第五十二話 レイコとアステルとノーラ対魔翅族
魔翅族との戦闘が続きます。
魔翅族10人が攻めてきた。彼らは一般兵一万人以上の力を持つと思われたので俺達10人で迎え撃つことにした。
ボルクとシュタインの戦いはボルクが勝って、まず一勝を上げた。
俺は中央に戦いに出たレイコを励まし、列の中央に戻ってきた。
相手のアンハルトが出て来た。魔翅族はのっぺりした顔なので見分けがつきにくい。さっきのシュタインより幾分細いか?
アンハルトが熱線を撃つことで戦いが始まった。
レイコは周囲にピンポン玉くらいの水の玉を浮かべている。熱線は水玉に当たると拡散屈折して用を成さない。
アンハルトは熱線での攻撃を諦めて剣を抜き、レイコに向け突進した。
レイコは直径3mの水玉を造りアンハルトの前に置く。アンハルトは避け切れずに水玉に入ってしまう。
水玉を形成する水は表面張力が高く球形のままだ。その中に入ってしまったアンハルトは剣を振り回すが外へは出られない。
次第に息が続かなくなるアンハルトは必死にもがくが水玉の中心から動けない。
アンハルトは魔力で下向きに飛び始めた。そして地面に激突して水玉を破壊した。
「ゲホ、ゴホゴホッ、くそー、よくもやりやがったな」(アンハルト)
そしてレイコの居た位置を見ると直径50mの楕円形の白い雲が浮かんでいる。
「気功刃!!」(アンハルト)
同じ高度まで上がりながら気功を鋭利な形状にしたものを雲の中に撃ち込む。
しかし全く手ごたえが無い。
雲は徐々に大きくなりアンハルトを包もうとする。
「くそ―どこに居やがる」(アンハルト)
アンハルトはすでに雲に覆われていた。手を伸ばすと手の先が見えないくらいの濃い霧の中に居る。
上下が解らなくなってきた。
「俺の射程距離から外れてしまうが一旦、雲の外に出なければ」
外から眺めた時には水平方向は広かったが上下はそうでもなかった。よし上に行こう。
アンハルトは上に向かって思い切り飛んだ。・・・ドッゴーン!!
地面に激突する。上下を間違えたようだ。
今度は水のクッションが無いので大きなダメージを負ってしまった。
ある程度の傷は自然に回復するが、どうも骨が何カ所か折れたらしい。
仕方が無い、回復するまでここで静かにしていよう。
どうせ、この霧の中では敵もこちらを探せまい。
突然、アンハルトの頭上の霧が晴れた。次の瞬間、彼の頭は蒸発した。
彼の頭上には水を使った巨大なレンズが浮いており、その焦点に彼の頭があった。
「私が作った霧ですよ。あなたの位置が解らないはずないじゃないですか」(レイコ)
そう言うと元の位置に戻った。
レイコの作戦勝ちだ。
敵が上下を間違えたのは、霧の濃度を調整して下からの明かりを少し強くしていたので、錯覚したのだ。
上が明るい方と感じるのは生物の習性だ。
後は彼の頭上にレンズを作って霧を晴れさせればいい。
次はアステルだ。彼の相手はイワンと言う。
やはり外観で区別がつかん。
今までの戦いで見ると熱線と気功技が彼らの攻撃方法だ。
「アステル、頑張れ」(ジュンヤ)
「レイコがスマートな勝ち方をしましたから負けられないですね」(アステル)
アステルが中央に出るとイワンも出て来た。
アステルの魔法は地面に居ないと効果が薄いが大丈夫か?
イワンが接近して攻撃する。
「気功鞭!!」
3m位を細く気功で繋ぎ、回転させながら先端にエネルギーを集める技で、先端速度は音速を超える。
アステルは射程外に逃げる。
イワンが追う、アステルが逃げる、を繰り返す。
アステルの方が空中での速度が速いから出来ることだが何を狙っているのか。
暫く経つとイワンがせき込み、苦しそうな表情をする。
「彼の周りの空気を暑く乾燥した空気にしといたんですよ」(アステル)
喉が極度に乾燥して呼吸が困難になったらしい。
イワンが正常に戻った。口から一筋、血が流れる。
口の中を食い切ったらしい。
「あちゃぁ、血で喉をうるおしたかぁ。想定外です」(アステル)
「もう逃がさんぞ」(イワン)
イワンが接近するとアステルも接近する。
イワンが吹っ飛ぶ。至近距離でエアグレネードを使ったようだ。
しかし空中では衝突エネルギーは、吹っ飛ぶことに多く使われるのでダメージは少ない。
アステルは気功鞭の間合いに入りそうになると、さらに接近してエアグレネード放つことで対抗していたが、イワンが剣を左手で持った。
アステルが間合いを詰めたら剣で対応しようと言うのだろう。
イワンは気功鞭の構えを取っていたが、アステルが間合いを近付けると剣を両手で握り、横に振った。
アステルはそれを上に除けて、上からエアグレネードを放つ。
イワンは下に吹き飛ばされる。
「ダウンバースト!!」(アステル)
風速200mの下向きの風にイワンはさらに地面に向かい加速される。
イワンに避ける時間はない。
高速で地上に激突した。
