冬の記憶をあとにして
今日が、フリメールで過ごす最後の日だ。
正直、室内で過ごすことに味を占めた感はあるのだが、せっかくなので外で雪遊びをしたいとお願いをしてみる。
午後は買い出しや出発の準備をするため、午前中だけ、宿屋の庭で雪遊びをしていいと、マグから許可が下りた。
ティムへの挨拶はどうするかと聞かれたが、別れ難くなるのでやめておくと言うと、ユウもマグもわかってくれた。
「お前……絶対ツナに……雪玉をぶつけたりするなよ……?」
庭先に出ると、早速マグが、ユウを牽制している。
「やらねーって、ツナはすぐ熱が出て怖えし…」
一瞬からかわれたのかと思ったが、ユウの表情を見上げると、本当に怯えていた。
そうか、確かに私も、ハムスターとか、小さくて弱い生き物を触るのは怖いからなー。
ユウにとって私は、そういう感じなんだろう。
「ツナ……何をして遊ぶんだ……?」
「雪でアンタロー作りたい!」
「ぷいぃいいっ、ボクですかっ、かっこよく作ってくださいね!」
アンタローが興奮気味に、ユウの頭の上でぴょこんと跳ねた。
「アンタローは見本なんだから、じっとしてないとダメだよ! ユウもじっとしてて!」
私が注意すると、ユウが露骨に嫌な顔をした。
「ええーー、俺じっとしてるのは苦手なんだよ…ほらマグ、アンタローパス!」
ユウが、バスケットボールよろしく、アンタローをマグに投げてよこした。
「ぷいぷいっ、いまの面白いです! もう一回やってください!」
興奮しきりのアンタローを、マグは静かに頭の上に置く。
「また後で……やってやる……」
「ぷいぃっ、約束ですよマグさん!」
「ほらツナ……これでいいか……?」
マグは積もった雪の上に片膝をついて、私が見えやすいようにしてくれた。
「ありがと、マグ! アンタロー、動いちゃダメだからねっ」
私はもう一度言いながら、しゃがみこんで、せっせと雪を集め始める。
私が動くたびに、腕に巻いた首輪のブレスレットが、長袖の下でチリチリとくぐもった鈴の音を立てている。
ユウが私の対面に移動して、手伝ってくれるようだった。
「どうせだからさ、でっかいの作ろうぜ!」
「えーー、あんまり大きいと、大変なのに…。小さいのをいっぱい作りたい!」
「んじゃ、間を取って、中くらいなのを10個くらい作るかー」
ユウとの会話は話し合いというには雑だったが、瞬く間に方針が決まった。
「だったらオレは……目の部分を集めるか……」
マグは黙々と足元を掘り始め、雪の中から石ころを発掘していく。
私は、雪兎を作る要領で、せっせと雪玉を丸めていっては、地面に置いていく。
そこにユウが雪を足して肉付けしていき、マグが目を入れたり、口や耳を造形したりして、瞬く間に一体が完成した。
「ぷいぃいいっ、ボクはもっと愛らしいですよ!」
アンタローがダメ出ししているのだが、私たちは作業に集中して聞く耳を持たない。
アンタローは、一体ができあがるたびに、「もっとキリっとしてますよ!」とか、「全然似てませんねっ」と、監督気取りでこちらの気持ちを削ぐようなことを連呼してくる。
やがて、宿の庭の一角に、アンタロー一家が暮らす区画ができた。
一家といっても、全部アンタローと同じような猫くらいの大きさのサイズで、どれが親でどれが子だかは不明だ。
「できたね! これ、アンタローが紛れても、見分けがつかないよ!」
私が自慢げに言うと、マグは試しにアンタローをその群れの中に置いた。
「おっ、ホントだな、もう動くか動かねーかの差だけじゃねえか?」
ユウの言葉に、アンタローは戸惑うように、シャッ、シャッ、と周囲を見渡し、ぶるぶると震え始めた。
「お父さん……お母さん……!」
「いや似てねーんじゃなかったのかよ!」
ユウの言葉に、マグが続く。
「そもそも精霊に……父親なんて概念が……あるのか……?」
「アンタロー、ひょっとして、家族が欲しいの…?」
私は心配になって聞いてしまう。
しかしアンタローは「ぷいぃ?」と体ごと傾いて、ハテナをあらわす。
