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第二十二話 のんきなマルキエルとギズモニア

のんきなマルキエルにジュンヤがイライラする話です。

 石炭の鉱床が見つかり、今度はそれの運搬方法だ。

 鉄道を引くまでは人手で輸送しなければならない。ということで得意の石畳舗装だ。

 ジニアの北の畑の工事はもう終わるからそうしたらこちらに馬車道を造ろう。

 200km以上の距離があるから途中の宿泊施設もいる。大工事だ。


 マルキエルが遊びに来た。というと語弊があるがアルミアとの情報交換と言うのがその理由だ。

 教皇が決まって内政が安定し始めたので軍事を司る十二天使の上部は暇である。

 日々の訓練は下部がやっているし、うちとの戦争で装備もあまりない状況だという。

 装備を返してやろうかと言うと払う金がないからいいと言う。

 特にマスケットは火薬を買う金がないそうだ。


 アルミアは現在うちから捨て値で穀物を輸入している。

「あれは助かってる。飢饉にならずに済んだ」(マルキエル)

 穀物は移民が持ってきた質の悪いものを輸出に回している。ほとんどは獣王国に流れているがアルミア国にも融通している。

 それでもまだ2万人一年分の備蓄があるのは内緒だ。俺や娘たちの亜空間収納に入っているから見えないしな。


「実は隣のギズモニアの様子がおかしい」(マルキエル)

 ギズモニアはアルミアの大河の下流に位置する農業国だ。

 アルミアは大河に流れ込む支流を挟んで、ギズモニアと接しているこの大陸の西端に位置する国だ。

 その川を越えて逃散農家が来ると言うのだ。しかも食料を殆ど持たずにだ。

 農業国家なのに食う物が無いのは重税が原因だった。

 その税は主に軍備増強に使われ、特にブロガリアからマスケットを大量に買ったらしい。

 ちなみにアルミアもブロガリアからマスケットを買ったらしい。


 ブロガリアはドワーフと呼ばれる亜人が作った王国で金属加工・繊維業を得意とする工業国だ。

 特に武器の品質には定評があり、多くの国がこの国の武器を使用している。

 この大陸では最も北に位置するため、冬場は雪と氷に閉ざされるが、彼らの多くは地下や洞窟に居住するため活動に影響はない。

 俺も分捕ったマスケットを撃ったり、分解してみたりして調べてみたが相当な技術を持っていると見ている。


 その軍備はまず外向けだな。大河を挟んだ獣王国か、支流を挟んだアルミアか、この時期は雪と氷のブロガリアではあるまい。

 獣王国は広いし貧しいから攻め込んだとしてもコスパが良くない。

「それってアルミアを狙っているんじゃないか?」(ジュンヤ)

「そうなのか?そんなことは神が許さんと思うが」(マルキエル)

「神が干渉してくれるなら、君達の上層部も腐らなかっただろ」(ジュンヤ)

 こいつらの神は都合が良すぎる。


「そうか、じゃあ、マスケット返してくれるか?」(マルキエル)

「それは良いが、火薬はあるのか?」(ジュンヤ)

「多少はな。まあ長引かなければ何とかなるだろう」(マルキエル)

 こいつは何でこんなにのんきで居られるのだ。

「こうなったら乗り掛かった舟だ。攻め込んで来たら港に連絡しろ。俺が応援してやる」(ジュンヤ)

「それは有り難いな。是非お願いする」(マルキエル)


 折角、内乱での避難民を防止したと思ったら今度は侵略戦争かよ。

 マルキエルの野郎も友達の様にしてくるが、面倒事ばかり持ってくるお前なんか友達じゃないやい。

 俺は鹵獲したマスケットとありったけの槍などの長柄の兵器を荷馬車に積んで、帰りたくなさそうにしているマルキエルと一緒に港まで連れて行かせた。

 マルキエルには後で返せと言ってあるが帰ってくるかどうか?


 俺はマリーにギルドを通じて情報を集めるように指示を出す。

 獣王にも情報を渡して準備と協力を仰いだが、今の獣王国は守りを固める力もあるまい。

 ギズモニアは遠いので獣王都を起点にハルとマイアにギズモルアの偵察飛行を命じた。

 二人をよそに出すのは多くの仕事をしている時期なので、厳しいが獣王国とアルミア国は数少ない友好国なので失うと経済上も軍事上もより厳しくなる。唇が滅べば歯が寒いという奴だ。


 2週間後、ここはギズモニアの王都タレートの王城、王の執務室。

 王のモリアットは黒ずくめの男と対面して座っていた。

「これで俺は大陸の西半分を手に入れるのだな」(モリアット)

「はい、アルミアは先の敗戦から立ち直っておりませんし、獣王国は先の王の杜撰な政治によりボロボロの状態です。13万の兵があれば赤子の手を捻るようなものです」(黒い男)

「明日出陣だな。腕が鳴るぞ」(モリアット)

「秘密裏に組み立てた船を上流から持ってきます。気付いた時には手遅れですよ」


 所がどっこいである。ハルやマイアはすでに出陣の気配、船の数などをジュンヤに知らせている。

 ジュンヤはマルキエルの所に飛んで詳細を教えている。

「10万人以上が攻めてくるのか。敵の作戦が解るか?」(マルキエル)

「恐らくアルミア軍を聖都に籠らせて、兵を分け、獣王国の王都落とすつもりだろう。百姓を一か月も空けておけないだろう」(ジュンヤ)

 マスケットは3000丁を用意している。これはマリーがギルドを通じて調べている。


「渡河地点を最低でも3カ所用意しているからな。お前達の兵力は?」(ジュンヤ)