イワンはまるでミンチの様になり、肉片は辺りに吹き飛ばされた。地上に赤いシミを残した。
戻ってきたアステルにノーラが突っ込む。
「スマートにやるんじゃなかったの?」(ノーラ)
「あー、なんかごめん」(アステル)
「よくやったぞ」(ジュンヤ)
アステルは嬉しそうに笑った。
「ようやく私の番ね。あのでか物をばらばらにしてあげるわ」(ノーラ)
そう言って向かいからこちらに来る魔翅族を見た。
他の魔翅族と違って、筋肉がはちきれんばかりの巨体で、大きなハンマーを持っている。
ノーラが前に出ると敵が名乗った。
「俺はニコライだ。嬢ちゃんみたいな細かいのはすぐにペッチャンコにしてやるぜ」(ニコライ)
「フン、そんな偉そうなことは一回でも勝ってから言いなさい」(ノーラ)
「どうせ、俺と分隊長が居れば、お前ら全員に勝てるから、今までの負けは関係ないんだよ」(ニコライ)
「能書きは良いからさっさとかかってらっしゃい」(ノーラ)
ニコライはハンマーを振り回しながらノーラに突進する。
野良は横に避けて両手を広げると数百の礫が現れる。
行き過ぎてしまったニコライが振り返った瞬間。
「ストーンバレット!!」(ノーラ)
ニコライは片手で顔を隠すが超音速の礫が体中に命中する。
彼の肉羽は一瞬で骨だけになってしまうが体には傷一つない。
「痛かったぞ!小娘」(ニコライ)
「いやね、鈍感な男って」(ノーラ)
ニコライは明らかにノーラに届かない場所で、ハンマーを頭上に振り上げる。
気が充実していく。
「破城槌!!」
ニコライがハンマーを振り下ろすと気功で出来た巨大なハンマーが、ノーラの頭上に落ちてくる。
ノーラはとっさに下に加速して横に避ける。
「フーン、なかなかな威力ね。当たらないけど」(ノーラ)
「地上ならお前など煎餅みたいに潰してやったのに」(ニコライ)
「あら、地上なら勝てるつもり。羽根も破っちゃったし、良いわ、地上で相手をしてあげる」(ノーラ)
そう言ってノーラは地上に降りる。
「さあ仕切り直しよ」(ノーラ)
ニコライが地上に降り立つとそう言った。
「馬鹿な奴だ。地上では逃げることが出来ないだろう」(ニコライ)
ニコライはすぐにハンマーを振り上げ、気を集め始めた。
「心配しないで。逃げないわよ」
「破城槌!!」
ノーラの頭上を気功のハンマーが襲う。
ノーラは片手をあげてハンマーを受ける。
「馬鹿め!手で止められるか!!」(ニコライ)
破城槌の威力はノーラの手で停止して霧散する。
「そんなことが・・・」(ニコライ)
ノーラが両足を地面に着けたとき、その強度はこの星と同じになる。
「ストーンランサー!!」(ノーラ)
ニコライの足元から何本もの鋭い石の槍が飛び出す。
「グアアアアアア」ニコライは串刺しになる。
「ソード!!」(ノーラ)
石の槍が薄く広がりニコライを切り刻む。
あわれ、肉塊になって積み上がるニコライ。
ミハイルは驚いていた。ニコライの破城槌はこの分隊最大の威力を持つ。それを片手で止めるなんて、もしかしてこいつら全員がこの防御力を持っているのか?
それならば俺達は勝てない・・・・。順番を変えなくては大隊長がこれを見ているはずだ。
俺は中央に行ってノーラを労った。
「ご苦労さん、後で俺を見ていてくれ」(ジュンヤ)
「負けるんじゃないわよ」(ノーラ)
ノーラが下がってミハイルが出て来た。
「ちょっと待ってくれ。順番を変えたい」(ミハイル)
「どういうことだ」(ジュンヤ)
「ここまで負けるとは思わなかった。俺は最後まで見る必要がある」(ミハイル)
「ではどうする」(ジュンヤ)
「今まで西から順番にやって来たので、東から再度始めたい」(ミハイル)
そうするとこっちはセシル、エルザ、マリー、マイア、ハルか。
「もうやめないか?これ以上やっても意味ないだろう」(ジュンヤ)
「そう言う訳にはいかん。たとえ全員が敗れてもやり抜く」(ミハイル)
勝負にこだわらず、戦いに拘っているようだ。もしかしたら誰か見てるのか?
『見えている範囲内に敵は居ません』(アイ)
アイさんの索敵にも引っ掛からないんじゃ、居ないんだろうな。
俺はセシルの所に行った。
「・・と言うことで順番が変わった。いいか?」(ジュンヤ)
「はい、トリよりましです」(セシル)
セシルの精霊はまだ覚醒していない。
セシルの薙刀の腕は、元々棒術の基礎があったので、上達するのが速かった。
それに魔法の腕も上がっているので期待は出来る。
なぜ俺がセシルの勝つ材料を探しているかと言うと、前回の魔翅族戦で覚醒前のマイアがかなり追い込まれたからである。
前回はギリギリで精霊が覚醒して何とか勝ったが、今回のセシルがどうなるのか心配である。
マイアの話ではもうだめだと思うぐらいに追い込まれた時に覚醒したそうだが・・・・。
うう、胃が痛い。
次回も戦闘回です。