「いいえ、ボクにはもう、マグさんというお母さんと、ユウさんというお兄さん、そしてペットが居ますからねっ。十分ですよ!」
「待ってそのペットってわたしのこと?????」
「冗談ですよツナさん、冗談です!(もろろっ)」
アンタローはそう言って粒をこぼしながらも、雪兎ならぬ、雪アンタローの周りをぴょんぴょんと飛び跳ねていく。
「ったく、気に入ったんなら気に入ったって素直に言やいいのに…」
ユウはなんだかんだで、笑顔でアンタローの様子を見ている。
「こういう時に、ティランが言ってた、写真があれば、取っておけるのにね、この光景」
私が言うと、マグが頷いた。
「写真があれば……たくさんツナの成長を……記録していけるんだろうな」
「お前、ティランにはあんだけ燃やせっつっといて…」
ユウが思わずマグに言う。
私もマグには言いたいことがある。
「マグ、成長っていうけど、わたし、もう結構大きいからね! ほとんど大人みたいなものだからね!」
「そうか……ツナは面白いな……」
ダメだ、全然取り合ってくれない!
「そろそろ昼時だな……一旦部屋に帰るぞ……アンタロー」
「ぷいぃい…」
マグが呼んでも、アンタローは戻ってくる気配がない。
ぴょんぴょんと雪アンタローの周りを移動している。
ユウが、困ったように頭を掻いた。
「アンタローって実はナルシストだよな…。しゃーねえなあ、俺がしばらくアンタローに付き合うから、マグはツナを連れてあったかいとこへ行ってくれ。ツナはすぐ熱が出るからなー」
ユウにとって、私が熱を出すことはよほどトラウマだったらしい。
私も残ると伝えても、ユウは何度も熱が熱が~と繰り返してきた。
「ほらツナ……行くぞ……」
結局私はマグに手を引っぱられて、フリメールで過ごす最後の外時間は終わったのだった。
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この世界の地図は、とても単純なものだった。
まず、私たちが今居る場所が、東大陸。
フィカスたちの住むニヴォゼがあるのが、西大陸。
そして、中央大陸という、そこそこ小さな大陸が、西と東に挟まれた、南の方にある。
ユウとマグの出身地であるルケーチは、地図上にはないが、東大陸の、一番東の端の方にある突端から先の、離島だという話だ。
ユウたちは、一番に、東大陸の中央にあるジェルミナール跡地を見に行って、そこから南下し、街をたどるように旅をしてきたのだという。
フリメールの場所は、東大陸の北西部。
次の目的地を、さてどうするかという話だ。
候補は三つ。
このまま東大陸を歩いて、北東の方に移動するか。
一度宿場町のある港まで戻り、そこから中央大陸か、西大陸に行くか。
とりあえず、西大陸はユウとマグが却下した。
フィカスに会いたくないらしい。
中央大陸が気になったが、話し合いの結果、東大陸をコンプリートしてから中央大陸に渡ろうという話になった。
というわけで私たちは、東大陸の北東部に向けて出発することになった。
「ぷいぷいっ、ぷいぷいっ♪」
ドスコイモードになっているアンタローは、上機嫌で私が乗っている荷車を引っ張っていく。
昨日は、あれからやっと部屋に帰ってきたアンタローが、「あの出来損ない達を見て、ボクの愛らしさが再確認できましたっ」と言って私たちをひりつかせた後、今日までずっと上機嫌だ。
色々と言いたいことはあるが、それでも充電期間になったのなら申し分ないので、私は大人しく荷台に乗っている。
フリメールを出発したとはいえ、まだまだ空気は肌寒く、私たちは防寒仕様を続けている。
「次の街も、寒い所なの?」
私の問いに、マグは首を振る。
「いや、東大陸での寒冷地は……フリメールくらいだな……だからこそ、氷雪の魔女の呪いだ……という逸話が……もっともらしく囁かれている」
「そうそう、他は温暖なんだよなー。まあ西大陸は砂漠が多いって話だし、世界視点で見るとバランスが取れてていいんじゃないか?」
「お前……適当に言ってるだろ……まあいい。次の街は……また領地が変わって……ヴァンデミエルという街だ」
