第六十二話 修学旅行とアジダバーガ
カゴシマへ修学旅行に繰り出す子供達。
火山島では有史以前の凶悪モンスターの復活を悪の組織が行っていた。
マリーの実家への挨拶も終わってヤマト国の視察をしていたが、アルミアの鉄道の催促にマルキエルがやって来た。
マルキエルは俺達の結婚後の戦力低下を補うために十二天使を眷属にしろと言って来た。
それに反応したハルが十二天使の素質を調べようと提案してきた。
「ちょっと待て!よく考えたら十二天使は男ばかりだ。女性は一人しかいない」(ジュンヤ)
「そうですね。それでは力が出せないですね」(ハル)
「何だよぉ。男は駄目って眷属は嫁候補なのか?」(マルキエル)
精霊は女性なので、男性では憑依できても力が出せない。そのことはダークネスが話してくれた。
つまり、もしマルキエル達に精霊が憑依していても力が出せない。他の隷属化した人間と変わらないと言うことになる。
「いや、男では特別な力が出せない。ハルやマイアのような力は出せないんだ」(ジュンヤ)
「そんな条件があるのか。それで眷属は女性ばかりなのか」(マルキエル)
マルキエルは落胆してため息を吐いていた。
今まで数万人の人を隷属化したが、精霊が憑依していたのは眷属の五人だけだ。
眷属を増やすと言っても無理があるよな。
シーナ・キャール・サクラも眷属ではなさそうだし、もし眷属でも子供過ぎるだろう。
かといって最近の敵は眷属以外では戦えないような敵なんだよな。
そう言えば教会巡りに言ってないな。聖魔力を集めている聖女が居そうなのはガーランドとクレアンスの正教会ぐらいかな。
「・・・おい、聞いてんのか?」(マルキエル)
おっと、自分の思いに沈んでた。
「悪い、なんだった?」(ジュンヤ)
「もぉーう、俺と隷属契約してくれって言ってんの」(マルキエル)
「え、なんで?」(ジュンヤ)
「魔法とか有利になるだろ。アルミアにいるなら隷属化しててもデメリットは無いしな」(マルキエル)
「良いけどあんまり念話してくんなよ」(ジュンヤ)
「あーそんなこと言うんだ。絶対してやんないからな」(マルキエル)
「分かったよ。・・はい、出来た」(ジュンヤ)
俺はマルキエルに隷属化を行った。
「ようし、魔法は何が増えたのかなあ」(マルキエル)
「ここでやるなよ。練兵場でやってくれ」(ジュンヤ)
「分かった」(マルキエル)
マルキエルは外にある練兵場に走っていった。
「なあ、ハル、眷属って言うのは自然に任せておくしかないんじゃないか」(ジュンヤ)
「はい、そのようですね」(ハル)
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ソルトレイク 俺の家 食堂 あれから一か月
シンディと子供たちが集まっている。
「校舎を立て直す間、四日間お休みになります。皆さんの勉強の計画を立てましょう」(シンディ)
学校の生徒数が増えて来たので校舎を建て増すことになった。この町の事なので魔法ですぐに出来るのだが荷物の入れ替えは人力で行うので三日間掛かる。予備日を一日取って四連休となった。
サクラもアイさんにお願いして大陸語を話せるようにして貰ってあるので問題ない。
「折角、お休みが続くのだから普段できないことがしたいわ」(シーナ)
「そうですね。なにかいい経験になることがあるならやりたいですね」(オスカー)
「そうね。せっかくの四連休だからどこかに出かけるのもいいですね」(シンディ)
「俺もどっかに行きたいぜ。ここも面白いけどそろそろ見る物も無くなって来たからな」(サクラ)
天狗族の短い羽根をバタバタさせる。相当テンションが上がっているらしい。
「サクラの言う通りよ。師匠も出かけてるし」(キュール)
「僕はそう言うの分からないな」(ジャンテ)
