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第三十六話 ジリオラ様と新しい仲間

新しい仲間が増えます。

 六肢族の中で蝙蝠の羽を持つ魔翅族と対立する鳥の羽を持つ天翔族。

 今回の事件は天翔族が魔翅族を倒した俺達に興味を持って、ちょっかいを掛けて起こったものだ。

 幸い双方に大きな怪我も無く、事なきを得た。

 天翔族が帰った後、俺は聖魔力を貰いにジリオラ様と呼ばれる修道女に会いに行く。


 ギズモニア 聖女協会 ジュンヤ

 聖女セシルが扉を開けると小さな部屋の中に二十台半ばくらいの若い修道女が居た。

 老人を想像していた俺は、ギャップの修正に戸惑った。


「ジリオラ様、世界の王をお連れしました」(セシル)

「あなたが世界の王!先ほど司祭様が説明してくれましたが、もし良ければもう一度その姿を見せて頂けませんか?」(ジリオラ)

「俺はジュンヤと言います。本当に世界の王かどうかは俺には分かりません。これを見てご判断ください」


 俺達は隊列を組み、聖獣が変身する。あれ!聖女がエルザの横に並んでる。??まあいいか。


「おおこれは!!


 晴れやかなるかな、晴れやかなるかな、前に桃色の獣を従えて、後に青き竜を従えて、


 右に白い水の獣を従えて、左に赤き火の鳥を従えて


 世界の王が降臨す。我らの王が降臨す。


 王は我らを従えて、悪を滅ぼし、魔を滅し、地上に楽土を築くべし。


 聖書の言葉は本当だったのです。私達のしてきたことは無駄ではなかったのですね。

 神よ!この瞬間に立ち会わせていただいたことを感謝します」(ジリオラ)


 この大陸の教育を受けた者ならだれでも口ずさめる聖書の一節、それが俺達を現している。

 この瞬間巨大な聖魔力が俺達を包み、入ってくる。


 ジリオラ様達が長い年月集めてくれた聖魔力だ。感謝しかない。

 うん、エルザと聖女も聖魔力を吸収してる、どういうことだ?

 オスカーとシルビィさんには変化が無いのに。


 ジリオラ様からの聖魔力の供給が終わった。

 今のところ変化のあるものは居ない様だ。マイアの精霊は覚醒すると思ったのだが。


「ジュンヤ様お願いがあります」(セシル)

 後から声を掛けられて振り向くとセシルが居た。


「聖女様、どのような御用ですか?」(ジュンヤ)

「私を鍛えて貰えませんか?」(セシル)

「俺はここに長居は出来ませんし、聖女様がここを離れるのは、国も教会も許さないでしょう」(ジュンヤ)


「私は六肢族との戦いで自身の無力を痛感しました。このまま聖女を続けることが出来ません。どうかお願いします」(セシル)

「師匠!彼女の棒術は私の弟子入り前の水準を超えています。師匠が鍛えればすぐに上達すると思いますが」(マイア)


「それは解っているが、その前に聖女と言うものはおいそれと動けるものではない。政治的、宗教的に問題があるのだ」(ジュンヤ)

「お待ちください。セシルは先ほど聖魔力を吸収しました。これは、世界の王の眷属と言うことです。どうか連れて行って下さい」(ジリオラ)


 じゃあ、エルザもかよ?この世界の王というシステムが良く分からん。まあエルザについてはここで調べるのは止めておこう。帰ってからの方が良いだろう。


「ジリオラ様よろしいのですか?」(セシル)

「ルイスももう聖女の仕事が出来るでしょう。あなたは世界の王の仕事を手伝いなさい」(ジリオラ)


 セシルは司祭の許可も得て、俺に付いてくることになった。

 同僚の修道女たちから暖かい送別の言葉を貰って修道服を脱いだ。


 俺達はそこからチャールズさんの所に向かう。

 チャールズさんはすでに大河に出ていた。俺達は船が満載で降りられないので、空中で挨拶をして、そのままソルトレイクに向かう。大勢の特に子供が手を振ってくれた。


 ソルトレイク 迎賓館 会議室

 まだセシルは契約してないので、内壁の中には入れずに迎賓館に入る。

 会議室の大きな机の一番奥にジュンヤ様、一番近い席に私は座った。


「セシル、君のはどうしたい。聖女として人々の役に立ちたいのだろう。具体的にはどうするつもりだ」(ジュンヤ)


 私はどうなりたいのだろう。具体的なことは何も考えていない。ジュンヤ様ならこの閉塞した状況を何とかしてくれると思ったのだ。何とも他力本願なことだ。

「私は聖女として武道を極めれば、多くの人を救えるのだと漠然と考えていました。けれど、天翔族との戦いで私の武術は通用しませんでした。私は今どうすれば良いのか分かりません。厚かましいのですが私を導いては貰えませんか?」(セシル)


「ふむ、見た所君はすでに棒術で名人の域に達している。俺が教えても伸びしろはそんなにないだろう。君が天翔族に敗れたのは魔法だ。魔法を覚えるには俺と隷属の契約を結ぶ必要がある。君はジリオラ様の発した聖魔力を吸収した。間違いなく魔法の才能を持っているが、どうする?」(ジュンヤ)


 隷属って奴隷になるって事よね。ジュンヤ様にエッチなこともされるのかしら。いくら世界の王でもそれはまずいわよね。どうしたら良いのかしら・・・・・。


「ごほん、別に隷属契約をしても奴隷になることは無い。俺を裏切らない事、犯罪を起こさない事が

 基本で統治しやすいようにしている。ソルトレイクの市民とは全員と契約している」(ジュンヤ)


