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第三十九話 大脱出とエルザの母

死んだはずのエルザの母が現れます。

 マイアとセシルは獣人国のオークを退治して獣王に報告に行くが、帰りに先に移民した男の彼女を連れて行くことになった。

 エルザとカンナはピョートルにドワーフの応援を求めに行ったのだが、ドワーフ達はジュンヤがガーランドの侵攻を止めた為、不況の真っ只中、全員のヤマト国への移民も意見に上がるほどだった。


 ブロガリア ピョートル エルザ

「エルザさん、どうしたの?」(カンナ)

 自分の考えに没頭していたエルザだった。


「あ、ごめんなさい。でもここの人が移民しちゃったら王様が怒るんじゃないかしら」(エルザ)

「それが複雑なんだよな。なあ!」(ダナン)


「まあな、いいか!ブロガリアの財政の約半分はここからの税収だ。それで俺達は国に対して強気で接していた。それが貴族連中には言いたい放題やりたい放題に見えるらしい。そんな俺達の今年の税金が払えない状況になってみろ。国の連中が何をしてくるか目に見えている」(デジレ)


「でもあなた達は大陸一の技術者集団じゃないですか。それを手放すような真似をするのですか?」(エルザ)

「人間の嫉妬って言うのは怖い。今まで言うことを聞かなかった奴にマウント取れるんだ。まだ税金の支払いには期間があるんだが、もう調子に乗って俺達の権益の取り合いが始まってる」(デジレ)


「愚かなことを!税金は払え無いのですか?」(エルザ)

「ああ、注文を当てにした材料と売れない仕掛品在庫に化けちまった」(デジレ)


「これは素早く逃げた方が良さそうですね。取り敢えず偵察に行きます」(エルザ)

「何を言ってる。お嬢さん。いくら何でも納税日までは大丈夫だろう」(ダナン)

「貴族たちを舐めてはいけません。3割も逃げているなら逃げないように兵を出すと思った方が良いでしょう」(エルザ)


「そうよ、残った人は税収減のスケープゴートにされるよ」(カンナ)

 今までの良い生活が出来なくなるのだ。誰かを生贄にして責任を取らせるだろう。


「良し!わしらは住民に訳を話して脱出の準備をするぞ」(デジレ)

 ダナンさんはまだ懐疑的なようだが、取敢えずは脱出には賛成なので動き始める。


「荷物は次元収納に入れますからまとめるだけで良いです。食事はヤマト国に作って貰いますから軽食以外は荷物の中に入れてください。では行ってきます」


 私は偵察に出る。

 念話でジュンヤ様に状況を知らせた。

『もし、兵が近くまで来ていたら応援をお願いしたいですけど、今は大丈夫です』

 ジュンヤ様が応援が要るか聞いて来たのでそう答えておいた。


 街道に沿って飛んで行くが、平和そのものだ。

 王都の近くまで来た時、やはりそれは居た。約五百名の兵だ。騎馬隊もいる。

 ここからだとピョートルまで早くても3日は掛かる。


 エルザはカンナに念話をしておいた。これで支度を急ぐだろう。

 兵はマスケットと剣を携えている。全身鎧は着ていない。マスケットが戦いの主流になっているのだろう。薄い金属鎧をマスケットは貫通するので着ていても意味が無いのだ。

 代わりに胸と腹を覆う金属の部分鎧と頭を覆うヘルメットを着けている。


 あ、騎兵が出る。騎兵は速い、明日にはピョートルに着くかも知れない。

 50人くらいの騎兵が先行した。

 私はジュンヤ様に相談した。


 私はピョートルに戻る。ジュンヤ様の指示はなるべく早く移動することだった。

 なるべくヤマト国の形跡は残さずに移動を終わらせたいとの思いがあるようだ。


 しかし、ピョートルからギズモニアの国境まで100km近くある。急いでも2日掛かる。まともにやっては明日朝出発しても必ず追いつかれる。


 取敢えず明日朝出発できるように用意しなければ。

 帰ると住民は引っ越しの準備をしている。デジレさんを見つけて話しかける。


「兵の目的は何だと思われますか」(エルザ)