「領地……。あんまりピンとこないね」
マグの言葉に、私は首をかたむける。
なんでも、東大陸は四つの地方に分かれていて、それぞれ領主が居るということだ。
かつては、大陸の中央にある古代王国ジェルミナールが五つ目の領地として他の地方を統括していたというが、滅びてしまってからは四領主になったとか。
「俺ら庶民には関係ないからなー。でもちょっと、四天王みたいでカッケエよな!」
「わかるよ、その下にさらに八部衆とかが居るんだよね!」
「そうそう!」
ユウと私が盛り上がっていると、アンタローが割り込んでくる。
「ではボクは、軍団長を担当しますかねっ、ぷいぷいっ」
「あ、ずりい! じゃあ俺は帝王な!」
「わたしは凱聖!」
「オレは雄闘で……」
意外なことに、マグも参加してきた。
ユウが私を見て、からかうような顔をしてくる。
「帝王ユーレタイドとか、雄闘マグシランってのはありだとして、凱聖ナツナってかっこ悪くねえ?」
「うぐっ、名前長いのいいなー…! こういう時に映えるよね!」
私が悔しげに負けを認める横で、マグが呟く。
「軍団長アンタローに……誰も踏み込まないのは……どう判断すればいいんだ……?」
「ぷいぃっ、帝王のユウさんは、ボクに操られているとも知らず、哀れな張り子ですね!」
「お前、何無意味に設定いじってきてんだよ…!」
「あははっ!」
その日は雑談をしながら、順調に進むことができた。
少しでも雪から離れるために、茶色い地面が見えるまでは進み続ける。
そのため、野営をした時には、とっぷりと日が暮れていた。
そうして、一日目の旅程は終わった。
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二日目の午後になると、ユウが「あっちー」と言ってコートを脱ぎ、私の居る荷台へと放り込んできた。
私は荷台でじっとして動いてないので、ありがたくユウのコートを布団代わりに被らせてもらう。
確かに昨日に比べれば、空気は緩んできていた。
「ツナ……しんどくないか……?」
マグが定期検診を入れてきたので、私は「大丈夫だよ!」といつものように答える。
だけど、こっそりとハイドのことを考えていた。
もし、ハイドが最後の魔族の生き残りだとすると、道中で魔物に出会わない理由に納得がいく気がする。
たぶん、生き残っている魔物がちょこちょこと数を増やしていることはあるだろうが、新しく生まれる魔物がほとんど居ないとなれば、この世界がこんなにも平和なのは自然なことな気がする。
ハイドは寂しくないのだろうか。
…やっぱり人間と、仲良くしてほしいな。
「ツナ、どうしたよ、ぼーっとして」
マグと話し込んでいたユウが、唐突にこちらを向く。
ユウは普段はガサツな癖に、なんだかんだで、たまに私の様子を見てくる。
「あっ、の、次は、デューに、どういう手紙を書こうかなって!」
咄嗟に嘘をついてしまった。
でも、ハイドのことを考えてたなんてバレたら、またユウの機嫌が悪くなる可能性があるのが怖いから、仕方ないよね。
「あーそういやそういう話だったな。ツナって変わってるよな、返事のこない手紙なんて書いてて虚しくなんねーの?」
「え…そんな風に考えたことはなかったかな。手紙って、おまじないみたいなものだから、返事がなくても、わたしは平気だよ。なんとなくね、手紙を書いている間は、絶対に相手が元気な気がするの。せっかく出すんだから、届かないはずがないって、ちょっと強引だけどね、そう思えるんだー」
「なるほど……手紙を書く行為自体が……ツナにとっての……ジンクスというわけか」
「うんっ。あとね、怪我人を運んでる救急の…馬車とか、通るたびに、『どうかご無事で』ってお祈りをするんだー。そしたらね、絶対中の人は助かる気がする! なんとなく、絶対って思えるの」
「救急馬車? そんなもん見たことねーけど、あるんだったら俺も今度からやってみっかなー」
そうか、やっぱりこの世界には救急車とかはないのか…。
じゃあ、電車とかもないのかな?
