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第六十一話 ギルドの家とマルキエル

最終章の前振りです。

 ワ国の危機を救った俺達は大陸に戻ってヤマト国に連れて行く人達を鬼人国に集める。

 マリーは父親に俺の挨拶を受けて貰う日取りを決めるためにガーランドのギルド本部に行って貰う。


 エルフ国からはキャール(12)とジャンテ(11)と言う子供と若い男女が六人。

 鬼人国からは錬金術師タキと若い男女が七人。

 竜人国からは若い男女が六人。

 ワ国からはサクラ(13)。

 合計二十三人。


 そう言えばオスカーはどうするのかな?念話をしてみるか。

『オスカー今いいか?』(ジュンヤ)

『はい、大丈夫です』(オスカー)

『ヤマト国に帰ろうと思うが君はどうする?』(ジュンヤ)

『もちろん帰りますよ。迎えに来てください』(オスカー)

『了解』(ジュンヤ)

 ちょっと怒っていたようだ。一週間ぐらい忘れていたからな。

 エルザを呼んで迎えをお願いした。


 ヤマト国への移動で造って来た物がある。

 旅客飛行機だ。席は4列×7、一番前と後ろが2列で三十二人乗りだ。

 全ジュラルミン製の断面は与圧をしないので四角、上から見ると流線型の機体で主翼は胴体の上に着くタイプだ。それに水平尾翼と垂直尾翼を備えている。翼にはすべて後退角を付けてある。

 降着装置は前後に二個ずつのそりのような物が着けてある。


 オスカーも戻ったので全員を飛行機に乗せる。荷物は収納に入れた。


 まだ飛行機を飛ばせるようなエンジンは開発していないので俺達がエンジンだ。

 前二本後ろ二本のワイヤーで飛行機を吊り上げ、徐々に水平飛行に入る。

 時速三百km以上になれば水平飛行が出来る。

 飛行機自体が巡航速度で水平飛行が出来るようになれば、後二本のワイヤーを外して二人が飛行機を引っ張る。


 ヤマト国までは三千kmあまり、約六時間の飛行だ。

 実験では時速八百kmでも問題なかったが、エンジン代わりの人間の消耗が激しいので時速六百km弱で運行する。ちなみにエンジン代わりの人間は一時間交代だ。


 順調にソルトレイクの上空までやって来た。

 再び後ろにワイヤーを付けて速度を緩めながら高度を落として、静止した所で垂直降下する。

 練兵用の運動場に着陸して、働きに来た若者は迎えに来ていた市長が連れて行った。

 オスカー、キャール、ジャンテ、サクラは俺の家に向かう。


 家ではシンディ・シーナと聖獣達が出迎えてくれた。

「お帰りなさい」(シンディ)

「オスカー、お帰り」(シーナ)

「この三人はここに勉強に来た。エルフのキャールとジャンテ。それから天狗族のサクラだ」

 六肢族のサクラには驚いたようだが、この国は人種のるつぼなのですぐに慣れるだろう。


「あなた達の部屋は用意できているわ。ついて来て。」(シンディ)

 俺は彼らの荷物を収納から出してやった。

 オリエンテーリングはシンディさんに任せておけばいいだろう。


 次の日、俺はギルドの本部のあるガーランドに飛んだ。

 目的はマリーの父親に会うためである。

 結婚の報告もあるが俺はギルドを利用して西大陸の経済発展を図って、今は東大陸に貨幣経済を持ち込もうとしている。


 そこらの説明もいるしもう一つ鉄道と蒸気船の普及でギルドの仕事の邪魔をしているのも確かだ。

 どういうことかと言えばギルドがここまで大きくなったのには街から街へ商品を安全確実に運ぶと言うことがある。

 鉄道・蒸気船はさらに速くが付くし、小規模な行商がやり易くなった。そのためにギルドのルートを通らない商品が増えてきている。


 少し気は重いが挨拶や対応策は話して置かないとならない。


 マリーは年話で連絡したので自宅の前で待っていた。

「ご苦労様です。すでにお爺様とお父様が待ってます」(マリー)

「出迎えありがとう。緊張するな」(ジュンヤ)

