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第十四話 戦争とアルミアの神

アルミアとの戦争です。

 10月中旬、領主から連絡が来て籠城にきまったからジニアに来るように要請があった。王城にはすでに宣戦布告が届いたようだ。

 俺達と言えば2000m上空からアルミア神国に来て対岸に兵隊が集まっていることを確認している。

 明らかにジニアの対岸だ。


「ご主人様ジニアには行かないのですか?」(ハル)

「そうだなあ、行くと引き留められたりするだろ。行きたくないんだよな」(ジュンヤ)

「師匠、我々が敵を全滅させると教えてやりましょう」(マイア)

「まあ籠城に決まってくれて良かった。これで敵は一度に押し寄せるだろう。手間が省ける」(ジュンヤ)


「偵察部隊みたいなのが出ますよ」(ハル)

「ひとつ懲らしめてやるか」(マイア)

「やめなさい、相手が警戒するでしょう。この分だと明日、川を渡るみたいだな」(ジュンヤ)

「では明日、戦うのですか?」(マイア)

「そう言うことだ、ハル、お使いだ。領主に敵が明日渡河すること。その時我々が戦闘を開始することを伝えてくれ・・ああ、領主に直接でなくても良いからな。オーバルさんでもギルド長でも良いからな。くれぐれも援軍は要らないと言っといてくれ」(ジュンヤ)


 俺とマイアは帰途につき、ハルはジニアに向かった。

 ハルは門の近くの死角に着地し、すでに門が閉まっていたので防壁を飛び越える。

 兵に見つかるとうるさそうなのでギルドに行く。ギルドは開いてはいたが職員は2人しかいなかった。

「オーバルさんかギルド長さんはいませんか。精霊の里のジュンヤの使いです」(ハル)

 職員を捕まえて2人がいないか聞く。

 職員がオーバルさんを呼んできてくれた。


「どうされました。ジュンヤさんは?」(オーバル)

 オーバルさんも忙しそうだ。簡潔に伝えなければ。

「ジュンヤから連絡を預かって居ります。オーバルさん、領主様に伝えて頂けますか?」(ハル)

「直接、言って頂いた方が良いでしょう。ちょうど私も領主邸に行きますので一緒に来てください」(オーバル)

「・・はい」(ハル)

 あーあ捕まっちゃった。ややこしいことにならなきゃいいけど。


 私は領主様の執務室で領主様の前に立っている。

「ジュンヤからの連絡を申します。敵は明日、渡河すると思います。主人はその時に戦闘を開始すると申しておりました。それから援軍は必要ないと申しておりました。以上であります」(ハル)

 フー言えた。領主さまの隣に居た偉そうな人が睨んできた。


「明日、渡河とは?どうして分ったのかね?」(領軍長)

「偵察の結果と思います」(ハル)

「どういう偵察をしておるのだね?」(領軍長)

 これは言わない方が良いよね。


「主人からは聞いておりません」(ハル)

「君達は1万の兵とどう戦う言うのだね。いい加減なことを言ってはいけない」(領軍長)

「私には分かりません」(ハル)

「分からんではすまんのだ!!無責任な」

 領軍長は机をバンバン叩いて怒鳴ってくる。ご主人様が来たがらないわけだわ。マイアさんならぶん殴ってそう。ここは穏便にニコニコして・・・

「これだからド素人の愚か者は!!」(領軍長)

「おい、今何つった、ご主人様を愚か者と言ったか。謝れ、謝れよ」(ハル)

 アタイの堪忍袋袋のひもがプッツッーンて切れちまったぜ。


 アタイが机の上に足を乗せると領軍兵が両側から捕まえに来る。そいつらを投げ飛ばして領軍長を睨む。

「す、少し言い過ぎたようだ。す、すまん」(領軍長)

「分かって頂けてありがたいですわ」(ハル)

 私はニコッと微笑んで会釈する。

「連絡の内容はお知らせしましたし、失礼いたします」(ハル)

