第二十八話 ドワーフの指導員とノーラの覚醒
蒸気機関車完成の為にドワーフの指導員を探すジュンヤ。その頃ノーラとマイアが事件解決に動く。
俺は武器屋のおじさんに日本刀を見せてくれとせがまれ、その流れでたたら製鉄を語っていた。
「ジュンヤさん、そろそろ時間が」(アステル)
時間は2時50分、BSコープのデジレさんと3時に会う約束だった。
「おじさん、ごめん、BSコープのデジレさんと約束があるんだ。もう行かなきゃ」(ジュンヤ)
「なに、デジレだと。じゃあ俺も行く」(おじさん)
「え、どういうこと」(ジュンヤ)
「デジレは私のおじいちゃんなの」(カンナ)
武器屋のおじさん、ダナンさんを連れてというか引っ張られてBSコープの建物へ入った。
ダナンさんは事務員さんや受付嬢を無視して俺を奥の部屋へと引っ張って行く。
重厚な扉をノックもせずにバーンと開け放つダナンさん。俺は手を引っ張られてるのでそのまま部屋の中に入った。
これまた重厚な机で事務仕事をしていた老人が顔を上げる。
「なんだ、なんだ。ダナンか。何の用だ」
「おう親父!!このジュンヤさんと話があるって言うから連れて来たぞ。早くしろ」(ダナン)
「また、お前は訳の分からんことを」(デジレ)
「俺はこの人の話を聞きたいんだよ。この腰の物が目に入らないのか?耄碌したな」(ダナン)
「こ、これは刀か!!本物か」(デジレ)
「あのー、すいません。できたらこちらの話を聞いて頂けると嬉しいのですが」(ジュンヤ)
どうもこの人たちは職人魂と言うか興味のあることを話し出すと止まらない予感がする。
「そうだな。冶金の指導をして欲しいとの事だな。それでどういったものを造っておるのかな」(デジレ)
「蒸気機関車です」(ジュンヤ)
「ジョウキキカンシャ?なんだそれは?」(デジレ)
俺は蒸気機関車の説明をした。
「水を沸かしてその力で車を動かすのか。よくわからんが」(デジレ)
「すでに高炉や転炉の送風機として稼働しています」(ジュンヤ)
「高炉はわし達も使っておるがテンロと言うのは何だ?」(デジレ)
「転炉は銑鉄を鋼鉄に変える物です」(ジュンヤ)
「なんと!!そんなものが発明されておるのか?!」(デジレ)
デジレは下を向いてブツブツ言っている。
「どうも本当の事とは思えんな」(デジレ)
「嘘を言っても仕方ないでしょう」(ジュンヤ)
どうも俺が根も葉もない話をしていると思っているようだ。
「例えば、うちからの指導員を脅して、マスケットを量産しようとかじゃないか」(デジレ)
「マスケットなんて要りませんよ。うちにはもっと高性能なものがある」(ジュンヤ)
「ではそれを見せて貰おう」(デジレ)
「良いでしょう。広い所に案内してください」(ジュンヤ)
「おいおい、俺との話はどうなるんだよ」(ダナン)
「あなたのお父さんに聞いて下さい」(ジュンヤ)
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俺達はマスケットの試射場に来ていた。幅20m奥行き120mと言った所か。
俺は向こうを向いて、デジレ達に見えないように次元収納から連発銃を取出し、弾が込めてあることを確認して、シリンダー部分が見えないようにハンカチを巻いた。
振り向くと銃を持っていたので驚かれたが何も説明はしなかった。
一番遠い的で120m位だ。連発銃の有効射程は300m問題ない。
俺は3回撃って120mの的に3回とも当てた。
「3連発、しかも120mの的に当てた?」(デジレ)
「いえ、もっと連発出来ます。これでマスケットの技術は要らないと分かってくれましたか?」(ジュンヤ)
俺は連発銃を次元収納に入れた。
「おい、火縄が付いてなかったぞ」(ダナン)
「ええ、発火薬を使ってます」(ジュンヤ)
「見せて・・・・・は貰えんわな」(デジレ)
「はい、この技術がガーランドに使われると大変ですから。まあ作れないでしょうけど」(ジュンヤ)
「そうか、我が国はガーランドが最大の顧客じゃからな。指導については明日午後一に伝える。今日はコープに部屋を用意させるから泊って行ってくれ」(デジレ)
ダナンが夕食を食べに来いというのでお邪魔した。危なそうなので食事をとらなくていいアステルとボルクはコープに残した。
やはり夕食が終わったらダナンとカンナそれからダナンの仕事仲間5人が来て、日本刀の話や蒸気機関の話を聞かせろと言って、朝方まで捕まってしまった。
デジレさんは来なかったな。聞きたそうではあったけどな。
俺はそのままダナンの家で寝てしまって、昼前にアステルとボルクに起こされた。
昼飯を食ってコープに出かけた。刀は持っていると盗まれそうなのでショートソードに替えた。
デジレの部屋に行くとデジレとダナンが待っていた。
「よく来たな。昨日は疑って悪かった。それで指導の件だがうちも製造現場に招き入れて教えると言うことは皆に反対された」(デジレ)
やっぱり無理だったか。まあ会議を開いて検討してくれただけでもありがたい。
「そこでだ。西大陸まで行って指導をしたい者を募った。3人居た。連れて行ってくれ。おい、入れ」(デジレ)
うちに来てくれるのが3人もいたのか。ドアを開けて入って来た者を見てびっくりした。
「よろしくお願いします」(カンナ)
後2人も昨日俺の話を聞きに来ていた奴だ。
「ダナン良いのか?」(ジュンヤ)
「ああ、一通りのことは教えてある。帰ると言うまでこき使ってやってくれ」(ダナン)
