016 王都での攻防 02
「これで、黒幕さんの手札もそうとうへっただろうなww」
「次の一手を期待しましょうかww」
そして、深夜近くになると恒例のようにシャルナク王子がテントの訪れる。
「興奮して眠れないのは分かるが、たまには早く寝たらどうだ?」
「まったく無粋な王子ですね?」
「・・・」
「冗談だ。気にするな。」
「何か言いたい事でも有るのか?」
「あの結界は大丈夫なんですか?」
「大丈夫とは?」
「生命力も喰うんですよね?」
「喰うよ。それはもう力一杯。」
「生命力を食われた人はどうなるんですか?」
「生命力が尽きれば、人は当然死にます。」
「問題でもあるのか?」
「もしかしたら、知っている者も居るのではと・・・」
「知り合いが、命を狙いに来たら、問題が有るのか?」
「・・・」『ええっ~~~!!!』
「甘い考えは持たない方が、精神安定上良いと思いますよ?」
「仮に、知り合いが居たら如何したいんだ? 自分の手で制裁を加えたいのか?」
「兄たちに無理やり命令・・・」
「たとえ脅されて来たとしても、結局は自身の欲望の為に出張って来た事に違いが無い。」
『人質をとられたとして、ソレを助けたいという自身の欲望のために暗殺しにやって来た。』
「・・・」
「”反抗して殺された”というなら、同情もしますが、此処に来た時点で全てが敵です。」
「僕は・・・」
「王には、寛容さも必要だが、冷徹さだって必要なんだぜ?」
「鋼とは行かなくとも、鉄程度の確固たる意思が必要です。」
「それは、国を導く王たる者の責任であり義務だ。」
「王の責務を語りますか・・・ マサキ殿は王族なのですね?」
「何で、そうなるかなぁ・・・?」
「傭兵としてやらなければならない事が、必ずしも思惑と一致するとは限りません。」
「領地を抱える貴族にだって、するべき事は有るんだぜ?」
「自分達は特別なんて思ってはいないでしょうね?」
「国民を抱える国王、領民を抱える領主、任務を全うする傭兵と何処が違う?」
「・・・」
「僕は、甘いですか?」
「「甘々だな。(ですね。)」」
「個人的には嫌いじゃないが、王としては失格だ。」
「俺達は、仕事を請けた以上、敵が何者でも確実に倒す。」
「情けで判断を左右していては、国の為にはなりません。」
「現国王なら如何動く? 暗殺に来た者を生かして返すか?」
「それは・・・」
「国益を損なう者は正せ。法を破るものは罰しろ。そこに、個人の感情はいらない。」
「父王と同じ事を口にされますか・・・。」
「命をくれてやる訳にいかないなら、迷う事はないだろう?」
「王でなくとも、導き出す結果は変わらないですよ。」
「「活路を塞ぐ者は薙ぎ倒す。」」
「少なくとも、俺達と、このテント周りを囲んでいる傭兵と冒険者は、全員その覚悟だぜ?」
「囲んでいる?」
「気が付かなかったんですか?」
「見張以外は全員が、このテントの周りで護衛しているだろう?」
「!」
「夜が明けたら乗り込むんだ。”地獄の蓋”をちゃんと使えるようにしておけよ?」
不器用な奴等は嫌いじゃない。そして、嫌いじゃない奴は、死んで欲しくない。
結界に閉じ込めた奴等から融通してもらったスキルのポイントを、分配する相手には丁度良い。
15人の冒険者と、13人の傭兵達に、身体強化を其々2ポイント分配し、更に幸運のレベルを2分配した。
体のキレがチョッと良いくらいの感覚になるはずだ。
肝心のシャルナクだが・・・ 武術系は得意ではないらしく、
軒並み低レベル冒険者・・・ ハッキリ言えば新米冒険者程度の実力しかなかったため、
基礎能力と身体強化に3のポイントを分配し中堅冒険者並みの体力と、
並よりやや強くなるように、2ポイントを剣技に割り振った。
明け方・・・ 最後のあがきに暗殺ギルドの残存部隊とおぼしき10人ほどの集団が接近してきたが、
地雷型結界に引っかかり、電撃の餌食になっていた。
斥候系タイプの魔術師も居たため、見せ掛けのために設置した罠を上手に避け、
二つ目の罠に掛かるとは、マヌケな連中だ。罠なんてのは、二重三重に張るものに決まっているだろう?
