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夢小説が、殺しにくる!?  作者: ササユリ ナツナ
第二章 中学生編
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番外編・10冊目のノート2


【魔法】


 この世界は、創造神アルフリートの手により、努力するものは必ず報われるようにできている。

 ある程度以上の努力が伴って行われた願いや祈りは、言葉よりも力を持つ。

 だが、そのことに気づいている人間は一人もいない。

 何故なら、途方もない苦労を重ねて夢を叶えた者ほど、同程度の努力を費やして、他のことに打ち込むことをしないからである。


 魔法とは、この願いを叶えるための苦労や努力の過程を、ある程度以上縮めるための手段として使われる。

 人の身で起こせそうにない願いや祈りであるほどに、費やされるエネルギー量は膨れ上がる。

 逆に言えば、魔力さえ潤沢に用意できれば、叶えられない願いはほとんどないと言える。

 しかし、このことに気づけている人間も、限りなくゼロに近いのは、残念な話である。


―――――――――――


【魔力持ち】


 なぜ魔力を持つ人間と、持たざる人間がいるのかは諸説ある。

 もっとも有力な説は、神の祝福を受けた者が最初に魔力を得、それを子孫へと遺伝させていったとされる説だ。

 他には、かつてはすべての人類が魔力を有していたが、魔法の使い方を知る者が少なかったために、使われなかった器官として退化していったという説もある。


 魔法と共に生きるフェザールは、すべての個体が魔力を有していることから、前者か後者か、余計に意見が割れる結果になった。

 真実は神のみぞ知ることではあるが、少なくとも我々にできることは、神を全能だと信じる仕事に専心することである。


―――――――――――


【機械文明と魔法王国】


 かつてリュヴィオーゼは学術都市として名を馳せ、ジェルミナールは資金援助という形で関わりを持っていた。

 魔力を使っての利便性を追求した魔科学の発展は、リュヴィオーゼに機械大国の名を与え、ジェルミナールにさらなる発展をもたらした。

 しかし、魔族による魔物の襲撃が世界で激化していくにつれ、リュヴィオーゼは機械の力を、武器等の戦う力へと変換させる研究を始めた。

 それを察知したジェルミナールは、武器を使っての反乱を恐れ、リュヴィオーゼを滅ぼすことを決意した。


―――――――――――


【ジェルミナールと魔族】


 ジェルミナール王室は、魔族とある密約を交わしていた。

 回復手段を持たない魔族のために、秘密裏に回復魔法を提供する契約を持ちかけたのだ。

 見返りは、魔族を使っての、ジェルミナールの邪魔となる障害の排除。

 混乱と怨嗟を好む魔族にとっては、好条件での取引となり、大多数の個体は、ジェルミナールの手足となって動くこととなった。


 ある時、機械大国リュヴィオーゼの滅亡を依頼された魔族たちは、負傷を恐れず、それを成し遂げた。

 しかしジェルミナールに帰ってみると、跡地のようなクレーターが残るだけで、魔法王国は影も形もなくなっていた。

 何が起こったかを察知した彼らは、唯一ジェルミナールを追う手段を持った国を、たった今滅ぼしてきたばかりだという事実に、絶望した。

 裏切りを旨とする魔族が、裏切られる側に回ったというのは、実に皮肉な話であった。

 このことがきっかけで、魔族は急激に姿を減らすようになったという。


―――――――――――


【ニヴォゼ王国お家騒動】


 フィカスとティランの父であるニヴォゼ王は、常人よりもはるかに愛情の深い男だった。

 表向きは厳しく、平等な姿勢を貫いていたが、特に幼い頃から体の弱いティランからは目が離せず、溺愛していた。

 それゆえに、王宮に蔓延る、貴族たちの悪意ある噂や陰謀に、ティランの繊細な心が傷ついていくことが許せなかった。

 ティランを俗世から離すために遠方へ逃がそうと決意したこともあったが、ティランの顔を見るたびに、その決意は儚く砕け散っていく。

 手放せず、かといって立場上、大っぴらに擁護もできず、思いつめた王は、ティランが王家に生まれたことを不幸と判断し、死によって救うことを決意した。


 ある日、フィカスが珍しく、王の私室に寝酒を持ってやってきた。

 フィカスは、それとわかる方法で、杯の中身を毒酒とし、さりげなくティランの話題を出しながら、父に差し出す。

 ティランに手を下すことを諦めさせるための、牽制の意でしかなかった。

 父王は、それを西大陸の神、アオラエストの導きと判断した。

 王は、自らの魔手からティランを守るため、毒酒の杯を呷る。


 フィカスには、どうしてあの時、父が毒酒を干したのか、わからなかった。

 ティランには、父に愛されていたことを知る機会は訪れなかった。

 ただ、一人の男が、王ではなく、一人の人間として死んだ。

 それだけの話だった。



―――――――――――



【メモ】


・デュラニー

    身長:181(ヒョロい)

 好きなもの:冒険譚、庶民的なもの、生き物、志の高い者

 苦手なもの:不潔なもの、貴族社会

    備考:先祖が金で爵位を購入した、いわゆる成り上がり貴族。そのため、デュラニーの家系に魔力持ちはいない。十分裕福なため、縁組みによって財を補う必要もなく、兄弟はいない。



・フィカスラータ

    身長:185(がっしり)

 好きなもの:目新しいもの、将来有望な子供

 苦手なもの:恋愛(自分では得意だと思っている)、常識が通じないもの、古くさい慣習

    備考:魔法の得意系統は、火・土・光。幼い頃から大体のことはこなしてきたため、自分に不得手なものがあるという認識がない。そのため、世間的に弱者とくくられる者の気持ちを、本質的には理解ができない。



・黒天号

 フィカスの愛馬。17の時、父から贈られた黒毛の馬。

 最初フィカスは、黒胡麻か、黒胡椒のどちらの名をつけるかで悩んでいたが、ティランが慌てて止めた。

 黒天号の名前を付けたのはティラン。

 フィカスは渋ったが、「黒胡麻寒天・號、の略です」というティランのでっち上げがいたく気に入って、黒天号という名を受け入れる。

 よって、フィカスはたまに、黒天号をブラッシングしながら、黒胡麻寒天・號という本名を呟いてやったりしている。



・ルグレイ

    身長:178(がっしり)

 好きなもの:美味しい食事、筋トレ、自分磨き、騎士道

 苦手なもの:美学が感じられないもの、フランクな会話

    備考:魔法の得意系統は、水・風・光。一つ目標を決めると、そこに向かって邁進する、典型的な猪突猛進タイプ。友人づきあい等は、目標に向かって突き進むためには、余計なものだと考えている。



・ハイドランジア

    身長:175(細身)

 好きなもの:予想がつかないもの、珍しいもの、反応がいい人間、泣き顔

 苦手なもの:感情の振り幅がない人間、毛のある生き物(服が汚れるから)、退屈な日常

    備考:きっちりと計画を立てて行動し、それが他者によって壊される瞬間が、大嫌いで、大好き。天才的なまでにあらゆる魔法や技術を使いこなせるので、トロいものや効率の悪いものを見ていると、イライラする。



<国の紋章>

・ジェルミナール…太陽と弓矢(天に弓引く、という意)

・ニヴォゼ…フラスコと歯車




・ペラルゴニウム・パールグレイ(ゼラニウムの一種)




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