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第六十五話 開通式とマイアの家族とガーランド訪問

鉄道の開通式のついでにマイアの家に結婚報告、聖魔力を貰いにガーランドへ。

 修学旅行をアジダバーガに邪魔されたが続きを楽しむ子供達。ジュンヤは自身に襲い来るはずの世界の王の試練に備えて兵器の開発を行うのだった。


 ジュンヤとハルは獣王国の鉄道開通式に出席するため獣王国王都に行った。

 他の眷属は先に現地で開通式の準備の手伝いをしている。

 ボルクとレイコは修学旅行の護衛をしているので明日の朝にソルトレイクに帰る予定だ。


 ジュンヤとハルは王城に入って、王の執務室でリチャード獣王と面談する。

「東大陸の三国を属国化したんだって?」(リチャード)

 いきなりリチャードが話し掛けて来た。ジュンヤは挨拶位しろよと思いつつ言った。

「してないよ。ちょっと開国させて指導しているだけだ」(ジュンヤ)


「植民地にするのか?」(リチャード)

「しないってば。今んとこ食糧支援やインフラ整備で持ち出しだ」(ジュンヤ)

「そのうち人口が増えすぎて破綻するんじゃないか?」(リチャード)

「ああ、それギルドに挨拶に行ったときにも言われたけど、そんなことは次代の奴に任せるよ。俺は皆が少しでも豊かに平和に暮らせるようにしようとしているだけだ」(ジュンヤ)


「そういやマイアん家にも挨拶に行くのか?」(リチャード)

「行くよ。開通式が終わったらな」(ジュンヤ)

「いよいよお前も年貢の納め時と言う訳か」(リチャード)

「まあな、でも俺はずっと一人だったから家族が出来るのが嬉しい」(ジュンヤ)

「そうだな。折角お前が築いた平和だ。長く続くと良いな」(リチャード)

