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エージェント  作者: Shion akiyama.
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004 正体不明

結果から言えば・・・

わが国は元より、何処の国のギルドからも、該当者は無かった。

「手掛かりは無しか・・・」


名の有る傭兵や、高ランク冒険者パーティは、滅多な事でホームを変えたりしない。

優遇されている快適な住処を移る事など、好条件で誘われるか、

やらかして、出て行くかの二択だろう?


そして、この町に有能な人材を招くことの出来る貴族などは居ない。

東には魔の森、南は不毛な砂の大地。

冒険者や傭兵にとっては、仕事に困ることの無い環境だが、

ここは、この国では一番厳しい環境なのだ。

上位貴族連中は、恵まれた都市に住み・・・

有力な貴族は、領地から滅多には出てこない。

此処での貴族といえば、いささか無礼ではあるが、

傭兵家業や冒険者として名を売って成り上がった騎士爵が精々なのだ。


ギルドカードに間違いは無い。重複登録などが出来るものではない。

新たにライセンスカードを、作ったとしても、血の一滴で、選別されるために、

初めての登録が行われたギルドのカードが再発行される。

犯罪等で資格剥奪された者は、”赤のカード”が、発行される。

小僧が手にした”ブロンズで発行された傭兵ギルドのカード”

それは、ギルド登録は初めてであり、 ニュービーで間違いは無い。


成人成りたてで、”身体強化 武道の心得 魔法の心得”と、

スキルですらない、初歩も初歩の、未熟な小僧がアレとは・・・ 

「東の国とやらは、どれだけの魔境なのだ?・・・」


正体不明と結論付けたギルマスは、何度目かの溜息をついた。




ギルドから連絡が入り、代金の一部を受け取り、屋台で昼食をとっていると・・・


「なかなか出回らない高級肉が出回るらしいぞ?」

「ジャイアント・ボアか?」

「それどころか、オークの上位種も有るらしいぞ?」


・・・オークが高級? あれって、下から数えた方が早い雑魚だよなぁ?


「俺の聞いた話じゃ、ギガント・ボアに、キングクラス・オークや・・・」

「や?」

「スモール・グランド・ドラゴンも有るらしいぞ?」

「マジかよ?」

「「「食いてぇ~~~」」」

「ドラゴン・・・ 美味いからなぁ・・・」


あれぇ~っ? トカゲって、あまり出回ってないのか? 雑魚だよなぁ・・・

普通に売っているんじゃないのか???


「トカゲなんて、普通に売ってるんじゃないのか?」

つい口に出ていたようだ。鋭い突込みが入った。

「「「滅多に出回るわけないだろ!!」」」

「草原に結構な数が居たと思うんだが?」

「結構な数が群れているから、滅多に狩れないんだ。」

「年に数度の各ギルド総出の討伐以外じゃ・・・」

「後は、稀に”はぐれ”が狩られる位だ。」

「喰いたいなら、串焼き一本で銀貨5枚位は覚悟しておけよ?」


マジかよ・・・


確かに、あれだけ魔物が群れていれば、弱い魔物とはいえ、討伐難易度は上がる。

おまけに、”レベルを上げて物理で殴る”ごり押しが出来ないのなら、

純粋な技術や戦略と物量での戦いにしかならないか・・・

そこそこ出来る筈の傭兵連中が、スーパー弱かったのは、こういう事か。

うわぁ~っ、マジか~っ? 一向聴イーシャンテンな状態って事で確定か・・・

この状態の、この世界を何とかしろと? 

