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第十二話 防壁造りと立ち込める暗雲

戦争の足音が聞こえてきます。

 森の中で木の生えていなかった地点の探索に来た、俺、ハル、マイアの三人はその場所に降り立った。

 其処は黒っぽいゴツゴツした岩の大地だった。

 これは鉄鉱石だ。鉄鉱石の鉱脈が露出している。

「これは鉄鉱石だ。・・・・・まずいな」(ジュンヤ)


 ハルが首をかしげている。

「どうしてですか?村の売り物になりますよ」(ハル)

「売れないのか?」(マイア)

「ここの事は秘密だ。誰にも言ってはいけない」(ジュンヤ)

 二人に口止めをする。


「なぜだ?意味を教えてくれ」(マイア)

 マイアはさっぱり分かりませんと言う顔で尋ねてくる。

「塩が高値で売れた」(ジュンヤ)

「それと鉄鉱石に何の関係があるのだ」(マイア)

「村の価値が上がり過ぎる。村は何処にも属していない、価値が上れば欲しくなる」(ジュンヤ)

「ジニアの領主なのか」(マイア)

「それだけとは限らない、ここに相応の価値があれば誰でもだ」(ジュンヤ)


「分かった、絶対に言わない」(マイア)

「私も言いません」(ハル)

 多分ハルには意味が解かっていないだろうな。

 しかし、独立を守るか、従属するかを俺が決めて良いのか?

「マイア、俺はこの国の事は良く知らない。ジニアにこの村が従属すればどうなる?」(ジュンヤ)

「恐らく塩の権利を奪われるか、塩に重い税を掛けるだろう。鉄鉱石には権利を持たせないか、労働力の提供を強要すると思う」(マイア)

 どう考えても甘い未来は無さそうだ。

 やはり秘密にしてこのまま豊かにしていった方が、村人には良いだろう。


 村に帰って村長の家に村長、タマ、タマジロウ、タマサブロウを呼び、今後の村の方針を確認する。

「塩が結構な価値になった。これを土産にジニアに従属を申し出るのも一つの手だと思う。お前達はどう思う」(ジュンヤ)

「ジュンヤ様、俺達の面倒を見るのが嫌になったんですか」(タマサブロウ)

「そんなことは言ってないだろ、お前達の気持ちが知りたいだけだ」(ジュンヤ)

「私達は、ジニアではありませんが領主の苛烈な要求に答えられずにここに逃げて来た人間です。ジュンヤ様の様に私達を豊かにしてくれる領主はいないと思います。どうかこれからも私達を見捨てずにいてください」(村長)

「「「お願いします」」」


 四人に頭を下げられた。こいつらは領主と言う人種を信用してない様だ。

「しかし、国からこの村を守るには100倍くらいの人口が必要になる。当てはあるか」(ジュンヤ)

「恐らく精霊の里すべてを合わせればそれ位の人口があるかと思います」(村長)

「そうかまだ隠れ住んでいるのか。今は自分たちが食うのがやっとだが、将来は皆を結集して国を造るか」(ジュンヤ)

「「「「はい」」」」(村長一家)

 俺の冗談にまともに返事するなよ怖いじゃないか。


 塩や兵が形になったので今度は防壁を造ろう。

 次の日、俺はマイアとハルに少し稽古をつけた。約束だからな。

「こらハル!!バタバタ歩くな!すり足だ!すり足!」(ジュンヤ)

 二人とも基本は、ほぼ出来ているので型による技の連携を教える。

「こら!!マイア!これくらいでふらつくな!」(ジュンヤ)

「良し!一から三の型は覚えたな。昼までにスムーズに連続で出来るようにしとけ」(ジュンヤ)


 二人を置いて俺はノーラを連れて内壁造りに精を出す。

 内壁は居住区を囲むもので3km×3km高さが20mだ。

 門は東西南北各一個、今は150戸くらいしかないのでガラガラだが、将来的にはここを首都にするつもりなのだ。

 明日からは外壁に掛かる。農地や作業場・倉庫などを囲む、10km×10km高さ20mだ。


 アステルとボルクは道路工事で斬った木を柱や板にするための乾燥を行っている。

 大体普通少なくとも半年から一年は、雨の当たらない所に積んで置いて乾燥させるが、今回は急いでいるので二人に熱風で乾燥して貰ってる。

 乾燥してない木材は割れたり反ったりするので使えないのだ。


 レイコは水脈を探して井戸掘りの手伝いをしている。

 流石に水の精霊獣だけあって効率よく井戸が出来ていく。


 タマジロウは朝から塩を一トン、馬車二台でジニアに向けて出発した。

 タマサブロウと兵5人が護衛に付く。

 残りの兵は塩の運搬の護衛だ。


 マイアとハルは昼食後、コボルト退治に出かけて行った。

 訓練の結果も確認して来いと言ってある。

 多分あいつらなら型の重要性に気付くと信じたい。

 気付けば剣の腕も一段上がる。

 俺はストーンウォールを唱えながらそんなことを考えていた


 ******


 オーバルはギルド長と領主の屋敷に呼び出されていた。

 何事かは事前に説明は無かった。俺が呼び出されたと言うことは精霊の里の村の事かも知れない。

 領主の執務室に通されると領主と領軍長が先に着席していた。

「まあ座ってくれ」(領軍長)

 俺達が挨拶すると領軍長が着席を勧めた。


「よく来てくれた。話は領軍長からして貰う」(領主)

「それではこれから話すことは他言無用にして貰いたい」(領軍長)

 一旦そう言って話を区切った。ちょっとやばい話かもしれない。

「実はアルミア神国が我領土に攻め込む準備をしていると情報が入った。それでアルミア神国から一番近いここジニアが狙われる可能性が高い。王都を狙う可能性もあるので王都に応援を求められない、ついてはギルドで用意できる傭兵の数が知りたい」(領軍長)


