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エージェント  作者: Shion akiyama.
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002 お約束

この辺りの魔物は、粗方始末した様だ。

辺りには動く者はいない。

「一週間分の目標数討伐したんじゃね?」

いきなりクライマックスとか赤鬼タロスじゃ無いんだから・・・

なにより・・・ 冒険者とかハンター登録とかしてもいないのに、

ギルドカードに討伐数とかが出るタイプの世界だったら、

カウントされないジャンよぉ?

買取とかしてくれなかったら、タダ働きだゼ?

俺はインベントリから取り出したアイテムバッグに死体を収納して、町に向かうことにした。

アイテムバッグは、素行不良のハンターや冒険者狙われるのだが、

収納魔法持ちは、犯罪者から、貴族、王族、その他諸、格好の獲物なのが、大体の世界でお約束なのだ。


っと、その前に・・・ ステータス

Name マサキ・ディ・レクター Profession 流浪の旅人 

skill 身体強化 武道の心得 魔法の心得

【隠蔽中(喧嘩LV.悪夢 法術LV.日本人 錬金術LV.日本人 改LV.日本人)】

equipment 異邦人の服 異邦人の靴 刀 

【隠蔽中(超電磁刀”水切り” オリハルコン合金入り安全靴)】


あやや~っ・・・ 今回も長ったらしい名前になっている・・・

毎回貴族と思われるから止めて欲しいんだが・・・

(ディレクター・・・代理人か・・・)

この世界は、レベルは無いようだ。

有っても、悪夢や日本人じゃ、意味わからんだろう?


こんな可笑しなステータスになっているのは、今迄の経験からなのだ。

LVの有る世界が幾つもあったことと、似通った魔法を習得したからなのだろう。

身体強化は、初めの頃に送り込まれた世界で限界地まで強化され・・・

魔力は、レベル上げが楽しくて、調子に乗って鍛えまくったせいで、

10度目のアトランティス以降は、人間辞めましたレベルになっていたからなぁ・・・

「何で、神であるワシより、主の方が使える術が多いのだ!!」と、

理不尽な文句を聞かされる事になった。

何度も何度も便利に使ってくれた、どこぞの自称神のせいだと思うのだが?

