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第四十話 キュービの半生と脱出行

キュービは冒険者として魔獣狩りのパーティに参加する。

ドワーフたちは川を下ったり登ったり。

 BSコープ(鍛冶屋組合)の脱出に手を貸したエルザとカンナ、魔導士ダンテの襲撃にエルザがピンチになる。エルザが変身、九尾の狐になってダンテを撃退、そして自分はエルザの母親と名乗る。


「あなたがエルザさんのお母さんなら、エルザさんは今どこにいるのですか?」(カンナ)

「今はうちが表面に出てるけど、この中にエルザは居てます」(キュービ)

 自分の体を指差すキュービ。


「私はエルザさんのお母さんは亡くなったと聞いたのですけど」(カンナ)

「うちは旦那に居なくなるゆうといてんけど、うまい事伝わらんだみたいやな」(キュービ)


 丁寧な言葉遣いだったのが段々崩れてきた。

「いやもう、堪忍な。丁寧にしゃべんの疲れんねん。悪いけどな、エルザと話をしたいよってに先行ってくれるかぁ」(キュービ)

「分かりました。ごゆっくり」(カンナ)

 カンナは行列の後を追って行った。


 お母さんは心の中の私に話しかけてきた。

「いきなりでごめんなぁ、うちももうちょっと早うに話せると思うとってんけど、今になってしもたわ」(キュービ)

「本当にお母さんなの。どうしていなくなったの?」

「堪忍やでえ、そやけどあんたには母さんの事知っといて欲しいんや。そやから始めから話すでえ」


 20年前獣人国の森 キュービ

 うちは肉体の無い精霊やった。なんでか魔力の肉体を持つと4大精霊が滅ぼしに来るから肉体を持てないんや。


 それでな採集者とゆう職業の女性に憑依して半ば寝とったんや。なんで女性かとちゅうと精霊は何でか分からんけど女性型やもんで女性の方が親和性がええんや。ちなみに寝るだけやったら男性でもかまへんのやけどな。


 ある日、憑依しとった女性はいつもみたいに薬草を採りに森に入って行ったんや。

 あまり薬草が取れへんもんで危険やけど森の奥へ向こうてったんや。

 道に迷いかけた時に小ちゃな祠を見つけたんや。


 そこにはな石のベッドに寝とる少女がおったんや。少女は狐人で息はしとるんやけどな、意識は無いんや。

 なんで少女がそこに居たのかは分からへん。何度か起こそうとしたんやけど起きやん。

 うちには分かった、ソウルイーターに魂を食われたんや。チャンスや!今なら肉体が手に入いる。ソウルイーターに食われた人間は時間が経てば死んでしまう。


 ソウルイーターか。ソウルイーターいうんは何十年かに一度、思春期の子供の魂を食べる魔獣や。

 普段は人の居らんところで寝とるらしいで。そやから正体は分からんのや。


 その時にな、周りで魔獣の声がしたんや。女性は少女を諦めて帰ってった。

 うちは当然少女に憑依したんや。この少女には悪いけど、肉体が手に入ることなんてめったにないことやから堪忍してや。

 普通の肉体やったら四元素精霊も気が付かんやろ。

 その時からうちは狐人の狩人キュービとして活動を始めた。

 知った人間に会うとまずいんで獣人国からガーランドに拠点を移した。


 18年前 ガーランド 帝都のギルドの受付 キュービ

 うちはいっぱしの採集者になっとった。今日も採集品をギルドに売って生活資金を手に入れた。

「そうそう、キュービさん、パーティを組む気ないかしら?」(受付嬢)


「誰か、声が掛かっとんのかいな?」(キュービ)

「あそこに座ってる二人組、素行はギルドが保証するわ」(受付嬢)

「ふーん、話だけでも聞いてくるか」(キュービ)

 指差されたテーブルに座る二人に近付いただけで分かるすごい手練れや。

 若いイケメンと怖い顔したおっさん。特におっさんの方はとんでもないわ。


「なんや、うちと組みたいんやて?」(キュービ)

「俺がサイモン、彼がヘンリーだ。俺達は魔獣退治をやってるが探索がからっきしだ」(サイモン)

