008 人間だもの・・・
「いいの? そんなとこで見ていて・・・」
「何の問題も無いぞ?」
「綺麗な娘よね? きっと絡まれるわよ?」
ビーナの傭兵登録に来て、受付嬢と話していると・・・
「よぉ!可愛い娘ちゃん。こっちに来て、酌でもしてくれよww」
「見て解からないの? 今忙しいのよ。 お酌して欲しいなら、キャバクラにでも行ったら?」
「なんだと?」
「キャバクラが何だか知らねぇが・・・」
「あら・・・ 顔の出来の不自由な髪の薄い人達は、頭の中身も薄いのかしら?」
「てめぇ!!!」
男達が、ビーナに近寄り威圧する・・・
が、そんな事で、ビクともするビーナではない。
「ねぇ・・・ あんたのツレちょっとヤバくない?」
「アレくらいは、傭兵ギルドじゃ普通じゃないのか?」
「そうじゃなくて、あいつ等、かなり強いわよ?」
「1パンだなww。」
「えっ?」
「あいつら、ビーナに1発づつでヤラれるさww。」
男達がビーナに触れようと手を伸ばし・・・
壁にめり込んだ。
ビーナは、男達の胸当てに軽く触れ、掌底からの衝撃波を叩き込んだのだ。
「「「「「徒手の使い手か?」」」」」
「チョッと威力があり過ぎたかなww。」
「壁の修理費の請求しても良いかしら?」
「いや、正当防衛でしょ? あいつらに払ってもらってよ。」
壁に叩きつけられた傭兵二人は、泡を吹いて、のびていた。
「あれ・・・ 1週間は使い物にならないわよ?」
「大丈夫ww。」
「ビーナ。」
コクン
「ヒール!」
「「「「「”魔法士”かよっ!!!」」」」」
「うちの田舎じゃ、これくらいは、10才の子供でも使えるわよ?」
(((((そりゃぁ、どんな魔境だよ~~~~~!!)))))
ドン引きされた・・・。
登録を済ませ、俺達が出て行くまでの間・・・
騒がしい傭兵ギルドから、俺達の声と受付嬢の声以外何も聞こえなかった。
~傭兵ギルド解体場~
マサキが今日持ち込んだ、大型のサンドワームを捌いている。
その傍らで、オヤジに飲んだくれの傭兵達が雷を落とされていた・・・
「馬鹿が・・・ あの小僧の連れだと判っていただろう?」
「「「「「・・・・・」」」」」
「あの小僧が何も言わなかったってことの意味を考えろ!!」
「「「「「・・・・・」」」」」
「結果論だが・・・」
「「「「「・・・・・」」」」」
「お前等程度に、どうにか出来るわけが無いと知っているから何も言わなかったんだ。」
「「じゃぁ、俺達は・・・」」
「見せしめに使われたな?」
「「あんのクソガキ~~~!!!」」
「それにしても・・・、金属の胸当てにクッキリと残る掌の痕・・・」
「大の大人、体重も倍は有りそうな相手を・・・」
「どんなスキルなんだ?」
「「「「「気になる~~~っ!!」」」」」
~傭兵ギルドマスター室~
「なるほど。小僧のツレがBランクをのしたのか?」
「そうです。」
「よほどスキルに恵まれているのだな?」
「いえ・・・ それが・・・」
身体強化 武術の心得 魔導の心得・・・
「スキルではなく、また心得・・・」
「・・・」
「いくら魔法の上位職である魔導とはいえ・・・」
「それも違います。彼女は手で相手の胸当てに触れただけなのです。」
「それで、二人を吹き飛ばしたと?」
しかも、吹き飛ばしたのは、武術の心得・・・
「その、心得とは何なんだ?」
「調べてみたのですが・・・ 二人以外には、心得を持つ傭兵は居ませんでした。」
「ふむ・・・」
「冒険者ギルドに問い合わせても、該当者はありません。」
「つまり?」
「意味不明な・・・ スキルなのでしょうか?」
はぁ~っ・・・
強い傭兵が増えるのは良いのだが・・・
はぁ~っ・・・
「・・・判った。引き続き調査を頼む。」
「承知しました。」
ギルマスの背中から哀愁が漂っていた。と後に受付嬢の一人が証言したそうだ。
東の森では、朝から冒険者・・・ 斥候隊が息を殺し、ターゲットを待っていた。
「なぁ・・・本当に来ると思うか?」
「間違いなく来る。」
「ここ・・・、 スモール・ドラゴンもかなり群れているぞ?」
「あのガキ、スキルなのか獲物が大量に居る場所が判るみたいなんだ。」
「判るからって・・・」
「昨日あいつが暴れた所は、魔物が大量に居た場所だった。」
「スモールとはいえ龍種だぞ?」
「昨日から売られている肉だけどなぁ・・・」
「何で、肉の話になるんだよ?」
「だから、全部あのガキの持込なんだ。」
「ギルマスが取り敢えず探れと言っているのは聞いたが・・・」
「なら、奴を見張って・・・」
「あのガキの移動速度が異常に早いんだ。」
「「えっ?」」
「2時間ほど掛かる町からの行程を、20分で移動しやがる。」
「あの、可笑しな乗り物か?」
「発掘されたアーティファクトだって聞いたぞ?」
「マジモンらしい。」
「それを売れば大した額になりそうだが・・・」
