第五十三話 セシルとエルザとマリー対魔翅族
魔翅族との戦闘の続きです。
魔翅族との戦いは聖獣達が無傷の4連勝、敵のリーダーのミハイルが順番の変更を希望した。
精霊が覚醒していないセシルの戦いが始まる。無事に戻ってくることが出来るか心配だ。
敵が出て来た。セシルも中央に飛んで行く。
「アタイはアンナお前は?」(アンナ)
「私はセシル、行くぞ」(セシル)
相手は女の魔翅族だ、胸に膨らみも確認できる。
待てよ、今まで何の疑問も持たずに見ていたが、どうしてこんなにも人間に似ている。
しかも、妊娠授乳期でもない時期に胸に乳房の有る動物なんて人間しかいない。
この世界の進化には誰かの意思を感じる。
いや、今はセシルを見なくては。
セシルは相手の熱線を搔い潜って、薙刀を一閃させる。アンナも接近戦用に槍を持っている。
アンナは一歩退いて躱すと手を伸ばして熱線を発射する。
セシルは薙刀の刀の部分で熱線を反射させる。そして左手でピストルを発射。
パン、パン、パン。
アンナは魔力障壁を張る。弾丸が跳ね返される。
すかさずセシルが突く、先端には障壁を阻害する魔力を付加しているので魔力障壁を貫通する。
アンナは槍を横に持って背を低くして、柄で薙刀を跳ね上げる。
そして槍を横殴りにセシルに向けた。
セシルは流れるように薙刀を脇に立てて柄で止める。
薙刀はそのままアンナの頭部に振り下ろされる。
決まった。そう思った時、アンナの姿が消えた。
いや、一瞬に速度が上がって、セシルの脇を抜けたのだ。
アンナは振り返ると槍を突き出した。すべてがコマ落としの様に速い。
こいつの気功技はスピードアップか、マイアと戦った奴は移動速度だけだったが、こいつは動きも速い。
突き出された槍をセシルは振り返りながら石突の方の柄で押して躱すが、すぐに引かれて再度突き出される。
刃の方で刺突を逸らすが、対応が少し遅れてセシルの左肩に掠る。
その後も高速度の連続突きを放つアンナ、体に当たらないように逸らすセシルがしばらく続いた。
腹が立ったのか顔を突くアンナ、「今だ!」セシルは下に思い切り飛ぶ、しゃがみながらのそれはアンナの目から消えたように映った。
「こっちはマイアさんに空中での接近戦の練習をこれでもかってぐらいやらされてるの」(セシル)
そうか、あの時マイアは慣れない空中の接近戦で苦戦したのか。それでセシルに空中戦の練習をさせてたんだ。マイアよくやったぞ。
セシルを一瞬見失ったアンナに向けて、セシルがサブマシンガンの魔法を放つ。
慌てて魔法障壁を張るが数発当たってしまう。
しかしサブマシンガンの威力では魔翅族の筋肉は貫けない。
「そういや、ハルさんがライフル撃っても穴が空くだけだって、言ってたの忘れてた」(セシル)
「クックックッ、最後のチャンスを逃したねえ」(アンナ)
「そうでもないよ。アンタの弱点は二つだ」(セシル)
再び正面で向き合った二人。
「死にな、キエエエッ」(アンナ)
凄い速度で刺突してくる。
セシルは今度は上に跳ぶ。アンナも後を着けるが徐々に離される。
「一つは加速はアンタの方が上だけど、最高速は私が勝ってる」(セシル)
アンナは追うのを諦めて、一カ所にとどまって熱線で攻撃する。魔力障壁を張っているセシルには無意味だ。
セシルは最高速のままアンナに突っ込んで行く。
「スピットファイア!!」
スピットファイアを連射する。
アンナは魔力障壁を張る。
魔力障壁に阻まれてスピットファイアは爆散する。
「クッなにも見えねえ!」(アンナ)
連続の爆散が終わった時、アンナが見たものは、セシルが自分を突いてくるところだった。
