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エージェント  作者: Shion akiyama.
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009 職人の光と影

それでは、シャワールームの改造から始めようか。

空母のシャワールームには、湯船は無く、まるで、屋外のプールや海に設置してあるシャワーの施設のようだ。

これは、俺の許容範囲を超えている。

しかし、神器になったしまった空母の改造は一筋縄ではいかない。

が、

ビーナのスキル、神器格は、ビーナが触れている神器の格を変化させられる。

つまり、ビーナが居れば、この無駄に広いだけのシャワー室を快適空間に作り変えられるのだ。


大量に、否、無限に使える資材の中からアダマンタイトを取り出し、4畳ほどの湯船を作成、設置する。

何か物足りない・・・ 湯船に対してシャワールームの空間が広すぎるのだ。


バランスを取るために、サウナと深めのプールを作ってみた。

下町の銭湯か? 折角なので、壁にタイル絵画で富士山を描いてみた。

そこはかとなく、微妙な空間に変貌を遂げたが・・・ 

許容範囲ということで、次の作業に移ることにする。


空母で、このシャワールームの次に許せなかったのが、レストルーム。

アパートのトイレを使っていたので知らなかったのだが・・・

ここも酷い。 空間ごと切り取り、アパートのトイレをそのまま移築した。

一度インベントリに戻す事によって、アパートのトイレは復活し、移築し放題なのだよww

配管を考えていたのだが・・・ 辻褄合せは自動で行われ、手間要らずだった。


待望の収納デッキは、艦載機250を収納できるのだが・・・

使い手が、実質二人では、オーバースペック過ぎる。

手持ちの装備は、数種類の戦闘機、爆撃機、輸送機、哨戒機、戦闘ヘリと半分にも満たない・・・

いや・・・ よくそれだけ有ったもんだと感心したほうが良いのかもしれない。

航空ショーの記念グッズ・・・ やるじゃな~い!!

だが・・・ エレベーターに乗せられ無い、艦載機ではない機体も多いのだ。

エレベーターを魔改造するべきか・・・ 飛行機の小型化を図るか・・・

それとも、カタパルトを設置して、いきなり飛び立てるように、射出口でも作ってしまおうか・・・ 


 

そして、居住スペース。こちらは、数は多いが、限りなくミニマム。

幾つかの壁を取り払い、ゆったりとした空間にして・・・ 管理人室の水周りを、そのままボルトオン。

「しまった・・・ この部屋が快適すぎて、下町の銭湯風シャワールームを使う事はなさそうだ。」

この間取りで、居住スペースに設置をしていると・・・ 

5部屋目が完成したところで、ゲストルームにしてもそれだけ有れば充分とStopがかけられた。


空母の中の俺の部屋で二人で夕食を取り・・・

風呂に入って、就寝・・・ で、何でビーナは俺のベッドに?

セミダブルベッドを、キングサイズに作り直しておねむしました。

昨日は貫徹だったので、睡魔に誘われて某のび太君よろしく、3秒で眠りに落ちたのは、言うまでもないだろう。



翌朝・・・ けたたましい轟音で目を覚ますと、ビーナは笑顔で朝食の準備をしていた。

この娘・・・ 俺がまだ使えていない、得たばかりの能力を完全に掌握しているようで、

ドラ猫の増量タンクに燃料変換の魔法陣を付与して、F-14とCVN-65は、既に眷属にしてしまっていた。

無人で作戦を実行するゴーレム化させ、手始めにマップつくりに北へ向かわせた?


するって~とナニかい? 俺の知識から読み取って、スキル以外の事なら何でも同じように出来ると?

更に、格下の神器なら、手足のように使う事が出来る?



ねぇ・・・ ソレなんてチート?

ビーナは微笑み・・・ 朝食の準備を続けるのだった。




ノルマの討伐数、二週間分は既にこなしてある。そして、地図は現代進行形で作られつつある。

結果、ビーナと二人で、魔改造に取り組む事になる。

手持ちの機材から適当に探すのだが、車、バイクはともかく・・・ 他のものが規格外すぎた。

4駆の車を2台とオフロードバイクを2台ダ・カール仕様に変更し、64Dを追加で改造した。

別行動するときもあるし、機材は売る程有るんだよ?

