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第二十五話 天下布武の言葉とハルの魔法

アーリアによって進化した聖獣達とハルの能力とは?

 ハルの内に居た闇の精霊が爆弾発言をして去って行ったのでマイアとマリーがハルに責め寄っている。

「私達の中に精霊が居るってどういうことよお!?」(マイア、マリー)


「私には分かんないよう。闇の精霊はもう寝ちゃったからあ!!」(ハル)


「お前達、静かにしなさい!!アーリアさん、聖獣の事、教えて頂けますか?」(ジュンヤ)

 マイアとマリーは仕方なく席に着いた。


「私は聖女を引退してから80年、ここで受け取った聖魔力を練って集めていました。それをあなた達に先ほど渡しました。・・その影響で精霊獣は聖獣へと進化しました。・・これは私の力ではありません。・・ジュンヤ殿の力によって進化したのです。・・私のしたことはきっかけに過ぎないのです」

 アーリアは自分に残された力を絞り出すように話していた。


「ここからは私がお話します。アーリア様はお休みください」(聖女)

 侍女が息も絶え絶えになったアーリアを奥の部屋に運んで行った。


「聖獣がどのような能力を持つのかは私達には分かりません。でも必要なのです。ジュンヤ殿あなたが世界に王になるために。そもそも世界の王は予言の書と呼ばれるものから本聖書に抜粋されたものです。予言の書自体は散逸して今はありませんが、正教会に連なる教会の巫女達には口伝にて伝えられています。その内容をあなた方に明かすことは出来ませんし、文字にすることも禁止されています」(聖女)


 俺が世界の王、やはりそうなのか。しかし本聖書には具体的な内容は書かれてなかった。

「それは俺が何かと戦うために世界の王にならないといけないと言うことか?」


「申し訳ありません。それも言えないのです。それを言えばあなたはそれに縛られてしまう。それは神の望むことではないのです」(聖女)


 確かに神は俺は好きに生きればいいと言ってた。今までだって誰に強制されることなく生きてきた。それが予言の書通りだってかまわないじゃないか。俺は俺らしく生きるだけだ。


「では、あなたも俺にこうしろとは言わないのですね」(ジュンヤ)


「もちろんです。ただ、他の国に行くことがあったら教会の聖女を訪ねて見てください。アーリア様の様に聖魔力を集めて待っているかもしれません。長年の努力が無為に終わるのもかわいそうなので」(聖女)


「正教会とは何ですか?」(ジュンヤ)

「本聖書のみを信じる教会です。アルミア教会はそこから派生した教えです」(聖女)


「最後に、ありがとうございました。アーリアは先達から預かって来た大きな仕事を終わらせることが出来ました。おかげで何の心残りも無く、天に旅立つことが出来ます」(聖女)

 聖女は部屋から出る俺達に大きく頭を下げた。


「余計なお世話かもしれないが俺は治療魔法を持っている。治療してみようか?」(ジュンヤ)


「ありがとうございます。アーリアは神に頂いた人生を余すことなく全うしました。これ以上は神も望んでいません」(聖女)


「そうか、すまなかった」(ジュンヤ)

 アーリアが俺を待つだけに送った80年間、それ以前の俺に会えずにむなしく死んだ聖女たちを想うと涙が零れそうになった。


 十二天使の詰め所に戻るとマルキエルが寄って来た。

「アーリア様に会ったんだろ。何か言ってたか?」(マルキエル)


「ああ、ありがたい話をな」(ジュンヤ)

 思い出すと目頭があつくなる。ちょっと誤魔化しておくか。


「そう言えばさ、アーリア様って目が見えないじゃないか。俺が近くに居ても気が付かなくってさ、良く何かブツブツ言ってるんだよ」(アズモデル)


「ああ、俺も聞いたことある。テンカフブがどうしたって奴じゃね」(マルキエル)


「そうそう、テンカフブって何だろうな」(アズモデル)


「さあな。天花粉は赤ちゃんに着けるやつだろ」(マルキエル)


 それが予言の書に出てくる言葉なのか?。

 天下布武って織田信長が言った奴だ。確か天下を武を持って従えるとかいう意味だよな。それが俺の目的なのか?。駄目だ!!言葉に囚われては。俺は俺の思う通りに生きるんだ。

 大体、俺と信長じゃあ性格が違い過ぎるだろ。


 外を見ると日が暮れかかっていた。もう偵察には出れないな。さてどうするか。

 精霊獣から聖獣に進化した内容が気になるな。聞いてみるか。俺達に用意された部屋に行く。


 そこには全員が居た。ノーラ達女子が盛り上がっている。

「どうしたんだ?楽しそうだな」(ジュンヤ)

「聞いてよ。私達服が脱げるようになったのよ」(ノーラ)

「そうか今まで体と一体だったんだな。それがそんなに嬉しいのか?」(ジュンヤ)

「当たり前でしょ。これでハル達と一緒にお風呂が入れるのよ!!ねーっ」(ノーラ)

「「「「ねーっ」」」」(ハル、マイア、マリー、レイコ)

「そ、そうか、良かったな」(ジュンヤ)


 今までの精霊獣は服と体が一体化していたため、変身は楽だったが風呂にそのままで入ると服も濡れてしまうので大変だった。

 今は獣の姿から人の裸の姿に変身して魔法で服を作れるようになったのだ。


「ジュンヤ様、服が作れると言うことは、体の周りにバリアを張ることも可能になったかと思います」(アステル)

「それの強度は解るか?」(ジュンヤ)

「感覚では土魔法のライフルだったら弾けるんじゃないかと思います」(アステル)

「よし、明日確認しよう」(ジュンヤ)


