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第三十二話 機関車の試験とガーランドのお姫様

汽車が走りました。

ガーランドに偵察に出ようとしたら・・・。

 ギズモニアに殴り込んだジュンヤ達、佞臣ガスパールは自殺、王に俺の要求を突きつけて帰途に就く。


 念話でチャールズさんに結果報告をした。彼は船を次元収納に入れている所だった。

『そうでしたか。・・最小限の犠牲に抑えて頂きありがとうございました』(チャールズ)

『あれ、チャールズさんならもっとやれとか言われるのかと思った』(ジュンヤ)


『私は、兵のためとは言いながら王を殺そうとした男です。追放されるのは仕方ない事です』(チャールズ)

『あと、言われた布陣で政務を行えって紙で置いて来た』(ジュンヤ)

『紹介した男たちなら確実にギズモニアは良い方に向かうと思います』(チャールズ)

 チャールズさんは何か感慨深げだった。故郷の政変って堪えたみたいだ。



 聖獣達は昼食を食べないので、俺と3人娘は飛びながらおにぎりで済ます。

 早く帰って蒸気機関車の試験走行を見たいからである。


 工場に来るとすでに機関車は外に出ていた。

 蒸気の圧力は上がっているようだ。蒸気機関は水が蒸気になって圧力が上るまで何も出来ない。ガソリンエンジンみたいにすぐには動けないのだ。それが蒸気機関の最大の弱点だ。


 ブシューッ!!・・蒸気が噴出される。一気圧の大気中に出た高圧の蒸気は湯気になって真っ白な煙のように登っていく。


 最初の蒸気がシリンダーに送り込まれピストンを押す。機関車が動く。その後も次々と蒸気が送り込まれて機関車が速度を上げていく。

 シュッ、シュッ、ポーッ

「走った。走ったぞ!!」

 研究員たちから歓声が上がる。俺も少しウルっと来た。


 線路はすでにヤハタまで繋がっている。ヤハタまで行くつもりか?

 しかし一kmほど走って後退してきた。故障か?


 工場の前まで戻ると客車を一両押してきた。連結するのか。

 ガシャァーンと言う音で客車が機関車に繋がった。後、鎖で確実に繋ぐ。


「ジュンヤ様!!客車に乗りますかぁ?」(研究員)

「もちろんだ」(ジュンヤ)

 俺は客車に乗り込み、窓際に座る。


 俺は幼い頃、親父に連れられて乗った蒸気機関車を思い出した。

 もうその頃には蒸気機関車は観光用にわずかに走っているだけだった。


 ポーッ

 汽笛の音が少し抜けてるような、汽笛はうろ覚えで設計したからな。仕方ない。

 走り始めると昔の思い出が蘇る。石炭の焼ける匂いとか、木枠の窓、木の椅子何もかも懐かしい。


 かなりスピードが出てるな。向かいに座ってる研究員に尋ねた。

「君、この試験走行は速度はどれくらい出すんだ?」(ジュンヤ)

「行きは時速50km、帰りは時速100kmを試します」(研究員)

「いきなり、時速100kmは危ないんじゃないか?」(ジュンヤ)

「大丈夫ですよ多分」(研究員)

