第六十話 敵の探索とサクラの危機
敵の拠点の探索を続けるが敵の罠にサクラが嵌る。
ハル達はワ国でスケルトンを操った敵を探すため毎日探索を繰り返して、敵が九州から来たことを突き止める。
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ワ国 アソ 敵基地
「ゲイルの奴め、どこへ行ったのだ。魔翅族を失った責任をどう取るつもりだ」(敵首領)
三百年前噴火によって流れた溶岩が作った洞窟、それを利用して造られた基地、そこに彼らは居た。
「どうしますか?あいつら虱潰しに探索してますぜ。ここはそうは見つからんと思うが」(部下A)
「しかし、スケルトンを船で渡した跡があるから、私達が九州に居るのはばれてるでしょう」(部下B)
「ゲイルはアーモデウスを潰し、その上エルフ国を拠点にするのに失敗して魔翅族まで失ってしまった。後はミッテランの奴が次の拠点を探すまで時間を稼ぐしかなかろう」(敵首領)
「この大陸に我々の居場所はないと言うことですか。まあ、戦力を小出しにして各個撃破された作戦にも問題がありますな」(部下C)
「あんな化け物が現れるなど誰も予想できんわ。ド田舎に現れたと思ったら一年の間に大陸をほぼ手中にしたのだぞ」(敵首領)
「確かに彼奴は軍事力だけではなく経済力と先進性で敵対勢力を味方にしている。一体どこから現れてその正体は何なのか?さっぱり分かりませんな」(部下C)
「私はミニエー銃を発明したゲイルに繋がる物があるのではないかと考えますね」(部下B)
「異世界から来たとでも言うのか?そんなおとぎ話のような・・・。」(部下A)
ゲイルがミニエー銃を作った時に異世界から来たのではないか噂が流れたことを言っている。
「確かに彼奴がもたらした蒸気機関は脅威だ。異世界から来たと言われても違和感が無い」(部下C)
「そのような結論の出ない話より、時間を稼げ!探索は少数だ。来る奴らを何とかしろ!」(敵首領)
「「「はっ!!」」」(部下ABC)
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ワ国 シモノセキ ハル
船を港に浮かべてフーと息を吐くハル達、大阪から持ってきた船二隻に人員を乗せてセトと呼ばれる海を引っ張って来たのだ。
「後は収納に入れて来た宿舎や倉庫を並べて、糧食とか資材なんかを入れなくちゃ」(ハル)
「ヨリトモさん達、船酔いがひどくて今日は使い物にならないみたいよ」(エルザ)
「だから無理に付いてくることはないって言ったのに」(マイア)
元々はフクハラからでは九州の探索は効率が悪いので、船を九州に持って行ってそこを拠点に探索しようとしていたのだが、ヨリトモが我々も絶対一緒に行くというので、元々船を収納に入れて持って行くつもりだったのだが生きている人間は収納に入れられないし、男の人を背中に乗せて飛ぶのも嫌なので船に乗せて引っ張って来たのだ。
「済まない、なにせあのような速度で走る船に乗るのは初めてなので、もう少し休めば働けると思うので待ってくれ」(ヨリトモ)
「兄上は船に弱いな。俺は平気だから兄上の分まで働こう」(ヨシツネ)
「無理はしないで下さい。我々だけでもできますので」(ハル)
「女性に力仕事をさせて寝ているなど本当に恥ずかしい」(ヨリトモ)
拠点の設営を今日一日で終わらせて明日からでも探索を再開しないとならない。
夜、拠点の設営が終わって天狗族を呼んで探索の割振りを確認した。
「天狗族の皆さんにはブゼン・ブンゴ・チクゼン・チクゴの探索をお願いします。黄泉の軍団の行動跡などを中心にお願いします。ここには敵の拠点があると思われますので、必ず二人以上で行動して会敵時には退却して情報をもたらすことに重点を置いて下さい」(ハル)
