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第四十六話 青鬼と竜人の少女

鬼人族の青年と竜人族の娘を面接します。

 勇者が剣の修行のため暫くソルトレイクで暮らすことになった。

 才能は俺を上回っているからすぐに上達するだろう。


 勇者がソルトレイクに来て一週間が過ぎた。そろそろ野菜などの育苗が終わって植え付けの時期だ。

 勇者は午前中は、マイア、ハル、セシルと試合形式の練習をして午後からは基礎訓練や型を練習する。

 勇者の上達の速度はものすごく早かった。すでにマイアとは互角だ。

 あと一週間もすれば教えることも無くなるだろう。


 そう言えばセシルが得物を決めた。彼女がやって来た棒術は、基本人間相手の技であるため攻撃力が低い。

 そこで攻撃力を上げるため魔力で槍や刃を付けていたが、効率が悪いので突くことも斬ることもできる薙刀にした。絶賛練習中である。


 ジニア 市役所 中庭 タマ

 俺達は今、ジュンヤ様が募集した才能を評価している。俺が文系、タマジロウが生産系、タマサブロウが武系だ。


 実を言えばかなりの応募があった。中には冷やかしのような奴もいるが、結構粒ぞろいだ。

 これはこの大陸が内戦、侵略戦争が多くて国外に逃げ出した人民も多い。

 そこにはいろいろな才能が溢れていた。

 俺達が審査をして使えそうなものは雇うし、使えなさそうなものはもちろん若干の金を与えて帰す。


 俺達がこんなの事をしていられるのもチャールズさんの連れて来た彼の部下が優秀で、短期間なら仕事を任せて置けるからだ。

 ああ、話がそれたな。俺がこの話をしているのは、俺達の審査できない才能が三人現れたからだ。


 そこでジュンヤ様をお呼びして見て貰うことにした。

 一人目は魔人族の男で軍人希望だ。祖国を例の第六天魔王に滅ぼされてここに来た。将の才能を持つ。

 経験が多く。一軍を率いる能力を持っているらしい。


 二人目は鬼人族の青年で錬金術師の才能を持つ。

 錬金術とは昔、鉛などを金に変える術理を開発する山師だった。しかしその過程で多くの化学変化を生み出し、今では化学の実証学者のような存在だ。


 三人目は竜人族の少女で槍の武術の才を持つ

 タマサブロウでは歯が立たなかったらしい。


 俺は錬金術師という職業を始めてみるので少し興奮していた。それではまず魔人族の軍人から面接するか。


 ガーランド アーモデウス商会 アーモデウス会長

「馬鹿か、お前達は勇者をジュンヤに取られるだけだ」(謎の男)

 奥の机に座る男は私を頭ごなしに怒って来た。

「しかし、このままヤマト国を放置して置いては我商会は滅びてしまいます」(会長)

 この男は現れてすぐに傾きかけた商会を再生すると私達の上に君臨するようになった。


「それが浅はかだと言うのだ。まだこの大陸でギルドと覇を競っていた時のことが忘れられんのだろうが。どうせ、失敗した時の為に何かしているんだろう」(謎の男)

「はい、腕のいい魔人族の男をヤマト国の人員募集に参加させました。恐らく最終選考に残ってジュンヤと直接面談できるのではないかと」(会長)


「その時に暗殺させるつもりか?アーモデウスの名は出ない様にしてあるのか?」(謎の男)

「もちろんです。その点徹底するように言ってあります」(会長)

「会長、クレアンスに行って貰おうか」(謎の男)

「はい、何をすれば・・・」(会長)

 謎の男は私を呼び寄せ、小さく囁いた。


 アーモデウスはこの男に見捨てられ、滅びることをまだ私は知らなかった。


 ジニア 市役所 面接室 俺

 俺はタマが選別した人員に隷属契約をして面接室に入った。

 呼ばれていきなり短刀で襲い掛かって来た魔人族の男はハルが取り押さえた。

 男はジュンヤを暗殺を頼まれていた。暗殺を頼んだのはアーモデウス商会だった。依頼人は名乗らなかったが後を着けたらアーモデウス商会に入って行ったそうだ。


 全くこのアーモデウス商会は隠す気があるのかと言うぐらい杜撰なところだ。

 取敢えず証拠が無いし、放って置くしかないが、これ以上絡んで来るなら対決するしかないか。

 ガーランドに居る女騎士にアーモデウス商会の監視を頼むか。彼女らは通信員なので念話が使える。


 次は鬼人族の錬金術師の面接だ。ちょっと楽しみだ。

 ドアが開き鬼人の若者が入って来た。ハルの案内で俺の向かいの席に座る。

 額の中央にある角が鬼人族の特長だ。肌は青黒い、青鬼だな。俺は内心思った。

 ハルが自己紹介を促す。


「俺はソウキ、羽釜を使って錬金術をすることから人が略して、ハガレ・・」(ソウキ)

