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第十七話 精霊獣の進化と王弟の挑戦

王弟が決断します。

 ジニアから領軍長の解任が聞こえて来た。

 流石に今回の無断出撃は領主の怒りに触れたらしい。

 元々彼は中央から派遣されてきていたので、目の上のたんこぶが取れたというところだろう。

 新しい領軍長はこちらにも理解のある人で、いざと言う時には連携も取れそうだ。


 王家と言うと500年に渡る累代の備蓄を10年で使い果たし、王国の予算にも手を付けて贅沢を極めた王は秋の収穫も焼け石に水の惨状を呈し、直轄領では重税にあえぎ、冬が越せない家庭も多く。逃げる住民も多い。特に農民は作った作物の殆どを税に取られ、食料を大量に確保した精霊の里の村に逃げてくるものも多い。


 しかも王はその惨状が解っていながら浪費をやめもせずにいるという。貴族の中には王を見限る者も多く、王都から逃げ出して自分の領土に引きこもる者も増えて来た。

 ジニアの領主も奥さんと子供が王都に居たがジニアに戻した。

 王都は消費だけをする貴族がいなくなったことで寂れていってるそうだ。


 我村は街になった。

 隷属契約の縛りがあるのにも関わらず人口の流入が留まるところを知らない。

 すでに人口は一万人を超え、想定していた人口の倍以上だ。一応3万人分の食料と居住施設を確保してあるので問題はないが驚いている。


 余剰人員が出るなあ。農閑期だしどうしよう。鉄鉱石でも掘らせるか。取り敢えずわが町にもギルドが出来た。ギルド長はマリーだ。ギルドを通じて鉄鉱石を売るか。アルミア神国のお陰でうちに手出しするところも無いから街の価値をあげても大丈夫だろう。

 鉄鉱石があるなら製鉄もしたいよな。木炭でやるか。木炭は火力が低いから森が無くなっちゃうな。

 石炭が無いかな。一度ノーラと探しに行くか。


 鉄と石炭、後水があれば蒸気機関車が出来るな。そうだ来年の目標は蒸気機関車を走らせることだ。

 精霊の里は南北に長い、約800kmだ。鉄道で結んで、北の大河と南の海で貿易をしよう。

 面白い、転移してから俺の人生は滅茶苦茶面白い。ハル達には悪いが結婚はまだ無理だな。来年でここはキリが付きそうだし、また他所に行って一からだからな。


 そんなことを執務室で考えてぼやーとしていた冬の日、慌ただしいノーラの声で現実に引き戻された。

「あんた!!何やってんのよ。こっちに来て」(ノーラ)

 手を引っ張られて食堂に行くと全員が声も無く一点を見ている。

 そこには大きな白いオットセイの様な水棲哺乳類がいる。

「もしかしてレイコか。進化したんだな。おめでとう」(ジュンヤ)

 駆け寄ってハグをする。

「やめて、恥ずかしいですう」(レイコ)

「そうか君は女の子だもんな。ごめんごめん」(ジュンヤ)


 俺が放すとレイコは人間に変身する。

 やはり十五歳くらいになったが、胸が異常に大きい。

 それを言うと周りから総スカンを食いそうだから言わない。

「おう、きれいになったぞ。うちは美少女ばっかりだな」(ジュンヤ)


「ところでボルクは進化しなかったのか」(ジュンヤ)

「進化したよ」(ボルク)

 アステルの後ろからのそっと現れたボルクはやはり十五歳くらいになっていたが。

 身長はアステルより10cmくらい低い。

 どうも背が低いのを気にしてるようだ。

「精霊獣になって見てくれ」(ジュンヤ)


 赤い大きな鳥になる。

「おお、かっこいいぞ。それに速そうだ」(ジュンヤ)

「アステルと同じくらい飛べそう」(ボルク)

「そうか、人は乗せられそうか?」(ジュンヤ)

「うん、大丈夫そう」(ボルク)

「そうか、それは助かるなあ」(ジュンヤ)

「本当に!、オイラ頑張る」(ボルク)

 良かった。自信を取り戻したみたいだ。


 ノーラがつかつかと寄って来て言った。

「あんたレイコの時、胸ばかり見てたでしょう」

「そんなことは無いよ。そんな失礼なことしません」

 見た目の十八歳ならともかく、俺は実年齢34歳(一つ年を取りました)そんな訴えられるようなことはしません。

「そうなら、良いんだけど」

 こっちにもコンプレックスを感じてる奴がいるようだ。


「胸を見ると行けないんですか?」(ハル)

 ハルは可愛く首をかしげながら聞いてくる。

「俺の生まれた国は女が強くて、女のセックスアピールをするような部分を凝視すると罪になるんだ」(ジュンヤ)

「それでは女はセックスアピールはしないのですか?」(マリー)


 マリーも興味津々だ。

「いや、好きな男は見ても良いんだ」(ジュンヤ)

「変わった決まりごとがあるんですね」(マリー)

「だからやたら俺に肌を見せて来て、気があるのかなと思って見てると”あの人、私の事いやらしい目で見るんです”って言うんだ」(ジュンヤ)

「鬼畜の所業です」(ハル)


「話がそれちゃったね。進化のお祝いをしようか」

 俺達は二人の進化を祝った。


 ******


 ジニア、領主邸 執務室。

 執務室に領主と新しい領軍長がいる。

「コリンズは王都へは帰らずに領地に逃げたそうだ」(領主)

「ジュンヤ殿があれほど調べているとは思っていなかったでしょうね」(領軍長)

「王はもう、コリンズを叱責する使者も送れなかったそうだ」(領主)