 ライフルの弾が弾けるならこちらの魔法で攻め放題になる。マスケット相手なら無敵だ。

 しかも聖獣や娘達も魔力が増えたので精霊魔法も使えそうだという。

 他はまだ分からないがこれだけはないだろう。

 ギズモニアとは明後日には決戦が行われる予定だ。俺達も大きな戦力になれる。


 流石に魔法を狭い部屋で開放するのは危険なのでいろいろ可能性を考えた。

「ハルの新しい魔法見せてよ。ハルのなら部屋の中でも大丈夫そうじゃない」(ノーラ)

「そうだハル見せてくれ」(マイア)

「ハーイ、じゃあ隠形やります」(ハル)

 ハルが魔法を行使するとそこに居るのは解っているのに集中してないと分からくなる。


「すごいな。そこに居るのは解っているのに見逃してしまいそうだ」(マイア)

「これを暗い所でやられたら、いるのか分からなくなりますね」(マリー)

「魔力で見ても気配が消えてます」(レイコ)

 この魔法は気配という気配を消してしまうらしい。


「次は影分身行きます」(ハル)

 次はいたるところにハルの気配がする。気配がするところを見るとハルが居る。近くのハルに触ってみると幻影だった。

「すごいや。オイラにはハルがたくさん居るように見える」(ボルク)

「いやボルクだけでなく皆そう見えてますよ」(アステル)

 この魔法は偽の気配と幻影で本当の居る位置を分からなくさせる魔法だ。


「次は影縛りやります。皆さん立ってください。影が見える方がやり易いので」(ハル)

「・・・・はい縛りました。動いてみてください」

「おお、動けないぞこれ」(ジュンヤ)

「ホントね。すごいわ」(ノーラ)

 数秒経つと動けるようになった。ずっと止めておける訳じゃなさそうだ。


「精霊魔法は明日広い場所でやります」(ハル)

「その方がよさそうだな。前から気配を消すのはうまかったけど、いよいよ忍者になっちゃったな」(ジュンヤ)

「エヘヘヘヘ、あのぉ、忍者ってすごいんですか」(ハル)

「ああ、すごいんだぞ。英雄だったり正義の味方だったりして、それに魔法と言わないで忍術って言うんだ」(ジュンヤ)

「私も立派なくのいちになります」(ハル)

「あ、いや、くのいちは・・・・」(ジュンヤ)

 くのいちはハニートラップとか仕掛けそうなイメージがあるので、やめて欲しいが、言えない。


 次の日、朝一番から全員で偵察だ。

 俺とマリーがギズモニアの王都タレート、ハルとマイアが王都軍、ノーラとアステルが北の拠点から戦闘の有った陣地まで、レイコとボルグが南の拠点から陣地までを飛んで偵察する。


 俺は今王都の上空に居る。

 王都は静まり返っていて、大きな動きは無さそうである。

 中央付近に教会の建物が見える。あそこにもアーリアの様な聖女がいるのかな。

『どうかしましたか?』(マリー)

 教会の上空を旋回していた俺を見て何かあったと思って念話をしてきたようだ。

『いや、なんでも無い。王都は問題なさそうだ。陣地の方に行こう』(ジュンヤ)

『はい』(マリー)


 陣地に向かう間にそれぞれから連絡が有った。

 王都軍は陣地から進軍を始めたようだ。

 南の拠点は動きなし。街道を回って下流を偵察して陣地付近で合流する。

 北の拠点からは約1万の兵が渡河地点に向かっていた。明日の決戦には間に合いそうにない。



 王都軍の上空に来ると本陣が川を越えてアルミア側に来ていた。

『本陣を移してますねえ』(マリー)

『ちょっとやそっとじゃ戻らないという意思表示なんだろうな』(ジュンヤ)

 双方ともに本陣や聖都に兵を残すだろうが5万対6万の戦闘になる。何万人もの死人が出てしまう。

 俺としてはアルミア軍に聖都に籠って欲しかったのだが、兵数が相手を上回ったので迎え撃つことになった。

 俺は盛大にため息を吐いた。


『どうかしたんですか』(ハル)

 ハル、マイアが合流した。

『ああ、大量に死人が出そうだからな。憂鬱だよ』(ジュンヤ)


 今、精霊の里は産業革命真っ盛りで、人がいくらでもいるのにこんなところで無駄に死んでいく。

 なぜならギズモニアは勝っても聖都までは征服できない。道半ばで帰らざるを得ない。

 アルミアもまだ敗戦の傷から立ち直っておらず、勝ってもギズモニア領土までの進行は出来ないだろう。

 ギズモニアが引いてくれるのが一番傷が少ないんだが。

 そんな話をハル達に話した。


『マスケットの数が増えています。おそらく北や南の物を集めたのかと』(マイア)

『では、3000丁集めたのでしょうか』(マリー)

『アルミアが1200丁だから倍以上か。それがギズモニアの自信か』(ジュンヤ)

『せめてタマサブロウさん達が居てくれたら』(ハル)

『アルミアが断ったんだ。仕方が無い』(ジュンヤ)


 タマサブロウ達が持つ連発銃は普通のマスケットの6倍以上の威力だ。それが300丁。

 相手の3000丁より有利に戦えたのに獣人差別で帰らせてしまった。

 もちろん連発銃は俺の次元収納に入っているが、2、300年進んだ兵器なので、まだ他所の国に貸すわけにはいかない。


 聖獣達とも合流したので聖都に戻った。

 マルキエル達十二天使に偵察結果を伝える。

「マスケット3000丁だと!!それを前面に押し出してくるのか」(バナエル)

「王都軍は1500丁では無かったのか」(アブリエル)

「北、南の拠点から集めたものと思われます」(マリー)

「ちょっと司教会に行って来る」(アズモデル)


「天使長騒がしいな。どうしたのだ」

 大司教が現れた。

次回、ハルによって戦争は終わります。

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