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第六話 隷属契約とオーク退治

いよいよ新しい村造り開始です。

 村の外れにプレハブを設置して夕食の準備に掛かる。昼は移動しながらのおにぎりだったので夕食は肉にしよう。あのオーク肉はどうだろうか。

 ここでは燃料となる枯れ木も無いので七輪と炭を出す。カセットコンロを女神さまに頼んだら却下されたので七輪と炭になった。ファイアで着火し風魔法で空気を送る。炭も有限なので手に入れる算段をしなくては。

 炭が熾ったら土鍋でご飯を炊く。その間にオークの肉を薄切りにする。

 ご飯が炊けたらフライパンで豚肉を炒めて生姜焼きのたれで味付けだ。良い匂いが辺りに広がる。

 ちょっと味見をする。おお、高級豚並みのおいしさだ。

 俺もこちらの世界に慣れてきたようだ。


「おいしそうな匂いね。今日は何」(ノーラ)

 ノーラが覗きに来た。

「オークの生姜焼きだよ」(ジュンヤ)

 皿に盛ってキャベツの千切りを添える。

 ご飯を茶碗によそって出来上がりだ。


「肉でキャベツを包んで食べてごらん」(ジュンヤ)

「おいしい、でもちょっと辛いわ」(ノーラ)

「ご飯を一口食べてごらん」(ジュンヤ)

「おいしい。御飯がこんなにおいしくなるなんて」(ノーラ)

 ノーラの顔は満面の笑顔となった。こうしてれば可愛いのにな。


 アステルも同じようにして食べる。

「おいしいです。これでは毎日食べてしまいますね」(アステル)

「君達が食べたものってどうなるの?」(ジュンヤ)

 トイレ行ってないよね。


「僕たちが食べたものはすべて魔力に変換されますが、そこそこ時間が掛かるので魔力を直接貰った方が手っ取り早いです」(アステル)

 アステルがそう言ってさらに続けた。

「でもこれじゃあ、やめられなくなりそうです」(アステル)

 本心で言ってくれてるようなので嬉しい。

「まあ、俺が持ってる調味料のある間だけだけどな」(ジュンヤ)


 その時、後でごくりと唾を飲む音がする。

 振り向くと猫少女が居た。え、何の気配も感じなかったけど。まるで忍者だね。

「あれ、君は会議に参加しないのか?」(ジュンヤ)

 今、村では会議のやり直しをしている。

「アタイは孤児で女だから参加できないんだ」(猫少女)

 そうかだから、精霊への使いに命がけで来たのか。孤児で女だと人権が無いと一人痛感する。


 猫少女は口から垂れるよだれを手で拭っている。

「君も食べていきなよ」(ジュンヤ)

「え、良いの?」(猫少女)

 食べさせなきゃ可哀そうだよね。

「ああ構わないよ」(ジュンヤ)

 生姜焼きとご飯をよそって箸と一緒に渡してやる。

 肉とご飯を交互に食べてる。

「おいしい、ウッ」(猫少女)

 猫少女の目から大粒の涙が零れた。


「どうした、また喉にご飯を詰まらせたか?」(ジュンヤ)

「ううん」(猫少女)

 猫少女は首を振る。

「アタイ、親が死んでから優しくされたことが無かった。どうして優しいんだ?」(猫少女)

「それは君が人を思いやれる良い子だからだよ」(ジュンヤ)

「ホントに?アタイ、あんたとずっと一緒に居たい。駄目か?」(猫少女)

「ずっとって言うのは無理だけど、ここに居る間で君が皆の為に働いてくれるなら良いよ」(ジュンヤ)


 ここに居るということはこの村を守るということになった時だ。隷属契約するからいいだろう。

 この軽く引き受けた言葉が猫少女の一大決心だと思わずにのちに大変なことになるが、今はまだその兆候は見られない。


「なあなあ、今日も泊めてくれよ。アタイ、ノーラ達とも仲良くなりたい」(猫少女)

 猫少女の申し出をノーラとアステルに確認する。

「断る理由もないから良いわよ」(ノーラ)

「仲間が増えて嬉しいよ」(アステル)

 二人が快諾したので一緒に寝ることにした。話も出来ないのにと思いつつ、まあいいかである。


 3人は寝室でしゃべっているのだが、猫少女には精霊獣の声が聞こえないので頓珍漢な会話が続いている。それでも猫少女も精霊獣の二人も結構楽しそうにしている。羨ましい感じがする。

 3人を先に寝かせると俺は村の様子を眺めていた。


 空を見上げると満天の星空だ。天の川の形まではっきりわかる。昔、田舎で見た懐かしい星空だ。

 明日ぐらいが満月か、月が綺麗だ。日本の月とは少し模様が違うようだ。兎の餅つきにはどう見ても見えないな。月が明るいと周りが良く見える。灯が無くとも無理なく歩ける。

 そう言えばに見せて貰ったこの大陸の地図は、正確ではないが前の地球に似た形はなかった。

 やはり異世界なのだなと再認識した。

 村人が此方に報告する様子も無かったので寝ることにする。


 朝が来た。3人に洗面器に水を入れて出してやる。3人並んで顔を洗っている。

 俺は朝食の用意をする。と言ってもおにぎりと作り置きの味噌汁だ。

 精霊獣の二人は食事は夕食だけで良いと言っていたので、俺と猫少女の分だ。

 朝食が終わって俺達は広場に行った。


 広場にはすでに村人全員が出ているようだった。

「誰が代表だ。話を聞こう」(ジュンヤ)

