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第四十二話 俺の仕事とマイアの帰省

俺のやってる仕事とマイアの帰省の話です。

 デジレは決意を新たにして働き始めた。

 ソルトレイクに新しい住人シーナがやって来た。


 ソルトレイク 俺の家 食堂 ジュンヤ

 シーナが俺の朝食の食卓の前に怒りながらやって来た。

「ジュンヤさん、ちょっと聞きたいのだけど」(シーナ)

「ああ、いいぞ」(ジュンヤ)


「あのオスカーって子、学校通っているのに掃除も洗濯もしていないのだけれど、どういうこと?」(シーナ)

 俺はシーナが俺の家に住むにあたり掃除洗濯をするように申し渡した。ところがこの家に居るオスカーと言う少年はシルビィと言うメイドにお世話されて掃除も洗濯もしていない。


「彼か、彼はここの住人じゃないから良いんだ」(ジュンヤ)

「え、どういうこと?」

 当のオスカーは知らぬ顔で食事している。流石皇太子、聞こえてるだろうにこれくらいの事では動じない。

「彼はガーランドから人質としてここに来ている。実際は皇族の子供に課せられた試練なんだけどな」(ジュンヤ)


「人質?あ、あのメイドさん。シルビィ先生じゃない」(シーナ)

「そうだよ。オスカーに着いて来たんだけど、彼が学校に行ってる間、暇だというので先生をして貰ってる」(ジュンヤ)

「そうなの、人質で来ているのね。直接文句を言わなくて良かった」(シーナ)

 事情が分かって同情しているようだ。シスコンでエルザにくっ付いて来たことは言わないでおこう。


 シーナはオスカーに声を掛けていた。

 また戻って来て言った。

「あの子のお嫁になったら、私を物か商品扱いしたギルドの奴らを見返してやれるわね。クックックッ」(シーナ)

 そう言うことは胸の内にしまっときなさいよ。


 しかし、オスカーが10歳、シーナが11歳、多感な時期を一緒に過ごすわけだからもしかしたらあるかも知れないな。

 などとほっこりしていたらマリーが横に立った。

「獣王様が会談をお望みです」(マリー)


 多分鉄道の事だろうな。実はヤマト国縦断鉄道は開通してしまった。今年いっぱいを予定していたのだが聖獣達がレベルアップしたのと、それに釣られて住民たちの魔法力も上がったので、工事がとてつもなく早く進んだのである。一時はレールの供給も危ぶまれるくらいだった。

 今はミイケ=ヤハタ間の複線化を進めている。

 と言っても機関車の供給は追いついていないので縦断して走れるのは週に一回程度だ。


 しかしドワーフたちが製鉄所や機械工場に働くようになると、機械の生産も順調に増産されそのうち追付くだろう。


 実は獣人国に綿花を育てないかと打診したのだ。綿花は暖かい気候と多量の水が必要だ。これは獣人国にぴったりだ。さらには比較的育てやすく現金化もしやすい為、今の獣人国にぴったりじゃないかと思う。

 それに今工場で試作している紡績、織機などの服飾産業の機械が稼働始めれば一気に綿花が不足し始めるのは目に見えている。一応、こちらでも生産準備しているが焼け石に水の可能性が高い。


 それに付随して運搬手段の確保のため、線路を獣人国の王都まで引いてはどうかと提案している。


「それで何時を希望している?」(ジュンヤ)

「今日の午後一時でどうかと」(マリー)

「OKだ。伝えといてくれ」(ジュンヤ)

 獣人国には随分低金利で多額のお金を貸している。何とか返済させないとな。


 暫くすると今度はアルミア国からだ。

「やはり司教会がこちらが捨て値で輸出した食糧を高く売りつけていたみたいで、司教会の拘束を行ったようです。連絡をしてくれとのことです」(マリー)