 おっさんが自己紹介してきた。なかなか礼儀正しいやないか。

「うちはキュービ、探索は得意や、そんで条件は?」(キュービ)


 16年前 ガーランド帝都 居酒屋

 それが出会いで2年間で帝都周辺から魔獣が居なくなった。

「いやあ、キュービはすごいね。3年は掛かると思ってたんだよね」(ヘンリー)

「その通りですね。キュービが居なかったらいつまで掛かっていたか」(サイモン)

「何や、もう終わるんかい。名残惜しいけどお別れやな」(キュービ)


「いや、ちょっと待ってくれないか。キュービにはこの先一生、俺と一緒に居て欲しい」(ヘンリー)

「何や、プロポーズかいな。あんたはええとこの坊ちゃんやろ。うちみたいな野良狐とは合わへんよ」(キュービ)

 ヘンリーがうちに気があるんは知ってたけど身分が違う。

「いいや、俺は諦めないぞ。絶対に家に連れて行く」(ヘンリー)


 六か月後、うちは押し負けて結婚を承諾した。そして馬車で彼の家に行くことになった。

「ええか、子供は作らんよ。妾の子供は可哀そうやろ」(キュービ)

「分かった。ごめんよ、正式な夫人に出来なくて」(ヘンリー)

「分かっとるよ。身分が違うこと位。そやけど大事にしてや」(キュービ)

「もちろんだよ。約束する」(ヘンリー)


 あんまり来たことのない道やなあ。うん、この道曲がったら・・・。

「ちょっと待ってえ!!この先って帝城しかないやないか!」(キュービ)

「そうだよ。帝城に行くんだ」(ヘンリー)

「あんた貴族やないて言うたやんか!!」(キュービ)

「そうだよ。俺は王族だから」(ヘンリー)


 ニコニコしながら言いやがって絶対確信犯だ。

 しかもヘンリーは皇太子だった。ガーランドの王の子供は2から3年外で活動する試練を受けんといかんのやて。ギルドが素行を保証するはずやで。サイモンのおっさんも騎士団長やて、あきれるわ。そのまま城に入って、お腹の大きい正夫人は居ったけど、まあ大事にしてもろた。


 その六か月後、正夫人の出産が失敗して正夫人は子を失って、なおかつ子供の出来ない体になりはった。

 それで旦那と正夫人にせがまれて子供を作ることになったんや。


 その一年後、うちは女の子を産んだ。狐人だ。名前はエルザベートに決まった。

 正夫人はうちと一緒に育てることで子供が出来へんことを忘れることが出来たようや。


 うちはヘンリーと正夫人を呼び、決意を伝えた。

「うちは一年後に居なくなる。この子にすべてを渡すから」

 理解できて無いようや。狐人の娘では貴族の正夫人にはなれないし、良くて爺さんの末端夫人や。

 この子は皆に望まれて生まれてきた。きっと大きなことに関わる子や。

「15になるまでに、成人するまでに、この子を自由にしてやって、お願や」

 一年後、エルザにすべてを託したうちは、肉体も全て魔力に変換して、文字通り消えたんや。


 約束通り、14歳でエルザはヤマト国に出て自由になった思たら、世界の王の眷属て何や。

 そやけど魔力がいっぱいで力になるだけやのうて、うちも復活できそうや。


 そして現在、ブロガリア 辺境 エルザ

「母君の言う通りだったんだね。私にすべてを渡して居なくなったって」(エルザ)

 私が表に出てお母さんは心の中に戻った。母君って言うのは思い出話に出てた正夫人の事で、私はこの正夫人に育てられたの。



「そう言えばあのダンテって人どうなったの?あまり人を殺すなって言われてるの」(エルザ)

「人を殺すと恨みが生まれるよって、あんまり殺さんようにするのは正解や。心配せんでも魔力障壁に包んで仲間の所へ風魔法で送っといたでえ。これで半日は進軍が遅れるやろ」(キュービ)


「そう言えばお母さん魔法が使えたんだね。陛下も教えてくれなかったよ」(エルザ)

「うんにゃ、今日が初めてやで、あんたの中に有った魔法を使っただけや」(キュービ)


「じゃあ、あの尻尾は何?」(エルザ)

「あれは魔法が使い易いように魔力で作ったんや。同時に何種類も魔法が使えるで。あんたも使えるように練習しときや」(キュービ)


