第四十九話 エルフ侵攻と鬼姫
鬼人国がエルフ侵攻で悲惨なことに。
ガーランドのオリビアから通信が入った。エルフ国が鬼人国に侵攻を開始したという内容だった。
分かった事は三つ。
一つ、三日前、エルフ国が何の前触れもなく、国境を越えて攻撃を開始。
二つ、エルフ国は住民を兵にして前線に出している。女子供老人は人質になっているらしい。
三つ、二つ目と敵の射程距離の長いマスケットで鬼人国軍は敗退を重ねている。
ガーランドは湖を挟んで細々と交易をしているので、その線から情報を収集しているが、いかんせん施政者には届いていない。
ソルトレイク 市役所会議室 俺
市役所の会議室には俺、チャールズさん、市長、タマ、タマジロウ、タマサブロウ、デジレさん、俺の眷属達、聖獣達、ソウキ、ミカヅキ、そしてなぜかオスカーが集まっていた。
俺はガーランドに行って拠点を作って情報取集するつもりだとまず言った。
「頼む、鬼人国を助けてくれ」(ソウキ)
鬼人族のソウキが悲壮な声を上げた。
「施政者かそれに類するものに頼まれないと表立っては動けません」(チャールズ)
「ソウキさんは王族に伝手はありますか?」(市長)
「あります。第二王女と顔見知りです」(ソウキ)
「少し、弱いがどうでしょう」(市長)
「でも住民を盾にしているのでしょう。非人道的行為だと参戦しても良いのではないですか?」(タマ)
「それは証拠が無いと難しいでしょう」(チャールズ)
「では、ソウキを連れて行きましょう」(ジュンヤ)
「その射程の長いマスケットと言うのはこちらの連発銃とは違うのか」(デジレ)
「それは分かりませんが、そこまでの加工技術は無いでしょう。先込め式のライフル銃ではないかなと?」
(ジュンヤ)
「ミニエー銃か?」(チャールズ)
「え、」(ジュンヤ)
「あ、いや」(チャールズ)
なんでチャールズさんがミニエー銃を知っている?。後で確認しないといけないな。
取敢えず、マイア、ハル、エルザそれにソウキが先行して、ガーランドの女騎士ハンナ、オリビアと拠点を作ることになった。
「僕も行きます」(オスカー)
「何を言っているの。戦闘になるかも知れないのよ」(エルザ)
「僕は戦争を知らなければならない。戦争がどういうものかを知らなければ」(オスカー)
「分かった。でも後で俺と一緒に行こう」(ジュンヤ)
「はい!お願いします」(オスカー)
なんという子供だ。すでに施政者としてふるまおうとしてる。こちらにいる間は楽しく過ごさせようと考えていたが本人に皇帝になる覚悟が出来ているとは。
エルザは心配そうにしているが男の子が大きくなろうとしているのだ優しく見守ってやってくれ。
「ミカヅキ、もしかするとエルフ軍は鬼人国の次は竜人国を狙っているかもしれん。俺と一緒に来て同胞に危機を告げろ」(ジュンヤ)
「逃げた私に出来るかしら。いいえ、やらなくては同胞を失ってしまうのね」(ミカヅキ)
「私はどうしましょう」(タマサブロウ)
「取り合ず待機だ。人質を盾にしている以上まともには戦えない」(ジュンヤ)
軍で攻める訳には行かない。相手の軍の情報を集めて弱点をピンポイントに攻めるのだ。
結局情報が少なくて具体的な内容は無いが俺と眷属と聖獣で臨機応変に戦うしかないという結論で会議は解散した。
「チャールズさんは残ってくれ」(ジュンヤ)
人を払った会議室で俺はチャールズさんと向かい合っていた。
「チャールズさんは転生者ですか?」(ジュンヤ)
疑問をストレートに聞いた。
「それが解ると言うことはジュンヤ様もですか?」(チャールズ)
「俺は転移者です」(ジュンヤ)
「蒸気機関車とか、そうじゃないかと思っていました」(チャールズ)
「もしかしたら敵に覚えがありますか?」(ジュンヤ)