 やはりあそこの司教会は腐っていたか。


 実は通信要員に物価を確認して貰ったら食料の値段が極端に上がっていた。それをマルキエル達に調査させたのだ。


 マルキエル達との念話は通信要員を介するので面倒臭い。

 要すると司教会の犯罪は食量だけには収まれず、税金の着服・権力の私物化それらを司教会で決めていた。一回膿を出したはずなのにすぐに復活したことを鑑み、事件を公表し、司教会を解散した。

 ついては取敢えず教皇を中心とした施政を行うので体制が整うまで応援を出してほしい。


 将来的には世界の王を迎えた立憲君主制に移行したいらしい。


 俺が国王ってやめて欲しいがそれ以外は何とかしよう。

 チャールズさんの部下に経験豊かな人がたくさんいるのでお願いしておいた。

 ヤマト国は結構こじんまりとしているのでそんなに手は掛からないのだ。


 昼まで時間があるのでマリーを先生にして少し勉強をしよう。

 まずは東大陸。

「東大陸には三つの国があります。北からエルフ国、鬼人国、竜人国です。外国との付き合いは全くなく内容は不明です。ガーランドとの間に大きな湖があります」(マリー)


 次は地球全体。

「まずこの大陸の南には二つの大陸があります。こことはギズモニア、ガーランドが貿易しておりギルドの支店もあります。

 この二つは人間の国がそれぞれ一国あります。島と言ってもいいかもしれません。


 そして南半球東側に暗黒大陸があります。距離は8千とも一万km離れていると言われています。現在は六肢族が住む位しかわかっていません。


 西側には大陸があると言われていますが正確には解っていません。

 東大陸の南東、赤道付近には天まで伸びる塔のある島があると言われていますがこれも確実ではありません」(マリー)

「周りは殆ど解ってないのか」(ジュンヤ)


「ジュンヤさんが来るまで戦乱に明け暮れており、海外との交流は最小限でした」(マリー)

 地図を見るが西大陸の形さえ不正確だ。俺達は空を飛ぶので大陸の外形はおおよそわかる。


 俺がここに来て一年、色々あったが、あの時思った気の合う仲間と世界を回ると言うのはまだまだできない。

 俺が守る人が増えたのと物作りが面白くてやめられないのだ。


 まずは西大陸の安定を3年以内に実現する。

 今は蒸気機関を使った機械を開発することで産業革命を起こそうとしている。


 獣人国は現金収入の道を作ってやらないと財政基盤が貧弱すぎてお話にならない。

 アルミアは長い期間の宗教家の政治が腐敗していたので新しい政治体制を作らないといけない。

 ギズモニアは三国の中で一番ましだが王自体が少し問題がある。


 そう言えば、ブロガリアにはダンテって言うそこそこ出来る魔法使いが居たんだよな。

 探せばいろいろな才能に秀でた奴がいるんじゃね?

 才能ある奴を集めたらもっと早く安定出来るんじゃね?

