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第十五話 ギルドの女と移民の移動

新しいヒロインです。


 日が暮れて来たのでその日はジニアに泊ることになった。領主が自邸に泊れというのでそうすることにした。

 夕食の時、しつこく、戦争の内容を聞くので、神の格好をして火薬を爆発させたら恐れてにげて行ったと話しておいた。まあ信じないだろうな。


 あてがわれた部屋は主寝室と召使用の寝室がセットになった部屋だった。

 主寝室にはダブルベッドが二つあったのでタマジロウを同じベッドで眠る惨劇は回避された。

 部屋には応接セットがあったのでそこで寛ぐことにした。


「あのー私達、天罰とか大丈夫でしょうか?」(ハル)

 どうもハルが神妙な顔をして、おとなしいと思ったらそう言うことだったのか。

「あのな、神様はあれくらいの事で怒ったりしないよ」(ジュンヤ)

「師匠は神様の事が解るのですか?」(マイア)

「もし、神様が悪い奴に天罰を与えるのなら悪人なんてこの世にいないはずだろ」(ジュンヤ)

「そうですね。不思議です」(ハル)

「そうだな、領軍長のような奴は天罰で死んでいなければならん」(マイア)


「神様は自分が育てた人類に優劣は付けないし、善悪もつけない」(ジュンヤ)

「では獣人も人間も魔人も神様は優劣はつけてないのですか?」(タマジロウ)

「そうだ、神様はそんなことは超越した所に居る」(ジュンヤ)

「では神様は人類に何を望んでおられるのでしょう」(タマジロウ)

「神様は仲間が欲しいのさ。人類が神様と同じ段階に進むのを待っている」(ジュンヤ)

「人類が神になるのですか?」(タマジロウ)

「はるか未来にな」(ジュンヤ)

「私の子供が神様になったりして」(ハル)

「はるか未来だと言ってるだろうが。まあ私の孫なら不思議はないな」(マイア)

「「ハハハハハ」」(ジュンヤ)(タマジロウ)


 ******


 それから数日後。ギルドの奥まった部屋。

「では、本当に精霊の里だけでアルミア軍を撤退させたというのですね」(マリー)

 部屋の中では出来る女のオーラをまとった人間の少女がオーバルと向き合っていた。

「そうですよ。マリーさんはその男が気になりますか?」(オーバル)

「はい、戦利品の価値だけで数億ゴルかそれ以上、領主が良く放って置きますね」(マリー)

「それはどうやったかは分からないが、相手にも殆ど人的被害を出さずに勝ってるんです。恐ろしくて手が出せないでしょう」(オーバル)


「アルミア軍では神の怒りに触れたという噂が盛んに流布されています」(マリー)

「彼は神の力を持っているんですかね」(オーバル)

「一度会いに行きます」(マリー)

「確か今日はタマジロウさんが来る日だから明日帰りに馬車に乗せて貰えば楽に行けますよ」(オーバル)

「手配をお願いできますか」(マリー)

「今日の夕方、塩の売り上げをここに預けに来ます。その時に紹介しましょう」(オーバル)


「タマジロウさん、ご苦労さんです」(オーバル)

 タマジロウが売り上げを預けて戻ろうとするとオーバルが声を掛けて来た。

「ああ、オーバルさん、そちらこそご苦労様です。何か御用ですか」(タマジロウ)

「はい、実はあなた方の村を見学したいという方が見えまして」(オーバル)

 後から美少女が現れた。


「この方、内緒ですがマリーさんと言いまして我ギルドの会頭のお孫さんに当たられます」

「ええ、そのような方が私の村の何を見たいのでしょうか?」

 挨拶より驚きが先に来てしまったタマジロウであった。

「この方はタマジロウさんと申しまして、精霊の里の村の村長の次男に当たられる方です」(オーバル)

「マリーと申します。村まで送って頂けないでしょうか?」(マリー)

「そ、そんな、私の馬車は荷馬車でして、お嬢様を乗せるようなことは出来ません」(タマジロウ)


「兄さん、どうしたの。あ、オーバルさん何か御用ですか」(タマサブロウ)

 護衛のタマサブロウは、武装しているのでギルドに入らず、外で待っていたが遅いので心配して様子を見に来たのだ。

「こちらはタマサブロウさん、タマジロウさんの護衛でジニアに来ています。こちらマリーさん。あなた方の村を見学希望されております」(オーバル)

「ちょっと済みません」(タマサブロウ)

 兄の肩を抱き後ろを向く。

『兄さん、ジュンヤ様に連絡取って』(タマサブロウ)

 ・・・・・・・・・


「済みませんでした。ちょっと慌ててしまいまして。荷馬車で良ければ明日の朝、迎えに来ますのでよろしいですか」(タマジロウ)

 ジュンヤとの念話でいきなり落ち着いたタマジロウがマリーに申し出る。

「もちろんです。よろしくお願いします」(マリー)


 次の日、ギルドから荷馬車に乗り込んだマリーだった。

「クッションをお尻の下に引いて下さい。今から3時間位は揺れますんで」(タマサブロウ)

 護衛のタマサブロウがクッションを渡してくれた。マリーはジニアで買った商品と一緒に荷台に座った。

 護衛は馬車の前後に2人ずつ歩いている。

 言われたようにひどいでこぼこ道が続く。

 3時間位経った頃に分かれ道が有りそこから急に道が良くなった。道に石が引いてあるのだ。


 護衛が馬車に飛び乗る。

「ここからは、馬が楽になるんで速度が上がるんですよ」(タマサブロウ)