「一緒に転生した者がいました。私達は同じ孤児院に居ました。もう三十年も前の事です。我々は前の世界の知識はありましたがそれを作ることは出来ませんでした。そいつはミニエー銃ならこの世界でも作れるかと言ったのです」(チャールズ)
「そいつは?」(ジュンヤ)
「成人した時に分かれました。私はギズモニアで兵士になって手柄を立てて宰相まで駆け上がりましたが、そいつの事は聞いたこともありません。そいつの名はゲイルと言います。もしかしたら裏にいるかもしれません」(チャールズ)
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ガーランド ピラル湖畔 マイア
「拠点はここで良いです。私達は偵察に出ます。ここの準備はお任せします」(マイア)
「分かりました。マスケットより射程が長いので、あまり低くは飛ばないでください」(エルザ)
「分かりました。では行ってきます」(マイア)
私とハルは飛び上がって幅が100kmはある湖を飛び越える。
国境沿いに飛んで行くと点々と補給地点が見える。そこから私は鬼人国の方へハルはエルフ国の方へ向かう。
私は軍の通った後を追いかける。
王城を攻める軍を発見する。城に取り付いた兵は鎧も着ずに槍だけを持っている。
200m位離れた所に銃を撃つ兵がいる。これは鎧を着ている。
恐らく槍を持った人たちが鬼人族で、後ろで銃を撃っている兵がエルフ兵だろう。
王城は幾重にも囲まれていて蟻の這い出る隙も無い。
私は空から王城の中に入る。
「私はヤマト国の使者だ。第二王女のユキ姫はいらっしゃるか?」(マイア)
私は屈強な兵四人に囲まれて王の謁見の間に案内された。
私は武器は収納に入れていたので丸腰だ。身体検査されたが当然何も出て来ない。
兵達の検査が済むと王族らしき人達が出て来た。
ソウキと違って角が2本、肌も濃いピンクだ。赤鬼だな。
中央の玉座に座った王らしき人物が聞いた。
「お前はヤマト国の使者と申したそうだな。何の用だ」(王)
「私はマイア、我が国に居る鬼人族のソウキ殿から鬼人国援助の依頼を受けた。第二王女と面識があるそうだ。もし助けて欲しいならそう言いなさい。我が国には鬼人国と同盟する用意がある」(マイア)
王は王族の中の少女を見た。少女は黙って頷いた。
「同盟と言うがどうすれば勝てると言うのだ。相手は人質を前面に置いているのだぞ」(王)
「私は幾重にも囲まれた包囲を潜って来た。逆も簡単だ。これがどういうことか分かるな」(マイア)
「敵の後ろを攻撃するというのか?」(王)
「それだけではない。敵の補給路、前線基地も攻撃対象だ」(マイア)
「何人の兵が来てくれるのだ?」(王)
「10人だ。侮るなよ。3人でアルミア軍一万に勝った軍だ」(マイア)
「信じられん。わしを侮っておるのであろう」(王)
「仕方ないな。同盟が得られないのならここに居ても仕方ない。帰るぞ」(マイア)
マイアが腕を振ると突きつけられていた槍をすべてマイアが握っていた。
「大体槍を突きつけたままとは使者に対して失礼だろう。ユキ姫と言ったか?お前は助けてやろう、私と来るが良い。ソウキが待ってる」(マイア)
兵が槍を盗られたことに気付いて飛び掛ってきた。私は弱い電流を流して痺れさせた。
兵が気絶して私の周りに倒れた。
「心配するな気絶しただけだ。直に目を覚ます。」(マイア)
「私は国を見捨てて一人だけ生き延びることは出来ません。ソウキによろしく言っておいてください」(ユキ)
「そうか。血を残すことも一つの手だと思うのだが仕方ない」(マイア)
「ちょっと待ってくれ。無礼は謝る。済まなかった。お前が強いのは分かった。同盟を結んでくれ。条件はあるのか?」(王)
「エルフを国境外に出したら無条件で国交を開いてもらう」(マイア)
