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第13話 シナリオ1 王女の危機 ミカミ アラタ視点

コールワールド シナリオ1 公式ストーリー



とある王国。

美しい第一王女は継母に疎まれていた。


権力欲に取りつかれた継母が自分の娘である第二王女を次の王にするため、自分の命を狙っていると気づいた第一王女は、母親の形見である宝珠を持ち、信頼のおけるメイドたちと共に王宮を脱出した。


その後、嵐によって操舵不能となった船は主人公の住む町の外れに漂着する。

野盗や町を牛耳る不良から狙われた王女であるが、たまたま近くにいた主人公によって助けられる。


自分と似た境遇にシンパシーを感じ、仲良くなる主人公と王女。しかし逃亡の日々は長くは続かなかった。


ある日、主人公たちのもとに王宮からの使いが現れた。

それは美形の若手近衛騎士団員。実力もプライドも高いその近衛騎士団員・ヒジリに主人公たちは全く歯が立たなかった。(強制敗北戦闘)


主人公たちの抵抗むなしく王女は王宮へと連れ戻される。


気を失う寸前に見たのは悲しそうな王女の横顔。

主人公たちが目を覚ましたとき、王女は連れさられてしまった後だった。


ヒジリから王女の感謝の証として宝珠を受け取った主人公は誓った。

強くなって王女を助けると。





俺、ミカミ アラタが認識するゲーム・コールワールドのシナリオ1のあらすじは上記の通りである。


シナリオ1は主人公が子供時代の話。

重要人物である王国の王女と主人公の接点を作ると同時に、主人公が努力家になる原因が語られる。


よって今回の最優先事項は、イサナ王女とタクミを引き合わせ、タクミに挫折を味あわせることである。




ゲーム中では、王女の乗る船が漂着するのは夜中。漂着する場所も3か所の候補地から決まる。漂着場所には法則性があり、主人公の誕生日によって場所が異なるのだ。

漂着場所が違うと戦闘マップの配置や障害物も微妙に異なる。無駄に細かい。


今回はタクミの誕生日から割り出した場所を見張ると、大当たり。

夜中に帆船がやってきた。


次は、ここにタクミを誘導する。


こちらは簡単。果たし状を書いておいた。

朝早く、場所は王女が漂着した入江を指定した。


こんな怪しい果たし状に引っ掛かるかは賭けだったが、俺が書いたことを匂わせる文言を入れたこともあってか、タクミは早々にやってきた。




後は、イサナ王女とタクミが仲良くなるかが問題だった。


これに関して、俺には何もできない。


なるようにしかならないと思っていたが、ゲームのシナリオ通り、二人は意気投合したようだった。


これにはイサナ王女の思考パターンが良い方向に働いたのだと思う。




前世の記憶を思い出した後、俺はこの国の王女のことを調べた。

インターネットなんて便利なものはないので、街の新聞や図書館、役場の資料などを読み漁ったのだが、そこで分かったのは、ゲームとは全く違う王家の人々の人間関係だ。


現王妃には悪い噂を聞かない。前王妃のことを敬愛しており、第一王女を次の女王に、と公言している。


第二王女も思いやりのある優しい人柄で有名。

一方で、第一王女は放蕩な性格で民衆の受けは良くない。

最大限に配慮された書き方でこうなのだから、実物はどんなものか……


現王妃の高度な政治広報戦略か、とも思ったが、そうではないと俺は見た。

この世界は美醜感覚が逆転しているためか、登場人物の性格もゲームとは逆転している場合が多いのだ。


容姿がゲームと同じで美醜認識の逆転が起きた結果、世間一般的には第一王女の方が第二王女よりも醜い、ということになる。


そして、第一王女は似たような容姿の人間しか信用していないらしい。

であれば、高ランク召喚獣を得たタクミを自分たちの一派に取り込もうとするのではないか。


結果的に、イサナ王女はタクミを仲間にした。


最初は警戒していたタクミも、イサナ王女の話を聞くうちに仲間意識が生まれ仲良くなったのだろう。




ちなみに、これまで述べたような様子は、トオルの召喚獣によって観測された結果である。


トオルは暗視能力をまだ会得していないものの、召喚獣の遠隔操作を一週間で習得していた。なかなか優秀だ。


ミヨとナギサもそれぞれ必要な能力を獲得した。

ミヨは絡繰腕による直接打撃技、ナギサは海姫による防御術である。