 その根拠の無さそうな返事は止めて欲しい。


 約10kmの道程を走った汽車はヤハタに着いた。

 一旦連結を外して回転式の方向転換機で180度方向を変える、帰路に就くのだ。

 再度、客車を連結した機関車は南に向け走り始める。


 速度が上がってくると線路の継ぎ目のガタンゴトンと言う音が激しくなってくる。

 線路は夏は温度で膨張し長くなる。だからその分を継ぎ目部分で調節する。

 今は冬なので一番継ぎ目の隙間が空いている時期なのだ。


 ちなみに現代日本の線路は大体継ぎ目が少ないロングレールや伸縮継目になっているので、あまり継ぎ目の音や振動は気にならない。


 100kmともなると相当な音と振動が伝わってくる。

 この機関車には給炭装置は付いていないので、今頃機関手は石炭を必死で火室に放り込んでるだろう。


 ソルトレイクに近付くと徐々に速度を落とし、工場前の仮設ホームに停車する。

 機関車は工場に入れられ、徹底的な点検が行われる。

 今日走った時間は30分程度だが初期不良の出やすい時期でもある。

 試験走行を繰り返して、設計上、製造上の不具合を見極めるのである。


 俺は邪魔にならないように工場を出ようとした時カンナが走って来た。

「ジュンヤさん!あの機関車を設計したのはジュンヤさんなんですよね。すごいです!!初回でこんな完璧な図面が引けるなんて」(カンナ)


 俺は学生の頃、趣味で勉強したD51かC62の図面をアイさんが記憶から拾い出して、図面にしただけなんだが、そこまで言われるとパクった背徳感が半端ない。

「ありがとう、そこまで言われることじゃない。後は頼むよ」(ジュンヤ)

「はい!」(カンナ)


 ******


 翌日、教皇から念話が来てガーランド偵察の拠点となる場所が決まったらしい。

 色々条件を付けたからなぁ。取り敢えず見に行って来るか。


 聖都に行くと教皇から十二天使の一人ハリマエルを紹介して貰った。

「ご苦労様です。第六軍を任されています。パワーズのハリマエルです。今回偵察拠点の探索を任されました。よろしくお願いします」(ハリマエル)

「こちらこそよろしく」(ジュンヤ)


 十二天使の中で紅一点のハリマエルが担当か。二十台半ばで少しふくよかな女性だ。と言うか胸がとんでもないサイズなんだよ。


「早速、案内して欲しいんだけど。背中に乗るわけにもいかないよね」(ジュンヤ)

 流石に子供の時のハルやノーラみたいに抱っこやおんぶして飛ぶわけにもいかないし、どうしよう。

「私は大丈夫なので乗せて頂けますか。マルキエル様のをいつも見ていましたから大丈夫です」(ハリマエル)

 今の飛行速度で肩に座らせるのも危ないし、100km以上離れてるみたいだし、仕方ないか。


「じゃあ、背中に乗っておんぶするから」(ジュンヤ)

 少ししゃがんでハリマエルに背中を向ける。

「はい」(ハリマエル)

 ハリマエルがおぶさる。

 背中に巨大な柔らかいものが、我慢だ我慢。マルキエル達が見ている。にやけてしまったら娘達に何を言われるか。一時間は説教される。


 何とか我慢して指定された場所に着いた。

「ここですと国境から約20km、街道からは見えませんし、平らで水はけも良く風通しもまずまずです」(ハリマエル)


 南北が山に囲まれここだけ幅3km位の緩やかな谷になっている。どうも山が急峻な谷に崩落して出来た地形みたいだ。大きな岩がゴロゴロしている。その間を縫うように人一人が通れるような街道が続いている。その頂点が国境になっているようだ。


 俺は魔法で地ならしをすると基礎になる石を置き、前に住んでた家を出して置く。

「家が出て来た?私夢でも見てるの?」(ハリマエル)

 信じられずに騒ぐハリマエルの肩を叩く。

「一旦君を帰すよ。背中に乗って」(ジュンヤ)


 まだお昼になってないのでハリマエルを帰して、家の準備が出来たらハルとマイアを呼んで、明日はガーランドの偵察をするかと考えていた。呼んだ時にハリマエルがいると修羅場になりそうだからな。


 ハリマエルを帰して拠点に戻ってくると玄関に人がいる。フルプレートの鎧を付けた黒髪の女、女騎士だ。

 まだ一回も偵察してないのに見つかったのかよ。なんてこった。

 女騎士の様子から家の中には人がいると思われる。彼女は見張りだろう。

 拠点と言うか家を失う訳には行かないので、俺は見つからないように大きく回って、家の裏側に降りる。


 俺は後ろから右手で相手の右手を極め、左手で首にナイフを当てた。

「お前達は誰だ!俺の家に何の用だ!」(ジュンヤ)