「なにか面白そうな話をしているな」(ジュンヤ)
通りかかったジュンヤが口を挟んできた。
「今、校舎の建て替えで学校が四連休になるので、どこかに行こうかと話してたんです」(シンディ)
ジュンヤは少し考えた後言った。
「カゴシマはどうだ。今の季節なら海で泳げるぞ。最近、高速列車が導入されたから十六時間ぐらいで行ける」(ジュンヤ)
「ええ、一日汽車に乗っているのぉ」(シーナ)
シーナが口を尖らせる。
「夜行列車があるから、それならこちらを学校が終わって、汽車に乗れば次の日の朝、カゴシマに着けるぞ」(ジュンヤ)
また子供たちで話し始めたのでジュンヤは言った。
「じゃあ、決まったらマリーに言ってくれ。他の場所でもマリーならすぐにスケジュールとか考えてくれるぞ」(ジュンヤ)
マリーは地理に詳しいアイさんと直結してるし、宿泊施設なども精通してるからツアーコンダクターにぴったりだ。
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子供たちが旅行の話をしていた頃、ここはとある火山島。
下に伸びる溶岩が固まって出来た通路を下る四人。ワ国を逃げた首領と荷物を背負った部下三人である。
「今度は大丈夫なんでしょうね?」(部下A)
「うむ、ワ国ではヤマタノミズチを復活させる前にワ国を占領しようと欲をかいて、ジュンヤを呼び込んでしまった。今度は秘密裏にやるから大丈夫だ。あいつらはわしのやろうとしたことに気付いてないはずだ。」(首領)
「でもここはジュンヤのお膝元ですよ」(部下B)
「ここは無人島だ。見つからなければいい」(首領)
「せっかく、ミッテランが拠点を用意してくれたのにまた洞窟暮らしか」(部下C)
「仕方あるまい。神の啓示が下ったのだ。世界の王になるには力が必要と言うことだ。おう、ここだ!」(首領)
洞窟のの最奥に広間があった。
「よし、ここで儀式の用意をする。祭壇をこちらの壁に組上げろ」
火山の中心に向かって人間の身長位の祭壇を作る。
祭壇の中央に悪魔のような像を置いて祭壇は出来上がった。
「今から反魂の儀式をやるがアジダバーガを復活させるのには三日三晩は掛かるだろう。おまえたち、三時間交代で休まずにやるのだ」
「はい」×3
「まず最大のネクロマンサーたるわしが冥界の門を開きアジダバーガの魂とバスを結ぶ。後はひたすら精と魔力を送り続けるのだ。準備は良いか?」
「はい、足りないものはミッテランが明日持ってきてくれます」(部下B)
首領が祭壇の前に胡坐をかいて座る。そして何やら唱えだすと周りの空気が死臭を帯びて澱んできた。
部下の三人は師匠でもある首領の動作を真剣なまなざしで凝視している。
首領の手が複雑な動きをする。指で古代文字を立体的に描いているのだ。さらにはその古代文字を口から発すると祭壇の後ろに扉が現れる。
何の模様も無い真っ黒い観音開きの扉。
内側からすごい勢いで扉を叩く音がする。
現世へ出たがっている冥界の魂が扉を見つけて体当たりをしているのだ。
アソではこれらの魂に骨の体を与えてスケルトンにした。
今回は小物の魂は後でアジダバーガの餌にするので扉から念力で離しておく。
首領の口から白い煙のような紐が出てくる。絆のバスだ。
アジダバーガの魂とのバスを開くため、扉を少し開いてその隙間にバスが冥界に向かって入って行く。
『開いたぞ』(首領)
首領から念話が部下に届く。
部下Aが首領の後ろに座って両手を開いて首領の背中に当てる。
「はあ!!」(部下A)
部下Aが気合を込めると精と魔力が凄い勢いで、首領を通してアジダバーガに流れていく。
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ソルトレイク 駅