「アパッチを一人一機持っていても良いじゃないか?」


他にも、色々改造したいのだが・・・ 

純粋な戦力としては、どうにも・・・

「正に、帯に短しって所か・・・」

実際、一度でもその場所に行った事があるのなら、

次元移動を使えば、瞬時に移動は出来るし、法術の方が威力も高い。

ミサイルや自身が炸裂する事で威力を出す兵器は、不壊の呪いで使えない事が判明し、

銃火器を使って魔物を討伐すると、厄介なものが体内に残り、

穴だらけでは、素材もゴミにしかならない。


趣味の範囲で使えそうな機材の魔改造しか出来そうになかった。




車やバイクは基本的に重い。

これに対する解答は、重力軽減の付与。

しかし、車やバイクはタイヤと地面の摩擦によって走行、停止、するように出来ている。

つまり闇雲に重力を軽減しても、使えないゴミにしかならない。

可変重力付与術式を組込み、軽量化の最適値を割り出す作業に数日を要した。

が、低抵抗率の道も、アスファルトの敷かれた道路のように走行可能になったことで、

4駆と、バイクの利用価値が劇的に上がった事に変わりは無い。 と、思いたい。

なにしろ、インプWRCが売るほどあるのだ。使うしかないだろう?

ただし、色だけは白に塗りなおした。 幾ら認識阻害術式をかけても、

鮮やかなブルーメタリックの車両は異彩を放ち、違和感が拭えなかったのだ。


ビーナが使う車両は緑ベースの迷彩が施され、パドルタイヤが装着されていた。


「カッコイイけど、ナニを目指しているんだ・・・」

「何処でも走れて、効率的です。」


この娘には、自重というものは存在しないようであった。


「空母を自宅にしている人が自重などと言いますか?」


至極全うな意見だと、同意せざるを得ない。

この世界では、自重には、目を瞑って貰う事にした。



更に数日が経ち・・・ ドラ猫は膨大なデータと共に帰還した。

データを空母に送信の後、洗浄とワックスを施しインベントリに収納。

不壊不滅とはいえ、汚れも付けば、ワックスだって劣化はするのだ。

なれない洗浄とワックス掛けに半日ほど掛かったのは、俺の手際が悪いせいでは無いと信じたい。


なにはともあれ、この星の詳細な地図を手に入れた事の意味は大きい。

何せ、今までの世界では、”大体”や”おそらく”が幅を利かせて、

まともな地図一つ無かったのだ。

何日も馬車に揺られて、無為に過ごした日々がどれ程あったことか・・・

今更ながらに、現代地球の超越した技術力に賞賛を贈る事にした。


が・・・ 

二人は、この国の名称どころか、自分達が登録した町の名前すら知らない事に気が付いていなかった。





「大雑把に見て、この大陸には、今俺達が居る大陸東寄りの国と、

北の山脈の向こうにある、北の国と、大きな川を挟んだ西の国が在りそうだな。」

「先ずは、この大陸から片付けていきますか?」

「いや・・・ たぶんこの大陸だけで良いと思うぞ?」

「輪廻神様の事ですから・・・」

「この、反則野的な空母や戦闘機の事は・・・」

「考慮されていないのでしょうね。」

「今までも、世界を駆け巡るなんて事は無かったし・・・」

「緩やかな討伐がお望みなのでしょうか?」

「移動手段は、陸なら馬車、海なら帆船がメインで・・・」

「車はともかく、原子力艦などは、想定の範囲外という訳ですか?」

「肯定だ。飛竜を使う国もあったが、所詮は生き物でしかない。」

「航続距離も、たかが知れている。ということですね。」

「それでも、他のところへも行かなければならないなら、神託してくる筈だ。」

「妙な所で、信頼はしているのですねww」

「何だかだ言って、70年来の付き合いだからな?」







~冒険者ギルド~


最近あのガキが現れない。 傭兵ギルドに依頼を出すより、

直接獲物を買いたた・・・ 譲ってもらったほうが利益率が高いのだが・・・


正面から行っても、傭兵ギルドに喧嘩を売るようなものだ。

搦め手を使って、奴の宿に張り込んで何時ものように教えてやれば良いと考えていた。

が、町中の宿をしらみつぶしにした結果、何処にも宿泊はしていなかった。

唯一、最初に泊まっていた宿は、1週間ほどで引き払われたようだった。


一体何処に潜伏しているのか・・・ 情報は、すぐに入ってきた。

奴は朝、冒険者や傭兵達が町を出て暫くの後、町にやってくる。

この危険地帯の何処かでキャンプでも張っているというのか?

そんな命知らずなマネをする奴は、少なくともこの町には居ない。


奴の移動速度を考えれば、隣町に行く事も可能だろうが・・・

奴は東門に現れる。 東にあるのは、危険地帯の草原や森だけだ。

そんなところに、好き好んで・・・ 奴等は、あの(・・)魔物達を歯牙にもかけていなかった。

奴等にしてみれば、ただの狩場なのかもしれない・・・

なんて危ない奴等なんだ・・・。



俺の野望が・・・

そんなおり、隣国のダフニスの聖都ヒペリオンの冒険者ギルドからの問い合わせが入ってきた。

内容は、レクターという一族についてのものだった。

あのガキの名も、マサキ・ディ・レクターだった。

これは、千載一遇の・・・ カナタ・ディ・レクター? 何? 剣豪だと?