 一度皆と相談してみるか。



 獣王との話し合いはやはり鉄道の施設についてだった。

 俺としては綿花の収穫できる秋までに出来ればいいのだが、獣人国の沿線の領主たちが早く作れと騒いでるらしい。駅も50位いるとか言われている。


 獣人国では客車を走らしても経済が回るまでは一日の乗客数は100人も行かないだろうと思う。

 つまり一駅当たりの乗客数は2人行かない。

 ジニア=王都間が1000km弱、つまり20kmに一駅になる。まあ、いいか。


 費用はヤマト国からの借入になるのに領主たちは解っているのか?強制的に綿花を作らせるかな。

 それより農業改革をやって欲しいんだよね。

 獣人国の大河沿岸以外は広葉樹林に覆われている。そこに点々と集落を作っている状態だ。

 森林を伐採して農地にして馬や牛に耕させる。これだけで従来の4倍の収穫が望める。


 馬と言えばこの世界の住人は蹄鉄を知らなかった。馬という動物は蹄が弱いので馬に農作業をさせると蹄が感染症に罹っちゃうが、蹄鉄を付ければそれが防げる。

 これは元の世界でシトー会と呼ばれるキリスト教徒が北フランスでやったことだから問題ないだろう。


 とにかく経済を回すことが重要なので集落を結ぶ道を造ることも重要だ。

 ソルトレイクとジニアを思い出した。

 道を造るまで5日掛かったところが1日掛からないようになった。今は汽車で一時間だが。

 俺達がやればすぐだが借金を返すことは出来なくなってしまう。


 ここいらはリチャード(獣王)が考えることなので放って置こう。


 ソルトレイク 俺の家 執務室 マイア

 獣王陛下との会談が終わったみたいなのでノックしてハルと執務室に入ると師匠は不機嫌そうな顔をしていた。会談の内容が思わしくなかったのかな?


「うまく行きませんでしたか?」(マイア)

「ああ、いつまでも甘えてくるんだ。やることやらないであれが欲しい、これが欲しいなんて子供かって言いたいよ」(ジュンヤ)


 隣のマリーさんも難しい顔をしている。

「このままですと借金の利子が歳入の半分になりそうですね」(マリー)

「地下資源とかないと厳しいかもね。あ、何か用事か?」(ジュンヤ)


「はい、父にこの剣を返したいと思いまして、獣王都に行く許可をお願いします」(マイア)

 父に貰った剣を見せた。私自身は新しく剣を作ったのでお役御免となったのだ。

「私も父の話が聞けるかもしれないので一緒に行きたいです」(ハル)

「今のところ、君達に頼む仕事も無いのでいいぞ、行ってこい」(ジュンヤ)

「「ありがとうございます」」(二人)


 次の日の朝、マイアとハルは獣王都に向け飛んだ。

「マイアさん、獣人国から女性を連れて来たとか聞いたんですけどどうなりました?」(ハル)

「ああ、幼馴染が女性を呼んだ件だな。あれは、女性が私も働きたいと言い出してな。御破算ではないがまあ、保留と言った感じになったようだ」(マイア)


「そうですか。男女の仲もなかなか難しいものですね」(ハル)

「全くだ」(マイア)

 二人が他愛のない話をしているうちに獣王都に着いた。


「ここで降りるぞ」(マイア)

「はい」(ハル)

 王都は依然来た時とは違い賑わっていた。彼女らは人のいない場所を選んで着陸した。


「人が戻ったみたいですね」(ハル)

 前に来た時は全獣王が失政を続けて王都の貴族が逃げ出していたのだ。その貴族も戻って来たらしい。

「そうだな。・・こっちだ」

 貴族の居住区をハルを連れてマイアが歩く。久しぶりの我が家に興奮しているようだ。


 マイアが来た家はソルトレイクで言えば3世代が住むような家だった。門も塀も無く当然門番もいない。マイアが玄関の扉のノッカーを叩くと、暫くして女性の声でどちら様ですか?と問うてきた。

「ローラか!マイアだ。開けてくれるか?」(マイア)

「まあ、お嬢様ですか。ちょっと待ってください」(ローラ)

 玄関の扉が開くと中年のメイドが迎え入れてくれた。


「父上は御在宅か?」(マイア)

「はい、お知らせしてきます」(ローラ)

 メイドは奥に入って行った。

「大丈夫ですか?」(ハル)

「勘当されてる件か?別に頼って来た訳じゃないからな」(マイア)


 ローラが戻ってきた。

「居間でお会いになるそうです」

 居間に入ると両親、長男、次男が座って居た。


「ご無沙汰しております。ようやく落ち着いてまいりましたので、報告に参りました」(マイア)

「マイアさんと同じ職場で働いているハルと申します。ガングの娘です。マイアさんの御父上に

 父がお世話になったとお伺いしました。つきましては父のお話をお聞かせいただけると幸いです」(ハル)


 ガタン、父親の座っていた椅子が倒れた。驚きに満ちて立ち上がった父親の姿があった。

次回は帰省の続きとドラゴンの襲撃の話です。

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