たまにあるよね、蒸気機関車的なものがあるファンタジーとか。
ちょっと聞いてみよう。
「…ねねね、たくさんの人が、一気に移動しようと思ったら、何に乗るの? 六両編成の馬車とか?」
すると、いきなりユウとマグが立ち止まった。
二人とも全然違う方向を向きながら、肩を震わせて、痛い場所を押さえるように、腹に片手を当てて何かを我慢している。
「えっ、ユウ、マグ? アンタロー、止まって!」
「ぷいっ」
アンタローが止まると、荷車も少し前のめりになって止まった。
私は荷台の後ろの方に移動して、ちょっと通りすぎてしまった二人の方を振り返る。
「ど、どうしたの二人とも、いきなり…!」
「だ、…って…」
マグが声を震わせて喋り始める。
「六両、編成の……っ、馬車って……っ、う、馬が、死ぬだろ、それ……っ!」
「バカやめろよマグ、ツナは、な、なんも、知らねー、だ、だけで…っ!! 俺らが、笑っちゃ、可哀想…だろ…!!!」
うわっ、ホントだ!!? 全然上手い例えじゃなかった!?
そのことに気づいた瞬間、私はバッと頬を赤くした。
「もーー! 知らない! 二人ともそこで笑ってればいいよ! アンタロー、発進!」
「ぷいぃっ!」
ガラガラガラガラ……
二人を置いて、荷車が進み始める。
「ちょっ、ツナ、待った、頼む…!」
ユウが息も絶え絶えになりながら、追いかけてこようとするが、笑いが尾を引いているようで、二人ともかなり苦労して追いかけてくる。
知らない知らない、あー恥ずかしい!
私は前を向いたまま、ぶすくれた顔で、頬を押さえていた。
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唐突にアンタローが、「こっちから水の匂いがしますっ」と言って程無くして、川が見えてきた。
私たちが通っているのは馬車道なので、そのまま石橋を渡ることができる。
石橋を渡ったところで、マグが川面を見ながら、
「少し早いが……今日は川べりでキャンプを張ろう……魚が捕れるチャンスだ」
魚好きのマグが、少し嬉しそうに見えるのは気のせいではないだろう。
「わあ、魚捕るところ、見てていい?」
「……地味だぞ」
マグが、少し視線をそらしながら言うと、ユウが「またまた~」と割り込んできた。
「マグって魚捕るのすげー上手いんだぜ! ありゃ一見の価値ありだよ、じゃあ俺が火とか焚いとくから、ツナはマグと行って来いよ!」
「うんっ」
私はいそいそと荷車から降りて、「アンタローお疲れさま、ありがとね」と、いつものようにお礼を言った。
「ぷいぷいっ、お安い御用ですよ、何せボクがリーダーですからね! まったくツナさんはボクが居ないとダメなんですから!」
アンタローは嬉しそうにそう言いながら、ドスンドスンとユウの傍に行く。
私は、黙って進み始めたマグの後ろを、うきうきとついていった。
「……この辺りがいいな」
私には、この辺りというのが他の場所とどう違うのかがまるでわからなかったが、マグは川べりにある大きめの石に腰かけると、腰元からクナイのようなものを抜いて、持ち手の丸い穴の中にテグスを結び始めた。
私はマグの傍に四つん這いになって、興味津々にその作業を覗き込む。
マグは私の方をちらりと見ると、少しだけやりにくそうな顔をしていたが、すぐに気を取り直すように、水面に目を向け、クナイを構えた。
そのクナイには、銛のような返しがついている。
ヒュッ―――
何の前触れもなく、マグは手首のスナップを利かせて、クナイを川へと投げつけた。
ザブンと川底へ刺さる手応えを、私が耳で捉えたと同時に、マグはテグスを引いてクナイを引き上げる。
