表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/81

第二十三話 前哨戦と渡河戦

いよいよ戦争がはじまりました。

 昨日の作戦会議は身の無いものとなってしまった。

 朝、タマサブロウ達を見送って俺達は南の軍を襲いに行く。

 一番早く戦場に着き、アルミアと戦う北の軍はマリーが偵察に出る。

 マルキエルはアズモデルと一万ずつの軍を率いて渡河予定地点に向かう。


 ******


 聖都を出て4時間後、東に向かって行進する南の軍を発見する。

 全体で三万人、マスケットは500と言った所か、4人の列で10km弱も続く隊列の中央やや後方に豪華な馬車が5台、将軍達が乗っているのだろう。

 マスケットには火縄が付いておらず、弓兵も弦を張っていない。

 自領内だから、当たり前か。


 豪華な馬車が橋を渡っている時に俺達は仕掛けた。

 俺は橋の出口をストーンシールドで通行止めにして馬車の扉を開けてサブマシンガンで全員殺す。

 ハルとマイアは前後に分かれて士官と思われる奴らをつぶしていく。

 上空からのライフルの狙撃で士官を狙い撃つのだ。フルプレートの鎧を着ているがライフルの弾丸はそれを貫いて行く。

 精霊獣達は後方の補給部隊に襲い掛かる。ストーンバレット、エアグレネード、ウォータージェットで付き添う兵隊を吹き飛ばし、スピットファイアで荷物を焼く。


 僅か十分に満たない襲撃で南の軍は指揮系統を失い、烏合の衆となっていた。

 そのうち大きな音で爆発が起きた。火薬が引火したようだ。

 脆い、自領内で無警戒と言うことがあって、好きなように攻撃できた。

「このまま王都の軍もやっつけましょう」(マイア)

「そうだな、連絡が行かないうちにやってしまおう」(ジュンヤ)


 王都軍を探すが王都軍はまだ進軍していなかった。

 流石に弱点を曝していない軍に攻撃を仕掛けるとこちらも危ない。

 マリーに念話を送ると北の軍は進軍しているというのでそちらに回る。

 2時間後、北の軍を襲った。今度も無警戒だったので南と同じようにやっつけた。

 今度は火薬とマスケットの弾丸を鹵獲して収納に入れた。

 王都には連絡が言ったのか、その日の出陣は無かった。


 夕方、俺達はマルキエルとアズモデルに報告した。

「北と南の軍が崩壊したというのか!!」(マルキエル)

「そこまでは言ってない。だが、再起するには相当掛かると思われる」(ジュンヤ)

「王都軍もジュンヤがやってくれれば、もうこの戦争は終わったな」(マルキエル)

「流石に王都軍は対策してくるだろうから無理!!」(ジュンヤ)


 初日に敵の半分を削れたのは大きい。戦死者は両方合わせても数百人と言った所だろうが指揮系統と補給品を失ったのだからそう簡単には軍の再編は出来ないだろう。

 後は時期である後1カ月も経てば、種まきなどの農繁期が始まる。兵農分離が行われていないこの世界では、戦争を続ければ農兵が農業を営めないので食べるものが無くなるのだ。常備軍など一割居るかどうかだ。

 普通考えれば諦めて戦争をやめるか、北と南の軍は解散して王都軍のみで攻めるかだ。


 ******


 ギズモニア王城 王のモリアットと黒ずくめの男。

「どうなっておるのだ。進軍した矢先に攻撃されるとは?」(モリアット)

「攻撃ヘリのような攻撃ですな。対空兵器が無いのだから仕方が無い」(黒い男)

「なんだコウゲキヘリだのタイクウヘイキだの?」(モリアット)

「良かったではないですか。あなたがぐずぐずしてたから出発が遅れて王都軍は無事だ」(黒い男)

「何が良い物か。北と南の軍は半年は使えん。王都軍も空からの攻撃を防げなければ出陣出来ん」(モリアット)

「恐らく精霊の里に国を作った男でしょう。アルミアと戦った時に空を飛んだという話があります」(黒い男)