 その場にいた人達はハルが出て行った扉を呆然と眺めていた。


 足早に領主邸を出ると人がいないのを確認して飛び上がった。

 やばー、ご主人様に叱られるかな。まあ、やってしまったものはしょうが無いよね。

 慌てて村に帰還する。


 私達の家は村人たちの後になったがもう完成している。村役場の裏に豪勢なのが建ってる。

 白い石造りの3階建ての建物で一階にご主人様の寝室と執務室、食堂兼会議室、お風呂なんかがある。2階・3階は私達と精霊獣たちの部屋があるけどまだ半分も埋まってない。

 設計した村長に言わせるとお嫁さんをたくさんもらって村に居着いてもらう計画らしい。


 玄関を入ると右に廊下と正面に食堂への扉が、左にご主人様の執務室の扉がある。

 執務室の扉をノックするが返事はない。

 そこで食堂に入ると全員が居た。

「あら、お帰り。はやかったわね」(ノーラ)

「その顔は何かやったな」(マイア)

 私の顔に何が付いてるって言うのよ。


「お帰り、報告を聞こうか」(ジュンヤ)

 ご主人様がニコッと笑っておいでおいでをする。

 私は仕方なくご主人様の前に行く。

「オーバルさんかギルド長に話せって言ったよね?」(ジュンヤ)

「オーバルさんが一緒に領主さまの所に行こうって・・・」(ハル)

「行っちゃたの。そうか、でも暴力は振るってないよね?」(ジュンヤ)


 私達は契約でご主人様に嘘は付けない。

「二人兵隊を投げました」(ハル)

「領主の前でか!!」(ジュンヤ)

「はいそうです。だってご主人様の事を領軍長が愚か者って言ったんですよ」(ハル)

「何、そいつの首は取ったんだろうな?」(マイア)

「殺して当然ね」(ノーラ)

「殺してないわよ。謝らせただけよ」(ハル)

「はあ、行かせた俺が悪かったよ」(ジュンヤ)

 まあ、ねちねち嫌味を言われるだろうと思って、ハルを行かせたわけだから仕方ない。

 兵二人なら、後で俺が謝っておけば済むだろう。


「それより明日の準備だ。お前達、頼んだものは集めたか?」(ジュンヤ)

 精霊獣にあるものを集めろ指示を出して置いたのだ。

「だいたい集めたけど、こんなもの何に使うの」(ノーラ)

「明日の戦争で使うんだよ。二度と戦争する気が起きないようにしてやる」(ジュンヤ)

「こんなもの戦争にどう使うのですか?」(アステル)

「これから皆で加工するから分かるよ」(ジュンヤ)