すると、夕陽の中に煌く飛沫を上げながら、クナイに刺さった一匹の魚が水から上がってきた。
「…ええ!? もう一匹捕ったの!?」
「……オレの村では……こういうことができるヤツは……たくさん居たから……普通のことだ」
マグは、魚籠代わりの携帯鍋に、クナイから外した魚を入れながら、気まずそうに言う。
「でも、ユウにはできないんだよね?」
「アイツは基本的に……不器用だからな……。オレの何代か前が……漁師だったせいもあるんだろう……呪いと一緒に……技術も遺伝するからな……先祖が多ければ多いほど……身体能力……つまり、動体視力も上がる……受け継がれるんだろう」
「そう考えるとすごいね、1+1が、3になるどころじゃないんだ…」
マグは、会話をしながらも、慣れた動きでまたクナイを水面に投げつける。
「どうして3なんだ……?」
「お父さんと、お母さんで、1+1で、子供が生まれたら、合わせて3になる!」
ザバン、とマグはテグスを引っ張って、また魚を一匹引き揚げた。
「……本当だな。そんな風に……考えたことはなかった」
マグは感心したように言いながらも、視線はまた水面に注いでいる。
「ユウもマグも、数字で言うと20とか、30とかの、集大成なんだね。そう考えたら、強いのもわかるなー」
「………」
マグは何かを考えこむように黙りこみ、じっとクナイを構える。
「その30を……オレたちは……ゼロにしようとしている……。あまり考えないようにしていたが……罪深いな」
バシャン、とクナイがまた川に刺さる音。
私は、少し言葉に詰まった。
「それは……。でも、義務じゃないよ。仕方がないって、わたしはそう思う。無理して生き方を曲げると、どこかが歪んでしまうから、好きなように生きたほうがいいよ。…なんて、わたしもきっと、同じ道をたどるから、あんまり偉そうに言えないんだけどね」
「ツナ……?」
マグはテグスを手繰り寄せながら、こちらを見てきた。
私は首を振る。
「ううん、なんでもない。魚、たくさん捕っても、ユウはきっと、足りないって言うんだろうな」
携帯用の鍋に溜まっていく魚の群れを見ながら言う。
マグは、また何かを考えるように黙り込んだ。
「ツナ。……家のこと、な」
私は顔を上げてマグを見るが、マグは水面を見つめたままだ。
また、やんわりと突き放されるのだろうか。
「ユウがな……考えるだけならタダだろう……と、言い張るんだ……。オレも……そうだな、と思った」
「…え……?」
「ツナ……どんな家がいい?」
「……!」
どきどきと、胸が高鳴るままに、私は一気にまくし立てた。
「わたしね、淡いパステルカラーが好きだから、そういう家具をたくさん集めたいなー。でねでね、グリーン系の色合いが好き! 料理は私が作るから、マグには野菜の皮むきとかをお願いしたいの! 屋根裏があったら素敵だなー。森とかに近いと嬉しいよね、鳥の鳴き声で目が覚めるの! それでね、わたしが魔法でバリアーみたいなのを張るから、虫とかネズミとかは寄ってこないんだよ!」
「そうか……アンタローも弾かれそうだな……そのバリアー」
「あははっ! そうだね、その時はアンタローは外の犬小屋で暮らしてもらおうかなー」
マグは、目を細めて、身振り手振りを交えて説明する私を見守ってくる。
なんだか私はまた、むずむずとした感覚が来た。
なんだろう? 嬉しいときに来るのかな、このむずむず感。
そこから私は、マグの魚捕りが一段落つくまで、家での暮らしをたくさん話していった。
マグは黙って、全部聞いてくれていた。
<つづく>