「其処まで力が落ちているのですか」(領軍長)


 領主は上を向き、息を吐き出す。

「私は賭けに出ようかと思っている」(領主)

「では王都へ、私もお供します。がお味方は?」(領軍長)

 領軍長は拳を強く握った。

「ジュンヤ殿に頼もうと思う」(領主)

「彼なら、実績もありますし、何より食料を持っていますからね」(領軍長)

「解るか。私達は王都へ行って王軍を手に入れなければならない」(領主)

「日和見している貴族どもから王都を守らないといけません」(領軍長)

 二人とも王家を滅ぼすことは言わないが既成の事だ。


 ******


 精霊の里の村 俺達の家食堂。

「ですから、もう規模も村とは言えないレベルになりましたし”精霊の里の村”では長すぎるので街の名前を考えてくれと言う要望が各所から上がって来ています」(マリー)

「村人に公募しようか」(ジュンヤ)

「ジュンヤ様に決めて欲しいと要望されております」(マリー)


「そうなの、仕方ないなあ。ソルトレイクで良いか」(ジュンヤ)

「塩の湖って、まんまじゃないの。もうちょっと考えなさいよ」(ノーラ)

「いいんだよ。こんなもんで」(ジュンヤ)

「ではソルトレイクで決まりですね。伝えておきます」(マリー)


 うん、誰か来たのか。ハルが”はーい”と言いながら玄関に向かった。

「そう言えば、レイコとボルクが進化したけど、マイアやマリーは体に変化ないか?」(ジュンヤ)

「特にありません」(マイア)

「私も無いです」(マリー)

「そうか君達は順調に育ったので変化が無いんだろうな」(ジュンヤ)

 ハルが急激に成長した原因はそれ位しかないか。まあそう思っとこう。


 ハルが手紙を持って俺の横に立った。

「ご主人様、タマジロウさんが手紙預かって来たって」(ハル)

「ありがとう」(ジュンヤ)

 俺は手紙の封を開け、内容をざっと読む。

「領主からだ。大切な話があるから明日来てくれってさ」(ジュンヤ)

「話があるならこっちに来いと言ってやりましょう」(マイア)

「来れないなら行くけどって書いてあるから大丈夫だよ」(ジュンヤ)

 マイアは沸点が低いので注意が必要だ。


 ******


 次の日、俺はマイアを先触れに先行させ、マリーを連れてジニアに飛んで行く。

 マリーは魔法を覚え立てなので速度を合わせて飛ぶ。

 マリーとマイアを連れて行くのは俺はこの世界の常識に疎いからである。

 塩湖への道の途中に鉄鉱石の採掘場に繋がる道を建設中なので精霊獣はみんなこちらへ出てる。ハルにはここの護衛を命じた。渋っていたがマイアが同道することで何とか納得した。


 ジニアに行くと領主邸の門のところでマイアと領軍長が待っていた。


 領主の執務室での領主の第一声はこうだった。

「私は王に反旗を翻し、王都に向かうつもりだ。ついてはジュンヤ殿にも同行願いたい」(領主)


 まあ、王の浪費で獣王国が危ないのは調べたから知ってる。

 領主が言うには、このまま放置すればアルミア神国みたいに攻めてくる国が出てくる。何とか国政を正常化して体制を立て直さなければならない。それには王を廃して新しい王を建てるしかない。

 幸い領主は王の弟で血筋的に王家に近く、王を継承するのに抵抗が比較的小さい。


 他の貴族たちは王軍と争って自分の軍を疲弊させることを嫌って手を出していない。先に手を出した貴族が、王軍との戦いで疲れた所を討つ、タイミングを見計らっている。

 それでは内乱に発展する可能性が高いので王軍を吸収する必要がある。

 それにはジュンヤが持つ膨大な食料が欲しい。


「お金はどうするのです。王になったとしてもお金が無ければ続きませんよ」(マリー)

「王宮にある宝石や調度品などを売る。それで一年は凌げるだろう。ギルドにも協力して欲しい」(領主)

「それは大丈夫と思います」(マリー)


 しかし、これは賭けだ。成功する確率は低い。

 第一に他の貴族が黙って見ているかだ。俺が抑止力になれるのか?

 第二に国軍が我々に降伏してくれるか?

 第三に王宮に資産が残っているか?


 まあ失敗すれば戻ってくればいいか。

「成功報酬は何だ」(ジュンヤ)

「ジニアと精霊の里に隣接する王国領を2つ君の物にしてくれ」(領主)

 地図で確認した。結構広い領土だ。まあ、いいだろう。

 しかし、これで王国外に出る計画が伸びちまうな。


「分かった。協力しよう。いつ出発するんだ」(ジュンヤ)

「思い立ったが吉日だ。明日出発しよう」(領主)

「明日ですか?軍の準備が出来てないようですが」(ジュンヤ)

 ジニアの町に来た時、領軍は何も準備していなかった。


「軍?王都に行くのは私達だけだ。君達が飛べるだけの人数で行こうと思っている」(領主)

「成程ね、そう言うことですか。私達が飛べると解っていたのですか」(ジュンヤ)

 領主は貴族たちの干渉を排除するために、秘密裏に少人数で王都に行こうとしている。

「その通りだ。あまり侮って貰っては困る。私を乗せて行ってくれるか」(領主)


「分かりました、護衛は私達にお任せください。領主様・・ではまずいですね」(ジュンヤ)

「リチャードと呼んでくれ」(リチャード)

「分かりました。リチャード様、獣王国を再建しましょう」

「頼りにしておるぞ。ジュンヤ殿」

次回、マイアとハルが戦います。

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