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青春バカは「あっ!今ウノって言ってない!」って言われたい

作者: 西木田

青春とはどんなものだろうか。


部活で汗を流す?

まさに青春だ。


アルバイトでお金を貯める?

それも青春だ。


友達とドリンクバーでただただ時間をつぶす?

それだって青春だ。


好きな人を見つけて二人で放課後を過ごす?

ああ、最高に青春だ。


そうだ。すべて青春だ。

個人の尺度や達成難易度に差はあれど、どれも尊ぶべき青春なのだ。


そんな素敵な青春の中で、僕にも青春を感じるものがある。

そう、最も「青春感」を感じるイベントが存在しているのだ。


それは、『仲のいいクラスメート(男女混合)とウノを遊ぶ』だ。


これは、シチュエーションとして放課後や昼休みの教室で発生するイベントである。

それだけでなく、発展形として修学旅行の夜に起きるケースも存在している。


その場合は、「青春感」最上級のイベントと言えるだろう。


ポイントは彼女ではなく、仲のいいクラスメートという所だ。

テーブルゲームを男女の別なくワイワイ遊べるというのは、高校や大学サークルの特権の様な気がして、極めて青春感が高いと僕は思っている。


女の子から、「あっ!今ウノって言ってない!」と言われて「くそぉ〜」なんて言いながらカードを引き直す空気感なんて最高に青春だと思わないだろうか。


わからないという人もいるだろう。だが、先に述べた通り千差万別で、本人が感じたならばそれが尊ぶべき青春だ。



僕はそんな人によってはくだらない青春を今まさに謳歌しようとしている青春バカだ。



そう。

時間は20時ちょうど。

就寝点呼まであと一時間。

修学旅行二日目の旅館。

男子の三人部屋に温泉上がりの女の子三人を招く。

舞台は整った。


程なくして、6人のウノが始まった。



「スキップで舞香を飛ばしで遠藤な」

「酷い!2回目だよ田中くん」

おい、田中。良い感じで青春しているじゃないか。ちょっと羨ましいぞ。

「回ってきたから俺はドローツーだ」

「あるよ。赤のドローツー!裕介くんあるのかなぁ」

笑いながら話す相良美穂に僕はカードを見せつける。

「ほらドローツー。林さんは?」

「もちろん…あるよ!」

「ぐぇ…8枚とかそりゃないぜぇ」

「スキップばっか出して私を飛ばすからだよ」

「しんどすぎるわ〜」

よし、田中だ。

上手く田中に被弾させたが石原舞香とまた青春感溢れているな。なんだよ、めちゃくちゃ羨ましいじゃないか。


そんなこんなでゲームは進む。


田中はサッカー部のお調子者でこのゲームでも標的にされたりして皆を笑顔にし、遠藤はいい具合に上手く場をかき回す存在でゲームにメリハリがつく。

いいバランスで、この二人と遊ぶと純粋に楽しいのだ。


男友達だけでも楽しいのに、そこに異性も加わるのだ。思春期男子高校生ならこの青春をわかってくれるはずだ。



そして、遂に、遂に…

そのチャンスが舞い込んだ。


僕の手札には青の2と3。

場には美穂が出した黄の3だ。


よし。

僕は最高の青春を謳歌する!


僕はスッと青の3を差し出した。

手札は一枚。



「ウノ」とは…


もちろん宣言していない。



さあ、大勝負!

このまま通されたらそれはそれで切ないが、ゲームには勝てる。

さあ、どうだ?


すると隣の美穂と目が合った。

気づいた様子の美穂が悪戯を見つけた様な顔になり、口を開く。


こい!青春!


そして

「あっ…」

「あー、裕介ウノって言ってないからドローな」

田中の声が部屋に響く。



青春は最高だ。

思い通りにならない事も含めて最高なのだ。



田中。今日は寝かせねぇーからな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「ウノって言ってない!」って言われたかったのに…。 しかしそれすら楽しんでしまう主人公。 青春ですねえ…。
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