 私が赤い顔してモジモジしているのを見て、ジュンヤ様が付け足した。

「それならばお願いいたします」(セシル)


 頭の中に少し風が吹いたような感覚がした。

「これで君は俺達の仲間だ。明日からはマイアについて、魔法や武道の訓練をしてくれ。マイア、いいな!」(ジュンヤ)

「はい、お任せください」(マイア)


 私達は迎賓館を出て内壁の分厚い門を潜り、ジュンヤ様の家に向かった。


 ソルトレイク ジュンヤの家 食堂兼会議室 エルザ

 エルザ達は食事後、自己紹介をして会議をした。

 議題はジリオラ様から聖魔力を貰った後の変化の発表だ。


「俺は特に変化は無いな。じゃあ、ハルから」(ジュンヤ)


「私は魔力が増えた以外は特にありません」(ハル)


「私は精霊の存在が感じられるようになりました。雷光ライトニングの精霊だそうです。具体的なことはまだ分かってません」(マイア)


「私は電子エレクトロンの精霊だそうです。探索や検索系が得意だそうで、アイさんの力を借りるとかなりの事が出来るみたいです。まだ正確なことは掴み切れていません」(マリー)


「聖獣は皆、魔力が増えた以外は変化は無いわ」(ノーラ)

 アステルさん、レイコさん、ボルクさんが頷いた。


 発表は終わったのかな。次は何をするのかなあ。などと思っていたらみんなが私を見てくる。


「次はエルザだ。君も聖魔力を貰っただろ」(ジュンヤ)


「え、私ですか??」(エルザ)

「君もあの世界の王の行列の中に居たし、聖魔力も吸収していたよね」(ジュンヤ)


 ええ、分からない。あの列に居た時もいつの間にか並んでいたのに。並んでいた時の記憶もはっきりしないのよね。

「あのぉ、分かりません」(エルザ)


「セシルはどうかな?」(ジュンヤ)

「私もぼんやりとした記憶しかなくって。なぜあそこに居たのかも分かりません」(セシル)


「お二人からは精霊の気配がしますが、まだ起きては無いようです。オスカー君、シルビィさんからは気配はないです」(マリー)

 オスカーとシルビィは明らかにホッとしている。ずるいわ。一緒に居たのに。

 会議は何か分かったら知らせるようにとジュンヤ様が言って終わった。


 私、セシルさん、ハルさん、マイアさん、マリーさん、ノーラさん、レイコさん、シルビィの8人でお風呂に入った。


 お風呂は昨日も入ったがここのお風呂はガーランドの風呂とは違う。ガーランドでは小さな一人用のバスタブにお湯を入れ、体を洗うのだが、ここでは8つの洗い場があり、それぞれが同時に体を洗う。洗ってくれるメイドが居ないので戸惑ったが、昨日ハルさんに教えて貰った。オスカーもシンディが居なくても大丈夫だったようだ。


 それに髪の毛を洗うシャンプー、髪の毛を保護するトリートメント、顔を洗うフェイスソープ、体を洗うボディソープと部位によって石鹼を使い分けるのだ。


 石鹼を落としたら湯舟に入るのだが8人でもゆっくり入れる大きさだ。ちょっと熱めのお湯に肩まで浸かると血行が良くなり、とろけそうになる。


「どうですか?慣れてきましたか?」(ハル)

 ハルさんは私達に気を使ってくれる。歳は変わらないのだけれど、頼れる存在です。

「ありがとう。大分慣れました。敬語は止めてください。ここには身分制度は無いと聞きました」(エルザ)


「そうですね。ここには役職の上下はありますが基本的に貴族も王族も奴隷も居ません」(ハル)

「はあ、役職ですか。私も何か職を持たないといけませんね。ハルさん達のお仕事は何ですか?」(エルザ)

「私はご主人様の専属メイドです。マイアさんが護衛、マリーさんが相談役ですね」(ハル)


「私に出来る仕事はあるのかなあ」(エルザ)

 ちょっと不安になって来たけど、ジュンヤ様は慌てなくて良いと言ってくれているけど・・・・。

 オスカーとシルビィの仕事は考えてくれているらしい。羨ましい。

 私は大きなため息を吐いた。


 ソルトレイク ジュンヤの家 セシルの部屋 セシル

 セシルはベッドに横になっていた。そして決断した。ジュンヤ様が世界の王ならその仕事を手伝う事で、多くの人々を救うことが出来るのではないかということだ。


 そのためには天翔族に勝てるぐらいの武力を持たなければならない。

 マイアさんは魔翅族という天翔族に匹敵する六肢族を倒したことがあるようだ。

 せめてマイアさんと同等の力を手に入れなければ。


 それにしてもここは天国かと思ってしまう。

 御飯はおいしい、肉や卵が入ってるし、それが朝昼晩と3回も食べられるらしい。

 お風呂って言う今まで見たことないお湯を湛えた水槽に浸かるという体験をした。

 しかも貴族でも使えないような高級そうな石鹸を使うのだ。

 しかもこれは私達だけではない。この町の人すべてが同じような暮らしをしているのだ。


 それが毎日だと言うのだ。教会の修道院の皆に教えてやりたい。


 修道院ではご飯は朝と夜の2回だけだし、肉は探さなければ分からない欠片のような物が入っている時がある程度だ。

 お風呂なんて無いし、水で体を拭くだけだ。それも3日に一回だ。


 もしかしてこれを世界に広げたら戦争なんて無くなるかも知れない。

 世界の王はすごい。尊敬する。

 一生ついて行きます。

次回からピョートル大脱出編スタートです。

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