「それだけで良いのか?」(王)
「そうだ。同盟自体は同格だ。上下は無い。これが証書だ。署名してくれ」(マイア)
署名を確認して一枚は王に、一枚は収納にしまった。
「連絡要員を出来れば二人出してくれ。念話で話せるようにして送り返す」(マイア)
「私が参ります。それとジニーついて来て下さい」(ユキ)
ユキ姫は侍女に声を掛けた。侍女は頷いた。
「それで足りないものはあるか?」(マイア)
「水とマスケットも欲しい」(王)
「取敢えず、水とマスケットは100丁もあればいいか。それと火薬と弾だ」
収納に入れて来た物を出す。
「マスケットは後で回収するからな」(マイア)
いきなり現れた物資に王は空いた口がふさがらない。
ハルが突然現れた。
「あんたまた隠形で入って来たね!」(マイア)
「だって、見つかると面倒臭いじゃないですか」(ハル)
「同盟は結べた。そこの二人を通信員として拠点に連れて行くよ」(マイア)
「じゃあ、門とか土魔法で補強して置きましょうか?」(ハル)
「そうね。それが良いわ」(マイア)
私達は門とかの開口部を岩の壁でふさいだ。これでカノンを使うか空から入るかぐらいしか攻め手が無い。
敵にカノンが無いのは確認済みだ。
王たちは私達の働きを呆然と見ていた。
私達はユキ姫とジニーを連れて拠点に帰った。
拠点にはソウキが居た。彼はユキ姫の元に跪いた。
「ご無事で何よりです。及ばずながら私も戦います」(ソウキ)
「ソウキ!お前がヤマト国に進言してくれたのですね」(ユキ)
「ご安心ください。ヤマト国は良き人たちの味方です。きっと鬼人国を解放して下さいます」(ソウキ)
何か姫と忠臣ってより近しい感じがするんですけど、もしかして。
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その頃ソルトレイクではマイアとハルの見た映像を元に作戦が練られていた。
「おかしいですね」(オスカー)
地図に写し変えた、敵の配置や戦場痕を見てオスカーが呟いた。
「何がおかしいのですか?」(マリー)
「鬼人国って殆ど鎖国してるんですよね。なら相手の位置とか分からないじゃないですか。なのに真っ直ぐに王城まで攻めています」(オスカー)
「でもここいらの住人が人質になっているから道が解ったんじゃないかな」(マリー)
「そうでしょうか?布陣に隙が無さすぎます。まるで空から見たみたいに」(オスカー)
俺も何か感じていたがオスカーの言葉でガテンが言った。俺達は普段から空から見てるから分かりにくいがこの時代正確な地図があるわけじゃない。こんな隙の無い布陣が敷ける訳が無い。
「オスカー、お前本当に10歳か?良く分かったな」(ジュンヤ)
「陛下とよく地図上での合戦をしましたから」(オスカー)
俺に褒められたからか顔を赤くして照れている。皇帝陛下お前、10歳児に何教えてるんだよ。
「ハル達に敵が空を飛べる可能性があることを伝えておこう」(ジュンヤ)
空を飛べる敵って精霊か六肢族か、だとすると相手をするのはハル、マイア以外は無理か?
電撃作戦だな。同時多発的に攻撃をして、奥に隠れてるであろう強敵が出てくる前に叩く。
「マリー、人質の居る所が解るか?」(ジュンヤ)
「村にそのまま残ってますね。女子供老人を移動させていません」(マリー)
「良し、魔法で夜襲を掛けるぞ。俺達はダークネスの影響で夜目が利く。すまんマリー、人を殺させることになる」(ジュンヤ)
「皆で話し合って、貴方が世界の王ですから覚悟はしています」(マリー)
俺はマリー、オスカー、セシル、そして聖獣達を引き連れてガーランドの拠点に移った。
ミカヅキは竜人国の自宅に置いて来た。
次回ジュンヤ達がエルフ軍に夜襲を掛けます。