「多分BSコープの幹部の拘束と住民の脱出の防止が目的じゃろう」(デジレ)

 私の推測と重なる。ほぼ間違いないだろう。


「明日の朝一番に出発したいです。住民が捕まると人質にされる可能性が高いので全員でお願いします」(エルザ)

「わかっておる。急がせているのだ」(デジレ)


 夕方、食料を持ってアステルさんが来た。ジュンヤ様に従属したことで収納魔法が使えるようになったのです。

 そう言うことか。ジュンヤ様の考えが分かった。


「やあ、ご苦労様。手配はしてあるって言ってたよ」(アステル)

「本当、ありがとう。明後日になると思うけどよろしくね」(エルザ)

「まかせておいて、風魔法で僕の右に出る奴はいないよ」(アステル)


 次の日の朝、デジレさん達は出発した。足弱の老人と子供は馬車に乗せた。約千人の行列が西に向かって歩いて行く。アステルさんは食料と水を持っているので一緒について行く。


「カンナさん、私が時間を稼ぐので少しでも先に進んでください」(エルザ)

「まかしといて、でも無理しちゃ駄目よ」(カンナ)


 カンナと別れて、私はブロガリア兵の動向を調べるため東に向かって飛んだ。

 開けた草原にある街道を西に向いて進む騎兵が居た。やはり今日の夜にはピョートルの街に着きそうだ。

 歩兵の方はまだまだかかりそうだ。


 やっぱり応援断ったのは失敗かなあ。でもここまで来たらやるっきゃないでしょう。

 自分に言い聞かせて住民達の所に戻る。


 最後尾に剣をぶら下げたカンナさんが居た。

 騎兵の様子を話した。

「明日の夕方には追い付かれそうだね」(カンナ)

「大丈夫よ。私達が何とかするから」(エルザ)


 その時だった。

「こんなとこまで逃げてたのか。おい!ピョートルに引き返せ。さもないと死ぬことになる」(男)


 空中10m位のところに男がいる。

「誰だ!!」(カンナ)

「俺か、俺は大魔導士ダンテ様だ。早く行列を止めろ」(ダンテ)


「大丈夫、私が何とかするわ。カンナちゃんは先に行って」(エルザ)

 念話でアステルを呼ぶ。

 ここは人通りの少ない街道だ。

 盗賊や魔獣が出るかもしれない。

 アステルさんには行列を守って貰わないと駄目だ。私が一人で戦うと言うことだ。


「私が相手よ。行列には手を出さないで」(エルザ)

 私もダンテと同じ高度に上がる。

「お前がちょろちょろしてたから後を着けて正解だぜ」(ダンテ)

「このストーカーめ!」(エルザ)

 私を着けて来たのか。うかつだった。


「行列を止めないのか。それならこうだ!!」(ダンテ)

 ダンテは火の塊を出して行列に向かって放った。

「あっ!!卑怯者」(エルザ)


 火は行列の手前でかき消される。アステルさんだ。

「エルザさんこちらは大丈夫だ。遠慮なくやって」(アステル)

「アステルさんありがとう」(エルザ)

「ちっ!魔法使いがもう一人いたのか」(ダンテ)


「そいつがジュンヤか?聞いてたのと違うな。ジュンヤが来ると言うからわざわざ出張って来たのに」(ダンテ)

「ジュンヤ様は来ていないわ。あなたぐらい私一人で十分よ」(エルザ)


 ダンテは明らかに失望していた。

「ジュンヤを倒せば有名になれると思って来たのに、こんな小便臭い女が相手とは」(ダンテ)

「あなた、とっても失礼ね」(エルザ)

 私は腕を前に突き出し、サブマシンガンの魔法を放つ。

 ダンテの前で弾丸が跳ね返る。魔力障壁だ。


「フン、その程度か。これでどうだ」(ダンテ)

 火の塊を放ってくる。私の前に張った魔力障壁で跳ね返る。


 私の番だ。

「ダウンバースト!!」

 敵の真上から秒速100m以上の速度で落ちてくる気流だ。

 ダンテは瞬時に地面に向けて吹き飛ばされるが地面に叩き付けられる寸前で気流から脱出する。


「このガキ。恐ろしい魔法を使いやがる」(ダンテ)

 ダンテは剣を抜き魔力を通した。

「魔力障壁があるならそれごと斬ればいい」(ダンテ)


 私は護身用の短剣を抜く、刃渡り20cmしかない。

「グハハハ、そんなもので俺の剣を防げるものかよ」(ダンテ)

 これしかないから仕方ないのよ!