アンナは自分の心臓が貫かれたことを感じられたかどうか。
アンナは驚いた表情のまま落ちて行った。
「アンタのもう一つの弱点は一つの事しかできない事。魔力障壁を張りながら加速出来ない。だから魔力障壁を張っている時には突然の攻撃を避けられない」(セシル)
セシルが戻ってきた。
「よくやった。こんな頭脳戦が出来るなんてすごいぞ」(ジュンヤ)
「えへへへ」(セシル)
セシルの頭を撫でてやる。
後でマイアが難しい顔をしている。
「どうしたマイア」(ジュンヤ)
「暗にお前には、頭を使った戦闘は出来ないぞって言われてるような気がするのですが」(マイア)
「そ、そんなことはないぞ。お前が空中戦を想定してくれていなかったら危なかったかも知れないからな」(ジュンヤ)
少し頭を過ったことは内緒だ。
「先輩として当然ですよ」(マイア)
機嫌が治ったようだ。よかった。
次はエルザだ。
「エルザどうだ、大丈夫か」(ジュンヤ)
狐の耳がピクピク動いて、出て来た言葉に驚かされる。
「これはジュンヤはん、エルザの母です。いつもエルザがお世話になってます」(キュービ)
「もう、お母さんいきなり出て来ないで。恥ずかしいでしょ」(エルザ)
なにか、中学の授業参観に来た母親に挨拶される、若い担任の先生みたいな構図だ。
「何を言うとんや、こういうことはちゃんとしとかなあかん。もしかしたらアンタの旦那さんになるかも知れへんし」(キュービ)
「な、何言ってるの、そ、そんな事分かんないでしょ」(エルザ)
聞いている分には微笑ましい母娘の会話なんだけど、真っ赤になったエルザ一人で喋ってるんだよね。
「済みませんが戦いの最中なので、それぐらいにしておいてください」(ジュンヤ)
「あらーいやや、うち、恥ずかしいわあ!そやけど戦いは任せておくれやす。めっちゃくっちゃにしたりますから」(キュービ)
「戦うのは私!でも危なくなったら助けてね」(エルザ)
「まかせとき!!」(キュービ)
ボンッと言う音と共にエルザの尻尾が9本に増える。エルザの戦闘モードだ。
「行ってきます」(エルザ)
エルザは中央に飛んで行く。敵から出て来たのは女性型の魔翅族だ。
「私はエリーゼ、お前は?」(エリーゼ)
幾分、硬くなっているようだ。ここまで負け続けているのだから仕方ない。
「私はエルザ、掛かってきなさい!」(エルザ)
エルザは自然体のままだ。
「なぜ、武器を持たない。馬鹿にしているのか」(エリーゼ)
「私に武器は必要ないわ」(エルザ)
エリーゼは牽制の熱線を連射する。
エルザは微動だにせずにいるのに熱線が手前で消えてしまう。
身体の正面から出た魔力が、後ろに回って九本の尻尾に吸い込まれていく。
まるで地球を守る磁力線の様に。
その魔力が熱線を通さないのだ。
エリーゼは恐怖して、ミハイルの方を振り向く。ミハイルは首を横に振る。
意を決した顔をするエリーゼ。気力を溜め始める。
エルザは自分の周りに直径1mの10個の水球を作る。
次の瞬間水球は伸びて、凍り付き長さ3m位の鋭い槍になる。
エリーゼは気功を数十本の槍の形にしてエルザに投げる。
そして自身は剣を抜き気功の槍の後を追う。
そして二人はぶつかる。
いや、それは正しくない。
気功の槍は魔力の球にすべて弾かれ、剣を振りかぶったままのエリーゼには10本の氷の槍が突き刺さり、エルザの手前で絶命していた。
エルザの魔力球が収まるとエリーゼは静かに落ちて行った。
それにしてもエルザの異次元の強さは、エルザのお母さんは一体何の属性を持つ精霊なのか?