 俺は額に浮いた汗をハンカチで拭う。


 俺は大きな門を潜り、巨大な邸宅の中に吸い込まれた。

 玄関を抜けると巨大な吹き抜けのホールが出迎えた。

「こちらです」(マリー)

 マリーは居並ぶ使用人たちに俺を任せずに案内する。


 応接室はホールのすぐ横にあった。

 マリーが扉を開けてくれる。

 広い部屋の真ん中にソファと机がある。

 案内された俺とマリーのソファの向かいに初老の男と中年の男が立っている。


「コリンズ=サザーランドです。こちらは父のポールです」(コリンズ)

「ジュンヤ=モチヅキです」

 二人と握手をして腰掛けた。パーラーメイドが紅茶を並べる。

「お嬢さんと結婚いたしたくお許しを頂きたい。お願いいたします」(ジュンヤ)

「娘が押し掛けたようで、貰って頂けるとありがたい」(コリンズ)

「はい、大切にいたします」(ジュンヤ)

 マリーは終始顔を伏せている。


「これでマリーの用は済んだな。わしは君と話し合って見たかったのだ」(ポール)

 いままで好々爺然としていたのだが、いきなりギルド会頭の顔に代わった。

 この雰囲気を察してマリーが顔を上げる。その顔は涙に濡れていたのでハンカチを渡す。


 マリーが涙を拭いていると二人の若者が下座の席に来た。

「長男のピーターです」

「次男のオーティスです。お話を聞かせてください」

 俺は立ち上がって握手をした。彼らがギルドの次世代を担うのか。


「まずはマリーはコリンズに続く第三席となったが抱負はあるか」(ポール)

 二人の兄弟は明らかに悔しそうな顔をする。

「私の功績は殆どジュンヤさんの功績を貰ったものですし、私自体もはやギルドの会頭に魅力を感じません」(マリー)

 この言葉にサザーランドの人間は驚きを隠せない。


「お前はギルドの会頭より魅力のある職を持つというのか」(ポール)

「もちろんギルドとの取引では口を出すつもりではありますが、私はモチヅキ家の財務を引き受けます。今はギルドの半分くらいの規模ですが、来年にはギルドを超えます」(マリー)


 兄弟の顔は明るくなったがポール、コリンズは難しい顔をする。

「するとジュンヤ殿はこの一年で倍以上に伸びると見ているのか」(コリンズ)

「夏には獣王国の鉄道が完成して、今年中にはアルミア・ギズモニアにも施設されるでしょう。又、繊維産業、鉄鋼業、製紙業、化学工業などの工場が西大陸で稼働して、他の国を突き放す価値を生み出すでしょう。ニ、三年のうちにはギルドの今の形態では時代遅れになってしまうでしょう」(マリー)


「何を言っている。お前はギルドのやり方を否定するのか」(ピーター)

「兄上、そうならないように私は忠告しているのです。ここにいると分からないでしょうね。一度ジニアに見学に来ると良いですよ」(マリー)

「ふん、あんな田舎に何があるというのだ」(ピーター)

 ギルドと言えど情報の偏りがあると見える。


「マリー、それは見ようとする人しかわからない事だ。見ようとしていればとっくに気付いているはずだからな」(ジュンヤ)


「そうですね。ジニア・オタルにもギルドはありますからね」(マリー)

 ちなみにソルトレイクのギルドは職員が俺に隷属しているから情報の収集は難しい。


「まあ、君達の言いたいことは分かる。もちろんギルドも何も用意していない訳では無い」(コリンズ)

「父上、どういうことですか?」(ピーター)

「鉄道や蒸気船で輸送される物資の量の桁が変わる。今まで多くて一tが数百tから数千トンになる。その対応を誤ればギルドと言えど盤石ではないと言うことだ」(コリンズ)

「そんな量に対応できる訳が無いじゃないですか」(ピーター)


「だからマリーはヤマト国に見学に行けと言っている。その意味は解るな」(コリンズ)

「それが本当なら一回に動く金額も数百倍以上、面白い、面白いぞ、マリー。お前に感謝することになるかも知れん」(ピーター)

