第五十九話 スケルトンと天狗少女
黄泉の軍団との戦闘が開始されます。
東大陸の戦乱を治めた俺は、竜人国の依頼で海賊退治をしていたが、それがきっかけでワ国を救援することになった。
マリーを除く眷属と聖獣達が昨日ワ国に向かったので、俺は一人でワ国に向かって飛んでいる。
途中昨日出発したワ国の船が二隻、帆走しているのが見えた。
北西風を受けてまさに順風満帆と言う奴だろう。
近寄って不足する物はないかと聞いたが、大丈夫と言われたのでそのままワ国に向かう。
ハル達の居る位置を検索するとアイさんの地図でハリマ辺りに居るようだ。取り敢えずそこを目指して飛んで行く。
居た、フクハラと呼ばれる場所に居る。東から西に向いて攻めているのがワ国軍で木の柵を挟んでスケルトンが西から東に攻めている。十万体は居るだろう。戦線は山から海まで二km位ある。
まずいな、こんな広い所で戦ってちゃ相手がまばらになって魔法が効きにくい。
ハル達の能力では受け持てるのは幅数十m、一番広いノーラでさえ百mと言った所だ。その間はワ国軍が埋めなければならない。昼は持っても夜は無理だろう。
俺はスケルトンの後ろ三km位離れたイチノタニと呼ばれる幅二百m位の砂浜に降り立ち、サブマシンガンの魔法百列で攻撃する。
スケルトンはこちらに向きを変え、押し寄せ始めた。
スケルトンは頭を砕くと動かなくなる。それ以外だと下半身を砕いても這って前進する。
とにかく頭の高さで弾丸をバラまく。
時々子供や獣の背の低いスケルトンが来るので照準合わせが面倒臭い
頭を砕かれたスケルトンは砂の様にばらけて無くなってしまう。
恐らく魔法で造られているのだろう。
時間が経つにつれ広い所から狭い所に押し寄せるため、密集してくる。
一回斉射するだけで数千体のスケルトンを倒してしまう。
一時間もやっていると敵が随分まばらになって来た。ここまで来たら敵が逃げないので殲滅にそう時間はかからないだろう。
こちら側の敵はほぼいなくなったので刀で両手両足を切断したスケルトンを観察してみる。この状態でも俺を攻撃しようとしている。
俺はマリーに念話を繋いで分析を依頼する。マリーの精霊エレクトロンはアイさんを使っていろんな分析や解析が出来る。
横にしたり、ひっくり返したりしてみた。
『これは、死者の残留思念を中心に魔力で作られたものです。頭蓋骨が魔石の様になっており、簡単な命令をこなすことが出来るようです。この魔力量だと作ってから一か月くらいは補給なしで動くでしょう。一種のゴーレムと思って貰えば良いでしょう』(マリー)
『なぜスケルトンに?目的は?推測してくれ』(ジュンヤ)
『スケルトンにしたのは肉体を持たすより魔力を節約できるから、また残留思念から形状を作りやすいという利点があります。目的はやはり人類の撲滅でしょうね。しかしここまでの事をしようと思ったらジュンヤさんかドラゴン級の魔力が必要でしょう』(マリー)
俺では魔力があっても残留思念を使って、自律型のゴーレムを作りだすことは出来ない。
強大な敵の予感がする。
『敵の本拠を探すときにまた協力をお願いするかもしれん。頼むぞ』(ジュンヤ)
『お任せください』(マリー)
俺に噛み付こうとするスケルトンの頭蓋を踏みつぶし、ハル達と合流しに行く。
俺はワ国軍の前線基地に来ていた。
「昨日タジマ・ワカサに居た黄泉の軍団もマイア殿達に殲滅いただき、今日ここハリマの軍団も潰えて、これで黄泉の軍団は全滅です」(ヨリトモ)
「まだこの軍団を造った者が居る」(ジュンヤ)
「こんなものを造れるものが存在すると言うのですか」(ヨリトモ)
「まず間違いない」(ジュンヤ)
ただどこに居るかが解らない。聞いてみると俺が居た日本と同じような地形らしい。つまりスケルトンが来た方向を探すと中国地方・四国・九州を探さなければならず、時間が掛かり過ぎる。俺もあまりヤマト国を空けるわけにもいかない。
どうするか悩んでいると外が騒がしい。
近くにセシルが居たので見に行って貰う。
セシルがすぐに戻ってくる。
「六肢族が居ます」(セシル)
「ええ!?」
俺は慌てて外に出るとヨシツネと六肢族が親し気に会話している。
修験者のような恰好をした親子連れみたいだ。背中には天翔族の半分しかない鳥の羽根が生えている。
「ヨシツネ、この方々は?」(ジュンヤ)
「タンバに住む天狗族のベンケイという方で、あちらでは俺達に協力してくれていたんだ。こちらはさっき話したジュンヤ殿だ」(ヨシツネ)
「あなたが黄泉の軍団を殲滅した軍の将軍ですか?。ベンケイと申しますよろしくお願いします」(ベンケイ)
ベンケイさんには、今まで会った六肢族みたいな傲慢さは無く、親しみの持てる人だった。
「ジュンヤです。あなたは四肢族と一緒に暮らしているのですか?」(ジュンヤ)
「いえ、普段は山の中で暮らしています。時々必要なものを物々交換しに里に下りるくらいです」(ベンケイ)
「ベンケイさんは俺の剣や勉強の先生だったんです」(ヨシツネ)
「私達は長生きなので人間よりちょっと出来るだけなのです」(ベンケイ)
うう、良い人、天翔族や魔翅族に爪の垢でも飲ませてやりたいぜ。
「おまえ、強いんだな。俺と勝負しろ」(ベンケイの娘)