「略すな!!略してはいかん!!」(ジュンヤ)

「ご主人様、どうしたのですか」(ハル)

「いや、略して言うと俺が終わってしまいそうな気がする」(ジュンヤ)


「では略さないで続けてください」(ハル)

「錬金術が得意で大体の物質は、分解合成が出来る」(ソウキ)


「では質問だ。水を分解すると何が出来る?」(ジュンヤ)

「酸素と水素だ」(ソウキ)

 この世界でも50種類位の元素が特定されている。


「塩はどうだ?」(ジュンヤ)

「ナトリウムと塩素だ」(ソウキ)

「アルコールは?」(ジュンヤ)

「炭素、水素、酸素だ」(ソウキ)

「鉄鉱石の還元方法は?」(ジュンヤ)

「炭素に酸素を反応させるのが一般的だ」

「ニトロセルロースの作り方は?」(ジュンヤ)

「脱脂綿に硫酸、硝酸を反応させる」(ソウキ)


 知識は大丈夫そうだ。

「君は俺の元で何がしたいんだ」(ジュンヤ)

「俺は今まで蓄積した知識で人間の生活を一変させたい。特に薬を作りたい」(ソウキ)

「良いだろう。企画を出せ。金は俺が出す。条件はこの子と詰めてくれ。マリー頼む」(ジュンヤ)

 ソウキはマリーに連れられて別の部屋で話してもらう。



「ハル、次の人を入れてくれ」(ジュンヤ)

 ハルは一礼すると部屋の外に出て槍を持った少女を連れて入って来た。

 少女の頭には20cm位の角が、耳の上から後頭部に向かって生えていた。

 そして少女を俺の向かいの椅子に座らせて、槍を預かり、自己紹介するように言った。


「竜人族の戦士、ミカヅキ。この国にはドラゴンを一方的に退けた強者が居ると聞いた。戦わせて欲しい」(ミカヅキ)

「ここはヤマト国の幹部採用試験場なのだが、勘違いしていないか?」(ジュンヤ)

「俺に勝てば奴隷でも構わん、好きにするがいい」(ミカヅキ)

 ふむ、竜人国にも伝手が欲しい。鬼人国はソウキが来たし、竜人国のミカヅキも貰うか。


「良いだろう。ハル、中庭で相手をしてあげなさい」(ジュンヤ)

「はい、ミカヅキさんでしたね。ついて来て下さい」(ハル)

「お前はメイドだろうが・・・」(ミカヅキ)

「言っておくがハルはドラゴンを追い返した一人だ」(ジュンヤ)

 ミカヅキはその後を黙ってハルの後について行く。


 中庭に出るとハルはミカヅキに槍を返して、自分も指ぬき手袋と双剣を収納から出す。

「おまえ、そんな恰好で戦うというのか」(ミカヅキ)

「あなたの動きから察するに戦いと言うほどには成らないと思いますよ」(ハル)

「おのれ、許さんぞ!」(ミカヅキ)

 ミカヅキの気が爆発的に増大する。


 ほう、実力を隠していたか。

 双方が用意できたみたいなので合図をしよう。

「用意はいいか?・・・はじめ」(ジュンヤ)

 ハルはいつものように両手を下げたまま無造作に近付いて行く。


 ミカヅキはタイミングを測ってやりを突き出す。

 ハルは右にステップして躱しながら左剣で槍を抑え、右剣をミカヅキの左肩に振り下ろす。

 ミカヅキは槍を引き戻しながらバックステップで右剣を躱す・・いや躱そうとしたがハルの前進が止まらないので、後ろに体を投げ出してようやく躱した。


 ハルは倒れたミカヅキを見下ろし、立ち上がるのを待っている。

「お、おのれ馬鹿にしおって!!」(ミカヅキ)

 ミカヅキは立ち上がると間合いに入られないように槍を振る。

 ハルが近付くとミカヅキが離れる。ミカヅキの槍の技は少なそうだ。


「掛かって来ないのですか?あなたが所望した試合なのに」(ハル)

「うるさいうるさい!」(ミカヅキ)

 ミカヅキはどうすれば良いか分からない様だ。


「仕方ありません」(ハル)

 ハルは瞬間的にミカヅキのふとことに入ると右剣の柄で顎を打つ。

 ミカヅキは脳震盪を起こしてその場に崩れ落ちる。

「タマに言ってベッドを用意して貰って寝かしておきなさい」(ジュンヤ)


 ハルは肩にミカヅキを担いで建物の中に入って行った。

 腕前から見れば、竜人の中で強い方ではないだろう。

 なぜ試合を挑んできたか?恐らく手っ取り早く手柄と言うか実績が欲しかったのだろうな。

 これまでのパターンで行けば、意に染まぬ結婚を強制されて逃げて来たとかかな?

