第五十四話 マイアとハルと俺対魔翅族
魔翅族との戦闘が決着します。
セシル、エルザが勝ちマリーも勝利を収めて俺達の所に戻ってきた。
「どうもこの戦いの絵をどこかに送っているみたいですね」(マリー)
戻ったマリーが開口一番に話した。
「どこかでこの戦いを見ている奴がいると言うことか?」(ジュンヤ)
「そうです。念話のような繋がりがずっと感じられます。順番を変えたのは動画の発信を出来るのがミハイルだからじゃないでしょうか?」(マリー)
「と言うことは勝てないと解っていても戦っているのは、俺達の戦い方を誰かに伝えるためか」(ジュンヤ)
「そうだと思います」(マリー)
成程な。ミハイルが順番を変えたのも負けると解っているような戦いを続けるのもそのためと考えるなら納得できる。
それが解ったところで彼らが脅威なのは変わらない。一人でも残せば国をひっくり返すぐらいの力は持っている。
「心配いりません。私が残りを片付ければ師匠とハルの情報は渡りません」(マイア)
「ずるい、私が片付けます」(ハル)
マイアの言葉にハルが反応する。
「勝ち続けているとは言え油断はするな。今の情報を手に入れても意味は無い。俺達はすごい速度で強くなっている。マイア行ってこい」(ジュンヤ)
油断は出来ないが、俺と仲間たちが強くなっているのは間違いない。
情報を隠そうとするより実力を出し切る方が重要だろう。
「はい!」
マイアは元気よく返事をすると中央に向かった。
相手は大男だ。
「俺はパーヴェル!行くぞ」
「マイアだ!」
二人はゆっくり剣を抜いて接近する。
マイアが上段に振りかぶり加速する。
パーヴェルは剣を上げ対応する。
マイアが消えた。少なくともパーヴェルはマイアの姿を見失った。
マイアはパーヴェルの2m程後方に姿を現す。
パーヴェルは胴を両断されていた。
マイアは上段に振りかぶることで相手の剣を上げさせて、電光石火で空いた胴を斬ったのだ。
ミハイルともう一人の魔翅族は呆然としている。
「アレクサンドル、見えたか」(ミハイル)
「いや、消えたようにしか・・・・」(アレクサンドル)
「初っ端から気功技で行け!お前の技なら通用するだろう」(ミハイル)
「そうだな」(アレクサンドル)
「師匠、戻りました」(マイア)
この子達って人を殺した罪悪感とか嫌悪感とかが無いよね。まあ、俺が来るまで戦国時代だったから仕方ないんだけども。
「よくやった。上達したな」(ジュンヤ)
「えへへへ、褒められたぁ」(マイア)
「今度は私です。見ててください」(ハル)
「マイアが素早く終わらせたから早めに仕掛けてくるかも知れん。注意しろ」(ジュンヤ)
「分かりました」(ハル)
ハルが中央に飛んで行く。相手は早くも定位置に着いて気を溜めている。
アレクサンドルはハルが定位置に着いた途端、剣を振る。
気功技だ!!。
アレクサンドルの気功技は一回の振りで3本の不可視の刃を放つものだった。
ハルはまだ剣も抜いていない。
ハルの右手が飛ぶ!、左足が飛ぶ!、胴が半分に斬られる。
「やったぞ!!」(アレクサンドル)
アレクサンドルはガッツポーズをする。
あ、バラバラに成った敵が消えていく。
アレクサンドルの右の頸動脈が後ろから切り裂かれ。意識が失われる。
崩れるように落ちていくアレクサンドルの後ろからハルが現れる。影分身だ。
ハルが振り向き叫んだ。
「ミハイルさんとやら!!あんた達弱すぎ!私が相手をしてあげるから出てお出で!」(ハル)
ミハイルは少し驚いていたが言葉を返した。
「最初に順番にやると決めたではないか!」(ミハイル)
「その順番を自分の都合で変えたじゃない!」(ハル)
ウッとなるミハイル。ハルに言葉で勝てないと思ったのか、俺に言って来た。
「ジュンヤ殿、頼む!俺と戦ってくれ」
ミハイルは俺の戦い方を伝える必要があるのか、もしくは俺に勝つ方法があるのかと言った所だ。
ハルは俺を心配してミハイルを煽っているだろう。可愛い奴だ。
俺が戦うのは間違っていると言われるだろう。相手は俺を殺せば勝利だからな。
しかし、俺にとって仲間が死ぬのは敗北だ。
