ジロンはジュンヤの姿を見つけて怒り狂う。

「世界の王が通るぞ!道を空けろ」(パティ)


 ジロンは聖獣達の姿と配置を見たのか、急に縮こまって脇に避けて跪いた。

 彼も敬虔な信者だったようだ。


 奥から一人の老人が走って来た。

「ジロン!どうした!奴を排除しろ!!」(教皇)

 ジロンは顔を上げると穏やかな顔をしていた。

「猊下、彼はまさしく聖書に出てくる世界の王です。なんで私が逆らえましょうか」(ジロン)

 そう言うとジロンはまたジュンヤに向かって祈りを捧げる。


「猊下、世界の王が通ります。道を空けてください」(パティ)

 ジュンヤ達の後ろには信者たちが数十人着いて来ていた。

「ぐぬぬぬ」(教皇)

 教皇はジロンの横に行って道を空けたがすごく悔しそうな顔をしていた。

 流石に一般信者の前でうかつな真似は出来ないと判断したようだ。


 後は邪魔をする者は無く、聖女達のいる部屋に入った。

 そこには十二人の聖女・元聖女が跪いていた。

 横に立つ司祭が言った。

「世界の王よ。正教会が始まって以来貯めて来た聖魔力をお受け取り下さい」(司祭)


 ジュンヤ達は横一列に並んだ聖女達の前に整列した。

 聖女達がそのままの姿勢で祈り始める。

 今までの規模をはるかに上回る聖魔力がジュンヤ達を中心に渦巻き始めた。

 司祭が””おお”と言って自身も跪く。俺達に着いて来た信者たちも遠巻きに跪いて祈り始める


 ジュンヤ達に聖魔力が吸収されていく。

 ジュンヤは聖魔力の吸収に慣れて来ていたので、辺りを見回す余力があった。

 司祭の横に居たパティには聖魔力が注がれていない。残念ながらパティは眷属では無かった。

 信者たちの中にも聖魔力が注がれている者はいない。

 紙に選ばれた眷属は、これで全員なんだろうとジュンヤは思った。

 聖魔力がジュンヤの全身に行き渡る感覚があり、相当人間離れしてきたなと思った。


 一分ぐらいで聖魔力の譲渡は終了した。

「ありがとうございました。流石正教会ですね。聖魔力の量が段違いです」(ジュンヤ)

「聖魔力は信者の祈りが魔力として凝縮したものです。信者の多い正教会に聖魔力が多いのは当然なんです。ですからこの聖魔力は人々に奉仕する者にしか扱えません」(司祭)


「ちょっと疑問なんですけど。世界の王は一人じゃないですよね。俺が聖魔力を独り占めしちゃっていいのですか?」(ジュンヤ)

「ああ、失われた書の内容をお聞きになられたのですね。それについては信者が居るここでは話せません。こちらにどうぞ」


 奥の部屋に招かれたジュンヤであるが、背後で大きな力が発生するのを感じる。

「なんだ。どうした?」(ジュンヤ)

「ご主人様!!セシルが!!?」(ハル)

 振り返ったジュンヤにハルが指さす。

 先ほど並んだ位置のまま、セシルの体が数十cm宙に浮き、淡い光に包まれている。

 セシルは意識が無いらしく、顔を下に向け、手をだらんと下に伸ばしている。


 セシルが急に顔を上げ、ジュンヤの方を向いた。

「我は福音の精霊、ゴスペル。宿主セシルの願いにより世界の王ジュンヤに手を貸すものなり」(ゴスペル)

 セシルの精霊が聖魔力の吸収により目を覚ましたらしい。


 ジュンヤは『福音って何だっけ。確か、良い知らせとかキリストの言葉だったか。じゃあ,こっちでは何になるんだ?』と考えたが結局具体的な答えは得られなかった。

 などと考えているとやけに騒がしい。

 ジュンヤが周りを見ると遠巻きに眺めていた信者と修道僧らの数が半端なく増え、セシルを見て拝んでいる。更に良く見ると教皇まで必死になって拝んでる。

 やばいなあ、これは間違いなく大きな噂になりそうだ。ジュンヤはあまり目立ちたくないので焦った。


 ジュンヤは宙に浮かんだセシル、いやゴスペルの手を引いて司祭の入った部屋に入った。

 他の眷属や聖獣達も人化して後に付いてくる。ドアが閉まってようやく落ち着いた。

「ようやくセシルの精霊も具現化したわね。おめでとう」(ノーラ)