「近くで見た奴が、アレは、”使えそうに無い”らしい。」
「おまけに、消えるんだ。」
「取り上げられそうに無いか・・・」
「お前・・・ 魔物が何十匹も群がってくるのを、涼しい顔をして狩れる奴に勝てるとでも言うつもりか?」
「実際の戦い方とか見てないし、可笑しな武器でも使ってるんじゃないのか?」
「だとして、それで、勝てるのか?」
「だからそれを見るためにここに居るんだろう?」
「傭兵の知り合いに言われたが・・・ アレは関わると不幸な目に・・・」
「来たぞ?」
「「「「なら、じっくり見せてもらおうか・・・」」」」
「やっぱり、探知系のスキル持ちだな?」
「ああっ 確実に中心に向かっている。」
「もう一人居るみたいだな?」
「美人じゃないか?」
「おい! はじま・・・・・」
・
・
・
・
「・・・血の匂いにワイバーンまで集まってきたぞ?」
「こっちも、ヤ・・・バ・・・」
「「「「ゲッ!!!」」」」
・
・
約一時間後
「アイツ等・・・」
「絶対に人間じゃねぇ・・・」
「どうやったら、ワイバーンに飛び乗れるってんだ?」
「川原で岩に飛び移るみたいに・・・」
「夢だ。 俺は寝ぼけて・・・」
「なんだよ? あの二人は・・・」
「「「「・・・・・」」」」
「化け物みたいに強ぇえ!」
「ざっと数えていたが・・・」
「大物だけで600は下らなかった。」
「たった二人で・・・」
「全部斬りやがった・・・」
「前回の総出の狩りで仕留めた獲物の数を覚えているか?」
「確か・・・ 86匹だったか?」
「総勢300の精鋭で、1週間かけて、82匹だ。」
「「「1時間で600・・・」」」
「「「罠も魔法も使わず600・・・」」」
「「「ふらっとやって来て・・・」」」
「おい! 呆けている暇はないぞ?」
「「「・・・」」」
「さっさと撤収して報告だ!」
「「「・・・」」」
「急がないと、うちの連中も全部斬られるぞ?」
「「「・・・有りそうで嫌だ・・・」」」
二時間後 冒険者ギルド
「ああ、その二人なら、サバンナウルフやらストライプタイガーやらを売りに来てたぞ?」
「良い腕だ。殆ど首を一薙ぎで、キズも無い極上品だww」
「お前等も、ちったぁ見習って、良い品を納品しろ!」
「「「「無茶言ってんじゃねぇ!!」」」」
「そうそう・・・ お前等に預かりモンがあるぞ?」
「「「「?」」」」
「朝も早よから、ご苦労さん。お裾分けだ。だとよ?」
「こ・・・ これは、マジックバック?」
カザッ!!
「「「「「ブフォォ~~~~~!!!!!」」」」」
同ギルドマスター室
「・・・というわけで、ワイバーンを含む600以上の魔物を・・・」
「そんな話が信じられると・・・」
「信じようが、信じまいが、事実だ!」
「おらぁ・・・見ただよ? 刀一本で・・・」
「ワイバーンの背中から背中へ・・・」
「ワイバーンの頭をこう足で踏んづけて、次のワイバーンの・・・」
「証拠も無しでは・・・」
「「「「証拠なら有るぜ?ww」」」」
「?」
「これが証拠だ!!」
「・・・・・」
「そのマジックバッグが如何したと?」
「1kmは離れた丘の上に居たんだが・・・」
「気が付いていたみたいでな?」
「律儀にお裾分けを届けてくれたんだよ?」
ドン!
「・・・!!!」
「「「「ワイバーン丸ごと一匹ww」」」」
「四人で分けても酒代くらいにはなるだろう? だとよww」
「・・・」
「忠告しておくぞ? 奴等が暴れたら・・・」
「「「「全滅するぞ?」」」」
「うちのギルドだけじゃなく、この町が全滅するぞ?」
「・・・・・」
~再度冒険者ギルド解体場~
「こっちの解体は終わっているぞ?」
「ありがとよ。」
「「「この肉、ほんとに俺たちも分けて貰っても良いのか?」」」
「「「「いつも世話になっているからなww」」」」
「「「ごちになりま~す。」」」
「それに、家族や知り合いに配って回っても食いきれないぜ?」
「「「「「違いないww」」」」」
「で、どうだった?」
「信じられんとよww」
「わしも、ワイバーンやら、ビッグ・マウンテン・ボアが、そいつから出てこなければ、
とてもじゃないが信じられんかったわwww」
「使い古しのマジックバックだが、中身と一緒にプレゼントするぜ。ってか?」
「太っ腹だぜ?」
「まあ、あの二人、600以上の魔物を収容できるアイテムを持っているみたいだから・・・」
「そうは言っても、コイツは、大したシロモンだぞ?」
「「「「確かに、Bランクの冒険者には過ぎたシロモンだ。」」」」
「容量は30立方メートル・・・」
「金貨50枚前後で取引されるマジックバックの15倍の容量。」
「売ったら一体いくらになるやら・・・」
その後4人が、マジックバッグを持って商人になり、大店に駆け上がるのは、もう少し先の話になる。