「ハル!下がりなさい。俺が戦う」(ジュンヤ)
「でも、ご主人様!あなたが死んだら私も死にます。お願いです。私に戦わせてください」(ハル)
「ありがとう、でも心配ない。勝つから」(ジュンヤ)
俺はハルの所へ行って頭を撫でててやる。
どうしてもハルがチビガリだった頃の印象が強くて、子ども扱いしてしまうな。
「お願いです。無事に帰ってください」(ハル)
ハルは泣くのを我慢して自分達の列に戻る。
「ジュンヤ殿、感謝する」(ミハイル)
「俺としてはこんな不毛な戦いは止めたいんだけどな。やめてくれないんだろ?」(ジュンヤ)
「申し訳ないがやめられないのだ」(ミハイル)
昔の武士みたいに主に忠誠を誓っているみたいだ。
「戦ってくれる礼に一つ教えよう。魔翅族の士官以上は特別な力を与えられる。これがそうだ!」
ミハイルはそう言うと苦しむように体を丸めた。
そして体を伸ばした時には、頭には大きなヤギの角、下半身のズボンは破れ剛毛に覆われた。
身体は一回り大きくなり筋肉が盛り上がっている。
「行くぞ」(ミハイル)
両腕を交互に振る。指先から10本の不可視の刃が俺に向かって飛んでくる。
俺は魔力障壁を張り、刀を抜く。気功技は見えなくても気配がするので技の内容が解る。
ミハイルは高速で突っ込んでくる。辛うじて腰に残っていた剣を抜き放つと八双から袈裟切りに斬りかかってくる。
まともに受けてはまずいので、上方へ逃げる。
ミハイルは急ブレーキを掛けて、俺を追う。
俺は重力を利用して上段から斬りかかる。
ガッキーン!!
刀と剣が衝突する。体重は俺の方が軽いので弾き飛ばされる。
飛ばされた勢いを利用して距離を取る。
ミハイルは不可視の刃を飛ばすとその後を追うように接近してくる。
俺は下方に逃げながら魔力を電気に変換する。
俺の集めた電荷に耐えられず周囲に放電が起きる。
「ビームライフル」(ジュンヤ)
プラズマ状になった金属をレールガンの理屈で発射する技だ。
真っ直ぐに伸ばした両手を電極にして、土魔法で出した金属に電流を流すと金属内部の抵抗によって膨大な熱が発生して、金属がプラズマになる。
プラズマが拡散しないように魔力障壁で包む。
プラズマは電流がさらに表面を流れ、ホーレンツ力によって撃ち出される。
プラズマはマッハ5を超える速度で、光の尾を引いて飛び出す。
有効射程は空気中では数十mだが貫通力は30cmの装甲を簡単に貫通する。
ミハイルは右に避けるが左足に当たってしまう。
膝から下が蒸発したミハイルは、それでも戦意を失くさない。
この技は発射前が派手なので相手に避ける動作を許してしまう。要改善だ。
ミハイルがこちらに突っ込んでくる。右手に剣を持ち、左手で不可視の刃を撃ってくる。
剣の腕はよく似たものなので、力で劣る俺は接近戦から逃げまくる。
飛行速度を落とさないようにして、氷の槍や炎のボールなどをぶつけるが撃ち落とされる。
ミハイルの速度も上がっているのでなかなか距離が取れない。
ひとつ思いついた。やってみるか。
「黒闇!」(ジュンヤ)
相手の視界や音など、外界の情報を一切遮断する闇魔法だ。
ミハイルの周辺が黒い闇に覆われる。
俺の黒闇ではもって数秒だが、その間にビームライフルの準備をする。
ミハイルは闇を振り切ろうと加減速を繰り返す。
闇が晴れた瞬間、ビームライフルを発射する。
向こうを向いていたミハイルが気配に気付いてこちらを振り返る。
彼の腹に大きな穴が空く。
「負けたよ。流石だ」(ミハイル)
口から大量の血を吐くと体が縮み始める。
もう少し剣の腕が立ったら危なかったな。
「お前は情報を何処に送っていたのだ?」(ジュンヤ)
「俺の上司にだ」(ミハイル)
ミハイルは完全に元の体に戻った。
俺はトリートで出血を止めてやった。話を聞きたかった。
「お前達の雇い主はエルフ族なのか」(ジュンヤ)
「違う、エルフ族は操られていたにす・・ぎ」(ミハイル)
ミハイルは風に吹き消されるろうそくの灯の如く、その生命の火を消した。
そして静かに落下していく。
それにしてもエルフ族が操られていたとは、彼らを殺し過ぎたのか?