 リチャードは少し遠い目をして言った。彼も不安を感じているのかもしれない。

 ジュンヤも「ああ」とあいまいな返事しかできなかった。


 俺達は王都駅に身を移し、式典が始まった。

 音だけの花火が鳴り響く。

 巨大な駅舎の無駄に広いエントランスホールで拍手が鳴り響き、リチャードの演説が始まる。


 リチャードは王都の駅に豪華で巨大な駅舎を造った。これはこの駅舎がフルに稼働するほど発展させたいという願望があった。

 どのみちジュンヤが進める産業革命に乗り遅れれば、他国の後塵を拝し貧乏国になってしまう。

 今まで他国に比べて文明が遅れ気味であった獣人国が、先進国になれるチャンスでもある。

 ここに集まった貴族たちに宣言する。各人奮励努力せよと。


 次はガーランド皇太子のオスカーと第二皇女のエルザの来賓挨拶だ。もちろん皇帝ヘンリーの許可は取ってある。

 オスカーの十一歳には見えない堂々とした挨拶や狐獣人で美少女であるエルザの挨拶は、獣人国の貴族からも賞賛された。


 後は西大陸連合軍司令官のジュンヤ、アルミアの高官、ギズモニアの高官、ヤマト国代表のチャールズさんが挨拶した。


 次は王立音楽隊による演奏をBGMに歓談やダンスをしている。

 ジュンヤの眷属たちも着飾っている。

 ヤマト国の繊維産業部門が総力を挙げたドレスを着ている。

 ハルがしたが紺色から上が白のグラディエーションを施した、ひざ丈のワンピースにくどくならない程度の装飾を施してある。

 マイアは鈍色にビーズが光る。

 マリーはピンクに薄い生地の装飾を施し、銀のモールで縁取る。

 セシルは水色のドレスに薄い生地を三重にした。

 エルザは国賓なのでフォーマルな姿で残念そうだ。


 ノーラとレイコのドレスも作ったのだが、ノーラは嫌がり、レイコは子供たちの護衛で間に合わなかった。


 まだまだおしゃれの文化の少ない獣王国では羨望の的だ。

 まだ量産化して売り出せば大当たりしそうだな。


 此方のダンスはやはり男女ペアだが複雑なステップは無しで、女性を中心に男性がその周りを回り、ゆっくり直径十mを回って行くというスタイルだ。

 あくまで女性を360度回して鑑賞するみたいだ。

 ただ、同心円では回らないので男性は他の組とぶつからないように注意が必要だ。


 このダンスは結婚相手を探すという側面もあるので、適齢期の貴族のお嬢さんがいっぱいいる。

 ジュンヤには眷属が付いて、貴族のお嬢さんを寄せ付けないのはどういう訳なんだろうね。


 いよいよホームに出てテープカットをした後、招待客が列車に乗り込む。

 汽笛を鳴らして汽車がゆっくりと走り出す。

 万歳を始め、見送る客たち。この列車はおよそ一日を掛けてジニアに行く。

 電化して高速鉄道で十時間以下で走るのは十数年後の話だ。


 ******


 後に食事会があるのだがジュンヤとマイアは、マイアの家に招待されているのでそちらに向かう。

 マイアの家は士族で、獣王国では士族は兵を束ねる士官として働く。身分は貴族より下だが士分の相続が許される。徳川幕府で貴族が大名とすると旗本のような存在である。

 マイアの家はその中でも王に近い存在で、長男ロジャーが前王に諫言を呈していたのはそのためである。


 今日はマイアの兄たちは警護の仕事に駆り出されているようで、在宅しているのはご両親だけの様だ。

 玄関のノッカーを叩くとメイドが現れた。


 家に入ったジュンヤはマイアのヴォルフサラに結婚の挨拶をする。

 ギルドと違ってマイアの両親には、特に注意することが無いので、フレンドリーに歓談した。

 昼食を一緒に食べた。豪華ではないがマイアへの愛情が感じられマイアも喜んでいる。


 父のヴォルフから質問があった。

「君はこの先どうするつもりなのかね?」(ヴォルフ)

「まず平和な社会を造ります。俺を応援してくれる国に農業漁業などの食料生産を安定させて飢えの無い社会、国にあった産業を興し、道路・水路の整備、運送用の機械の開発などを行います」(ジュンヤ)

「わしがそれを見られるのか。いや見てみたい」(ヴォルフ)


 マイアが立ちあがった。

「父上!父上はまだ四十歳を過ぎた所では無いですか。絶対に見られます。もう汽車は見たでしょう。あれと同じです。わずかの間に師匠が作ってくれます。師匠、あれを」

 ジュンヤはソルトレイクまでの往復乗車券を十枚出した。

 ソルトレイクに来てくれたら男性にはオーダーメイドの剣を女性には好きな服を仕立てるつもりだ。


「師匠、ローラの分が無いです」(マイア)

「これは失礼しました。ローラさんの分もヴォルフさんに預けておきますね」(ジュンヤ)

 メイドのローラさんは二人の子持ちなのでさらに四枚渡した。

「マイアお嬢様、私にそのような高価なものを。頂けませんよ」(ローラ)

「ローラ、心配しないで。師匠は大陸一のお金持ちだから」(マイア)


 往復乗車券は特等車なので個室、三食、寝台付きなので一般人の年収をはるかに超える値段が付いている。

 三等車の乗車券でも一般人の月収位だ。

 ジュンヤは本来は等級など作りたくないのだが、貴族がそれを許さない。平民と同じ扱いをすれば反乱を起こすかもしれない。ヤマト国の様に全員が平等に生きられる世界はまだ遠い。


「ソルトレイクまで来て頂いたら、また往復乗車券を差し上げます。転売はしないで下さいね。セキュリティの問題が出ますから。友人と来られるのなら構いませんよ。来られるときは先に手紙で知らせてください。準備しておきますから」(ジュンヤ)


「師匠、ありがとうございます」(マイア)