「サクラ、失礼じゃないか!謝りなさい」(ベンケイ)
天狗族の少女が俺に百八十cmの棒を向けた。棒術をやるらしい。
うちで棒術と言えばセシルだ。ちょっと興味がある。
「ごめんね、俺は近接武器は苦手なんだ。代わりにこの子でどう。セシル」(ジュンヤ)
「はい、私がお相手します」(セシル)
「俺が勝ったらあんたが相手をするんだよ」(サクラ)
「じゃあ、セシルが勝ったら敵の本拠地を探してね」(ジュンヤ)
「いいとも、俺が負けるはずないけどな」(サクラ)
はい、言質を取りました。
セシルは収納から棒を取り出すとブォンと言う音をさせて回した。
サクラは下駄を脱ぎ、たすきを掛ける。
人が場所を空けて直径二十mの試合場が出来た。
「では双方魔法は禁止、有効打を先に当てるか参ったをするまで・・はじめ」(ジュンヤ)
サクラは裂ぱくの気合と共に走り寄り、上段からセシルの頭を狙って棒を振り下ろした。
セシルは棒を半歩横に避け、距離を一歩として右から短く持った棒を胴を狙って薙ぐ。
サクラは振った棒を半回転して縦に持ちセシルの棒を止め、跳ね上げる。
セシルは跳ね上げられた勢いで今度は左下から振り上げる。
サクラはそのまま後ろに跳ぶ。
セシルは中央で棒を止め、そのまま棒を伸ばし、自身も前進してサクラの胴を突く。
サクラの動作が大きい分セシルに攻められている感じだ。
セシルの棒を捻って避けようとするもサクラの背中の翼に入る。羽根が数枚、宙を舞う。
ダメージは無く、続行可能と見て宣告は無し。
「やるな。でもこれからだ」(サクラ)
「では、こちらもとっておきを見せます」(セシル)
棒を横にして体の正面で持ちながらサクラに無造作に接近するセシル。
セシルの目論見が解らずに棒を長く持って鞭のように振り回すサクラ。
一撃目二撃目を棒で弾きながら間合いを詰めるセシル。
五十cmの間合いで右下から顔面を狙って棒を振るセシル。
慌てて棒を引き寄せて防御するサクラ。
セシルの棒は引かれ、棒の反対側が左からサクラの脛を撃つ。
サクラは足元を刈られてうつ伏せに転んでしまう。そこへセシルが面を寸止めする。
「勝負あり、勝者セシル」(ジュンヤ)
サクラは立ち上がり、俺を見た。
「約束は守る」(サクラ)
そう言って人ごみに消えて行った。
「ジュンヤさん、サクラの事が無くとも天狗族は協力させて貰います」(ベンケイ)
「ありがとうございます」(ジュンヤ)
俺は取敢えずヨリトモの依頼は果たしたので一旦帰ろうかと考えていた。
俺は部屋を貰って皆を集めた。
「俺は一旦ヤマト国に戻ろうと思う。向こうの仕事を片付けたい」(ジュンヤ)
「こちらはどうしますか?」(ハル)
「それだが探索する場所が広すぎるし、相手が地下に居れば探索しきれるもんじゃない」(ジュンヤ)
「ではワ国を放って置くのですか?」(マイア)
「俺としては何人かを残して置きたい。敵が攻めてこないとも限らないからな」(ジュンヤ)
「私達は言葉が喋れないから残りたくない。もちろん敵が来たら戻って戦うが」(ノーラ)
そうか聖獣達にはワ国語がインストールできなかったな。
「じゃあ、ハル、マイア、エルザ、セシルの四人が残ってくれるか。俺も一週間後には戻ってくる」(ジュンヤ)
「分かりました」(ハル)
少し不満げだったが引き受けてくれた。
「ご主人様、つかぬことをお伺いしますが。ご主人様はワ国の出身ですか?」
俺の持つ刀や民族の特徴からそう思うのは当然か。
「違う。その話は結婚する前にはきちんと話すつもりだ。今は堪忍してくれ」(ジュンヤ)
「左様ですか。詮無いことを申しました。お許しください」(ハル)
「いや良いんだ」(ジュンヤ)
俺がパラレルワールドから来たことは誰にも明かしていない。
俺がこの世界に抱く違和感、それが解るまでは隠しておこうとも思っているが、結婚するなら話しておくべきだとも思う。
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ワ国 フクハラ 前線基地 夕方 ハル
ご主人様がヤマト国へ鉄道施設計画や農業計画の会議にマリーさんを伴って戻ってから三日、特に進展はない。
ヨリトモさんが私達の部屋を訪れた。
「中国地方の探索は終わったけど敵の進軍跡くらいしか発見できなかった。しかしそれが示すのは敵が九州からやって来たと言うことだ」(ヨリトモ)
「そうですね。今日より九州を探索していこうと思います。天狗族の方にもお伝え出来ませんか」(ハル)
「しかし、九州と言うのは遠すぎないか?この基地を前進すべきだという話が上っている」(ヨリトモ)
「でも基地を動かそうと思えば、かなりの日数が掛かるのではないか」(マイア)
「そうだな。その時間がもったいないか」(ヨリトモ)
考えていたハルが顔を上げた。
「船です。竜人国に行ったような船はありませんか?」(ハル)
「そうか、フクハラには小さな船しかないがオオサカに行けば大きな船がある!!」(ヨリトモ)
ヨリトモは叫ぶと部屋から慌てて出て行った。
船を前線基地に仕えれば探索も大きく効率が上がる。
ご主人様が来るまでに敵を見つけることが出来るかも知れない。ほめて貰えるかな?
次回、敵の拠点を探索します。