 村長が前に出て来た。頭を下げ、話し始めた。

「まず、謝りたい。申し訳ありませんでした。わしは代々村長をやって来ただけの家の男です。村人に良かろうと考えた事が皆をより混乱させました。このような村の危機を乗り切れる度量はありませんでした。つきましては代表を降りようと思ったのですが、引き続きやってくれと言われ、ずうずうしくも前に立たせて頂きました」(村長)


 村長は結構消耗している。村人につるし上げられたのだろう。

 村人に危機の内容を話さずに都合の良い条件を突き付けて交渉を決裂させてしまった。

 聞いていてそりゃそうかと納得してしまった。今まで交渉事とか目下の者としかやってなかったのだろう。今回の事を反省しているようだから許してやる。

「分かった。続けてくれ」(ジュンヤ)

「村人全員の意見であなたと隷属契約を結びます。条件はありません。どうか我々を導いて下さい」(村長)


 条件を無しにしてきた。俺を信用してくれたようだ。俺は契約のやり方が分からないのでアイさんに任せる。

『アイさん、頼む』(ジュンヤ)

 アイさんが何かやってるのは解るが細部は不明だ。頼りになります。

『村人全員との隷属契約を結びました。ご主人様に無私の忠誠が捧げられました』(アイ)

「良し契約できた。まず名前の無いものに名を付けてくれ。すべての人の才能を使って貰わなければならないからな。個人の識別が大事になる」(ジュンヤ)


 何か全身に重りを付けられたような感覚だ。

 俺の対策はアイさんとも念入りに確認してある。かなり余裕があるはずだ。

 けどやはり緊張するなあ。 


「ご主人様、アタイに名前を付けてくれ」(猫少女)

 猫少女が俺に縋りついて来た。子供にご主人様と言われるとなんか犯罪臭がするな。

 そうかお前には親がいないんだったな。名前はそうだな。今は春か、ハルで良いか。

「良し、お前は今日からハルだ。お前には俺の身の回りの世話を命じる」(ジュンヤ)

 自分の中でハルとの絆がずんと深まった気がした。

「おう、分かった」(ハル)

「”はい、解りました”だ。ハル。これからはお前が俺のメイドだからな」(ジュンヤ)

「はい、分かりました」(ハル)

 ハルは嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねてる。ほんまに可愛いわ、この子。


「私は何をするの?」(ノーラ)

 ノーラが不機嫌そうに言った。

「お前の声は、俺以外聞えないだろ」(ジュンヤ)

「今、聞えた。ノーラの声が聞こえた」(ハル)

「ハルさん、僕の声も聞こえますか?」(アステル)

 アステルも聞いた。

「聞こえるよアステル。ハルで良いよ」

『隷属契約の絆で精霊獣の声が聞こえるようになったようです』

 アイさんが補足してくれた。


 ハルとノーラは手を取り合って喜んでいる。

 それをアステルが羨ましそうに眺めている。

「ノーラとアステルには俺の手伝いをして貰うから魔力を貯めといてくれ」(ジュンヤ)

「ふん、足らなけりゃあんたから吸い上げるから心配しないで」(ノーラ)

「任せてください」(アステル)


 それから俺は隷属契約で集まっている村人に今からの計画を話した。

「まず畑を荒らすオークを退治する。

 2番目は圃場整備と堆肥作りだ。田と畑と用水路を新しく作る。そしてそれに使う堆肥を作る。

 3番目は塩を売るルートづくりと護衛の兵隊を育てる。道も新設する。

 4番目は魔物の侵入を阻む壁造りと倉庫造り。

 5番目は各人の家造りと収穫。

 6番目は冬越しの準備だ。前後することがあるかも知れんがこれで行きたい」


 村人にこれからやる作業を説明して理解させる。

 まず、村長に各作業の代表者の選定をしておくように言っておいて、俺達はオーク退治に出発する。

 アステルに上空から探索をさせることにした。

 アステルがソアリングで周囲を見回す。

 暫くしてアステルが戻って来た。

「こちらの方向、1km位に6頭の群れがいます」

 アステルは東の方向を指差す。

 オークは日中に餌を探して数頭の群れで動く。


 落葉樹の森は草も少なく歩きやすい。1km位なら歩いて行こう。

 数百m歩いたところでノーラが地面の振動を捕える。

「これオークね。200m位先を右から左に移動してるわ」

 ノーラもオークの方向を指差す。

 俺は土魔法ライフルの構えを取って近づいて行く。


 見えた。木々を通してオークの姿を確認した。

 パーンッ

 ライフルの弾丸がオークの頭蓋骨を貫く。

 撃たれたオークが倒れる。

 何処から攻撃されたのかも分からず慌てふためくオークを撃ち抜く。


 2頭目が倒れた所で音の発生源を捕えたようだ。

 こちらに走り出すが悲しいかなオークの武器は良くてこん棒だ。数十m先に居る俺には届かない。

 近付いてくるオークを一頭ずつ倒していく。


 その日は午前中で合計21頭を退治した。このペースで行けば1週間もあれば討滅できる。

 帰ると堆肥用の木組みが出来ていた。

 森の中で落ち葉を集め、木枠に入れ生ごみなどと層状にして堆肥を作る。

 発酵はノーラが魔法で促進する。

 普通なら何カ月もかかる作業を1カ月でやるつもりだ。

 馬を3頭買った。農耕馬にする、人の10倍は役に立つ。

ええ、大きくなってるぅ。

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