「ご主人様」(ハル)
「師匠」(マイア)
「ジュンヤさん」(マリー)
「ジュンヤ様」(×5)
婚約者の3人とエルザとセシルそして聖獣が3人が抱き着いて来た。え、もう一人は?。
「あなた達、飛ぶのが速いのよ。アステル、私を連れてかないと駄目でしょうが!」(ノーラ)
「あー、ごめん」(アステル)
ノーラは俺の前に来るとビッと指差した。
「アンタはもうヤマト国の代表なんだから戦っちゃ駄目!、アンタが死んだら私達は路頭に迷うんだから。ううん、私達だけじゃないわ。ヤマト国の人達も、あんたが助けて来た西大陸の人達もよ。分った?」
ハルかマリーには言われると思ってたけど、まさかノーラに言われるとはな。
「分かったよ。もうしない」(ジュンヤ)
「本当に、あんたが死んだらと思ったら目の前が真っ暗になって、ものすごく怖かったんだから」(ノーラ)
ノーラが泣きそうな顔をしている。
思えばこの世界に来て最初に会ったのがノーラだった。いつの間にか感情が豊かになって成長したんだなあ。
のんびり感慨にふけってるわけにもいかない。
「エルフの王城に行くぞ!魔翅族の雇い主がいるかもしれん。マリーは残って魔翅族の脅威は去ったことの連絡と鬼人族の動向を監視してくれ。ボルクはガーランドの拠点へ行ってソウキを鬼人族の王城に運んでくれ」(ジュンヤ)
これを期に鬼人族も戦国時代の終わりを意識させなければならない。
俺もこの戦いでこの大陸の未来を意識せざるを得なくなった。
手っ取り早いのはヤマト国の様に隷属させることだろうが、勇者に指摘されたように頻繁に使える手ではない。
東大陸をどうしていけば平和な未来を与えられるのか、なかなか答えが出ないが、多くの犠牲に対して平和を築くことが俺の使命だと思う。
マリーが鬼人族の王城に着き、新王やユキに謁見する。
「魔翅族10人を葬って、ジュンヤの勝利です」(マリー)
エルフ国は何者かに操られていたことなども話した。
「オオーッ!これで我が国は救われたのだな」(新王)
「はい、ジュンヤはそのままエルフ国に乗り込んで、戦後処理をします。まず戦闘は起らないかと思います」(マリー)
身を盛りだした新王は、ふーと大きなため息をついて緊張を解いた。
「お待ちください!我が国を交えず、戦後処理とは一体どういう了見ですかな」(大臣)
「何か、有益なご意見があればジュンヤに伝えますが?」(マリー)
「賠償金や領土割譲などを戦勝国として要求しますぞ」(大臣)
「そうですか。我々には有益とは思えませんので、そちらで交渉頂けますか」(マリー)
大臣は驚き、聞き直した。
「我が国に単独で交渉せよと言うのですか」(大臣)
「はい、我が国はソウキと新王の依頼により戦いましたが、鬼人国軍と連合したわけではありませよ。
なんならジュンヤが帰ってきたら、エルフ国にあなたをお連れしましょうか?」(マリー)
わし一人で行ったら殺されるじゃないか。
「ググッ」(大臣)
次回、エルフの国に行きます。