「どんな無理ゲーだよ!!!」

いや・・・ 充分過ぎる程の魔素が有るんだから、

もしかしたら、魔法や魔術は超エグイかも知れないな。


だったら、トカゲの肉くらい普通に売って・・・。

淡い期待は、即座に否定されたのだった。



早めの昼食を終えると、やることの無い俺は街から出て、討伐を始める。

今俺に出来ることは、魔物を狩ることくらいだからだ。

とはいえ・・・ 魔物にも其れなりのカーストがあり、上位種を殲滅させると、

雑魚が爆発的に増え、雑魚を狩り尽くすと、腹を減らした上位種が、暴れ始める。

結果、人喰いの魔物が増えるといった具合になるのは、過去の苦い経験から学んだ。

大事なのは、さじ加減。徐々にその数を減らすしかない。

もっとも、有用な魔物もいるので、満遍なくピラミッドを崩していくことにする。


3Km程離れた一番近くの森は、下級冒険者の狩場になっている。

奥に行けば上位種も出てくるようだが、探知の反応からすると、オーク程度のようだ。


此処を荒らすと、冒険者から恨まれること請け合いなので・・・

結局最初に降り立った草原までバギーを飛ばしてやってきた。

アイツ等・・・ 何時までついて来るんだ?

アレで隠れているつもりか? 冒険者といい、傭兵といい、魔物といい、温過ぎるぞ?


「お~い! 今から此処で狩をするから、隠れていると死んじゃうぞ~っ?」

「・・・」

返事が無い。ただの屍・・・ じゃないんだが・・・

「警告はしたからな!」

近場に居た数匹の浅黒い二足歩行の魔物を切り刻む。

盛大に血を撒き散らした甲斐があり、近くの魔物が集まってきた。


「なっ!」

「あの莫迦野郎!!」

「結構な数が近づいてくるぞ?」

「無理だ!此処から離れるぞ?」

「巻き添えは御免だぜ!」


バギーをインベントリに収納して、愛刀を握り直す。


「さあ、今日のノルマをこなしますか。」

八方から集まってくる二足歩行組・最劣等種”ゴブリン”。

おっと、この世界での呼び方は、まだ知らないので、仮称だ。


「キィ!」「キィ!」「キキィ!!」

「キイキイ五月蝿いんだよ!!」

刀を横薙ぎに360度、真空の刃を飛ばす剣技で、一網打尽だ。

「お前等、スッパ臭いから近寄ってくるな!」

すぐさま、御馴染みの犬っころが集まりだす。が・・・

ゴブリンを咥えて満足そうにダッシュで逃げていく。

どうやら、更なる上位者の足音にでも気付いたのだろう。

血の匂いをかぎつけたオークの群れが風下から現れた。


街の連中が、オーク肉を崇めていたからなぁ・・・

「しっかり、確保しておきますか。」

肉を傷つけないように、首を一薙ぎで落とし、インベントリに確保していく。

50匹位じゃ、街全体には行き渡らないだろうが、そういうのは、

国や、街の偉い人が考えることだ。

一時間ほど次々に現れる魔物を狩りながら、草原の生態を観察した。

予測どおり、街の付近には、大物は居ないようだ。

「ここは、牧場みたいな感じかな?」

明日は、北の森辺りを調べてみるか・・・






「で、目標のガキ・・・ 少年は?」

「俺達は、魔物をよけて・・・」

「逃げるのが精一杯だったんだよ!」

「何を考えてるのか知らないが、巻き添えは御免だぜ!」

「もう一度聞くが・・・ おかしな乗り物でやってきたんだな?」

「ああっでかい音を立てながら・・・」

「判った。報告ご苦労だった。」



「ギルマス・・・ 今の報告・・・」

「間違いは無いだろう・・・」

「やはり、そのガ・・・少年は・・・ 死・・・」

「いや、此処につくまでも、それに乗って来たようだし、なにより・・・」

「なにより?」

「今捌いている魔物の持ち主だ。」

「・・・」

「あの辺りの魔物など歯牙にもかけんだろう?」

「・・・」

「あっちのギルマスに苦情を入れておけ。」

「はぁ・・・」

「上手くいけば、値切れる。値切り倒せる。丸儲けだww」

「いや・・・勝手に尾行していただけだから、苦情なんて意味無いだろう?」

「何でも良いんだよ。 文句なんて言ったモン勝ちだ。」

(((何処のクレーマーだよ!!!)))








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