駅には卵の殻を先端に付けた高速列車が止まっている。
窓から乗り出して手を振っているのはシーナだ。従姉のマリーが手を振り返している。
エルザも手を振っているのだが、オスカーは中に居て見えない。
「アンニャロ―、帰ってきたら虐めてやる」(エルザ)
お姫様らしくない言葉で弟を見送る。
サクラも恥ずかしいのか顔を出さない。エルフの二人は汽車が初めてなのでテンションが上がって窓から乗り出している。
旅行は0日目寝台高速列車で一泊、1日目朝カゴシマ到着後観光→カゴシマ宿舎で一泊、2日目カツラジマでBBQと海水浴→カゴシマ宿舎で一泊、3日目漁業体験後高速列車で車中泊、4日目朝駅到着の予定だ。
人員は引率シンディ以下旅行者サクラ、シーナ、キュール、ジャンテ、オスカー、護衛ボルク、レイコの8人だ。
汽車が動き始めた。あっという間に汽車は見えなくなり、そして煙だけが残った。
獣人国線の開通式の為にすでにマイア、セシル、ノーラ、アステルが行っており、更にこれからマリー、エルザが行く、最後にジュンヤ、ハル、ボルク、レイコが行く予定だ。
国を挙げての開通式のため掛かる費用も半端ない。国王きちんと請求するから待ってろよ。
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とある火山島にミッテランは到着した。二十人の手下と百人の奴隷を連れて来た。
「ご苦労さん。・・」(部下A)
出迎えた部下Aは非常に疲れていた。
「この洞窟に入ればいいですか?」(ミッテラン)
「一番下まで行ってくれ」(部下A)
ミッテランは手下と奴隷を引き連れて一番下の広間に来た。
すでに扉は無くなり、祭壇の上には直径1m程の黒い靄のような物が渦巻いている。
「おおミッテラン、持ってきてくれたかご苦労。ここに一列に並ばせてくれ」(首領)
奴隷を祭壇に向かって一列に並ばせると奴隷たちが眠ったようになっている。
「アジダバーガよ。これは貴方の体を作るための生贄です。一人ずつ取り込んでください」(首領)
奴隷が一人、また一人と黒い靄に包まれ消えていく。奴隷は自ら靄に食われに歩いて行く。
住人を食ったあたりから靄が大きくなって靄の中に人型が見え始めた。
百人を平らげると完全な人型になった。
褐色の肌と体を包む黒い剛毛、爬虫類を思わせる尾、何より醜い顔、大きな赤い目に大きな口、そして黒い髪と顔の殆どを覆う髭。
「アジダバーガよ。わしがあなたを生き返らせたものです。あなたの力をわしに貸して下され」(首領)
首領がアジダバーガに話しかける。
「まだ足りない」
アジダバーガは手下を催眠状態に置くと次々吸収し始めた。
両手を前に出すと手を向けられた手下は、掃除機に吸われるゴミの様にアジダバーガの体内に吸収される。
ミッテランは恐怖にかられた。ここに居てはいけないという思いで洞窟を駆け上がる。
途中で部下Aとすれ違う。
「どうした」(部下A)
「あんたも逃げた方が良い」(ミッテラン)
なにを言ってんだあいつと思いながら部下Aは広間に降りて行く。
広間では手下は皆食われて残っているのは部下BとCそして首領だけだ。
「どうしたんだ。手下はど・こ・・・」(部下A)
部下Aも催眠状態になり吸収されてしまった。
「アジダバーガ!!部下まで食べやがった。お前は俺の言うことを聞け!!」(首領)
「まだ足りない」(アジダバーガ)
アジダバーガは両手を首領に向ける。
「やめろ!やめんか!わしはおま・え・を・・」(首領)
首領もアジダバーガに吸収されてしまった。
「一応、第一段階までのエネルギーは溜まったようだ。体になじむまで寝るか」(アジダバーガ)
アジダバーガは広間でそのまま眠りに着いた。
次回、ボルクがアジダバーガと戦います。