大人しい性格のミヨが攻撃技、活発な性格のナギサが防御技というのがまた面白い。

美醜逆転と関係があるかどうかわからないが、色々な人物の性格がゲームとは反転している。




さて、ゲームでは主人公は王女を守るために3回戦うことになる。


1回目は野盗、2回目はライバルたち、3回目は王宮からの使いが敵だ。


1回目の戦闘はチュートリアルも兼ねている。よほどのことがないと負けない。

それに、NPCであるイサナ王女の護衛には、高レベル戦闘能力保持者がいる。万が一主人公が負けても、その護衛が敵を倒してくれる。ゲーム上は絶対にゲームオーバーにならない。


2回目の戦闘はガチンコ。負ければゲームオーバーになる。

とはいえ、この時点でのライバルキャラは能力も装備も貧弱であり、主人公たちが召喚獣を使えばまず負けない。


3回目の戦闘は強制敗北。

高レベルの近衛騎士団員が敵となり、初期状態の主人公ではどう頑張っても勝てない。

バグ技で勝利した場合は以降のフラグが立たず、フィールドマップに戻れないという徹底ぶりだ。



俺たちは、野盗たちが既に船の方へ向かってからかなりの時間が経過後、入江に向かった。


その途中で野盗がこちらを襲ってくるとは思わなかった。

3人が想像以上に優秀だったのでスマートに対処できたが、今後の戦闘イベントは注意が必要だな。


タクミとの戦闘は特に言うことなし。

この戦闘の流れは事前に打ち合わせしていた通り。


3人が撤退し一人残った俺は、タクミの首にかかる宝珠を確認した。

Aクラス召喚獣持ちをつなぎとめるための王女の贈り物だろうか?こっちとしては、タクミが宝珠を所持することが今後のシナリオ上好ましいので放置する。


戦いを長引かせているとタクミ達がスタミナ切れをおこしたので、たっぷりと煽ってから撤退する。


これでタクミが自分の力不足を実感し、今後真面目に修行してくれるとよいのだが。




その後街に帰ると王都から船で近衛騎士団が到着したところだった。

ゲームではこの辺りの描写がないため、こういうことだったのかと新鮮な気持ちになる。


ここでの重要人物が、王女を迎えに来る部隊長のヒジリ。

この人物は近衛騎士団若手のホープであり、皮肉屋のクールキャラ。最終的には主人公の仲間になる人物だ。


実際はゲームとは違って顔を隠し、誠実そうな立ち振る舞いだった。多分いい人だ。


ゲームの通りにヒジリが王女を確保したので、これでシナリオ1は終了である。




「アラタ、これでいいんだよな」


感慨にふける俺にトオルが小声で話しかけてきた。

今は街に帰る途中。


周囲には幼馴染たちしかいないが、大きな声でしゃべることでもない。


「ああ。これで俺はこの町で静かに過ごせるようになる」


俺は、幼馴染3人に対し、今日の出来事に対して微妙に違う説明をしていた。


“第一王女が高レア召喚獣持ちの噂を聞いて独断で町にくる。なので、先にAクラス召喚獣もちのタクミと接触させてそちらに第一王女のスカウトを注力させる。王宮から近衛騎士団が第一王女を連れ戻しに来るので、協力して第一王女を確保して王宮の現王妃たちに貸しを作る。その上で、今後数年、俺への勧誘合戦をしないよう王命で確約してもらう”


この1週間、勧誘対応に疲れてしまった。

3人もそれを心配してくれたらしく、この説明で協力してくれた。ありがとう、友よ。




街の入口には、多くの人が集まっていた。


そこには町長である父の姿もある。


「おい、アレって、あの人ってもしかして……!」

「……まさか‥…」


肘をつつきながら話しかけてくるトオルに、まともに答えることができなかった。


俺は父の隣に建つ少女を見て息をのんだ。

この世界の標準的感覚で見て幼馴染たち以上の美少女。それはすなわち、俺にとっては激ブスということだ。


微笑みを浮かべる少女はゲームで見覚えがある。

第二王女・サクナ王女だ。


近付くと、父がサクナ王女に対して自分を紹介する。……いや、父は俺を売り込んでいるのか。


「不肖の息子です。先日、Sクラス召喚獣を得ました」

「まぁ。初めまして。未来の英雄様」


第二王女が迎えに来るなんて場面は、ゲーム上ではなかった。

これはマズいことになったか……?

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