「2万だ。すべて常備兵だ。百姓たちは集めるのに後7日はかかる」(マルキエル)

「おまえはどれくらい受け持てるんだ?」(ジュンヤ)

「魔法は使えるがお前達みたいな破壊力は無いよ。精々一カ所だな」(マルキエル)

 やれやれと言う顔をする。


「ではうちが2カ所か。厳しいな」(ジュンヤ)

「おいおい、本気で言ってるのか?今度は神様の格好しても逃げてくれないぞ」(マルキエル)

「流石に俺もこんな数を殺さずに押し返すなんて無理だ。今度は死んでもらう」(ジュンヤ)

「お前達が一か所受け持つとして、もう一カ所はどうする?」(マルキエル)

 マルキエルは地図とにらめっこしているが何か考えているようには見えない。


「うちの常備兵が今日の夕方には来るよ」(ジュンヤ)

「1000人だろ?」(マルキエル)

「そう、うちがそんなに常備兵置いている訳ないし、ジニアにはいざという時の為に兵を置いとかないとな」(ジュンヤ)

「1000人に数万人の相手をさせるのか?」(マルキエル)

「そう言うことになるな。まあ、人類は盗賊ぐらいとしか戦ったことないけどな」(ジュンヤ)

 マルキエルは空いた口がふさがらないという顔をしている。俺はニッっと笑ってやった。


 その日の夕方、ハル、マイア、マリー、精霊獣が揃った。そして。

「タマサブロウです。久しぶりの登場です」

 タマサブロウが到着の挨拶に来た。タマサブロウはソルトレイクの村長の三男でうちの将軍だ。

 もちろん1000人の兵を率いて来たんだが、他の兵たちは獣人が大量に聖都の中を闊歩する訳にも行かないので、聖都の外で夜営する。見せられないものもあるしな。


「いやあ、アブリエルさんに先導して貰って来たんですけど、街道の人が”獣人が攻めてきた!!”ってビビっちゃって大変でした」(タマサブロウ)

「ご苦労だったが、すぐで悪いが明日は戦場に移動だ」(ジュンヤ)

「それの方が良いです。ここは居るだけで敵視されるんで」(タマサブロウ)

「申し訳ない!!前の指導者が馬鹿な思想を植え付けたもので、神が作った人類に上下があるはずないのに」(アブリエル)

「まあ、それはおいおい何とかして貰うとして、作戦を立てよう」(ジュンヤ)


 俺達と十二天使は会議室で話し合った。

 敵とは、渡河地点で待ち伏せして戦うこと。十二天使のうちマルキエルとアズモデルが2万の兵を率いて戦うこと。後の十人の天使は聖都と近くの拠点を防衛する。

 俺達と精霊獣は敵の渡河地点一カ所を受け持つ。タマサブロウ達1000人も同じである。

 場所は俺達が最下流でタマサブロウ達が次、上流側がアルミア軍が受け持つ。

 俺達は敵がそのまま大河まで下って、獣王国に向かうのを阻止するために最下流を受け持つのである。


 偵察は俺達が空から行う。敵の拠点は3つで王都は5~7万、北が約4万、南が約3万の兵が準備されている。集めたからにはすぐに出発させないと維持費が馬鹿にならない。だから明日の朝出発で間違いないだろう。支流の川岸に着くのに3日~5日、川幅は200m位なので川を渡れるかが敵の問題になる。マスケットが向こう岸まで届かないからだ。それは角度を付ければ届くがどこに飛ぶか分からないし、相手を倒す威力はない。マスケットの有効射程は精々90~100mしかないのだ。


 渡河地点であるが大河と違って、この支流は川岸が崖になっている事が多い。梯子とかを用意しても大軍が渡れるところが少ない。

 出発地点は工事をすればいいのでかなり範囲が広くなる。


 とこちらが地図上で説明しているとアルミア側の反応が薄い。

「説明が分かりにくいか?」(ジュンヤ)

「いや、戦争前にそんなことを調べたことが無い。と言うか行けば分かるだろう」(マルキエル)

「あらかじめ知っておけば、相手に謀られることが少ないし、陣地も造れるだろう」(ジュンヤ)

「成程な。それはジュンヤに任せておこう」(マルキエル)

「はあ?」(ジュンヤ)

 大丈夫かこいつら。前途多難だ。


 アルミアには言ってないが南の拠点の兵は獣王国を狙ってる可能性がある。

 支流を下って大河に入れば向こう岸は獣王国だからだ。

 リチャード王には連絡してあるが渡河地点が解るまでは兵を動かせない。

 なので明日は南の兵の指揮系統をズタズタにしてやろうと思っている。マスケットもあまり持ってないだろうしな。


 北の軍は支流に一番近いから最初に戦闘になる可能性があるが、王都軍と歩調を合わす可能性が高い。

 王都軍は途中で二つに分かれて二カ所で渡河する可能性が高い。数の少ないアルミア軍を翻弄し、上陸した軍がアルミア軍の背後を狙う作戦を取ると思う。


 アルミア軍は常備兵だというのに戦術的な動きが出来ない軍だったのがこちらの誤算だ。

 殆ど細かい作戦が使えない。こちらでフォローしてやるしかないか。

 しかしここで勝てないと勝つ絵が描けない。聖都に籠城したって誰も助けに来てくれないしな。

 それをこいつらが解っているのかが、甚だ疑問だ。

次回、ギズモルアとの戦争が始まります。

次話より週1~2話くらいの更新になります。

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