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ワ国 シモノセキ 天狗族宿舎 サクラ
「敵と会ったら退却せよとは馬鹿にしている。俺達の実力を知らぬのか」(サクラ)
「サクラ、ハル殿が言っておったであろう。情報を残せと。我々の将来の禍根を除くために戦っておるのだ。負ければ住む場所を奪われるか奴隷にされるかもしれんのだぞ」(ベンケイ)
「フン勝てばいいのだろう」(サクラ)
「馬鹿者!!我々は彼らが来るまで負けておったのだぞ。お前もセシル殿に勝てなかったではないか」(ベンケイ)
「あれは運が悪かったのだ。もう一度やれば勝つ!」(サクラ)
次の日、俺は朝から探索に出る。今日はブンゴ地方を中心にした探索だ。
地上百m位を時速四、五十kmで飛びながら黄泉の軍団を探す。
何の手がかりも得られずにヒゴとの国境付近を飛んでいた時に相棒のサブロウが言った。
「お嬢、そろそろ戻らないと暗くなります」(サブロウ)
「さっきヒゴの方に何か見えた」(サクラ)
「高度を落とさないでください。マスケットがあるとまずいですから」(サブロウ)
「違う、あれを見ろ。何かこちらに飛んでくる」(サクラ)
「あれは鳥のスケルトンです。退却しましょう」(サブロウ)
「鳥の骨位で退却なぞするか」(サクラ)
俺は高度を落として鳥のスケルトンが十羽位いる中に飛び込んだ。
頭蓋骨を剣で斬ると面白いように倒せる。スケルトン達は高度を落として、来た方向に逃げ始めた。
「お嬢、それ位にして帰りましょう」(サブロウ)
俺は聞こえないふりをして鳥のスケルトンを追ってやっつける。今までのうっぷんが晴れて気持ちいい。
その時、地上でバーンと言う音がした。俺の胸に穴が空き、血が噴き出した。
ブンゴとヒゴの国境近く サブロウ
バーンと言う音がしてお嬢が墜落していく。俺は急降下してお嬢を捕まえる。
俺の魔力ではきついがお嬢を抱えてシモノセキに帰るしかない。
マスケットは弾込めに時間が掛かる。速くこの場を離れないといけない。
どれだけ時間が経ったのか。お嬢を抱えて飛んでいるので速度が出せず、辺りが暗くなってくる。
もうだめだと思った時、前の方に明かりが見える。拠点で大きな火を焚いてくれているらしい。
気が緩んだのか力が抜ける。もうすぐじゃないか‥駄目だ魔力が抜けていく。
その時俺を持ち上げてくれる少女が居た。白い髪の美少女ハルさんだ。そうかハルさんは猫人、夜も目が見えるのか。お嬢もセシルさんが抱えてくれる。
俺は気を失った。
シモノセキ 拠点 セシル
「こっちに運んでぇ」
天狗族の女性が救護室の入り口で叫んでる。
私がサクラを背負って拠点の救護室に入るとすでにハルさんの念話を受けたエルザが顔の下半分を布で覆って準備をしていた。
ベッドに寝かせて上衣を切り取る。血がまだ止まっていない。
「このまま治療魔法をかけても弾が中にあるよってあかん。まず弾を取り出さんと」(キュービ)
あ、キュービさん、エルザのお母さんだ。
血を拭きとると小振りの乳房の間に穴が空いている。
小さく胸が上下している。まだ息がある!!。
消毒した小刀で胸の傷を広げて弾を取り出す。
「骨が割れてバラバラになっとる。ちょっと厄介や。ちょっとセシルちゃん顔の汗拭いてんか」(キュービ)
私はエルザ(キュービ)の額に浮いた汗を視界を塞がないように手拭いで拭きとる。
いつも表に出る時はニコニコしているキュービさんだけど今日は真剣な表情だ。
キュービさんは採取者や討伐者を長年していて、けがの治療は何回も経験しているらしい。
普通はこんな複雑な外科手術は何人かで手分けしてやるのが普通だ。
それを今キュービさんがやっている。魔力による造血・止血・縫合などを同時に・・すごい!!
