第五十六話 錬金術師と竜人国
ソウキが鬼人国に残ると言って代わりに妹を紹介しました。
竜人国に行きます。
エルフ国の戦後処理を終えた俺達は一旦、鬼人国に戻った。途中マイアが人質の村に向かった。
マリーから鬼人国の様子を聞いた。
「・・・ですので上層部の隷属化が望ましいと思います」(マリー)
やはり、エルフ族への報復や賠償を諦められないらしい。
カツキ(新王)と相談だな。
俺達の使っていた部屋に行くとソウキとユキ姫、召使のジニー、それに小柄な鬼人族の娘がいる。
「あ、ジュンヤ様、ありがとうございました。皆様もありがとうございました」(ソウキ)
ソウキが俺達を見つけて頭を地面に付けんばかりにお礼を言ってくれる。
顔を上げると涙ぐんでいる。この顔を見れたので疲れが飛ぶようだ。
「ジュンヤ様、言いにくいのですが、私はこの国に残って復興に手を貸したいのです。つきましては私より優れた錬金術師の妹を紹介したいと思います」(ソウキ)
ソウキの事情を聴いた。
ソウキは代々この国に仕える錬金術師の家系で育ったのだが、前王が技術革新に興味が無く、ユキ姫に恋したのだが身分の壁を越えられずにやる気を無くし、燻っていたところで、ヤマト国の募集を出入りの商人から聞いて、いい機会だと応募したそうだ。父親も戦争で弱気になり代替わりを言って来ているのもあって、こちらに残ることにしたそうだ。
ヤマト国での仕事を始めたばかりなのに申し訳ないと何度も謝られたが、俺は本人が望むならそうすれば良いと言ってやった。
妹は天才的な才能があるし、成人した女なので、将来に希望が持てなかったのが、ここで兄の話を聞いて是非ともヤマト国に連れて行ってくれと懇願されたと言うことだ。
「タキと申します。兄に話を聞きましてヤマト国に行って働きたいと思いました。お願いします。連れて行って下さい」(タキ)
背の低い可愛い少女なのだが、やっぱりオデコには二本の角がある。
「お兄さんと交代と言うことで良いのかい?」(ジュンヤ)
「兄の仕事内容をまだ詳しく聞いてないのですが、兄の出来ることなら大丈夫かと思います。あ、でも研究とかが得意です」
「分かったよ。じゃあそこらへんはヤマト国で詰めよう。お兄さんの代わりがいないとうちも困るんだ」(ジュンヤ)
「隷属契約をしようか。大丈夫かな」(ジュンヤ)
「魔法が使えるようになるんですよね。お願いします」(タキ)
「ではあなた達の隷属契約を解除しましょうか」(ジュンヤ)
タキと契約してからユキ姫たちに言った。
「あの、出来ればそのままにしておいて貰えると復興に魔法が使えるのでありがたいのですが」(ソウキ)
「私も魔法は使えるし、姫様と内緒話が出来るのでこのままの方が良いのですが」(ジニー)
「そうですね。特に不便はありませんし、出来れば国民全員と隷属契約を結んでいただければ、人を疑うこともせずに済むのですがどうでしょうか?」(ユキ)
「流石、姫様です。ヤマト国は全員隷属化しているのでしょう。我が国もそうしていただきましょう」(ジニー)
「いや、隷属化を拒む人は隷属化していない。住む場所は分けている。それに出来るだけ隷属化はしたくない。人道的に問題があるからな」(ジュンヤ)
「宗教と同じことではないでしょうか。ジュンヤ様の教えを守るだけの事ですから」(ユキ)
「宗教と違って俺のは強制的だ。正教会の勇者にも指摘された」(ジュンヤ)
「そうですか。私は問題ないと思うのですが」(ユキ)
新王カツキは執務室に居ると聞いたので俺はカツキの元に向かった。
カツキにはマリーからエルフ国での詳細が連絡されているので新たに話すことはない。