 そう言ったノーラの顔を見たジュンヤは驚いた。ノーラが美人になってる。

 今までも美しかったが、美少女と言う感じで幼さが残っていたが、大人の顔立ちになっていた。

 他の聖獣達も大人の顔になっていた。


「お前達、顔が大人に成っているぞ」(ジュンヤ)

「当たり前でしょ。あれだけ聖魔力貰ったら成長もするでしょ。それよりセシルよ」(ノーラ)

「そういやゴスペルって何の属性だ?」(ジュンヤ)

「我は聖属性だ。僧侶系の魔法が使える。」(ゴスペル)


「まあゴスペルは後で確認するとして、司祭さんの話を聞かせて貰いましょう」(ジュンヤ)

 司祭は20人くらい座れる長机に座るように指示して話し始めた。

「ここ正教会では失われた書の解読も仕事の一つとなっています」(司祭)

 司祭は本を広げた。


「失われた書は筆記しちゃいけないんじゃなかったですか?」(ジュンヤ)

「はい、この書の解読部門以外での筆記は禁止しています。それは失われた書が古代語であるので間違った訳が後世に残らないように配慮したものです。現在80%ほど解読できていますので、完全なものが出来れば正式に本にする予定ですが、元々神についての預言書の性質が強いので公開出来るかどうか」(司祭)


「それで世界の王の記述はどうなっているのですか?」(ジュンヤ)

「そうでした。この中で世界の王は人間に味方する者と敵対する者が現れ、この世界の存亡をかけて戦うことになっています。天下布武、その戦いに勝利したものが天下に武を持って布く。つまり世界を制することになるようです」(司祭)


「敵対する者、それは人間の敵と言うことですか?」(ジュンヤ)

「はい、そうなります。人間の味方の世界の王に勝って貰うために聖魔力を蓄えるように神は仰られました」(司祭)


「俺は最後の戦いが近付いていると感じてここに来ました。それはあなた方も感じているのでしょうか?」(ジュンヤ)

「その通りです。直接啓示があったわけでは無いのですが、何でしょうか、ひたひたと悪の気配が世界を覆う気がしています」(司祭)


「あのー、世界の王って悪や魔をやっつけるんじゃないんですか?」(マイア)

 マイアは不安に満ちた顔で言った。

「ああ、それは人々に不安を持たせないために聖書では人間側の世界の王しか書いてありません」(司祭)


 ハルも不安なようだ。

「どちらが勝つとは書いてないのですか」(ハル)

「失われた書にも戦いの結果はありません。どうかこの世界を守ってください」(司祭)


「その敵対する者の正体とかは解るのですか?」(マリー)

「それに関してははっきりとした記述は無いのですが、人間ではないかと思います。天下布武とは人間社会を支配する意味だと思われるので魔獣の類では不可能でしょう」(司祭)

 ジュンヤはそうするとアジダバーガのような存在ではなさそうだなと考えたが、今考えても無意味だなとも思った。


 ******


 少し時間は戻る。ここはネクロマンサーの組織のミッテランが拠点を作っていた島。

 カゴシマより数千km南に位置するこの島には、人口約二万人、産業は漁業と農業だけの静かな島だ。


 南国の日光に照らされた浜辺に横たわる二人の男女それを取り囲む数十人の群衆。

「ソフィア!ソフィア!目を覚まして!母さんが解らないのかい」(娘の母親)

「バルナ!!起きないか!!どういうことだ」(青年の兄)

 この青年と娘は婚約者同士で昨日の夜、二人で愛を語っていたが、今朝発見された時にはかすかに息はあったが現在はもう死んでいる。

 二人とも傷一つ無く、全くの無表情で居た。


「ソウルイーターだ!ソウルイーターが出た!!」

 誰かが叫ぶと群衆は蜘蛛の子を散らすように去って行った。

 残ったのは死んだ二人の家族だけだった。


 ソウルイーター、それはこの世界の人々に恐れられる正体不明の怪物。

 突然現れて人の魂を食べる。食べられた者は意識を失くし、しばらくすると死んでしまうという。


 これはまだ悲劇の幕開けに過ぎなかった。

次回は敵の状況や眷属の新しい姿をやる予定です。

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