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果てなき世界  作者: 葉月みつは
2/3

戦友

彼と私が本部を裏切りもう1年が過ぎた。

ここでの生活にもなれ落ち着いている。

だが、全ての問題が解決したわけではなく、最近はその問題で私たちも忙しい日々を送っている。

「ここの戦況は、こことここで対処、これは-------」

彼も違う場所で情報集めに終われているはずだ。

かつての仲間との大きな戦いが近い。

できれば避けて通りたかった。

ここ最近、小さな戦があちらこちらで報告されついには軍隊まで目撃されている。

本部で何があったかはわからないが、大きな争いが起きるのは確かだろう。

かつての仲間との戦いになるのは少し複雑な気持ちだ。

だからといって手抜きはできない。

彼らと共に歩んできて、多くのことを学んだ。

彼らと共にいきること、それが私たちの今だから後悔などない。

-1、A地区で襲撃があった。応援にいけるか?-

「すぐ向かう」

装備を整え、最短ルートを検索し向かう。

この位置からそう遠くなく、30分ほどでつくことができた。

近づくにつれ、火薬の匂いと、焦げた匂いが強くなる。

「戦況は?」

-厳しい状況。戦いに向かないものたちの避難を最優先にしてほしい。こちらも補助をする-

A地区はほぼ壊滅状態で、もう再構築は厳しいほどの光景だった。

救えるものを救い、敵を排除しつつ、情報を味方に流す。

「…1?」

聞いたことのある声に振り向いた。

そこには懐かしい丸い九体の姿があった。

「4…」

お互いある程度距離をとりつつ沈黙が続く。

「裏切り者は、消さないといけない…」

先に4が動いた。

4の武器は遠距離からの武器による攻撃で、それを刀で跳ね返す。

ドドドー

カキーン キーン パリーン

何度目かの攻撃で、刀で跳ね返した弾が、4の急所にあたった。

「…」

4が地面へと落ちる。

反応が消え、機能が停止したのを確認し、それをそっと拾った。

「すまない」

その後も敵の攻撃は止むことなく、味方を助け終えた後離脱した。




部屋に戻り、彼の帰りを待つ。

ガチャ

「ただいま。1、今日戦闘になったんだって?」

「ああ。これを」

うごかない4を出して彼に見せる。

「…」

「一度起動させて、話をして、なっとくいかなければ私の手で処分する」

「そう。君が好きな方にするといいよ」

「…」

私たちが暮らすここは、周りに誰もすんではいない。

そうする方にお願いしたからだ。

「始める」

4を強制的に稼働させる。

球体がカタカタ動き出す。

「コロ コロ す」

球体が異音をあげ襲いかかる。

さっき戦ったときと違い、意思を感じられない。

「4、すまない」

すぐに4をうごかないように拘束する。

「4のシステムを改ざんします」

彼が4のプログラムを書き換え、4が小刻みに震える。

そして、全くうごかなくなった。

「プログラムの書き換え成功した。後は、席をはずすよ」

「ありがとう」

彼が外に出掛けて少しすると4が再起動した。

「ここは?」

「ここは、私たちの住んでいる所だ。敵対をする前に話がしたい」

「…私は、任務を失敗したんですね。なぜ、壊さなかったんですか?」

「私たちの話が、信じられるかわからないが聞いてほしいことがあった。それに、かつての仲間をできるだけ壊したくない」

4に、今までのことをゆっくりと話した。

4は、話が終わっても戦う意思は感じられず、何かを考えているようだった。

「本部でのこともありますし、あなたの話は真実の可能性が高いのでしょう」

「本部で何かあったのか?」

「実は、内線が起こっているのです。」

「内線が…」

「そして、技術班のトップも行方不明で、戦場でおったダメージのケアも十分できない状態なんです。」

「なんで、そのタイミングで地上にたたかいをいどんだんだ?そんな状態では…」

「詳しいことは、私にもわからないんです。それにあなたと戦っている途中妙な感覚があって…」

その後4は、本部には帰らずこちらで暮らすことになった。

どうやら4もなにかしら本部に不信感を持っているみたいだ。

4とのはなしがおわったあと、すぐに彼に呼び出された。