部屋に入るとカツキの向かいにオスカーが座っていた。
「オスカーも来ていたのか」(ジュンヤ)
「もちろんです。僕は勉強するためにあなたの所に居るのですから、こんな場面に来ないわけにはいきません」(オスカー)
「それで新王と何を話していたんだ?」(ジュンヤ)
「戦後の体制に着いてです」(オスカー)
「相変わらずとんでもない10歳だな。それで結論は出たのか」(ジュンヤ)
「それは新王陛下から言って貰いませんと」(オスカー)
俺がカツキの方を見るとフーと息を吐くと話し始めた。
「やはりマリーさんが言っていた幹部全員をジュンヤ殿に隷属させるのが一番簡単で確実な方法ですね。いくら考えてもこれ以上の案はありません。今上層部を集める命令を出しておりますので、しばらくお待ちください」(カツキ)
「それにしてもオスカー殿には驚かされた。私もうかうかしておれません」(カツキ)
「いや、こいつが異常なだけだと思うぞ」(ジュンヤ)
「何気に失敬ですね」(オスカー)
オスカーの奴、最初は姉の後ろに隠れてる気弱な奴かと思っていたのだが、あれは警戒して本性を隠していただけだった。
後10年も経てばこの大陸最大の政治家になっていそうだ。
上層部が集まるのに一週間ぐらいかかるそうなので、先に竜人国の方になるかな。
さっきミカヅキから連絡が有って、女王に謁見しているらしい。
『ジュンヤ様、今よろしいでしょうか?』(ミカヅキ)
言ってるそばからミカヅキから念話だ。
『どうした、問題か?』(ジュンヤ)
『いえ、女王様が話し合いたいので都合を付けてくれと仰っています』(ミカヅキ)
『ちょうど空いたところだ。明日でも良いぞ』(ジュンヤ)
『では、こちらの予定を伺います』(ミカヅキ)
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『女王様が明日の午後はどうかと?』(ミカヅキ)
『分かった。十人ぐらいで行くと言っておいてくれ』(ジュンヤ)
今夜俺達は部屋を貰って鬼人の城に泊り、明日朝竜人国に向かうことにした。
俺は部屋に全員を集めた。マイアも村人が村に住みたいというので置いて来たみたいだ。
俺はこれまでの事を大まかに説明する。
まず出て来たのがアーモデウスという商人だ。いたる所で俺達の悪評をバラまき敵対勢力を増やしてきた。
クレアンスで教皇に俺の悪評を囁いて死んでしまった。まだ教皇は俺を疑っている。
エルフ国を操ったのはゲイルと言う人間だ。彼は転生者らしい。ミニエー銃を作ったから確実だろう。
彼は魔翅族にも伝手があり、魔翅族の戦士10人を用意していた。
「それではガーランドに居た魔翅族もゲイルの仕業なのですか」(オスカー)
「多分な。アーモデウスを通じて魔翅族を送り込んだのだろう」(ジュンヤ)
「そいつの目的は何でしょう」(マリー)
「一つは俺の評判を落とすこと。もう一つは再度この大陸に戦乱を巻き起こすことだと思う」(ジュンヤ)「その企みをジュンヤさんが潰してしまわれたんですね」(マリー)
「教皇には誤解されたままだけどな」(ジュンヤ)
「それでゲイルは何をしたいのでしょうか?」(カツキ)
「各国の戦争を激化させ、そのすきを狙い魔翅族を使って、この大陸の征服では無かったかと思う」(ジュンヤ)
「姿を晦ませたところを見るとまだ諦めていないでしょうね」(マリー)
「いや、この大陸はもう無理だろう。すべての国に俺の通信員を置くつもりだ。異常があればすぐに対応できる。俺達の実力も見せたし、奴もそれが解っているはずだ」(ジュンヤ)
「国を閉ざしていたことで情報が遅れ、被害を大きくしたと言うことですね」(カツキ)
