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エージェント  作者: Shion akiyama.
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018-B 遥&彼方

「隣の国で、ベヒモスが討伐されたのか・・・。」

「ディレクター・・・代行者。輪廻様が使徒に使う判り易いコードネーム。」

「その、マサキ・ディ・レクターって、すごく聞き覚えがあるんですけど?」

「すごい偶然だね? 僕もそんな気がするよ・・・。」

「この馬車を作ってくれたマサキさん・・・・・かしら?」

「多分だけど、そのマサキさん・・・・・で、間違いないんじゃないかな・・・。」

「天災級を殺せる使徒なんて他には・・・。」

「僕達が知らない術式を普通に使える人なんて、あの人くらいだと思うけど?」

「よねぇ・・・。」

「隔離空間対消滅だの、次元位相斬だの物騒極まりない術式を考える人は・・・」

「よねぇ・・・。」


「思いだしたら止まらない。連鎖式加速型多重電磁波衝撃術”レンチン壱式”。」

「日本名物同時進行P・S・T波型土砂災害術”アースシェイク参式”。」

「スペースデプリ利用型”メテオ壱式”。」

「素材転移式重力加速型”9.8t・メテオ零式”。」

「そのまんま過ぎて、ネーミングのセンスは疑っちゃうけどww」

「あれ一つで町くらいなら滅びちゃうのよねぇww」

ハルカ・・・ ソレ、笑い事で済ましちゃうの?



僕とハルカは、今、西にある学園都市に向かって旅をしている。

最初の町の教会関係者が、余りにうっとおしかったからなのだ。

通常だと馬車での移動は苦痛を伴うモノなのだが、僕等は快適な旅を続けている。

その旅の途中で仕入れた情報の一つが、ベヒモス討伐の報せだった。

多分、あのマサキさん・・・・・・・で、間違いないと思う。


僕等使徒の中でもマサキさんはビルダーとして有名人だ。

テント、馬車、術式付与型擬似(なんちゃって)魔剣等、数え上げればキリが無い。


僕達の最初の派遣先で知り合ったマサキさんに譲って貰った馬車は、

見た目は、ありふれた作りに偽装してあるが、

1畳半しかない馬車を、ちょっとした2LDKのモーターホームにしてしまっている。

理屈は聞いたが、なんとなくしか理解が及ばなかった。


生産職の優しげな人だと思っていた。が、マサキさんは、マジモンで凄惨職・・・だった。


何の変哲も無い土の魔法と火炎の魔法でマッドナパームを作ったり、

火炎魔法に風魔法を乗せてクリーク・ファイヤーを作ったりと、

独自の術式を幾つも創っていた。コスパ最強魔術を伝授もされた。

実践で今でも使っているのは、目潰し系の光魔法だけだったりする。

教えてもらった幾つかの術は、一度実践で使った後・・・永久封印にしたものの方が多い。


中でも、結界術からのコンボは群を抜いて酷かった。

結界って、自分達を守る為のものだよね? 何で、敵を閉じ込めちゃうのさ?

成分変化をはじめ、一酸化炭素だとか、高濃度酸素からのイグニッション・・・ 

少し気分が悪くなってきた・・・

お手軽。省エネ。必殺。応用次第で魔法は核を越えるかも知れないと思えるほどだ。

魔物相手でも気の毒すぎる。 そう思ってしまう僕は、この世界では異端なのだろうか?

前者は素材が余すことなく取れ、結界の中には漏れなく死体のみ。

後者は素材が何一つ残る事なく、焼けた土とガラスの荒野が出来上がるんだよ?


マサキさんの新作の魔剣シリーズと便利グッズには興味は有るけれど・・・

凶悪な殲滅術式は・・・ ちょっと・・・ 遠慮したいかな。




私とカナタでは、きっとマサキさんの評価は違う。

マサキさんの作った魔道具は私達の生活を随分楽にしてはくれたのは、間違いが無い。

けれど、マサキさんが教えてくれた魔術式コンボこそが、私達を生かしてくれたと信じている。

魔力も少なく充分に戦う事さえ出来なかった頃・・・

水魔法しか使えなかった私に、自分の技をアレンジして教えてくれた私だけの必殺技。

少ない魔力量で敵を確実に仕留められる”ウォーターボール改・デス・マスク壱式”

たった3のコストで殆どの魔物が溺死することになる。

結界魔法を覚えてからは、”極小結界・デス・マスク零式”が私の切り札。


派遣されたばかりの頃は、魔力量も少なくステータスは低かった。(それでも、現地人の3~5倍は強かった。)