「1、4を少し改竄しているときに気になることがあったんだ。洗脳の類いが施された形跡があって、記憶も少し前のものに改ざんされた形跡があった」

「4は、本部から何かを疑われていた?でも、どうして…洗脳だって敵を自白させる手段のはず」

「わからないが、味方にも洗脳を使うとなると何かを焦っているかもしれない」

「…いったい何が起こってるんだ…」

少女にこの事を報告し、メンテナンスを受けその日は身体を休めた。


「隠しきれなくなったのね」

少女は、彼らからの報告を聞き終えポツリと呟く。

「本部は、“感情”を持ってることをエラーだと、排除したいんだろうね」

少年が少女の肩をそっと抱く。

「ある書物で“ものには年数を重ねると魂をもつ”と過去の遺物に書いてあった。”魂とは感情をもつ“とも」

少年が少女の髪の毛を手でほぐす。

「僕らは、“つくられたもの“であり、作った者たちとは異なるから、“戦う兵器“という目的。それは、従順が求められる」

「“戦う兵器“に感情はいらない」

少女は、少年を見ない。

いや、無意識に視線をそらした。

「感情を持った者を“洗脳“して、捨て駒にして処分している途中なのかも知れない」

少女は、少年の服を無意識に握る。

ズキズキと胸に鈍い痛みがはしる。

過去の私と同じことが繰り返されることが想像つく。

規模は前より大きく、残る傷は深くなるはずだ。

「技術職の責任者を保護し、対策を考える」

今できる最善手をうち、できるだけ犠牲が減る選択を探す。

少女は遠くをいつの間にか見つめていた。

「そうだね、君の治療も進むはずだし…」

少年は少女を寂しげに見つめた。

過去の記憶は思い出したくても、ひとつもでてこない。

でも、少女のことが大事なことは確かだ。

少年は、なぜ少女がこうなったのか知らない。

少女に秘密があることは、わかっているが聞く気はない。

それを聞くと、少女が傷つきそうでそれよりは知らない方がいいと思っているから。


-助けて-

少女が、少年を抱き締めて泣いている。

これは、私の記憶だ…

遠い昔の記憶。

だからこれは、夢なんだ。

これは、私の罪。

忘れてはいけない。

彼が記憶を取り戻したとき、私はどうすればいいのだろうか?



4を助けて、私は本部についての情報を整理していた。

もし、仲間同士で殺し会うように本部が仕向けているとしたら、それはなぜなのか?

また、感情を持ってはいけない理由が気になった。

私たちは、確かに感情を自然と獲得し、それによって苦しむこともあった。

だが、それは本当に要らないものなのだろうか?

1は、そっと自分の胸に手を当てる。

機械の音が振動となって伝わってくる。

柔らかな金属でできたこの身体…

生物のように繁殖はできないが、そのぶんからだの不調によりすぐ命を落とすことはない。

私たちはいったいなんなのか?

戦うために作られたのなら何にたいして戦わないといけないのか?

何度も、何度も手に掛け繰り返し続けたことに意味などあったのだろうか?

彼との繋がり、記憶が、未だに私を許しはしない。


1は、苦しそうだ。

僕は、1との記憶があんまりない。

思い出せないと言うより記憶がすっぽり消えてしまっている。

僕の名前は、2。

なぜ数字かは本部がつけたものだから、意味なんてないだろう。

4は、僕に過去に会ったことがあると言っていたけど記憶にない。

だけど、1の反応を見る限り真実なんだろう。

1は、何かいつも隠している。

だけどそれが、僕を傷つけないためなのはわかる。

本部とのリンクを切ったこともなぜか、そこまで抵抗がなかった。

1はと僕はどんな関係だったのだろうか?

1といると嬉しい。楽しい。胸が暖かくなる。

僕たちは戦うための機械だ。

身体だって温もりなんて感じられない。

金属で柔らかいものを使っていても、生き物のような温もりとは程遠い。

だけど、いつからか感情が芽生えた。

それをいつしか当たり前になっていた。

本部はそれを"異常"と読んでいた。

中には、それにより廃棄となったものもいた。

脱走して指名手配になったものも…

これが本部と関係を絶った理由だと聞いた。

そうだとしたら、4についての今回の洗脳について

本部はいったい何を隠して、考えているんだろうか?