「マイア、貴方いつまでジュンヤさんの事を師匠と呼ぶつもりなの?」(サラ)

「あ、それは・・・えーと」(マイア)

 マイアは真っ赤になって照れている。


 マイアの両親は必ずヤマト国に行くと言ってくれた。

 手紙はギルドが扱っているが、鉄道が出来たのでヤマト国と獣人国なら一日で届く。


 終始和やかな雰囲気で挨拶を終わらせたジュンヤは、そのままガーランドに向かった。

 明日、朝から教会に向かい聖魔力を受け取るためだ。すでに聖魔力を貯めている元聖女の存在は確認している。


 ガーランドの帝都エンフィールドの帝城に着いたジュンヤたちは、そのまま皇帝の執務室に通された。

 エルザが皇帝ヘンリーと二人の婦人に挨拶する。ほぼ一年ぶりの再会だ。

 オスカーは明日朝ソルトレイクに旅行から帰ってくる。

 ジュンヤが”帰るか”と聞いたら”まだ帰らない”と話していた。


「随分見違えたぞ。うん、美しくなった」(ヘンリー)

 ヤマト国に行ってからも何回か来ているはずだが、満面の笑みで言うヘンリー。

 第一夫人は嬉しそうに微笑む。

 第二夫人は能面のような顔をしている。この人はオスカーの実母であるが、彼にも情を見せないらしい。


「ありがとうございます。父上」(エルザ)

 エルザも可愛くおじぎをする。

 ジュンヤ達と挨拶をして、聖魔力の受け渡しをする教会の紹介をした。


「正教会にも一応言っておいたが、まだ返事が来ない」(ヘンリー)

「あそこの教皇には嫌われているから仕方ない」(ジュンヤ)

 正教会の教皇はアーモデウスからジュンヤの悪評を聞き、ジュンヤを教皇を追い落とすものと警戒しているのだ。


 ヘンリーは咳ばらいをした。

「あの話は本当なのか?」(ヘンリー)

「何の話だ」(ジュンヤ)

 ヘンリーは顔を赤くして小声で言った。

「キュービが蘇ったという話だ」(ヘンリー)

 ヘンリーはキュービとの結婚生活が短かったので会いたいと願っているようだった。

「今のところ、出せるのは魂だけだけど。エルザ、キュービと代われるか?」(ジュンヤ)


「はい」

 エルザが返事をして母を呼ぶ。ヘンリーがエルザの前に来る。

「もう堪忍してやぁ。こっぱずかしいやないのぉ」(キュービ)

「キュービなのか?」(ヘンリー)

「そうやけど。うちはエルザの中におるだけやよって、あんまり呼ばんといてほしいわあ」(キュービ)


「キュービ、俺はまだお前を・・・」(ヘンリー)

 ヘンリーの口はエルザの手によって塞がれた。

「アホ!エルザも聞いてるんや!惚気るな!」(キュービ)


「キュービさん、エルザも大きくなったし、元に戻れないの?」(第一夫人)

 いつの間にか第一夫人もエルザの前に来ていた。

「残念やけど、人間の体はもう魔力に変換してしもたし、魔力で体を作ると精霊になってしまうんや」(キュービ)

「精霊でも俺は構わんぞ」(ヘンリー)

「その場合やとまずいことが二つある。

 一つは四大精霊が殺しに来ること。これはこっち側の方が強いよって問題は小さい。

 もう一つが厄介や、魔人国に居る精霊鎧を持った奴にうちが取り込まれることや」(キュービ)


「世界の王の戦いが終わったら、魔人国の王とも話し合わないとな」(ジュンヤ)

「頼むぞ!当てにしているからな」(ヘンリー)

 ”はあ”ジュンヤはため息を吐いた。

 魔人国と交渉するには武力を背景にするか、余程の利益を供与するしかない。

 大体、あの第六天魔王をジュンヤは苦手にしていた。

次回、正教会に突入。

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