水球を作ったのは水の属性、凍らしたのは風の属性、これは俺でも出来る。
だが、魔力球を作ったのは属性の無い魔力放出と吸収だ。これは俺は再現できない。
エルザが帰ってきた。
「どうでした?あれでよかったですか?」(エルザ)
「ああ、よくやってくれた。あの魔力の球はどうやっているんだ?」(ジュンヤ)
「えーと、お母さんに教えて貰ったので、どういう理屈かとかは分かりません」(エルザ)
お母さんに聞いてみるか。
「で、お母さんは?」(ジュンヤ)
「疲れたから寝るって。申し訳ありません」(エルザ)
頭を下げるエルザに俺は慌てた。
「良いんだよ。疲れたんなら仕方ないよね」(ジュンヤ)
どうも母親から秘密を聞き出すのは難しそうだ。
次はマリーだ。
そう言えばマリーって戦うの初めてじゃなかったっけ。確かエレクトロンって探索鑑定系だし、これはヤバイ。すぐにマリーの横に行った。
「マリー、君、戦うのは初めてじゃなかったけ?」(ジュンヤ)
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。私も眷属の一人です。こんな時も来るだろうと備えていましたから」(マリー)
マリーは済ました顔で言う。
マリーは俺達の所に来た当初は、父親達に認められたい欲求が強くて焦り気味だったけど、最近は落ち着きが出て来て、まさにクールビューティーって感じなんだよな。
「無理はするなよ」(ジュンヤ)
「はい」(マリー)
マリーは微笑んで中央に向かった。
その頃、敵陣では、次の戦士テリーナとミハイルが会話していた。
「恐れるな。恐怖は体を委縮させるぞ」(ミハイル)
「大丈夫です。必ず相手の実力を出させます」(テリーナ)
テリーナは敵に勝てるとは思っていない様だ。悲壮感が漂っている。
テリーナも中央に出る。
「マリーです。よろしく」
「テリーナだ。行くぞ」
テリーナは剣を抜き、高速でマリーに接近する。
マリーはエルザと同じく武器を持っていない。
マリーはエアグレネードを発射、テリーナは完全には躱せず体勢を乱す。
其処へマリーがスピットファイアの火礫を連射、テリーナは魔力障壁を張って防御する。
勢いを止められたテリーナは熱線を連射、隙を伺う。
マリーは魔力障壁で熱線を防御する。テリーナは再度接近を図る。
その時マリーは真後ろに敵の気配を感じた。
振り返れば前から迫るテリーナにやられる。
マリーは上方にタイフーン(強風)を放って反動で下方に逃げる。
上から剣を振りかぶったテリーナが迫る。
テリーナが剣を振り下ろす。
「タァーァァッ!!」(テリーナ)
マリーが頭から胴体を斬られた?
「そんな・・・」(ジュンヤ)
俺は驚きつつ激しく動揺する。
だが、マリーからは血が出ていない。どういうことだ。
「スピットファイアーッ!」(マリー)
「なに!!」(テリーナ)
至近距離からの火魔法を躱し切れずに肉羽を焼くテリーナ。
テリーナは躱しついでに上方に距離を取る。
テリーナは自分の右手の剣を見て、マリーを斬れなかった理由が分かった。
剣はクニャクニャに曲がって短くなっていた。
「どういうことだ」
剣を投げ捨ててテリーナが呟く。
金属結晶は自由電子と呼ばれる電子で結合している。マリーはこの電子を操って剣を変形させたのだ。
「気配はあったのに実態は存在しないのね」(マリー)
先ほどの気配が気功技ではないかと考えているのだが、まだ確定ではない。
マリーはテリーナと同じ高度に上りながら様子を見る。
「あなた、今までの人達とは少し違うわね」(マリー)
「当たり前だ。私は伍長だからな」(テリーナ)
剣以外の接近戦の武器は無さそうね。
マリーは確信すると接近していく。
テリーナは慌てて熱線を連射するが魔力障壁に阻まれる。
真後ろにまた気配を感じる。
魔力探索には反応はあるのだが、電波を使った電探には反応が無い。デコイ(偽物)だ。
「ストーンランサー」(マリー)
マリーの伸ばした指先から5本の黒い槍が伸びる。テリーナは魔力障壁を張り、避けようとするが串刺しにされる。
魔力障壁を無効化する魔力は体に繋がる物にならまとわせることが可能だ。
ストーンランサーが消えるとテリーナの体は宙に留まることは無かった。
次回も戦闘が続きます。