少女は、少年をふとみつめた。

少女の名前はなかった。少年の名前もだ。

当人たちも必用としてなかった。

少年は視線に気づいて手を止めた。

「どうしましたか?」

「今回のことどうおもう?」

「…大きな被害がでるでしょうね」

「…」

「本部が何を考えてるかわからないので、彼女たちに負担がかかります。1と2は、本部にとっても脅威はずですから」

「そう」

少女の瞳が曇る。

少年は少女の手をそっと握る。

「これが終われば、外の世界について知りたいです」

「外に興味があるのか?」

「前から気になっていたのですが、戦闘用ではないのでいけずにいたんです。1人では戦うことができないので…」

「気づかずすまない」

「いいえ、むしろ今まで守ってくれて感謝しています。もしよければあなたも一緒にいきませんか?」

「…考えとく」

-あなたが、いつか隠していることを話してくれると嬉しいな。いつか、昔のおとぎ話のような日々が過ごせると幸せかな?そのためには、自分なりのやり方で君を支えるから-


月日は、それから流れ小さな戦いがちょくちょくあったが全て損害を最低限に押さえることができた。大きな戦いに向けての準備も着々と進んでいった。

私たちには、戦闘員として最新の武器が配布された。

大きな戦いでは規模がどうなるかわからない。

それなりの装備はしていても帰ってこれる保証はない。

今回ばかりは、2を止めることはできなかった。

説得はしたが彼の意思は強く、最悪彼だけは戻れるよう細工を完成さた。もちろん内密だ。

「エリア1大きな反応あり」

敷地内にアナウンスが響いた。

「戦闘員は向かってください。現在戦闘中で負傷者あり」

ワープルームへとむかう。

「1、これで最後だといいですね」

「そうだな」

ワープ装置を作動させ、エリア1にうつる。

そこは、自我を洗脳されたものたちが、ひたすら動くものに襲いかかりその光景はおぞましかった。

すぐさま戦闘にはいる。

洗脳され動きは、グレードアップし、機能停止させるのに少々てこずる。

2はドラゴンの姿になり応戦している。

「コロスコロスコロス」

襲いかかる敵が一斉に同じことを叫び始める。

あたりを見渡し敵の数を確認する。

ざっと1000

そのなかに2とおんなじ変身できるものもいる。

2に離れるように指示を出す。

最新の武器を使う。

銃のようなそれを高い建造物に移動し放つ。

銃のようなそれからまばゆい光が放たれる。

そして…

ドーン

あたりがドーム穣に焼き焦げていく。

鼻先に焦げた匂いがまとわりつく。

これは、昔の負の遺産だった。

辺り一帯は元々砂漠だったからかさほど生物への影響はない。

「1、大丈夫ですか?」

人形に戻った2の姿があった。

無線が入り、大丈夫と答えたあと、かつての仲間の亡骸を確認する。修復が不可能なほど溶けて惨い。

「1?」

いつの間にか2がそばにきていた。

「…こんなに容赦がないものだとは思ってなかった」

かつての同胞の亡骸をできる限り集めて、昔の弔いをしてあげた。

ズキンズキン

コアが痛む。

このものたちにも感情が芽生えていたのだろうか?

そうだとしたらあまりにも残酷だ。

感情を無理やり消してこんな最後なんて…

手を強く握りしめる。

本部を壊滅させて、こんな不幸が起きないようにしたい…

-聴こえる?-

少女からの無線が入った。

-聴こえる。何かあったの?-

-えぇ、本部から強い電磁波がながれていて、それで各地に異常が起きてるようで、そこは変化は?-

-特には感じない-

-解析中で、まだ全部終わってないんだけど電磁波のなかに無理やり自我を失うしかけがされているようで、気をつけて-

-わかった-

「自我を失う…」

近くにいる2の姿を見るといつの間にかうずくまっていた。

とても苦しそうだ。

「1っ、急にバグが…」

「っ、」

「うぁーー」

ドラゴンの姿に変化し、のたうち回っている。

「ころ。ころ し ころ す」

めは虚ろになり、感情が消えてこちらを見ている。

「どうして…」

彼とは戦えない。戦いたくない。

距離をとり逃げる。

-2が正気を失った。現在応戦中、正気に戻す方法はないか?-

「グォー」

-…報告したそばから異変が…彼は部品が貴重だから壊して機能停止させてはいけない…もとに治すことが難しい,時間を稼いで-

-わかった-

戦闘力は私の方が上だが、壊さないように対応するとなると防御しかできない。

彼も、なかなかの戦闘力はあり、身体への接触は危険だ。

激しく、彼からの攻撃が繰り出されそれらをうまく避けて、距離をとる。

燃料がじわりと減っていく感覚と共に、身体の動きが時間が絶つにつれ鈍くなってくる。

当初の目的なら一旦拠点に戻っている頃だ。

彼もおんなじ状況だが、強制的にグレードアップされているためか、動きにへんかはない。

身体に少しずつ限界が近づいてついに…

「しまった…」

着地に失敗し体制が崩れてしまった。

そこを見逃さず、攻撃が飛び込んできた。

もろに攻撃があたり、視界がぼやけ身体も動かせない。

彼が攻撃する度に身体が破損していく。

(ここまでか…)

思考が停止した。


ピー

「修復可能」

ピー

「修復中」

ピー

「コアに異常無し」

ピー

「再起動させます」

ゆっくりとまぶたを開ける

ゆっくりとからだを起こす。

少女の後ろ姿が視界に入りここが拠点だと認識した。

「2は…」

「間に合わなかった…救出したときにはあなたしかいなかった」

「そう…」

身体の状態を見ると、あちらこちらつぎはぎがしてある。

「部品が不足していて代用が効くところは何とか修理している」

「わかった」

「次会うときは、彼を機能停止にしなさい」

後ろを向いたまま少女は話を続ける。

「それか、部品を集めてきなさい。修復できるように」

「わかった、彼はもう戻らないのか?」

「わからない、今解析している。原因はわかっているけど」



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