005 だから・・・僕は途方にくれる。
マジなところ・・・
この国、武器も法術もレベルが低い。
剣なんて、俺の持っているヒノキの棒の方が強い。んじゃないか?
つい、”ドワーフさん達何やってんの”とか言いそうだ。
収納の付与も精々2立方メートル程度・・・
それでも、数があるならと思えば、なかなかのレア物だとか・・・
今まで渡り歩いた世界の中でも、底辺に近いぞ?
この国のレベルだけが低いのか・・・
それとも、世界全体が、”このレベル”なのか・・・
宿の部屋は、お世辞にも清潔とは言い難く、
食事は・・・ コンビニ弁当が何倍も・・・ 言っていて悲しくなった。
焼いて塩をかけただけで、そこそこ旨い肉って偉大だ。
ぼんやり考え事をしながら、北の森周辺を探索すすめるも、気配は、それほど多くは無い。
やはり、町での情報どおり、東の草原から森と、南の砂漠方面が狩場に適している。と、理解した。
今回の依頼・・・
魔物の数を人類種が滅びない程度に間引け・・・
1日100匹を狩れば、100年程で安定するらしいが、
Mission: Impossible!!
俺は、百年も生きられないし、この世界が今のところ好きではない。
「宿屋も美人の看板娘でも居れば、少しは楽しいのに・・・」
何人が使徒として派遣されているか知らないけど、
武器や、アイテム各種、傭兵、ハンター、冒険者のレベルも、
少なくとも2~3世代は進化させないと、間違い無く終わるぞ?
もっとも、其れを実行のは、其れを得意とする担当が居るのだろう・・・
俺に出来る・・・ 俺が”やる事”は、駆除だけだ。
そして、効率良く実行する為の道具は、なぜかアーティファクトとして現存している。
港のロックカフェで、IDに貰った(押し付けられた。が正解)払い下げのガラクタだった代物。
パーツから復元された品のリストを見て・・・
「一人異世界戦国自衛隊ごっこが出来るレベルだなww」
乾いた笑いが込み上げるのだった。
最新鋭とは言えないが、グレートにオーバーなテクノロジーの産物。
キリングマシンの数々が羅列されている。
出所を探るべく、ソートを掛ける。
流用品を多く使っていたらしく、一台のバイクの廃車から、
小国の軍隊並みの戦力が生えてくるとは・・・
それは、何年か前に海兵隊の知り合いが転倒して大破した改造バイク。
帰国前には取りに来ると言っていたのに、そのまま帰国っちまった・・・。
見たことの無いパーツがデコレートさてれていたのだが、
メーター類が64Dの流用品だったのか・・・
「身近にあるモンで、修理してんじゃねぇよ!」
ここじゃぁ、ワーグナーが解かる奴なんて居ないんだから・・・
シーシーバーはGAU-8のバレルで作ったのか? 何でA-10が生えてくるんだ?
劣化ウラン弾搭載・・・。
無線機は、巡洋艦のアップデート時の”お下がり”だったのか・・・
ICBM・・・。 見なかった事にした。
確かに俺等も廃車や、旧車からパーツを流用はしたけど・・・
なんて豪快な流用品なんだ・・・ ネイヴィー恐るべし!!
でも・・・ 本当にヤバイ代物はソレだけではなかった。
賃貸で解体業者に貸していた土地。そこに在ったガラクタからは・・・
3桁に上る同一機体のリスト・・・ 4桁に届く火器類・・・
5桁を超える弾薬・・・ ハハハ・・・ 空薬莢はちゃんと集められていたんだ。
他にも、俺が個人で譲り受けた、インテリアや記念品の数々。
廃艦になった船のプレートや、備え付けの椅子。ビール3杯分だったかなぁ・・・
「CVN-65を一人で何隻も、どうしろって言うんだよ!!」
搭載機乗りの奴にアームレスリングで勝った時にせしめた”ドラ猫”の操縦桿のスペア・・・
「もう一人居ないと、管制システムが使えねぇ。」
そして、何より、詠唱一発で同等以上の破壊力有るんですけど?