「よし、これで大丈夫や。セシルちゃん、トリートと念のためにキュアをかけてくれるかぁ。おばちゃんはもう魔力がカラッポやあ」(キュービ)
キュービさんはへなへなと後ろに用意してあった椅子に座り込む。
私は怪我を治すトリートを掛けると傷口が綺麗に塞がって行く。そして感染症を防ぐため病気を治すキュアを掛ける。
サクラの顔が温和になって寝息を立てる。
もう戻っているだろうエルザにもキュアを掛けて置いた。
シモノセキ 拠点 休憩室 ハル
私の掛けたキュアで体力を回復したサブロウさんが目を覚ました。
「お嬢は、お嬢は大丈夫ですか。すいません!!お嬢を守れませんでした」(サブロウ)
サブロウは憔悴したベンケイを見つけると土下座した。
「謝る必要はない。お前は命がけでサクラを運んでくれた。ありがとう。今サクラは救護室で手術の最中だ。きっと元気になる」(ベンケイ)
「そんな俺がしっかりしてればお嬢は・・・・」(サブロウ)
「どうせお前の言うことも聞かずに無理をしたんだろう。起こったことを教えてくれるか」(ベンケイ)
サブロウさんは起きたことを話した。
「ヒゴ・ヒュウガの方からスケルトンの鳥が来たと言う報告もあります。そちらに敵がいると言う事ね」(ハル)
「探索個所は森におおわれている。我々だけでは不確実だ。マリーに頼もう」(マイア)
そこに天狗族の女性が現れて手術が成功したと叫んだ。
ベンケイとサブロウが抱き合って喜んでいる。
私・マイア・ヨリトモさん・ヨシツネさんは探索の中心となっている天狗族の士気が下がらなかったことにほっとした。
しかし同じ六肢族でもライフルの弾を何発も受けても行動できた魔翅族に比べると天狗族はぜい弱だな。
今後は上空からの探索だけをさせないとまたやられてしまうわ。
探索の効率は下がるけど探索で人命を失う訳には行かない。
ヨリトモさんと相談してベンケイさん達に明日からも上空からの探索に専念して貰って、敵は追わないことを徹底して貰おう。
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ワ国 アソ 敵基地
「ミッテランから次のアジトを調達できたって連絡が有ったわ。どうしますか?」(部下B)
「よし、明日の朝一番に引っ越しだ。もうここで出来ることはない」(敵首領)
「鳥を使った鬼ごっこももう終わりかつまらなかったな」(部下A)
「引っ掛かったのは一人だけでしょう。誰も引っ掛からないわよ」(部下B)
「ゲイルはどうします?連絡方法が無いですが」(部下C)
「あいつは見つけ次第殺せ!裏切り者だ」(敵頭領)
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シモノセキ 拠点 ハル
「ええい離せ!俺は行くぞ。寝ていられるか」(サクラ)
救護室の前で天狗族の女性に捕まえられてるサクラが居る。
「あなたはまた迷惑を掛けたいのですか?」(ハル)
「うるさい!ワ国に住まぬ者が言うな!!」(サクラ)
「サクラ!!」(ベンケイ)
ベンケイは振り向いたサクラの頬を思い切り叩く。
「お前の傷はまだ完全に治っているか分からんのだ。大人しくしていろ」(ベンケイ)
クルクルと回って倒れたサクラは跳ね起きる。
「俺はもう治った!昨日の奴に仕返しをしなきゃなんねえ」(サクラ)
「馬鹿者!お前の私情でサブロウは死ぬところだったのだぞ」(ベンケイ)
「え、・・」(サクラ)
「サブロウがお前を助けられたのは運が良かったからだ。マスケットが二丁だったらサブロウも撃たれていた。それにここに来るにもお前を抱えてこの近くで力尽きた。それを救ってくれたのがハルさんの目だ。さらにエルザさんが手術してくれなかったらお前は生きていない。多くの人が助けた命をお前はつまらぬ意地で捨てようと言うのか。そんなことは神が許そうと俺が許さん!」(ベンケイ)
サクラは私の方を向いて地べたに正座した。
「あなた方が生かしてくれたこの命、無駄にしないと誓います」(サクラ)
そして平伏して感謝した。
その日の探索は何も無かった。次の日エルザが基地の後を発見したが何も残っていなかった。
敵はワ国を撤退したと結論が出た。
その次の日ジュンヤ様も来るのでキョウトまで戻り、天王に礼を貰った。
ワ国を去る日、ヨリトモ達が集まった。
「ジュンヤ殿、貴公には返し切れぬ恩を賜った。もし、ジュンヤ殿が戦をするときに呼んで頂けばワ国の健児すべてがあなたの元へ馳せ参じよう」(ヨリトモ)
「我らも同じ思いである。天狗族の名に懸けてジュンヤ殿と共に戦うことを誓おう」(ベンケイ)
「あのー、申し訳ないが俺を連れて行って貰えないか。今回の事で自分の未熟さに気が付いた。あなた方の元で修行がしたいのだ」(サクラ)
「俺達の所に来るのなら隷属契約が必要だが構わんのか」(ジュンヤ)
「もちろん連れて行ってくれるのなら何でもする」(サクラ)
ベンケイは先に聞いていたのか頷いている。
この物語も終了が近付いて来ました。実力不足でなかなか物語を進められません。
配信が遅れるかもしれませんがお許しください。