おまけに、日々進化する日本のサブカルチャーで鍛えられた想像力は、

神々の領域にせまり・・・ 一部は超えてしまっているらしかった・・・

「なんちゅう事をサラッと考え付くのじゃ・・・ 鬼か!!」

と、ドン引きされたのは、2つ目の世界へ派遣された時だっただろうか・・・




インベントリから、バギーを選択して、サクッと町に到着する。

パイプフレームとエンジンとタイヤだけで構成された見慣れない自走車を見て、

納得いかねぇといった顔で衛兵に詰問されたが、

何時もの様に、東方の国の貴族の三男坊の設定で、

バギーは、発掘されたアーティファクトだと押し切った。


一応、馬型のゴーレムを使った馬車も有るのだが、

この世界の常識が無いので、それを出すのは憚られたのだ。

以前に送り込まれた世界の一つで、錬金術師は安く見られていたので、

何かと理不尽な要求をされ、その国が歴史から消えたのだが、

まぁ、わりとよくある話だ。

差し伸べる手を持っていても、それに値しない者は何処にでも居るということで、

俺は、ちょっかいを掛けられている間、何もしな・・・コホン。対処が出来なかっただけで、

かの国が滅亡してからは、ちゃんと魔物を一掃した。

世界の崩壊は回避され、今も人々は”世の春を謳歌している”のだろう。

俺が国を滅ぼしたわけではないと言っておく。



さてと・・・ 先ずはこの国の情報と貨幣を手に入れるため、

傭兵ギルドにやってきた。

傭兵というのは、どの世界、どの時代においても、粗野なものだ。

この世界においても、例外なく適応された。


「おいおい!此処は、ガキの来るところじゃないぜ?」

「ハゲオヤジの集会所だったのか?」

「なんだと!!」

「誰がハゲだ!!」

「お前。」

「舐めんな!」「死ねやゴラ~~~!!」

何時もなら、適当にあしらうのだが、今日は虫の居所が悪い。

突っ掛かって来た粗暴なハゲの突進を半身でかわし、足を引っ掛ける。

重心が前に来ているせいで、見事に二人はカウンターに頭から突っ込んだ。

「ギャハハハ!ガキに吹っ飛ばされてやがる!!」

ギャラリーを決め込んでいた傭兵達からの罵声と失笑と殺気が室内を満たす。


「おいっ!その辺にしておけよ?」

「「「「舐められっぱなしで・・・ってギルマス!!」」」」

「いや、ギルマス あの若造が・・・」

「良かったな? お前等・・・」

「「「「「はぁ~っ?」」」」

「若いのが抜いたら、半数近くは斬られていたぞ?」

「「「「「はぁ~っ?」」」」

「血の匂いも感じられんのか?」

「「「「「!!!!!」」」」」

「ついさっきにでも、魔物と遣り合っていた様な咽る匂い。」

「「「「「ゴクッ!!」」」」」

「靴も見てみろ。つま先や踵の部分がどす黒く変色しているだろう?」

「「「「「ゴクッ!!」」」」」

「足癖も相当なものだぞ?」

「「「「「・・・・・」」」」

「元Sランク傭兵のギルマスが相当なものと・・・」

「まさか名の有る高ランクの傭兵か??」


「歓迎会は、”お開き”でいいか?」

「はっ、歓迎会ときたか?」

「確かに場数は踏んでいるようだな?」

「見た目道理じゃないって事か?」

「エルフの血が混じってやがるのか?」

「登録と素材買取をして貰わないと、飯も食えないんだが?」

「「「「「「って、やっぱニュービーかよ?」」」」」」






「登録は以上です。こちらがライセンスカードです。再発行には金貨1枚掛かるので失くさないでくださいね?」

「承知。買取は何処に行けば良いのかな?」

「此処で大丈夫です。」

「相当数が有るんだが?」

「え~っと・・・ そのバッグの中ですよね?」

「この収納バッグの中で間違いないが・・・」

「なら、大丈夫です。」

「・・・じゃぁ出すけどさ・・・」

大型の犬に見える魔物を一匹、二匹、三匹・・・

「ちょ、ちょっと! まだ出てくるんですか?」

「群れに襲われたんで、後40~50匹は有るぞ?」

「すいません。それ、一旦仕舞ってもらって、解体場の方でお願いします。」



「おいっ! アレってサバンナウルフだったよな?」

「間違いない。」

「アレが40~50だと?」

「あのバッグ・・・ お宝だな?」

ギラッ!!!