 護衛が歩いていては付いていけないらしい。

「魔獣とかは大丈夫ですか?」(マリー)

「大丈夫ですよ、魔獣を狩りまくったんで、この辺にはもういません。居ても負けませんけどね」(タマサブロウ)


 10分位走ると休憩所が作って在り、東屋と個室のトイレまで作ってあった。

「昼食にします。降りてください」(タマジロウ)

「あなた達、昼食を食べるのですか?」(マリー)

「はい、前は食べなかったのですがジュンヤ様に昼食を勧められて食べ始めたんですけど夕方までしっかり働けるのでやめられません」(タマジロウ)

 普通の平民は朝夕の2食が殆どだ。しまったな。昼食は食べないと思って用意しなかった。


「マリーさんもどうぞ。宿で作って貰ったサンドイッチですけど」(タマジロウ)

「ありがとうございます」(マリー)

 私の分まで用意しているとは侮れないわね。

 護衛の人達も馬の世話をしてから昼食を取っていた。

 食休みを充分とってから出発した。

 後二回休憩をして村が見えて来た。と言うか防壁がそそり立っていた。

 防壁の周囲には堀があり水を湛えていた。


「おーい、俺だ、橋を降ろしてくれ」(タマジロウ)

 跳ね橋が降ろされて村の中に入った。村の中は畑が広がっていて思ったより人がいなかった。

 内側に同じような防壁に囲まれた区域が見えたが、マリーは防壁の手前の建物の前に降ろされた。

「すいません、ここがゲストハウスです。今、人を呼んできます」(タマサブロウ)

 タマジロウは馬車と共に去って行った。


 メイド姿の可愛い少女ハルが建物の中へ案内してくれた。

 応接室に通され、ソファに座った。

「お飲み物は何が宜しいですか。緑茶、紅茶、コーヒーが御座います」(ハル)

 コーヒーって何、知らないわよ。作法も知らないし、ここは安全に。

「緑茶をお願いします」(マリー)


 壮年の男が現れた。

「私がこの村の村長ですが御用件を伺っても宜しいですか」(村長)

 正面に座ると早速に要件を聞いて来た。マリーはこの村が、いえ、ジュンヤと言う男が私の商売のパートナーにふさわしいか確認に来たのだ。


 私は、次期会頭候補No.1の父の子だが次々期会頭候補では十数番目だ。

 兄は仕方ないとしても従兄連中にまで抜かされている。

 これは私が女であり実績がないことが大きい。

 残念ながら、有力な人物との接触は禁止されている。

 兄たちの実績作りの邪魔になるからだ。

 そこで私は注目されていない人物をパートナーにして、のし上がろうと考えたのだ。

 そのためにはジュンヤと直接会いたい。どう切り出すべきか。


「私はマリーと申します。ギルドの会頭の孫です。この村の発展の様子はただ事ではありません。後学の為に見学させてください」

「ふむ、この村まで一人で来る理由には弱いですな。まあ良いでしょう。タマこちらに」

 青年が部屋に入って来た。見透かされた。自分の若さを呪うわ。

「これはわしの息子でタマと申します。タマ、このお嬢さんに村の見せられるところは要望通りに見せてやってくれ」(村長)

「はい、分かりました」(タマ)


 タマについて農地をめぐる。

 農地には用水路が走り、そのもとは水車で水を汲み上げていた。

 よく似た施設は見たことがあるがとても洗練されていると感じる。

 水車の近くに変わった畑を見つけた。一面まっ平で土が耕されてない。

「この畑は何ですか?」(マリー)

「これは米を作る田んぼですよ。もう収穫が終わってますけどね」(タマ)

「米って何ですか?」(マリー)


「麦に似てますが、麦より面積当たりの収穫量が多いんです。もちろん美味しいです」(タマ)

 言っていて自分もおにぎりくらいしか食べたことが無いんだけどな。

「こんなに作って村だけでは食べられないんじゃないの」(マリー)

「ここいらの村が精霊の加護が無くなって不作に喘いでいることは知ってますか?」(タマ)

「オーバルに聞いたわ。・・じゃあ他の村の分も作っているの?」(マリー)

「はい、秋の収穫を終えた村から順にこの村に向かっていますよ」(タマ)


 ******


「ハルさん何処に行ってたんですか?」(兵士)

「ちょっとお客さんが来るって言うから相手をね」(ハル)

「暗くならないうちに宿泊準備をしましょう」(兵士)

「そうね、分かった。食事の準備をさせて置いて」

 そう言うと収納から食材と調理道具、食器を出す。

「一軒に十人としてえーと」(ハル)

「24軒です」(兵士)

 ハルは純也に読み書き計算を習っているがまだまだ未熟だ。


「人数確認終了しました。脱落者は居りません」(違う村の村長)

 女たちは食材と調理器具を使って用意を始める。男たちはかまどを作って火を熾す。

 彼らはすでに隷属契約を結んでいるので裏切らない。それがどんなに安心できるのかが良く分かる。

 一日、9時間弱歩いて約30kmあと3日位で村に付く。

 ジュンヤとノーラが道を固めてくれたのと、荷物や家まで収納に入れて運べ、手ぶらで歩けるからだ。

 マイアも別の村の人達を連れて村に向かっている。

 冬までには村の人口は5000人を超える予定だ。


 ******


 マリーは何とか夜にジュンヤと会食する約束を取り付けた。

次回獣王から使者が来ます。

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