 アルミア神国とは、獣人国の北側にある国で精霊の里から西に流れる大河を国境としている。

 大河からジニアまでは50km位しかなくその間は草原が多い。つまり、渡河すれば一日でジニアに来れると言うことだ。

 しかも国是が人間至上主義なので獣人は負ければ良くて奴隷だ。


「ここ数十年平和だったので、傭兵をしている者の数は30人と言った所です」(ギルド長)

「多分兵を動かすのは秋の収穫が終わってからだと思う。それまでに1000人位用意できないか?」(領軍長)

「難しいと思いますが当たってみます」(ギルド長)


「もう一つ、精霊の里の村にオークを100体倒した猛者がいるらしいじゃないか。呼べないか?」(領主)

「ジニアと精霊の里の村は近いですから協力はして貰えると思いますが、どの程度話しても宜しいですか?」(オーバル)

「そうだな8月くらいになればかなり噂になっていると思う。それぐらいのタイミングでどうか?」(領主)


「それで規模はどの位なんですか?」(ギルド長)

「恐らく1万、こちらは領軍が1000と周囲からかき集めて3000人位か」(領軍長)

「1万対4千と傭兵ですか」(ギルド長)

「防壁の中に籠れば十分に戦える。ジニアに敵が来れば王都からの増援も期待できる」(領軍長)

 なるべくなら侵略をやめてくれると嬉しいのだが、俺達に相談したと言うことはかなり信憑性が高い情報なのだろう。


 ******


 ジュンヤはそんなことになっているとは知らず、防壁を建てまくっていた。

 2日で内壁が出来たので外壁に掛かる。外壁の門は3つだ北側に正門、西側に塩湖に行く門、更に南側に脱出用の門だ。3つ目の門は使わずに済むことを祈る。

 十日後に外壁も完成した。

 後は望楼と門扉と跳ね橋だ。防壁で使った土の使った後を堀として利用するので、門に至るには跳ね橋を通る必要がある。


 アステルとボルクが乾燥した木を工作班が、柱や板に加工して門扉や跳ね橋を造る。

 レイコが担当した井戸は土魔法を使える村人が石材を造って補強している。

 望楼の中は階段になっており防壁の上に登れる。もちろん転落防止の手すりをノーラが作っている。


 新しく作ったのは炭焼き窯と鶏の飼育小屋だ。伐採した木の枝は太いものが多く、また炭に適した樫類が多く利用される。

 塩の代金でトウモロコシや雑穀を買い、鳥の飼料とする。用水路には淡水貝が多く住んでおり、それらの殻も鶏に与える予定で貯めている。


 し尿や鶏糞などは硝石を取るために建屋を造って貯めている。ノーラの力を貸して貰えばすぐに出来るだろう。硫黄は火の精霊の居た火山島に行けばあるだろう。

 炭、硝石、硫黄の三つがあれば黒色火薬が出来る。人間の国ではもうマスケット(火縄銃)が作られているらしいのでこちらも対抗上作っておく必要がある。


 二週間、訓練とコボルト退治をしていたマイアとハルの技量は数段上がった。もう、俺に近くなっている。コボルトはほぼ討滅したようだ。

「マイア、そろそろ目的の強さは手に入れられただろう。これ以上居てもあまり強くなれないぞ」(ジュンヤ)

「いえ、ここは面白いし、師匠とハルが居ます。師匠と一緒に居たいと思います」(マイア)

 今まで系統だった訓練をしてこなかったハルの方がマイアより伸び幅が大きかった。現在はハルの方が少し強いが隷属して強化されているのでちょっとずるい。


「ここに住むなら隷属して貰わないと不公平になる。良いのか」(ジュンヤ)

「はい、お願いします」(マイア)

 マイアが俺に隷属した。これでハルとの技量差がどうなるか楽しみだ。

 二人には明日から鶏を集めて貰おう。

「あのー、話は変わりますが師匠は結婚とかお考えですか?」(マイア)

「俺自身まだ何を目指すか決まっていない。結婚とかはその後だな」(ジュンヤ)

 マイアが明らかにがっかりして去って行った。何を期待していたのであろうか?


 それから数週間、村人には新しい区割りでの家の建設を命じ、清潔で安全な暮らしをして貰おう。

 すでに食生活は随分改善されており、オーク肉はまだあるし、鶏卵、鶏肉などのたんぱく質は充分に与えられており、更には調味料の塩は食欲を刺激する。

 農業の規模は十倍になっており、馬を耕作に使うことで効率は跳ね上がっている。


 他の精霊の加護を失った村を訪ね、冬を越せそうもない村には移住を勧めている。

 少しの補助で暮らしていけそうなところには、人気の無いコボルトの肉を回すつもりだ。

 冬には人口は5000人位にはなりそうだ。2、3年で人口3万の街が出来そうだ。

 そうなればあの鉄鉱石も産業として立ち上げられるだろう。


 3年か、俺もその頃には離れても問題なかろう。マイアやハルは付いてくるんだろうな。精霊獣の4人、7人で大陸を一周する旅でもするかな。


「ご主人様ー、新しい鶏舎の準備が出来ましたあ。工作班が確認して欲しいそうです」

 望楼の上で寝っ転がっていた俺を呼びにハルが呼びに来た。念話でいいのにご苦労なことだ。

 ハルとマイアが競って鶏を捕まえて来たので、予定の3倍の数になってしまい、慌てて新しい鶏舎を建てたのだ。

 工作班がやったのなら問題ないだろうけど、俺が見ないと彼らは納得しない。

「今行くよ」

戦争準備を始めます。

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