「「「「「欲しい!!」」」」」

「けどよぉ・・・」

「少なくとも、3っつの群れを潰したって事か?」

「数から言えば、そうなるな・・・」

「お前等・・・サバンナウルフの群れを相手に出来るか?」

「馬鹿言うな! 3~4匹なら何とでもなるが・・・」

「ソロなら、その辺が限界だ。」

「もっとも、Aランクか、Bランク上位者なら・・・」

「いや・・・ 奴が一人で殺った訳じゃないんじゃないか?」


昼間からギルドの酒場で飲んでいる傭兵達の雑談は終わりそうに無かった。




「どれも綺麗に首を一薙ぎか? 良い腕してるじゃないか?ww」

「犬っころ相手じゃ、自慢にもならないけどな?ww」

「毛皮にキズが無いから、高く買い取れるわいww」

「そりゃぁ助かるww」


解体場で、獲物を出していると、職員に止められた。


「おいっ その中に、まだ入っているのか?」

「これの10倍くらいは・・・」

「どんな収納バッグだ!!!」

「これ位普通・・・」

「「「な訳があるか! 何処の国の国宝だ???」」」


どうやら、この世界の錬金付与術師は、大したことがなさそうだ・・・

俺は、この世界の評価を1段階下方修正した。


「そのレベルなら、時間遅延効果もあるんだろう?」

「あ~っ・・・ 一応な?」

「今日は、これだけにしてくれ。明日うちの腕っこきを総動員して解体してやる。」

「あ~っ、これ、売却しないと金が無いんだけど?」

「取り敢えず30匹は買い取ってやる。それだけ有れば、半月は宿でのんびり出来るだろう。」

「なら、それで良いか・・・」

「大体、これだけの腕を持っていて、なんで文無しよ?」

「そりゃ、さっきギルドに登録したばっかだし?」


職員のオヤジは、深い溜息を吐き・・・

一度奥の部屋へ引っ込み、直ぐに戻ってきた。


「これを換金所に持って行け。素材買取額が金貨15枚で、討伐報償が金貨3枚だ。」

「了解した。明日は朝一で良いのか?」

「おうっ! 一つ聞き忘れていたが・・・」

「ん?」

「獲物は、全部狼か?」

「あ~っ・・・ 黄色に黒の縞のそいつ等よりちょっとデカいのと・・・」

「と?」

「二足歩行の猪みたいなのと、四足歩行のデカめの猪・・・」

「と?」

「黒地に白い模様の奴やら、一寸デカめのトカゲが有るかな。」

「ストライプタイガーにジャグァーか?・・・オークとボアは良いとして・・・ 

そのデカめのトカゲってのを見せてくれ。」

「トカゲか・・・」


がさごそ・・・ヒョイっとな。 

しばしの沈黙の後・・・


「ブーッ!!! 何てモン出しやがる!!」

「何って、トカゲだけど?」

「こいつもまた綺麗に首を一薙ぎだな?」

「首を落とせば、大概の奴は死ぬからなww」

ジト眼で見られながら、

「・・・よし判った。明日朝一で持って来い。準備しておく。」

「了解。それじゃぁ、そういう事で。」



「オヤっさん! さっきのは・・・」

「スモール・グランド・ドラゴンだ。」

「見間違いじゃ?」

「どうやったら、アレを見間違う?」

「それじゃぁ・・・」

「呼んで来い!」

「へっ?」

「直ぐにギルマスを呼んで来い!!」

この仕事に就いて40年。久々に面白い奴が現れたぞ!!!


静かだった解体場が騒然とする事になるのは数分後のことだったと後に聞かされる。





「魔銀の解体包丁を全部出せ!」

「何をいきなり?」

「魔銀、魔鋼鉄の解体包丁を有るだけ用意しろ!」


事情が理解できないギルドマスターに、続け様に解体場のオヤジこと、

元Sランク傭兵パーティー”女神の盾”のリーダーヤコブが詰め寄る。


「引退して、この町で暮らしている傭兵で、解体が出来そうな奴も全部集めろ!!」

「なっ!?」

「肉屋でも防具屋でもいい。腕に覚えの有る解体職に声をかけろ。」


ますます困惑するギルマスに更に追い討ちをかける。


「あの小僧は、何者だ? 何処の国の剣神だ?」

「剣神? ああっ、一寸ばかり使えそうな・・・」

「これを見て、一寸と言うか?」


並べられたサバンナウルフのは、全て頚椎の骨と骨との間で斬られていた。

此処にある30体全てが、一太刀で絶命させられている。


「そんな・・・」

「ワシには出来んかったよ? 全盛期の剣聖と持て囃されていた時でさえ・・・」

「・・・」


「スモール・グランド・ドラゴン・・・」

「えっ?」

「あの小僧、スモール・グランド・ドラゴンも同じように討伐したようだ。」

「・・・そんな無茶苦茶な!! あの硬い鱗に並みの刀で歯が立つ訳が・・・」

「無いだろうな?」

「ドラゴンバスターソードを持ってして・・・」

「百度、動く事の無いものならば、1つ2つは出来るかも知れん。」

「骨ごと断ち切るならばともかく、狙いすまして、斬る事など・・・」


「取り敢えず動け!」

「はっ?」

「まずは、あのバッグを狙いそうな奴等は抑えておけ。」

「えっ?」

「大量の死人を出したいのか?」

「!!!」

「各国のギルドに問い合わせろ! アレだけの腕とバッグだ。騒動の2つや3っつ・・・」

「大至急に!!!」


ギルマスは走っていた。大恩人の元リーダーに命令されて・・・

そして、友好国のギルド宛に電文を送り、傭兵を始め、冒険者ギルドには依頼を出し、

解体の出来そうな人材を集めるべく、職員を走らせるのだった。








傭兵  キャラバンや要人の護衛を主とする。対人特化の武戦派集団。

用心棒、ザ・ガードマンに近い。


冒険者 町での小間使いから魔物の討伐まで、依頼があり報酬が折り合えば、

何でもやっちゃう便利屋さん。




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