011 日常
朝少し遅めの時間、ギルドに顔を出し、依頼終了の報告と新たな依頼の受注。
その後、移動し魔物を適度に狩る。
昼食を摂りに空母へ帰り、食事を済ませる。
午後からは、アーティファクトの改造と、魔道具の生産をする。
アーティファクト化したアイテムの中には、それは沢山の車も存在する。
なかでも、軽自動車の中では長ロングセラーの本格派4WDの車が、最近の玩具だ。
これって、群を抜いて使える車なんだよ?
今時、ラダーフレームを使用し、リジットサスを使っている車は殆ど見ることが出来ない。
頑丈で修理がしやすく、最低地上高を取り易いんだ。
異世界の道なき道を走るには、有利な車である事に間違いは無い。
近いうちに、中世レベルの異世界へ行く予定があるなら、確保すべき一台だ。
そんなところに永住させられている俺が言うんだから間違いない。
フレームだけの車ではクーラーやヒーター等役に立たない。
そして、雨なんか降った日には、びしょ濡れになるんだからね?
マジなところ、町の東の草原にWRCで行ったところ・・・
スタックするは、段差で登れないところが何箇所かあり、ストレスが溜まったのだ。
アイツは、あくまで、ターマックや、グラベルなロードを走るもので、
起伏のあるグラスな道とは呼べない、そんな所へ持ち込む事を、お勧めはしない。
ついでに言えば、この車に必要な改造は、光量不足を補う為の電気系部品の交換と追加。
固定金具の取り付けをするためのサブフレームのボルトオン。
草などで、ラジエターを塞が無いようにバグガードの追加は、必須といえる。
街灯の無い世界は本当に月明かりしかなく、お先真っ暗な、暗闇なんだよ?
左右のミラーにスポットを追加。フロントにフォグを一組追加。
バックランプ連動で、リアにも追加。これで、マシになるだろう。
魔道具製作といえば、最近のマイブームはマジックバッグの製作だった。
高値で買取されるマジックバッグが効率は高い。
だが、だからと言って、めったやたらに、出すわけにもいかない。
理由は現時点で、この世界で出回っているマジックバッグは、非常にお粗末な代物だったからに他ならない。
レシピはといえば・・・
1 空間魔術で、空間を固定確保する。
2 確保した空間を圧縮固定する。
3 圧縮した空間に扉などをつける。
4 丈夫なバッグを用意し、更に強固等の付与を行う。
5 バッグ内に圧縮された空間を固定する。
5 窓、扉の出入り口をつける。
6 重力軽減を付与する。
(更に時間遅延を付与された物も存在する。)
こんな感じ・・・
これは、本来空間拡張のために使うべき手法だったりする。
無理にマジックバッグに用いるとすれば、
原始的な、最低限の機能しかない直接収納型に分類される、
不完全で不安定な物しか作ることのできないからだ。
俺の知っているマジックバッグが進みすぎているのか・・・
まぁ、別な物と・・・ 厳密に言うと別物なのだが・・・。
他世界で、マジックバッグ (国宝級~)
と位置づけられていた物のレシピは・・・
1 異次元に結界魔術で、空間を固定確保する。
2 確保した空間に扉などをつける。
3 適当なバッグを用意し、窓、扉の出入り口をつける。
4 時間遅延の呪い(デバフ)を付与をする。
他の次元に繋がっているので、実質的な重さも存在しない。
魔術式の空間規模の数値を変更すれば、大型化も可能。
次元収納型に分類され伝説級の約7割の完成度を誇る。
手順が少なく、バッグ自体の丈夫さを必要としないのだが、
こんな物が出回れば、これで生計をたてている製作者の失業は避けられない。
この世界での製作者達は、空間圧縮が1/10、
重量軽減率60%~重量軽減率65%程度にしか出来ないようなので、
2立方メートルのマジックバッグが持ち運びを考えると限界なのだろう。
俺か? 俺がこのレシピを知っているのは・・・
その昔、二つ目の世界に派遣されていた頃・・・
狭い馬車での移動生活に耐えかねて、試行錯誤を繰り返したんだよ?
2畳しかない馬車内の空間に30畳ほどの空間を詰め込んで、
生活用品が増え重さが増した馬車に、重量軽減率91%を付与した、
広々空間馬車を完成させたからに決まっているだろう?
という訳で、本来は、術式組み込み型の方が安定したものを作れるのだが、
これは、解析されると、大型化も可能なので却下の方向で。
至極原始的な直接収納型、法術形成系マジックバックを作成する事にした。
数も沢山は出回らす事も出来ないので、50個程で生産を終了させた。
自重が出来る俺は、性能だって嫌々落として、
容量2.5立方メートル。重量軽減率80%と不本意極まりない品を作った。
これくらいないと、オークが5頭入らないんだよ?
最低限、これ位は必要だろう?
尚、自重が出来ない俺が作ったマジックバッグは、ビーナとの協議の末、お蔵入りに成ってしまわれた。
とまぁ、常識の範囲内で、自重しながら、ビーナと暮らし始めて一月が経過した。
レクターの一族(使徒)も一部が表に出てきているようだ。
通常以上の祝福や技能を持つ者達なので、予想は出来ていた。
ギルドで剣聖に知り合いは居るかと聞かれ・・・
心当たりが無い訳ではないが、誘導尋問は、もう少し丁寧にやるべきだ。
「解体場のオヤジの事か?」と受け流してやった。
何人かの使徒の中に、剣豪を持っていたのが居る事は知っている。
過去に数度・・・ 別の世界で御一緒した事があるはずだ。
体感時間にすると、何十年も昔の事で、名前は覚えていない。
顔を見れば・・・ 恐らく分からないな・・・ 黒髪黒目が目印か?
実年齢は知らない。 何年か後に再会した者も居たが、16歳くらいのままだった。
日本人だとは気付くだろうが、会っても本人たちだとは分からないかも知れないな・・・。
没個性って哀しいよな・・・
縁があれば、再会する事も有るだろう。所詮人生なんて、そんなモンさ。