第二十話 アルミア国と聖女様
ジュンヤと精霊獣に重大な秘密が?
アルミアの使者が俺を訪ねて来て、助けてくれと言い出した。
彼らの話は要領を得ないのでまとめるとこういうことだ。
彼らは十二天使と言い、アルミア神国の軍事を司る組織だ。
ちなみに俺と戦った指揮官は第十位のイノセントのバナエルと言うらしい。
俺との戦争でアルミアの上層部が神の教えを歪曲したと市民に糾弾され、十二天使がクーデターを起こして上層部を粛清した。
上層部は利権にしがみ付き、私腹を肥やしていたそうだ。
その結果、今まで押さえつけられていたあらゆる派閥が自分の教えが正しいと言い出し、収拾がつかない状態になった。
大学や教会に命じて教えの一本化を図ろうとしたが、各派閥の主導権争いの場となってしまい、余計に混乱を広げる結果となった。
そこでこの混乱の原因となった神の教えを説いた人物を探った結果、俺を突き止めたので、何とかしろという事だった。
俺は困った、宗教問題は何処の世界でも頭を抱える問題だ。
確かに俺は戦争を犠牲少なく解決するために神を利用した。
それにより主流派の重鎮が粛清され、雨後の筍の如く少数派が伸長して意見を対立させて混乱している。
元々政治や軍事・生活のほぼすべてを宗教で律している国だ。その教義が揺れれば内戦が起きかねない。そうなれば川を挟んで隣国であるジニアに難民が押し寄せ、俺が折角作った畑も食いつぶされる。ということで安易に断ることも出来ない。
取敢えず行くしかないか。
「分かった、難しい問題だ。解決できるかどうか分からないが君達の国にお邪魔しよう」(ジュンヤ)
「あなたなら必ず解決できると思う。よろしくお願いする」(マルキエル)
他の二人と頭を下げた。
俺は村人たちに春までにやることとスケジュールを渡して翌々日にアルミアの首都聖都に向かうことにした。
付き添いはいつもの精霊獣4人とハル・マイア・マリーの3人だ。
レイコとボルクの進化時に村人の魔法が増え、魔力も強化されたので、俺達がいなくても工事が進むようになっていた。
マルキエル達は先に帰したが聖都の手前で追付くだろう。
俺達は空を飛びながら会議をする。
「そうすると教皇を決めないと先に進まない訳ですね」(マリー)
「そうなんだけど。今まで幹部の投票で決めてたんだけど、少数派が選び方に問題があったって言い出して投票を妨害しているそうだ」(ジュンヤ)
「腐敗を招いたのですから、違う選び方をするべきです」(マイア)
「ご主人様がまた神様になってお前やれとか言ったらどうです」(ハル)
精霊獣たちは人間は面倒臭い、一番強い奴が一番偉いんだ、とか言ってる。
「では、教皇を決める方法を第一目標にすると言うことですね」(マリー)
「そういうことだ。おっ、あれって天使たちの馬車じゃないか?」(ジュンヤ)
下の街道を行く馬車が見える。間違いなさそうだ。
「じゃあ、今日宿泊する予定の町ケルンに先回りしよう」(ジュンヤ)
俺達は聖都に入る前に打ち合わせをするため、天使達と合流する予定だ。
俺達はケルンの町の中に有る林に舞い降りた。門から入ると青少年が8人という組み合わせを疑われそうだったからだ。
「取敢えずギルドに行って状況を確認しましょう」(マリー)
ギルドはこの大陸を拠点に他の3大陸にも支店を置く超巨大商社だ。マリーはその会頭の孫なのでギルドでは大きな権限を持っている。
ギルドに入るとマリーは受付にカードを提示する。受付嬢はヒッと驚いて深々と礼をして奥に駆け込んでいった。
「マリーさんはすごいのね。あの人青ざめてたよ」(ハル)
「ギルドの中ではね。でもジュンヤさんの為に使えるものは使わなきゃ」(マリー)
俺はちょっと照れ臭い。
奥から小太りの男が走って来た。
「これは、マリー様、ケルン支店のマスターのゲッペルスです。このような所に何の御用でしょうか?」(ゲッペルス)
「戦争後のこの国の状況が知りたいのです」(マリー)
「左様ですか。このような場所では、何ですので奥の応接間にどうぞ」
俺達は言われるまま奥の応接間に入った。
全員が座るとゲッペルスは話し始めた。
「まあ、ほとんどの兵が怪我もせずに帰って来まして、口々に神に出会って追い返されたこと、この戦争を教会の上層部が神の言うことを聞かずに起こしたことを触れ回りました。
焦ったのは教会の上層部でかん口令を敷きましたがすでに国民の殆どの知るところとなりまして、怒った十二天使によって上層部は粛清されました。
上層部の粛清によって勢いを失った主流派と各地から来た少数派がぶつかりまして、政務は麻痺しました。
十二天使は大学に教会と協力して新しい執行部を作るように指示しましたが、大学内は少数派が優勢でしてさらに混迷を深めました。
少数派の妨害で教皇の選挙も行えずにこの国の政治は全く機能しておりません。
行政・司法は混乱しつつもこれまで通りの業務をこなそうとしております」(ゲッペルス)
殆どはマルキエル達から聞いた通りだ。
「この国に絶対的な権威となる者はいないのですか」(ジュンヤ)
「すいません。あなたは?」(ゲッペルス)
「この方は精霊の里の王、ジュンヤ様で現在の私の主君です」(マリー)
「ではマリー様は?」(ゲッペルス)
「その話は後です。先に答えを」(マリー)
ゲッペルスはため息を吐き話始めた。