姉のハルカという娘と二人だけで、隣国で魔獣を狩りまくっている?


一体何なんだ!!!

登録したての新人冒険者が、たった二人で魔獣を狩っていると言うのか・・・?

間違いなく、傭兵のガキの一族だ・・・。

そんな危ない連中に関わるのは得策ではない。

プランを放棄・・・ だが、美味しい獲物である事は間違いないが・・・

マサキとビーナという娘だけでも、手を焼くどころか持て余すものを・・・

更に二人増えてしまっては、手に負えない・・・。


いつか、機会があれば俺の手駒にしてやる。

冒険者ギルド長 マヌケーナ・ツリメは、画策を止めようとはしなかった。







~傭兵ギルド~


「意外な所から、出てきたな・・・」


その日、傭兵ギルドのマスーター室で、

王都西の大河を挟んだ隣国、ダフニスの聖都ヒペリオンの冒険者ギルドからの報告書を確認して、

エンケラドゥス王国最東、辺境の町テティスの傭兵ギルド長アイガイオンは、歓喜していた。


ハルカ・ディ・レクターとカナタ・ディ・レクターという、二人の名前を入手したのだ。

これは、時機を見ても、マサキの血族に間違いないと確信した。

しかも、あちらはあちらで、それなり以上にやらかしているとのこと・・・

数十年ぶりに現れた剣豪。 パーティなどは組まず、常に二人で行動し、

その力を持って、ブロンズクラスにも関わらず、既に数多くの魔獣を屠っている。

東方の島国の出身。 貴族の末席の姉弟。 共通点が多すぎる。

が、肝心な事は、一向に不明のまま、スキル等は、ギルドに因って秘匿されている。

当然こちらも、出す気はないのだが・・・ 

「やはり、東方の島国というのは、相当の魔境なのか・・・。」

なにはともあれ、リーダーヤコブに報告が出来、素性の一端でも知る事が出来た。


「裏を取るために、そのうちマサキにカマでもかけてみるか・・・。」






マサキというニュービーは、行動が、他の傭兵とは異なる。


其の一

朝、傭兵の大半が仕事を取って出かけていった頃に、ギルドに現れる。

人ごみは嫌いなのだとか・・・ お前も一応は傭兵だよな?


其の二

おもむろに、素材を出す。 いいか? 普通は早くても午後から買取するものだ。

素材の量が並ではない。 毎日大体同じ程度をの量を売る。

あの、馬鹿容量のマジックバッグのせいだ。 

普通の二人組みでは、その量の1/20も収めれば、充分すぎるんだぞ?


其の三

そして、護衛の仕事を受けようとはしない。

・・・お前、登録するギルド間違えているぞ?

結局、3週間ほどになるが、奴のこなす仕事は、ハンターギルドから回ってくる下請けの魔物討伐や、

素材調達ばかりをこなしている。

貸しが出来て、ギルドとしてはありがたいが、儲からないだ・・・

いや、今、うちのギルドの中では一番稼いでいる。

今、この町で売られている魔物の肉の実に7割近くは、奴等の獲物だ。


他にも・・・

いつの間にか、冒険者からは恐れられている。

どうせ、奴に喧嘩でも売ったんだろう。 外見では、その潜在能力の1割も見ることは出来ない。

散々な目にあわされている光景が、ありありと目に浮かぶ。

うちの奴等も、ヒールをかけてもらえなければ、何人かはリタイヤさせられた筈だ。


これまで、多くの傭兵と接してきたが、その、誰とも似ていない。

むしろ、冒険者やハンターの罠師に近い。が、奴は細身の片刃の剣を使う。

しかも、その剣は並みの大剣2本分の重さだという。

東の国には、非常識な武器があるものだ。



平行して、隣国に現れた、奴の血族と思われる二人の調査を続けている。

称号に剣豪を持つカナタと、その姉のハルカだ。

獲物は奴と同じ細身の片刃の剣。 炎を纏う魔剣と冷気を纏う魔剣。

ちょっかいを出したものは、悉く返り討ちにあっている。

貴族も混じっていたようだが、今では誰とも会わずに屋敷に閉じこもっているらしい。

情報だけとはいえ・・・ 物騒な連中だ。


だが、決して自分達から問題は起こしておらず、敵には容赦が無いというだけの、

人畜無害な性格だと締めくくられていた。


何人も再起不能にしてしまう奴等は、人畜無害じゃないだろう?



比べれば、うちのマサキは人畜無害で間違いない。・・・のか?










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