「それより言うとかなあかんことがある。精霊の事や。あんたの旦那も興味のあることやろ」(キュービ)

「私の旦那って・・え、そんな、だってまだ私成人してないし、ええ、やだ、どうしよう?」(エルザ)

「照れとる場合か!うちが外ヘ出とれる時間は短いんや、ってあかん・・また、出れるようになったら出て・・」(キュービ)


 お母さんはまた、私の中で眠りに着いたようだ。

 私は二人の母に愛されていたことを実感した。一人は私を産んで私の健康と独立した時に私の力になることを選んだ母、その母に託されて私に愛情を注いで育ててくれた母、いじける時もあったけど幸せだった。これからは私自身の手で幸せを掴まなければいけない。


 世界の王の眷属として世界の人々の幸せを作ることが私の幸せに繋がるのだと思う。

 今考えると私とオスカーがヤマト国に出されたのには訳があったのだ。私はオスカーの試練のついでだと思うけど。

 まあ、オスカーは第二夫人の子供なんだけど、その人が育児放棄していて母君と私がオスカーやその兄弟を育てたんだよね。オスカーが私に懐いているのはそう言う訳。


 私が行列に戻ると、昼休憩をしていてジュンヤ様とハルさんが来ていた。

「大丈夫だったか、あーエルザだよな」(ジュンヤ)

 ジュンヤ様が困った顔で言うので微笑んで返した。

「はいエルザです。母は私の中でまた眠りに入りました」(エルザ)

 私は母から聞いた母の物語をジュンヤ様に語った。


「そうかお母さんは精霊だったのか。それならハルの中に居るダークネスみたいに魔力を貯めて復活できるかもな」(ジュンヤ)

「いえ、母はそれを望んでいないと思います。私と共に生きるか、孫が出来たらその子に憑依するとか言いそうですが」(エルザ)



 次の日の朝早く、私とアステルさんは騎馬隊の進軍妨害に出た。

 ジュンヤ様は隷属契約だけして帰ったがハルさんが残ってくれたので護衛の心配は無い。


 私達は騎馬隊の夜営地に着くとまずアステルさんが風を完全に止める。

 そこへ私が水魔法ミストで濃い霧を夜営地中心に発生させる。

 どれくらい濃いかというと腕を真っ直ぐに伸ばしてその手のひらが見えないほどだ。

 霧は昼くらいまで出して置いて戻った。

 これで一日以上の遅れとなる。国境までは追いつけない。


 夕方、国境を越えてギズモニアに入った私達を遠くで悔しそうに見送る騎馬隊が居た。

 国境には百人を超えるギズモニア兵が居たのだ。これはもしもの為にジュンヤ様が用意してくれた。

 ギズモニアとブロガリアの間には正式な国交は無い。従って国境を越えれば手出しが出来ない。


 そこからは緩やかに下る平原を南下する。ここいらには草が生えてない。雨が降らないのだそうだ。

 ハルさんが周辺を飛び回って地理を調べている。調べたデータでアイさんが正確な地図を私達に提供してくれる。そこで初めて行く所では調査をするのだ。


 2日後夕方 ギズモニア 支流上流側の船着き場 カンナ

 エルザさんに蒸気船を収納から出してもらうと周囲に人だかりができる。

 すでに役は決めてあり、蒸気船に私がリーダーで6人、各客船に見張りと舵取りが2名ずつだ。

 24時間走るので交代要員が居る。


 すでに蒸気が上っている状態で収納したので、すぐに出航できる。後ろに十数隻の客船をロープで繋げて、夕食を取った住民が乗り込む。

 これから四百kmは船の旅だ。


 大河までは百kmちょい。下りなので速度が乗る。夜の間に大河に合流、上流を目指す。

 風があまりないので蒸気機関で自走する。風が有ったら石炭節約の為に帆走する。

 流石に荷物が多いので速度が出ず。次の日のお昼にオタルに到着。


 すでにオタルまで線路は伸びているので、そこから汽車に乗り換えてソルトレイクに一時間半で到着。


 ソルトレイクの威容に皆驚いていた。

ジュンヤ達のやり方に反感を抱くデジレと新たな仲間が?

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