残りの二人は二十台半ばくらいか、この子達にも確認する
「俺は三男坊、こいつは四男坊でこの国に居ても店は持てません。西大陸で店を持って、また嫁を探しに帰ってきます」
「お前らが成功すれば後に続く者も出てくる。頑張れよ」(デジレ)
「明日の朝出発する荷物をまとめといてくれ。次元収納があるから大きい物でもいいぞ」(ジュンヤ)
俺は出発までにドワーフの町を見学した。
文明の程度はともかく、手先の器用さ、職人としての誇りが製品の品質を保証している。
外国人の俺達だが正教会の発行した貨幣なら普通に使えるので自分達の土産と留守番している娘達の土産を買っていく。
ノーラとレイコも服を着られるようになったので服を買って行こうと思う。
余談だがこの大陸にはいくつかの種類の貨幣があるが一番信用があるのが正教会の発行する貨幣である。国毎に発行する貨幣は基本的にその国でしか使えない。
西大陸では俺が正教会の貨幣を大量に取り上げたものだから各国で不足気味である。
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俺達がピョートルの町で買い物している時、ソルトレイクではちょっとした事件が起きていた。
「水田村にオークが出たらしい。ハイオークも混じってるらしいから応援して欲しい」(タマサブロウ)
水田村はソルトレイクから100kmほど南にある開拓中の、その名の通り米を中心にした農業をするために作った村である。
ハイオークはオークの上位変異種で体が大きく頭も良い。
タマサブロウがジュンヤの家に応援を求めた時、家に居たのはノーラとマイアだけだった。
「マイア、行きましょう」(ノーラ)
「ノーラ、接近戦は大丈夫?多分森の中が戦場だぞ」(マイア)
「進化した私を見せてあげるわ」(ノーラ)
ノーラを背負ったマイアは水田村に飛んだ。
水田村は2km×2km位の土壁に囲まれた小さな村だ。元は湿地で水利が良いのでその面積の9割が水田だ。
その壁から護衛の兵士が連発銃で応戦していたが、オークはひるまずに壁に体当たりして崩そうとしていた。オークの皮下脂肪は厚く、急所に当たらないと死なないのだ。
「あそこね。行くよ」(マイア)
「分かったわ」(ノーラ)
壁の外に降りると護衛の兵士に撃つのをやめさせた。
「ストーンランサー!!」
ノーラが叫ぶと地面から無数の槍が出現、そこに居たオーク数匹を串刺しにした。
「敵の群れは森の中よ!」(マイア)
マイアが剣を抜き、まばらに居るオークを斬りながら森の中に突っ込んで行く。
その後をノーラ歩いて行く。
ノーラが追いつくと20匹くらいのオークにマイアが包囲されていた。
マイアの死角から襲い掛かるオーク。木に阻まれて大きく剣を振れないマイアは苦戦していた。
「加勢するわ」(ノーラ)
ノーラはマイアの後ろに居るオークに無造作に近づいて行く。
オークはノーラに気付いて振り向き様に殴りかかる。
「ノーラ!!」(マイア)
叫ぶがノーラの姿はマイアからは見えない。
オークの背中から石の槍が数本伸びる。ノーラの体からストーンランサーが伸びたのだ。
「服を自在に作れるんだから。それ以外の物も作れるのよ」(ノーラ)
オークは横に倒れる。
ノーラは無防備に歩きながら次々と掛かってくるオークを仕留めている。
マイアは後ろを気にせずに済むので、これも次々斬り殺して行く。
残り数匹になった時、ノーラの後ろに巨大な影が現れた。
身長が3mもあるハイオークだ。
そいつは持っていた丸太をノーラの頭に叩き付けた。
「あんた、こんなもので私に勝てるつもりなのかしら」(ノーラ)
ノーラは右手で丸太を受け止めていた。
ハイオークは理解できなかった。コボルトなどこの一撃でつぶれた肉塊になってしまうのに、この小さい人間は手で平然と受け止めている。
「ブヒ!ブヒ!ブヒーッ!!」
「不思議そうね。私は地の聖獣。足が地面についていれば、私の体はこの星と同じ、そんな丸太でつぶれる訳ないでしょ。一つ賢くなったところで死んでちょうだい」(ノーラ)
ノーラの右手は巨大な爪が生えて、丸太を握りつぶす。
ハイオークは丸太を放り出して、振り向いて逃げようとする。
しかしハイオークは背中から刺され、胸には5本の爪が飛び出した。そして力なく崩れ落ちた。
「ノーラ、あなた、すごく強くなった」(マイア)
残ったオークをすべて仕留めたマイアが近寄って来た。
「あんたも精霊が目覚めたら強くなれるわ」(ノーラ)
「私の中に眠ってる精霊って、何かわかるか?」(マイア)
「分からないけど。多分あんたの特性に合った精霊だと思うわ」(ノーラ)
「ハルが敵の本陣に一人で行って敵の大将倒したじゃない。負けてられないのよ」(マイア)
「あんた達、無駄に張り合ってるわよねえ」(ノーラ)
「同じ前衛職だし、師匠に好かれたいからな」(マイア)
「あんたは女子力上げた方が良いと思うわ」(ノーラ)
「言うな!家事全般、ハルに負けているのは解っている。だから剣では勝ちたいのだ」(マイア)
「まあまあ、今日は久しぶりにオークの生姜焼きをハルに作らせましょう」(ノーラ)
「そう言えば、師匠秘伝のたれが無くなってから食べてなかったな」(マイア)
ジュンヤが神様に持たせてもらった調味料はすでに無くなっていた。
私達はオークの死体を収納に入れて帰った。
次回ジュンヤの国の名前が決まります。仲間との絆を深めます