 流石に商売人の子供だ。すぐ近くに来ている変動に意欲を見せる。

 ポールとコリンズもそれを頼もしそうに眺める。


 その後、昼食をごちそうになった。

 マリーの母、妹三女も参加した。その席でポールから尋ねられた。

「君はこの大陸から戦乱を失くした。君の最終目標と言うか、この大陸をどうしたいと思っているのかね?」

「俺は多くの人が豊かに安全に暮らせることを念頭に置いてます」(ジュンヤ)

「そんなことをすれば人口が増えすぎて破綻するのではないか?」(ポール)

「その頃には俺は生きていないと思うので、どうするのかはその時代の人に任せますよ」(ジュンヤ)

「時代を担うのがマリーの子であって欲しいものだ」(コリンズ)

「妻に順序はありませんが、私が押し掛けた時にはもう妻候補が二人いたのでどうなることやら」(マリー)


 一同明るい声で話し合い、取り敢えず嫁実家への挨拶第一弾を終了した。

 次はマイアであるが獣人国の鉄道完成式典の時に実家にお邪魔しようとしているが、俺の隷属者の魔力が上がっているので工事が加速的に早くなっている。完成まであとひと月も掛からないのではないかと思われる。


 ヤマト国に帰るとオタルからアルミア聖都への鉄道が打診された。路線などすでに話し合われており俺の許可待ちになっている。

 聖都からはギズモニアの王都タレートやガーランドの帝都エンフィールドに発展しそうだ。


 ガーランドから帰ると紡績工場から見に来いと催促があった。

 まだ原材料が揃わないので本格稼働は綿花の採れる秋からになる。今は断続的に動かして機械の改良をしている。


 アルミアからの使者マルキエルはソルトレイクの迎賓館でふんぞり返っている。

「早くしてくれよ!俺が遊びに来るのに大変なんだぞ」(マルキエル)

「お前なあ、少なくともタダで鉄道引いてくれって奴の態度じゃないぞ」(ジュンヤ)

「じゃあ、お願いします。ジュンヤ様あ早くしてください。これでいいか?」(マルキエル)

 こいつ、来るたびに馴れ馴れしくなるな。


「今は獣人国の王都まで路線を工事してるからその後だって言ってるだろ」(ジュンヤ)

「ああ、ハルちゃん。コーヒーお願い」(マルキエル)

「はい」(ハル)


 ハルがマルキエルの飲み干した紅茶のカップを持って給湯室に行く。

 俺がマルキエルのずうずうしさにあきれてるとマルキエルが真剣な顔をしてこちらを見る。

「なあ、俺達十二天使を眷属にしないか?」(マルキエル)


 アルミアは、かつてはアルミア教と言う宗教が国を運営してきた。その結果、軍部は十二天使と呼ばれる魔法使いを中心に編成された。現在では軍が再編され、普通の将校となっている。


「どういう意味だ」(ジュンヤ)

「そのままの意味さ。マスケットの時代になって俺達の魔法じゃ役に立たない。ギズモニアとの戦いでは出番はなかった。だけど俺達は人々を守る為に十二天使になったんだ。このままじゃあ終われないんだよ」(マルキエル)

 普通の攻撃魔法は射程30mが限度、マスケットは100m弱で、今の戦場ではほぼ活躍できない。


「眷属になるには素質がいる、隷属化したから眷属になれるわけでもない」(ジュンヤ)

「お前、来年ハルちゃん達と結婚するんだろ」(マルキエル)

「そ、それがどうした」(ジュンヤ)

 マルキエルの前にコーヒーカップを置いたハルの耳がピクピクと動く。


「結婚したらすぐに赤ちゃんが出来るだろ。それなのにハルちゃん達に戦わせる気か!代わりがいるだろう」(マルキエル)

「うっ」(ジュンヤ)


 痛い所を突きやがる。俺が東大陸の紛争に介入したのは大陸の戦乱を納めてから結婚したかったからだ。

 ところがゲイルには逃げられるし、ワ国では別の組織が戦乱を煽っていた。

 奴らが何時争いの火種を持ってくるか分からない。


「ご主人様!すぐにアルミアに行って十二天使さん達の素質を見ましょう」(ハル)

次次回から最終章です。

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