 夜まで掛かって皆で加工した。


 次の日、朝一の偵察で渡河が開始されたことが分かった。対岸に敵の居ないことが解っているので横に広がって短時間で渡河を終えるつもりらしい。

 お昼前、俺達は昨日作ったものを身に着けて飛び上がった。

 昨日作ったのは鶏の羽を集めて作った大きな翼。シーツで作った白いローブ。それに収穫祭の寸劇で使った仮面とカツラ。

 そうこれはアルミナ教の神様に化けたのだ。


 俺とハルとマイアは神様に化けて、精霊獣はノーラとレイコはアステルの背中にボルクは自分で飛んで付いてくる。


 敵はほぼ渡河を終え、補給基地の設営や部隊の整列などをしていた。

 俺は敵の千mの上空でウォーターフォールを何発か撃つ。

 敵には土砂降りの雨となって降り注ぐ。まず火縄を使えなくする作戦だ。

 急な雨に敵は右往左往している。

 俺達は100mまで高度を落とし、敵兵に訴えかける。


「お前達はわしの言葉を聞かずにこうして何の罪もない国に攻め込んでいる。わしはお前達に天罰を与えようと思う」


 アステルの魔法で、威厳のある声が拡声されて敵兵に届く。

 敵兵はかなり混乱しているようだ。

 指揮官が”あれは神ではない。敵の策略だ”と叫んでいるが簡単には動揺は収まらない。


 降りる前から用意していたいかづちを発動する。大きな稲妻が光る。組上げられた補給陣地が轟音と共に吹き飛ぶ。


「お前達が反省して武器を置いて、国に帰ると言うなら、これ以上の天罰は止めておくがどうする」


 まだどうしていいか分からずに呆然としている兵が殆どだ。

 指揮官が兵のマスケットを奪いこちらを狙っている。バンと言う音と黒色火薬特有の煙を出して弾丸が発射された。指揮官との距離は150m位だ届く訳が無い。


「お前達の考えは分かった」


 ハルとマイアが川の上に移動して船をスピットファイアで焼き始める。


「逃げられなくして殲滅してやろう」


 敵兵が我先にと船に乗り逃げ始めた。

 そのすきに、さっきのマスケットはウォータージェットで火を消しておく。

 ハルとマイアは今度は岸に積み上げられた物資を焼いて行く。

 中に火薬があったのか派手な爆発が起きる。より不安を感じた敵兵の撤退速度は加速する。


 いつの間にか指揮官と数名の取り巻きを残して敵兵の影は無くなった。


「お前達は死にたいのか?」

「て、撤退しますのでお許しをぉー」(指揮官)


 マスケットを持って行こうとしたので言ってやった。


「武器は置いて行けと申したであろう」


 慌ててマスケットや剣を放り出して船に乗り込んだ。

 残った船は焼いておく。


 やがてすべての船が向こう岸に到着したのを見計らって向こう岸に行った。


「お前達の指導者はわしの神託が聞こえないのであろうな。もう悪さをせぬように船を焼いておくぞ。今後はわしの教えを守ってつつましく生きていくが良い」


 向こう岸にある船もすべて焼いておいた。


 これでアルミア教がどうなるかは知らんが大きく揺れて外征などは暫く出来ないだろう。

 俺達は岸に散らばった武器や物資を集めて収納に入れた。

 タマジロウがジニアの近くまで来ているはずなので街道を探す。精霊獣たちは先に返した。

 馬車に戦利品を乗せるとジニアに向かった。途中おにぎりで食事をとる。

 夕方と言うには明るい時間にジニアに付いた。


 門番に叫んだ。

「アルミア軍は撤退しました。味方の勝利です。精霊の里のジュンヤです。開けてください」


 中で騒いでる声が聞こえる。混乱しているようだ。

 こいつら物見も出してねえのかよ。まだ撤退したことを知らないなんて。

 30分経った頃にようやく門が開いた。


 領主や領軍長、ギルド長などの顔が見える。


「自分たちがアルミア軍を撤退させました。武器や物資も奪い、船もすべて燃やしたのですぐには攻めて来られないでしょう」(ジュンヤ)

「それは本当かね。精霊の里だけで1万の軍を退けたのかね」(領主)

「さっきからそう言ってるじゃないですか。これが証拠の戦利品です」(ジュンヤ)

 馬車に山盛りの武器や物資だ。


「では戦利品を置いて帰り給え」(領軍長)

「はあ、戦利品は戦った者の権利じゃないんですか」(ジュンヤ)

「君は正規の軍人じゃないし、我々の指示に従わなかった。裁判に掛けられないだけありがたいと思いたまえ」(領軍長)


「領主様、一万の軍と戦った俺達への褒美がこれですか」(ジュンヤ)

「褒美は戦果を確認後、別途用意する。戦利品も君達の権利だがマスケットは買い取らせてもらう」(領主)

「では1丁50万ゴルでお願いします」(ジュンヤ)

「馬鹿な!!貴様どのようなつもりでそんな値段を」(領軍長)


「正規で買えば100万ゴルだ。それの半値なんだから問題ないでしょう」(ジュンヤ)

「そうだな、では100丁買おう」(領主)

「貴様、足元を見やがって」(領軍長)


「領軍長、あなたはもうちょっと人を見た方が良い。1万の軍隊に勝てる人間に喧嘩を売ってどうするのですか。あなたはそれで私のメイドにひどい目に会ったのでしょう。俺はあなたの部下でもないし、この国に雇われている訳でもない。俺が怒ってジニアなんか滅ぼしてやると言ったらどうするんです。無用な敵を作らないでください」(ジュンヤ)


「領主様、こいつは今ジニアを滅ぼすと言いました。捕えましょう」(領軍長)

「君は少し黙っていたまえ。これ以上人間関係を悪化させてどうする。私はこれからもジュンヤ殿とよき関係で居たい。それにそこのお嬢さん方の顔を見たまえ」(領主)

 ハルとマイアが馬車の荷台の上から鬼の形相で領軍長の顔を睨んでいる。

「わ、分かりました」(領軍長)

次回、新ヒロイン登場?

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