 大きく振りかぶって斬りつけてくる。何とか防いだが弾き飛ばされる。

 草原に落ちた。


 イタタタ、けがは無さそうってダンテが追い掛けてくる。

 地面に立ったら土魔法が使える。


「ストーンウォール!!」

 ダンテは突如出来た石の壁に驚いて上空に逃げる。

 ちぇっ、ぶつかってくれればストーンニードルで串刺しに出来たのに。


「エルザさん、大丈夫、これ使って」(カンナ)

 カンナが剣を差し出した。私はそれを受け取りカンナに笑いかけた。

「ありがとう、大丈夫よ。離れててね」

 とは言ったものの、私は剣なんて小さいときに護身術を習った時に触ったくらいで、心得なんて全然ない。


 やるっきゃないんだよな。私は警戒するダンテを目指して飛び上がる。

「おまえ、風魔法に土魔法、どれだけ魔法を使うんだ」(ダンテ)

 戦闘経験が無いのがバレる前に倒さないとやばいよね。


「ファイアーカノン!!ファイアーマッスル」(エルザ)

 精霊魔法の二重掛けで、ファイアーカノンの火の玉の影から筋力を上げて、剣をまっすぐに伸ばして突っ込む。


 ファイアーカノンの火の玉は私とダンテの魔力障壁に挟まれて爆発する。

 その爆発を刺し貫くように私の剣が走る。手ごたえがあった。


 私の体はダンテの魔力障壁にぶつかり止まるが魔力を通した剣が障壁を貫いた。

 ダンテの左腕を貫いていた。しまった致命傷じゃない。どうしよう。

 私の逡巡をダンテは見逃さなかった。


 ダンテは剣を横に大きく払う。

 私は手足を突っ張ってダンテから離れる。

 痛い、お腹を浅く切り裂かれた?


 幸いファイアーマッスル(火事場の馬鹿力)はまだ効いている。

 慌てて距離を取り、トリートで怪我を治す。


「分かったぞ!お前魔法はすごいが、戦闘経験が殆ど無いな」(ダンテ)

 殆どじゃない、全く無いんだよ。

 あ、ファイアーマッスルも切れちゃった。魔力障壁同志の近接戦なんてどうすれば良いのか??

 やばいなあ、魔力も切れかかってるよ。大魔法を連発したからなあ。


 ジュンヤ様、ごめんなさい。もうダメみたいです。

 手足の感覚が全く無い。


 ダンテが襲い掛かってくるのが見えるけど体が反応しない。短い人生だったな。


 ギャイィィィーン!!

 ダンテの剣が弾かれる。

「ようもうちのエルちゃんを虐めてくれはりましたなあ」(エルザ?)

 私の口が勝手にしゃべってる。


 ウン、尻尾が前に、エエエエエ、たくさんある。私どうなっちゃってるの。


「おのれえ、まだ逆らう元気があったか」(ダンテ)

「おまはん、尻尾巻いて帰った方がええん違いますかあ」(エルザ?)

「うおおおお!!」


 ダンテは剣を滅茶苦茶に振り回すが尻尾がそれをすべて弾いてしまう。

「もうよろし!!」

 尻尾の一本がダンテを弾き飛ばすとくるくると回りながら飛んで行く。

 バイバイ〇ーンという奴である。


 私?は地上に降りてカンナさんの所に行く。

「これ、おおきにたすかりましたわあ」(エルザ?)

 剣をカンナに返した。

「1・2・3・4・・・・・エルザさん!!尻尾が九本ありますよお!!」(カンナ)

 剣を受け取ったカンナが叫んだ。

「はい、うちはエルザベートの母親でキュービと申します。よろしゅうに」(キュービ)

 私の母親????。

エルザの母の半生とドワーフたちの脱出行。

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