回復系の魔法と耐性にステータスポイントを振り分けるしかなく、我慢のレベル上げを続ける日々。

栄養学も何も無く、固いだけのパンと、薄い塩味だけのスープ、焼いただけの肉。

疲れ果てて宿に戻れば、硬いベッドがあるだけの部屋。

早く、この世界から解放されるために、ひたすら強さを求めたあの遠い日々。


そんな日常から、救ってくれたのは、あのマサキという少年・・武器と術式さくひんだった。

二度と戻りたいとは思わない。けれど、とても懐かしい日々。


また、マサキさんあのひとに会えるかもしれない。

二度と現世には戻れないけれど、それでも、少し嬉しく思う自分が居た。




「でも、今度は色々持ち込めたねww」

「インベントリが現世で使えたから、事あるごとに色々買い置きをしていたからねww」

「でも、半分くらいは使わないかもしれないわね・・・。」

「キャンプ道具や保存食は、隠れ家とデパチカで買えちゃうもんねww」

「こんなことなら、他に役立つ者でも買えばよかったね?」

「他って言っても、欲しい物なんて殆ど無いよ?」

「可愛い下着とか色々有るじゃない?」

「男物の可愛い下着って・・・・orz」

「他にも欲しい物は有るでしょう?」

「例えば?」

「武器とか・・・」

「”炎帝”と”氷帝”が有るし。」

「ボウガンとか・・・」

「魔法の方が手っ取り早い。」

「オフロードバイクとか・・・」

「ガソリンは如何するのさ? ガソリンスタンドなんて無いよ。」

「・・・ 文明の利器って、限られたところでしか役に立たないのね・・・」

「事前の準備って大事だよね・・・」

「でもそれじゃぁ、あの飛行機とか、如何するのかしら?」

「確かに。垂直離着式じゃないから、滑走路とか必要いるはずだし、ジェット燃料だって、必要いるよね?」

「飛んでたって事は、少なくとも、それは解決してるって事かしら?」

「よく分からないけど、かなりの精度の滑走路は用意されているってことかな?」

「飛行機って、整備も大変だってTV番組でやっていたわよね?」

「・・・こっちに来ている人で整備士の人がいるとか?かな・・」

「整備士の人が、燃料と滑走路と整備用の工場や部品かなんかを持って来たとでも言うの?」

「・・・」考え中・・・ 

「・・・」考え中・・・ 

「「無いわぁ~っ。」」


「輪廻様の恩恵の中なら・・・」

「見あたらなかったわよ?」

「あんなに有ったのに、全部見たの?」

「当然見るでしょ? もう選べないのよ? 全部見て、必要な物を選ぶに決まっているじゃない。」

「で、必要な物が、隠れ家とデパチカだった・・・?」

「あのねぇ・・・ ヨーロッパへ旅行に行ったときも思ったんだけど、日本人は日本にしか住めないのよ?」

「他所の国に住んでる人もいるじゃん。」

「相当ストレスをためているわよ?」

「確かに、蛇口から出る水を飲める国はなかったし、ホテルの備品は半数が壊れてけど・・・」

「日本じゃ、民宿だって、もっとマシ・・な設備を備えているわ。」

「確かに、この世界の一泊金貨10枚もする宿でも、家の馬車の方が断然上だけどね。」


学園都市を目指す二人は、いつもよりまったりと旅を楽しんでいた。





~旅を続ける二人が、とある町で隣国の御家騒動を知る~


「この町も、珍しい食材は無かったわね。」

「相変わらず、教会関係者が幅を利かせている様だったよ。」

「衣類の選択肢は少なかったし、下着に至ってはこの有様よ?

「しかも、ソレでいて結構高価たかかったのが余計に腹が立つわ。」

「そんなところかな?」

「どの町も変わらずね。」

「それはそうとして、情報を仕入れてきたよ。」

「私も噂話を聞いたわ。」

「隣国で、騒ぎがあったようだね・・・。」

「王様を暗殺しようとした第一王子の話ね?」

「そう、それ。物騒な国だね。」

「そうね。第一王子なんだから、時期が来れば王位に就けたんじゃないの?」

「良く出来た第三王子の方が、支持されてたみたいだからね・・・。」

「まだ、詳しい事は発表されていないみたいね。」

「隣国とは言っても、距離もあるし、報道なんて、商人頼りだしね。」

「その内に、詳しい話が聞けるんじゃないかな?」

「これって、最初の国に似てない?」

「馬鹿な王様が大陸統一を目指して、邪魔者を次々消していったヤツだね・・・」

「輪廻様は、馬鹿な国王は居ないと言っていたけれど・・・」

「馬鹿な王子や取り巻きは居たんだ・・・」


「また騙された様な気がしているのは・・・」

「ハルカだけじゃないよ。あの神様は、聞かれた事しか答えてくれないから・・・」

「嘘じゃないけど、それだけが事実ではないのよね・・・。」





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