「それが分かったところでどうすると言うのだ」(モリアット)

「奴の使っている魔法は精霊魔法。精霊はすべて魔人国の第六天魔王を名乗る男に捕まえられていますから、精霊獣を何匹か飼っているのでしょう。精霊の初級魔法は2、30mしか届きません。弓やマスケットで対応可能です。それでも心配なら私が護衛しましょう」(黒い男)

「最初からそう言ってくれればわしもすんなり出陣できたものを」(モリアット)


 ******


 次の日、俺達が偵察に出ると北と南の軍はそれぞれの拠点に戻っていた。

 軍を再編する動きはなかった。

 軍を解散しようとしているようにも見える。

 王都軍は出発したが要所要所を弓やマスケットで固め、指揮者には盾を装備させている。

 流石にこれを攻撃するのは難しい。

 王都軍は総勢6万、マスケットは1500丁だ。


 爆弾でも作って爆撃するしかないか。

 しかし火薬はそんなに作ってない。今のところマスケットの分で一杯一杯だ。

 これが終わったら無煙火薬でも作るか。


 夕方戻るとマルキエル達は全軍川岸に着いていた。

 今日の偵察結果の報告と明日からの予定計画を確認する。

「船を焼いてくれないか?」(マルキエル)

「船は鉄板を被せてあるし、マスケットや弓で武装した500人で守られている」(ジュンヤ)

「なんだ、対策されていると何もできないんだな」(マルキエル)

「まあ、そう言うことだが。お前達だって相手が待ち構えている所に突っ込んでは行かないだろう」(ジュンヤ)


 どうもマルキエルの言い方が気に食わない。俺達は実質三人だし、魔法も万能ではない。

 決死の作戦を何回も出来ない。やるときは最大の効果が期待できる時だ。

 船百隻と相打ちなんて堪忍して欲しいと言うことだ。

 マルキエルもそれ以上は言わなかった。


 敵の渡河予定地点は南北に30km位ある。それ以上に南北にずれると聖都までかなりの大回りになる。

 騎兵だけの部隊なら迂回もあり得るがそれ以外はまずないだろう。その辺は偵察で念入りに調べるつもりだ。

 明日からは陣地の構築を行う。なにせ敵は半減したが依然としてこちらの3倍だ。

 ノーラも居ることだし、高さ3mの石の壁(銃眼付き)を30kmすべてに作ろうと思う。

 ここでの目標は敵をさらに半減させること。そうすれば聖都の軍が3万くらい用意できるし、こちらの方が戦力が上回ることになる。


 それから3日目の朝、いよいよ敵軍が川岸に現れた。船も上流から次々と現れる。

 船には四角い川船で前と側面前半分と上に鉄板が貼ってある。上が重くて不安定なのだろうアウトリガーが付けてある。

 敵は30kmいっぱいに広がって渡河をするつもりらしい。


 川岸に敵兵が現れた時に一斉に数百発のバーンという発射音がして数百人の敵兵が倒れる。

 タマサブロウ達が連発銃を撃ったのだ。連発銃の有効射程は300m以上、マスケットの3倍以上だ。

 本来は南の方を受け持つつもりだったが敵が分散したのでこちらも分散したのだ。

 川幅は約200m十分に射程距離内だ。用意できた連発銃は300丁、それが最大2秒おきに火を噴く。

 命中精度も高いので出て来た敵兵の半数以上が倒れた。


 連発銃は回転式だ。撃ち方は下の通りだ。

 ①六個のシリンダーに雷管、火薬、弾を入れる。

 ②①を銃に着けてロックする。

 ③銃の横に着いた取っ手を前に押し、下に下げるとシリンダーが銃身に隙間なく固定される。

 ④狙って引き金を引くと弾丸が発射され銃身内のライフリングで弾丸が回転して発射される。

 ⑤銃の取っ手を上に上げ、引くと撃鉄が起き、シリンダーが6分の1回転する。

 尚、①は他の人間がやれば、シリンダーさえ余分があればいくらでも連続して発射できる。


 敵の前進が止まった。川岸の手前で隠れて出て来なくなった。

「敵はどうすると思う」(マルキエル)