 彼女は俺を振りほどこうとしたが右手を極められているので身動きできない。

「待ってくれ、私達は怪しいものではない。休憩したくて伺ったら誰もいなかったので、お邪魔しただけだ」(女騎士)


 俺は女騎士の剣を外して解放した。

「他の者を呼べ」(ジュンヤ)

「分かった。・・家の者が帰ってきました。二人共外に出てください!」(女騎士)


 金髪の女騎士がもう一人とメイドが一人出て来た。

『まだ中に二人います』(アイ)

 その二人が庇われているのか。結構大物かも?。

「まだ二人中に居ますね。出てきてください」(ジュンヤ)


 金髪の女騎士が剣を抜こうとした。

「ハンナ!やめなさい」

 少女が男の子の手を引いて家から出て来た。女の子は狐人族だ。他は皆人間なのに。

 少女と少年は貴族の着るような服を着ているので、身分は高そうだが・・訳アリだな。


「私はエルザベート、無断で家に入ってごめんなさい。疲れていたものですから休憩したかったのです」

「俺はジュンヤだ。俺に敵意を向けるものでは無いと分かった。構わないから家の中で休んでくれ」(ジュンヤ)

「ありがとうございます。私の事はエルザとお呼びください。この子はオスカー、金髪の騎士がハンナ、黒髪の方がオリビア、メイドがシルビィと申します」


 俺は家の水を使えるようにして、ケトルの湯を沸かす。うちの子たちの木のカップしかないが仕方が無い。紅茶を入れてやる。

 シルビィがそれを見た。

「私がやりますからジュンヤ様は座っていてください」

 俺は頼んで食堂の椅子に座った。シルビィが紅茶を配る。毒見はしたみたいだな


「訳は話さなくても良いし、ここは1週間くらいなら使って貰っても構わない」(ジュンヤ)

「あなたは不思議な方ですね。見た所身分は高そうですがここに住んでいるのですか?」(エルザ)

「俺か、俺は西大陸とガーランドが戦争になるから、ガーランドを偵察するためにここに拠点を作ったところだ」(ジュンヤ)


「あなたはアルミアの方ではないのですか?」(エルザ)

「俺の所属はヤマト国、知らないかな?元精霊の里に出来た国の者だ」(ジュンヤ)

「では、アルミアの依頼を受けたのですか」(エルザ)

「まあ、アルミアだけではないがその通りだ」(ジュンヤ)


「もしアルミアの施政者を誰か知っていたら紹介願えませんか」(エルザ)

「知ってるよ。教皇、聖女、十二天使・・大司教は仲が悪いから勘弁だ」(ジュンヤ)

「貴様!!馬鹿にしてるのか!!」(ハンナ)

 俺がふざけてるように見えたのか金髪の方の騎士が剣に手を掛けた。


「ハンナ!!おやめなさい。本当にあなたはこらえ性が無いというか」(エルザ)

「も、申し訳ありません」(ハンナ)


「度々申し訳ありません。そうだわ、精霊の里と言えば聖女に世界の王に認定された方がいるのでした。知りませんか?」(エルザ)

「一応知ってますよ」(ジュンヤ)

「紹介していただけませんか?」(エルザ)


「あなたが誰かが分からないとね」(ジュンヤ)

「あ、これは失礼いたしました。私はエルザベート=ガーランド、ガーランド帝国第二皇女です。そしてこちらはオスカー=ガーランド、ガーランド帝国皇太子です」


 これは思ったより大物だぞ。他所に置いとくよりうちに置いといた方が良いか。

「ではこちらも私がジュンヤ=モチヅキ、ヤマト国主席及び西大陸連合総司令官です」

 ヤマト国代表はマリーだし、俺は主席で良いか。

次回ガーランドの実情が解ってきます。

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