「俺達にしてもソウキが居て、ユキ姫を知っていなければ参戦も難しかったからな」(ジュンヤ)
「ソウキ、改めて礼を言います。ありがとうございました。私達は国を失うところでした」(ユキ)
「え、いえ、いや、全てはジュンヤ様のお陰です」(ソウキ)
惚れた女に礼を言われ、ドギマギしているソウキを見るのはほっこりして楽しい。
二人が結ばれるのかどうかは難しい所があるし、俺が口を出すことでもない。
俺としては短い間ではあったが俺の元に居てくれたソウキが幸せになってくれればと思うだけだ。
「それで竜人族をどうするおつもりですか?」(マイア)
「どうするって、あそこには通信員を置いてもらうのと国を開く提案をするだけだ」(ジュンヤ)
「女王たちを隷属化しないのですか?」(マイア)
「彼らがエルフ国や鬼人国みたいに危険思想を持っていなければ必要ないだろう」(ジュンヤ)
「俺はな、10年も経てば戦争を愚かな行為だと思えるようにこの大陸を作り変えたい。そうなれば隷属化を解除するつもりだ」(ジュンヤ)
「では我々を属国化するつもりはないと仰るのですか?」(カツキ)
「当然だ。この大陸が平和になったら俺は人を使って、各国で産業革命を起こしつつヤマト国で上げた収益で、この娘達と悠々自適な生活を送るつもりだからな」(ジュンヤ)
「世界の王はやらないのですか?」(マイア)
「正教会の教えはこの大陸だけだろ。他の所まで面倒見切れないよ。一生を戦乱に身を置くなんて堪忍して欲しい」(ジュンヤ)
「マイアさん、ご安心を。他の大陸から助けてくれと言われたら”よし、いくぞ”と仰います」(ハル)
「やめてくれ。俺はそんなの真平御免だからな」(ジュンヤ)
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次の日、オスカーをガーランドの拠点に戻して、俺と眷属の5人、聖獣の4人で竜人国の首都に向かった。
竜人国の王城は日本の城に似ていたが天守閣は無い、堀に囲まれ漆喰の塀や櫓がある、実戦的な城だ。
流石に戦時中ではないので、直接押し掛けることはせずに門から案内を乞うことにする。
門の近くの建物に通される。靴を脱がされ、畳の間に通される。
俺は胡坐をかいて座るとうちの子達はキョどっている。
そうか、こんな場面で平面に座る経験が無いからどう座れば良いのかが分からないみたいだ。
俺は収納から昔の拠点で使っていた椅子を出してやる。正座が出来る訳ないから仕方ないだろう。
もしかしたらこの国の人間は他の国では畳の上に座らないことも知らないのかな?
15分くらい経っただろうか、ミカヅキと案内人が迎えに来た。
「ジュンヤ様、ご苦労様です。女王の所までご案内します」(ミカヅキ)
「ミカヅキ、お前こそご苦労だったな。ありがとう」(ジュンヤ)
「いえ、申し訳ありませんがジュンヤ様お一人でお願いします」(ミカヅキ)
ハルとマイアが気色ばんだ。
「敵対している訳じゃない。落ち着け」(ジュンヤ)
ミカヅキに着いて複雑な廊下を歩いて庭の見える部屋に通された。
女王はすでに座っていたが、上座ではなく同格の席が用意されていた。
鎖国してた割に柔らかい対応をする。油断できんな。
「ヤマト国主席、ジュンヤ・モチヅキだ」
刀を脇に置き、席に着いて名乗った。
「竜人国王、カナエ・ミナモトである。よく来てくれた」
四十台くらいだろうか、落ち着いた雰囲気の黒髪の美人ではある。
「お主、太陽の一族の末裔か?」(カナエ)
「いや、関係ないが」
そう言えば刀は太陽の一族が作っていたんだったな。ダナンが言っていた。
次回竜人国の女王の依頼で海賊退治に行きます。