「俺なら夜を待つ」(ジュンヤ)

「俺なら6万全員で船を目指す。船は防弾してあるからな。死んでも一割で済む」(マルキエル)

「馬鹿なそんなことを無意味に死ぬだけじゃないか」(ジュンヤ)

「無意味ではない。9割が辿り着く。お前は味方の死を怖がり過ぎる」(マルキエル)

 そんな俺が甘いというのか。


 船の装甲板が広がり後ろを隠すように装甲板の壁が出来た。

 その後、天地を揺るがすような叫び声と共に100mの幅で敵兵が現れ船に向かって走り出す。

 船までの約100mをまさに死に物狂いで走り始めるのだ。

 火を噴く連発銃、次々と倒れる敵兵、しかし多くの兵は船に到着した。

 敵へは途切れた。走り出したのは二、三千人だ。100mの幅では分散して用意してある連発銃では5丁くらいしか使えなかった。つまり倒せたのは50人ほど。


 そのうち装甲板が動き出す。側面部分の装甲板が船から外れて川岸に向かって動いて行く。

 そうか装甲板は着脱可能で、それを何人かの兵が川岸に運んで装甲板の後ろに兵を隠して運んでくる。

 それを繰り返すと装甲板を戻した船が増えてくる。船に定員が乗ったという事だろう。

 昼過ぎまで掛かってすべての船に兵が乗ったようだ。


 全ての船が一斉に向こう岸を離れてこちらに漕ぎ出し、あっという間にこちら側に上陸する。

 俺は散発的に攻撃していたタマサブロウ達を下がらせる。

 近距離戦はマルキエル達の受け持ちだ。

 この世界最初のマスケット同士の打ち合いは双方が障害物に隠れてとなった。

 敵は当然のように装甲板を外して陰に隠れて前進する。

 味方は石の壁の中から攻撃する。


 ******


 俺の名はゴート。ギズモニアの王都タレートの東にある村の百姓の三男で18だ。このままいけば兄貴に顎で使われて、結婚も出来ずに死んでいくんだなってずっと思ってた。

 そしたら王様が兵を集めてるって聞いて、すぐに同じようにくすぶってる仲間たちと応募した。

 俺達はつらい訓練を潜り抜け兵隊になった。


 暫くしてアルミアと戦争するからと言って国中の15~40までの男を徴兵した。

 その中には当然、長男や次男が居た。俺は初めて長男の上の立場になった。

 嬉しかったねえ。

 俺は什長になってそいつらを束ねる役に付いた。一緒に兵隊になった奴は伍長だったのに俺だけだった。鼻が高かった。これから俺は手柄を立てて、将軍にだってなれるんだと思った。


 北と南の軍が再起不能になったと聞いたときはちょっとビビったけど、王都軍には頭の良い人が居てその人が行列の並びをちょっと変えたらアルミア軍は攻めて来なくなった。

 支流の川岸に着いて川に降りようとしたら敵が撃ってきやがった。こんな距離を届くマスケットは有り得ない、新兵器だ。


 また頭の良い人が船の装甲板を持って来ればいいと言ったので、死ぬ気で船まで走ったよ。仲間は何人か死んだけど装甲板を取ってくることが出来た。

 それからはこっちのもんだ。すぐに敵の陣地まで近寄れた。


 この装甲板には秘密があった。裏返すと梯子になるんだ。

 早速、裏返して陣地の壁に立てかけてロープを結ぶ。

 梯子をダダダと登ると逃げていく敵が見えた。

 壁の上に登り、ロープを掴んで壁の内側に降りる。

 すぐに敵は見えなくなった。その代わりに数十m先にまた3mの壁が見えた。

 俺が見たのはその壁からマスケットの火が、無数の火が・・・。

 おれはしんだようだ・・・・・・・・・・・・。

次回、ハルが覚醒します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