コイツ等のポイントも9割で貰っておこう。そのうちに、使い道も思いつくだろう。
王都の中心にある城へ辿り着く。
第二騎士団隊長は将軍の下へ帰還の報告へと向かい、
騎士団は、詰め所へ戻って行った。
俺達は、城へと案内され、傭兵、冒険者一行は王城の食堂で食事を振舞われ、
シャルナク、俺とビーナは、謁見の時間調整に控え室に通される。
第三王子の訃報を待つ第一王子の派閥の貴族の顔が引き攣る。
何事も無かった様に裏切り者以外の親衛隊と第二騎士団、加えて冒険者に傭兵。
「これは、シャルナク王子、遠征お疲れ様でした。」
引き攣りながらも、笑顔で挨拶をすると、足早に城へと踵を返す。
帰還の報告をするため控えの間で紅茶を飲んで寛ぎながら、城内の様子を観察している。
『目を瞑り集中しろ。』
『急ぎ足の、足音。』
『忙しなく叩かれるノックの音。』
『報告される、第三王子の帰還の報。』
『声を荒げる第一王子の様。』
『シャルナクが帰還しただと? ふざけるな!』
『・・・』
『暗殺部隊3百人からの人数を送ったんだぞ?』
『・・・』
『騎士団ごと殲滅するように申し付けただろう!!』
『それが・・・ 騎士団は勿論、親衛隊も当の本人も怪我すらないように・・・』
『そんな馬鹿な話があるか! 金貨5百枚も吹っ掛けておいて、失敗したと言うのか!!!』
「お前の兄ちゃん・・・ 言っちゃなんだが・・・」
「「最低だな(ですね。)」」
「それほどでも・・・」
「褒めて無ぇ! 王座に着くのに、そんなケチ臭いから駄目なんだよ。」
「所詮、その程度の価値しか見出せないのでしたら、王になるまでも無いでしょうに。」
「まったくだ。 自分の持てる最大戦力を持って撃滅するのがセオリーだろう?」
「そんな事をしたら、父王に所業が・・・」
「現王は其処まで甘くないだろう?」
「?」
「一人動かした時点で、把握済みだったんだよ。」
「まさか・・・」
テーブルからは死角になっているドアを音も無く開けてやる。
「そうなんだろ? 隠れて聞いている、第二騎士団所属副隊長。」
「サリウさんでしたか?」
「サリューだ。」
「現ロイヤルガードのNo.2。次期頭領闇使いのサリウで、良かったよな?」
「・・・サリューだ。」
「鼓動が2割ほど早くなっていますよ?」
「ロイヤルガード・・・ 闇使い・・・」
「まだ、自己紹介はされていないのか?」
「ロイヤルガードは王のみに仕える者達です。父王以外は誰も・・・」
「その3匹の犬っころを出したら、遠慮なく斬るぞ?」
「!! 驚いた。これが感知できるのか?」
「蝙蝠どもの眷属よりも簡単になww」
「では・・・」
「当然知っていますよ?」
「これの事だろう?」
指を鳴らし不可視の結界を破壊すると、優雅にティタイムを楽しむ親父が二人・・・
「父王!!」
「頭r・・・」
「覗きとは、なかなか結構な趣味だな?」
「父王に聞かれますよ・・・」
「問題ありません。遮断結界と遮音結界を張ってあります。」
「遮断?」
「魔法を感知する間道具をお持ちのようでしたので、ドアを開けた瞬間に展開しました。」
「ついでに、俺達が座っているように見える映像と、雑談をしている音声を楽しんでもらっている。」
「まあ、茶番はこれ位で良いだろう?」
再度指を鳴らし、一つを残し残りの結界を破壊する。
「「「!!!」」」
「おや?謁見の間での報告ではなかったようですね?」
「サリ・・・ サリュー 何時の間に・・・ これは一体?」
「シャルナク様が雇った傭兵は結界魔法の使い手でした。」
「つまり・・・」
「最初から気が付いておいででした。」
「「・・・」」
「こっそり観察していたのを・・・」
「観察されていたと言うのか?」
こっくり。頷くサリウ。
信じられないといった表情の二人に、呟いてみた。
「やはり、気付かぬようだな?」
「初めから三重に張った結界をやすやすとは感知出来かねるかと。だったか?ww」
「最初から・・・」
「声まで届いていようとは・・・」
「で・・・ さっきの話は自分でする。で良いのか?」
「「「「話?」」」」
「第三王子”改め”の話と、”第三王子暗殺計画”の話です。」
「「「「!!!」」」」
「第三王子改め?」
「「第三王子暗殺計画?」」
王とNo.1の視線に再び・・・ こっくり。頷くサリウ。