「権威と言えば聖女様の御神託でしょうか。今代の聖女様は上層部が獣人への攻撃の御神託を求めた時もきっぱりとお断りになり、上層部の粛清が終わるまで監禁されていたのですから信者の人達からの信頼が厚いです」(ゲッペルス)
それではこちらがお願いしても偽の神託を降ろしてはくれないだろうな。
情報を集めるとギルドに残ったマリーとその護衛にマイアを置いて俺達は教会に向かう。
マルキエル達と合流する約束だ。
俺達が教会の敷地に入ろうとすると修道僧らしき男が近付いてきた。
「お前達見ない顔だな。何をしに来た」(修道僧)
「セラフィムのマルキエル殿とここで待ち合わせをしている、ジュンヤというものだ」(ジュンヤ)
「マルキエル殿がお前みたいな平民を相手にする訳が無かろう」(修道僧)
修道僧が俺の胸を押そうとした瞬間、メイド服のハルによって投げられていた。一応怪我しないようにはしてくれたようだ。
「な、何をする!!、おーい不審者がいる!!こっちに来てくれ!!」
ひっくり返りながらも応援を呼ぶ修道僧、またハルが過剰防衛をやってしまった。
精霊獣たちはまたかという顔をして後ろで突っ立てる。
自分たちの声が修道僧には聞こえないと分かってるからだ。
2m位の棒を持った修道僧が集まって来た。
「どうした」(修道僧B)
「いきなりこの女に投げ飛ばされた」(修道僧)
「こちらは名乗りを上げて要件を言ったのに追い出そうとするからです」(ハル)
ハルは俺の前に立って俺に修道僧たちを近付けないようにしている。
修道僧Bは修道僧におまえなあという顔をしてこちらを向いた。
「失礼いたしました。申し訳ないが再度御用を教えて頂きたい」(修道僧B)
「セラフィムのマルキエル殿とここで待ち合わせをしている、ジュンヤというものです」(ジュンヤ)
俺が先ほどの言葉を繰り返すと修行僧Bが答えた。
「それでしたら先ほど先触れが来ましたので、中でしばらくお待ちください」(修行僧B)
中の待合室まで案内すると修行僧Bが言った。
「最近、この教会が聖母派の中心なので、要らぬことをしに来る輩がいるのです。それでちょっと気が立っていまして申し訳ありませんでした」(修道僧B)
「いえ、こちらこそ行き過ぎたことがありました。お許しください」(ジュンヤ)
自分の派閥が優位に立てるように実力行使に出る奴もいるみたいだ.早く何とかしないと・・。
修行僧Bが部屋から出ようとしていた。
「お尋ねします。今の教会の状態を是正するにはどうしたら良いとお考えですか?」(ジュンヤ)
修行僧Bが振り返り顎に手を当てて言った。
「私のようなものが言うのもおこがましいのですが、教皇、長老会、執行部などが粛清されて抑える者が居なくなったのが原因です。残っているのは聖女様ぐらい。聖女様に発言して頂けたら少しは良くなるのではと愚考しますが聖女様はこういった争いが嫌いです。発言はして下さらないでしょう」(修道僧B)
やはり、鍵は聖女が握っているか。しかし聖女も一筋縄ではいきそうも無い。
「ねえ、聞いててイライラするから放っときましょうよ」(ノーラ)
「そうはいかないからジュンヤ様は悩んでるんだろう」(アステル)
「人間は不思議ねえ。こんな結論の無い話でよく盛り上がれるわね。だって教えを説いた人ってはるか昔に死んでるんでしょう」(レイコ)
「オイラ、退屈だぁ」(ボルク)
レイコの言うとおりだ。アルミア教の教祖アルミアは二千年前に死んでいる。彼は神の子として生まれ様々な奇跡を現した。彼の行跡と言葉を弟子が記したのがアルミア聖書である。
彼の生まれる前から存在し、世界中の宗教の元となっている神の行ったこと、天地創造や悪魔との戦いなどを記したのが本聖書である。
二千年前の生活様式で書かれた書物を現代に当てはめて、難しく解説するのが現在のアルミア教だ。
無神論者の俺は、行動原理だけ押さえておけばいいと思ってしまう。
マルキエルが来たみたいだ。聖女との謁見をお願いしよう。
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次の日の夕方、聖都に付いた。その日に聖女との謁見を申し込んだ。
明日の午後に会えることになった。
マリーやマルキエル達とも話し合ったが聖女に頼るしかないという結論だった。ちなみにマルキエルは今まで何回か聖女に協力して貰えるようにお願いしているがすべて断られている。
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その日、俺だけで謁見するつもりだったが聖女がお付きの人も一緒にと言うので全員で会うことになった。
それにビビったのがハル、マイア、マリーの3人だ。私達は後ろで良いと言って来た。
それに反発したのがノーラだ。
「じゃあ私が前を歩くわ」(ノーラ)
「それじゃあ僕は後ろだね」(アステル)
「私が右ね」(レイコ)
「オイラが左だ」(ボルク)
何だこれ、こんな並び方したことなかったのに自然に並んでいる。不思議と違和感がない。
謁見は教皇の間で行われる。
大きな扉が開かれ、マルキエルとアズモデルが俺達を先導する。聖女は教皇の椅子の横に立っていた。
聖女は白いトゥニカに黒いスカプラリオ、頭には白いウィンプルを着けていた。
聖女は俺を見ると三段高い教皇の椅子の横からダダダと降りて俺の前で平伏した。
次回、俺が世界の王?