 まあ、こっちは起きてからだ。先に青鬼を見に行くか。


 マリーがソウキに説明している部屋に行く。

「どうかな、条件は?」

「早く隷属契約をしてくれ。魔法を使いたい」

 俺が部屋に入った途端、ソウキが縋りついて来た。


 この世界の人間の魔法への渇望はすごいものがある。

 特に生産系の高い能力を持つ者に多い。

 カンナたちもそうだったがお前もそうか。


「それで条件は提示したのか?」(ジュンヤ)

「一応は、この調子では覚えて居られるかどうか・・・」(マリー)

 仕方ない、先に隷属させるか。こうなると半日はまともに話せないだろうな。

「隷属契約は結ばれた。・・・静かにしろ」(ジュンヤ)

 命令すると魔法魔法とわめいていたがやっと静かになった。


「裏に練兵場があるから魔法を使うならそこでやれ。人に向けるな、安全に配慮しろ。15時に汽車が出るからそれでソルトレイクに来い」(ジュンヤ)

 ソウキは嬉しそうに走っていった。

「良いのですか?」(マリー)

「ああなると魔力が尽きるまで魔法を使う。話なんてまともに出来ないからな」(ジュンヤ)

 俺は化学工業の建設的な話し合いが出来ると喜んでいたのだが、今日の夕方に出来るといいな。


 俺はミカヅキがまだ眠っているというのでまだ配属の決まっていない試験合格者の中からソウキの助手を選ぼうとした。

 だが、その素質の有りそうな奴は皆練兵場に行っていた。人数的には少し多いので選んでソウキの助手にすることにした。


 俺はソウキたちの手配を済ますとミカヅキの寝ている部屋にやって来た。

 ミカヅキはベッドの上で上半身を起こしていた。ハルが見守っている。

「どうだ気分は?」(ジュンヤ)

「良い訳なかろう。しかし約束だ。好きにしろ」(ミカヅキ)

「では隷属契約を行う。いいな」(ジュンヤ)


 約束なので説明とかは省いてしまう。

「本当に奴隷にするのか。クッ! 分かった」(ミカヅキ)

「これで契約は済んだ。お前の事情を話して貰おう」


 ミカヅキは竜人族の没落した貴族の娘だった。

 彼女が十歳を過ぎた辺りから父親が彼女を名家のとの婚姻を画策する。

 もちろん正夫人はおろか夫人の地位も無理である。

 結果は思わしくなかった。


 彼女は小振りで強者がもてはやされる竜人族では劣等とみられ、子孫を残す価値が無いと判断されたのだ。

 我々から見れば彼女の身長は160cmはあるので小さいとは思わないが、竜人族の女性の平均身長は175cm位だと言うことだ。


 仕方ないので武芸で努力して実績を作り、婚姻を優位にしようとしたが振るわず、ドラゴンの話を聞いて安易に実績を挙げようとしたのだと言う。

 里を出る際に父親から実績を挙げられなければ帰るに及ばずと言われたそうだ。


 彼女は突っ伏して泣き始めた。

 さて彼女をうまく利用して竜人族にとっかかりを作りたいものだが・・・・。


「君が強くなって里に帰れば、君の意見も聞いてもらえるようになるかな?」(ジュンヤ)

 彼女は再び体を起こしてこちらを向いた。

「そ、それは聞いてもらえるようになるが、生半可な強さでは相手にして貰えない」(ミカヅキ)

 少し食いついて来たな。やはり故郷に錦を飾りたい気持ちは強そうだ。


「そうだな。竜人族の強さが君の3倍以内なら君が竜人族最強になれるかも知れない」(ジュンヤ)

 俺はこの子を鍛えて竜人族にとっかかりを作ろうと思う。

 この大陸を平和にするには情報が必要だからな。

勇者が変な電報を送ったので聖騎士が攻めてきます。

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