まぁ、便利に使えそうな乗り物だけをチェックして、
その他、インベントリの中に収納されている代物の確認作業を放棄したのだった。
「セオリー通りにマッピングから始めますか・・・」
幸いな事に、船が有るので、海に拠点が確保できる。
いや、空母が出せないと、ハンガーが使えない。
ハンガーが使えないと、改造の手間が掛かりすぎるのだ。
手っ取り早くマッピングをするなら、ジェットヘリを改造して、マップを埋めるのが一番なのだ。
今までは、現物が無いという事も有り、ドローン頼りだったのだが、
今回は、現物が有る。資材が有る。時間も有りる。すなわち魔改造も出来てしまうのだよww
そして、懸念材料でしかなかった燃料は、直接タンクを改造しても良いのだが・・・
盗難や、譲渡も考えて、増量タンクを改造して、魔素から燃料への自動変換装置の完成。
(術式の陣を彫りこんだだけとも言う。)
無限に飛べてしまうのだww ミサイルやら弾丸は一度格納しないと駄目な様だが・・・。
「速攻で弾丸はバレットに変更しよう。それなら、無限に撃てる。」
南に向かってジェットな64Dを飛ばす。
「おおっ!思ったよりも早い!!」
メーター読みで時速は186マイル 300km/hぐらいだな・・・
何でマイル表示なのか良くわからないが、これも、暇を見つけて改変しよう。
空気の壁を展開させると、更にスピードは上がり、メーターを振り切った。
風の抵抗は・・・ 速度の二乗に比例したんだったか?
これなら、海まであっという間に着くだろう。
ホントはドラ猫を改造したかったのだが、滑走路がなければ、事実上使えない。
精密機器を組み上げるには、相応のクリアランスが求められるのだ。
地球で生み出された殺戮の兵器の実力を試してもみたいし、
スペックの向上が望めるなら、やらない道理がない。
何より、この世界に魅力を感じない以上、趣味に走るしかないだろう?
その為には、速攻で空母を呼び出す。
限定を解除された法術で、戦艦や武器の改造がしたい。
快適空間で、映画でも見ながらポテチを食べたい。
空母の食堂で思いのまま料理がしてみたい。
やることリストを作成しつつヘリは、南下を続け・・・
ようやく海へ辿り着く。
・・・シードラゴン・・・ これは、シーサーペントの巣?
早く風呂に入りたいのに・・・ 邪魔をするんだ?
「サンダーレイン!!!!!」
思わず、雷撃魔法をぶち込む。
高圧の電撃で腹を見せ浮き上がる海龍に止めを刺しつつ、インベントリに収納する。
このあたりの海洋生物も、浮き上がっているものは収納した。
思いのほか時間が掛かり、夕食時になろうとしていた。
空母を出し、風呂へ・・・
絶望した。
一体幾ら使って作られたのか知らないけど・・・
湯船一つ無いってドウイウコトナノカナ?
甲板に俺のアパートを出し、管理人室へと駆け込んだ。
やることリストの修正・・・
アパートを空母内にボルトオンさせないと、快適に暮らせない!!!
のんびりと風呂につかり、くつろいでいた。
そういえば・・・ 今までの派遣では、任務完了後には現世に復帰していたので気にしていなかったが・・・
この世界が、永住先になるんだよなぁ・・・
武器レベル=底辺。 食事レベル=底辺。 獲物エンカウント率=天辺。
その上、魔物が町に入り込んでいるときた。
文化・・・ ギルドと宿と屋台にしか行ったことがない。
識字率は・・・ 代筆屋がギルドに居たって事は、そういうことなんだろう・・・
溜息しか出てこない。 どう考えても、この世界レベルでは欲しい物が思い浮かばない。
もしかしたら、希少金属や空に浮かぶ島とかが在るかも知れないが・・・
よくよく考える・・・ 持ち物のほとんど全てがアーティファクト。
そうなると、アダマンタイト製の武器等有ったとしても意味なんかないし・・・
ノルマの魔物退治以外は、インベントリの中の玩具の魔改造くらいしかやる事がない。
箱買いをしてある、各種多様な食材や、レトルト、缶詰、米に至るまで、
一度インベントリに戻せば、未開封状態で復帰するから、金も使いようが限られる。
こんなことなら、スイーツなんかも、いろんな物を揃えておけば良かった・・・
生のフルーツに至っては、冬ということもあり、和歌山みかんと、青森林檎くらいしかない。
そして・・・ あることに気付く。
なんて間抜けなんだ・・・ 今更ながらに後悔する・・・
「チータラと剥き栗・・・ 買っておけば良かった・・・。」